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ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 中編

 2017年8月4日配信(予定)のメルマガ金原.No.2894を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 中編
 
前編から続く
 
超訳 3 母親を教育してください】
 そもそも家庭教育は父親と母親が協力してやるべきものですが、子供を立派にするためには特に母親の責任が重大です。なぜなら、母親は生まれつき、子供を産み、育てる生き物だからです。なので、母親を訓練して、健全な影響を子供に及ぼす必要があります。そのためには、子供を生み、育てる母親が変わらなければなりません。そうやって母親が、子供を天皇に無条件で奉仕する者へと育て上げると同時に、健全で素晴らしい家を作り上げましょう。そのために、下記の点に注意してください。
イ 「お国のために」という考え方を徹底してください
 家庭生活は単なる家庭生活にとどまりません。常に国ベースで理解してください。あなたの家の子供は、単なるあなたの家の子供ではありません。天皇を守るための将来の精鋭部隊です。そういった人材を育成していることを自覚してください。
ロ 国が望む理想の母親像を目指してください
 まず、個人主義的思想は排除してください。そして、日本の母が本来有していた従順さ、温和さ、貞淑さ、我慢強さ、奉公精神などをちゃんと身につけるよう努力してください。
ハ この国の母親であることを自覚してください
 子供の性格は、母の性格に影響される部分がとても大きいです。なので、将来、天皇に無条件で奉仕する立派な者になるかどうかは母親にかかっています。子供が変われば国も変わります。子供を育てるというのはそういうことなので、責任と使命感を自覚してください。
ニ 科学的な教養力を向上してください
 本能的な愛情は、子供をダメにします。合理的で科学的な育児によって子供を天皇への献身者へと育てあげることこそが、真実の愛情です。今までの誤った考えは捨ててください。
 科学的素養は幼い頃に身につくものなので、子供と接する母親にちゃんとした教養があるかどうかはとても大切です。家庭の問題を科学で解決することは大東亜戦争を遂行する上でもとても大切です。なので、母親が科学をちゃんと勉強して、子供に教えるとともに、子供を大東亜戦争に協力するよう徹底してください。
ホ 健全なセンスを持ってください
 母親のセンスを向上させることが、家を豊かにし立派にするとともに、子供のセンスにも影響するところが大きいということを理解してください。だから健全なセンスを持ってください。
へ 強い子供を産むために強い身体を作ってください
 強い子供は強い母親から産まれます。なので、健康についての知識を正しく得て、適度な運動と休憩をとると同時に、心身を鍛えて心身ともに健康であることはとても重要です。特に子供を産む直前と授乳期は万全にしてください。
 
【三、母ノ教養訓練~『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版】
三、母ノ教養訓練
 家庭教育ハ固ヨリ父母共ニ其ノ責ニ任ズベキモノナレドモ子女ノ薫陶養護ニ関シテハ特ニ母ノ責務ノ重大ナルニ鑑ミ母ノ教養訓練ニ力ヲ致シ健全ニシテ豊カナル母ノ感化ヲ子ニ及ボシ次代ノ皇国民ノ育成ニ遺憾ナカラシムルト共ニ健全ニシテ明朗ナル家ヲ実現セシメンガ為ニ特ニ左記諸項ノ徹底ニツキ留意スルヲ要ス
イ、国家観念ノ涵養
 家生活ハ単ナル家ノ生活ニ止マラズ常ニ国家活動ノ源泉ナルコトヲ理解セシメ一家ニ於ケル子女ハ単ニ家ノ子女トシテノミナラズ実ニ皇国ノ後勁トシテコレヲ育成スベキ所以ヲ自覚セシム
ロ、日本婦道ノ修錬
 個人主義的思想ヲ排シ日本婦人本来ノ従順、温和、貞淑、忍耐、奉公等ノ美徳ヲ涵養錬磨スルニ努メシム
ハ、母ノ自覚
 子女ノ性格ハ母ノ性格ノ反映ニヨルコト極メテ大ニシテ皇国ノ次代ヲ荷フベキ人材ノ萌芽ハ今日ノ母ノ手ニヨリテ育成セラルルコトヲ思ヒ子女ノ薫陶養護ニ対スル母ノ責任ト使命トヲ自覚セシム
ニ、科学的教養ノ向上
 国民ノ科学的教養ハ幼少ノ間ニ啓培スルコトヲ要シ而モ子女ノ科学愛好ノ精神ハ母ノ教養ニ負フトコロ極メテ大ニシテ家生活各般ノ問題ヲ処理スルニ科学ノ謬ラザル活用ヲ図ルコトハ国策ヘノ協力ニトリテ極メテ緊要ナリ仍テ特ニ母ノ科学的教養ノ向上ヲ図リ子女ノ教養ニ寄与セシムルト共ニ国策ヘノ協力ヲ徹底セシム
ホ、健全ナル趣味ノ涵養
 母タルモノノ趣味ノ向上ガ家生活ヲ豊カニシ之ヲ明朗ナラシムルト共ニ子女ノ品性情操ノ陶冶ニ影響スルトコロ大ナル所以ヲ認識セシメ日常生活ノ間健全優美ナル趣味ノ涵養ニ努メシム
ヘ、強健ナル母体ノ錬成
 強健ナル子女ハ強健ナル母ヨリ生マル母タルモノニ保健衛生ノ思想ヲ徹底セシメ常ニ活動ト休息トニ関スル正シキ考慮ヲ払ハシムルト共ニ積極的ニ心身鍛錬ノ方途ヲ講ジ以テ心身ノ保健ヲ向上維持セシムルコトハ極メテ肝要ナリ特ニ産前産後ノ保健衛生ニハ万全ノ処置ヲ講ゼシム
 
三、母(はは)ノ教養訓練(きょうようくんれん)
 家庭教育(かていきょういく)ハ固(もと)ヨリ父母(ふぼ)共(とも)ニ其(そ)ノ責(せめ)ニ任(にん)ズベキモノナレドモ、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ニ関(かん)シテハ特(とく)ニ母(はは)ノ責務(せきむ)ノ重大(じゅうだい)ナルニ鑑(かんが)ミ、母(はは)ノ教養訓練(きょうようくんれん)ニ力(ちから)ヲ致(いた)シ、健全(けんぜん)ニシテ豊(ゆた)カナル母(はは)ノ感化(かんか)ヲ子(こ)ニ及(およ)ボシ、次代(じだい)ノ皇国民(こうこくみん)ノ育成(いくせい)ニ遺憾(いかん)ナカラシムルト共(とも)ニ、健全(けんぜん)ニシテ明朗(めいろう)ナル家(いえ)ヲ実現(じつげん)セシメンガ為(ため)ニ特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ノ徹底(てってい)ニツキ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、国家観念(こっかかんねん)ノ涵養(かんよう)
 家生活(いえせいかつ)ハ単(たん)ナル家(いえ)ノ生活(せいかつ)ニ止(とど)マラズ、常(つね)ニ国家活動(こっかかつどう)ノ源泉(げんせん)ナルコトヲ理解(りかい)セシメ、一家(いっか)ニ於(お)ケル子女(しじょ)ハ単(たん)ニ家(いえ)ノ子女(しじょ)トシテノミナラズ、実(じつ)ニ皇国(こうこく)ノ後勁(こうけい)トシテコレヲ育成(いくせい)スベキ所以(ゆえん)ヲ自覚(じかく)セシム。
ロ、日本婦道(にほんふどう)ノ修錬(しゅうれん)
 個人主義的思想(こじんしゅぎてきしそう)ヲ排(はい)シ、日本婦人(にほんふじん)本来(ほんらい)ノ従順(じゅうじゅん)、温和(おんわ)、貞淑(ていしゅく)、忍耐(にんたい)、奉公(ほうこう)等(とう)ノ美徳(びとく)ヲ涵養錬磨(かんようれんま)スルニ努(つと)メシム。
ハ、母(はは)ノ自覚(じかく)
 子女(しじょ)ノ性格(せいかく)ハ母(はは)ノ性格(せいかく)ノ反映(はんえい)ニヨルコト極(きわ)メテ大(だい)ニシテ、皇国(こうこく)ノ次代(じだい)ヲ荷(にな)フベキ人材(じんざい)ノ萌芽(ほうが)ハ今日(こんにち)ノ母(はは)ノ手(て)ニヨリテ育成(いくせい)セラルルコトヲ思(おも)ヒ、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ニ対(たい)スル母(はは)ノ責任(せきにん)ト使命(しめい)トヲ自覚(じかく)セシム。
ニ、科学的教養(かがくてききょうよう)ノ向上(こうじょう)
 国民(こくみん)ノ科学的教養(かがくてききょうよう)ハ幼少(ようしょう)ノ間(かん)ニ啓培(けいばい)スルコトヲ要(よう)シ、而(しか)モ子女(しじょ)ノ科学愛好(かがくあいこう)ノ精神(せいしん)ハ母(はは)ノ教養(きょうよう)ニ負(お)フトコロ極(きわ)メテ大(だい)ニシテ、家生活(いえせいかつ)各般(かくはん)ノ問題(もんだい)ヲ処理(しょり)スルニ科学(かがく)ノ謬(あやま)ラザル活用(かつよう)ヲ図(はか)ルコトハ国策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)ニトリテ極(きわ)メテ緊要(きんよう)ナリ。仍テ(よって)特(とく)ニ母(はは)ノ科学的教養(かがくてききょうよう)ノ向上(こうじょう)ヲ図(はか)リ、子女(しじょ)ノ教養(きょうよう)ニ寄与(きよ)セシムルト共(とも)ニ国策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)ヲ徹底(てってい)セシム。
ホ、健全(けんぜん)ナル趣味(しゅみ)ノ涵養(かんよう)
 母(はは)タルモノノ趣味(しゅみ)ノ向上(こうじょう)ガ家生活(いえせいかつ)ヲ豊(ゆた)カニシ之(これ)ヲ明朗(めいろう)ナラシムルト共(とも)ニ、子女(しじょ)ノ品性情操(ひんせいじょうそう)ノ陶冶(とうや)ニ影響(えいきょう)スルトコロ大(だい)ナル所以(ゆえん)ヲ認識(にんしき)セシメ、日常生活(にちじょうせいかつ)ノ間(かん)健全優美(けんぜんゆうび)ナル趣味(しゅみ)ノ涵養(かんよう)ニ努(つと)メシム。
ヘ、強健(きょうけん)ナル母体(ぼたい)ノ錬成(れんせい)
 強健(きょうけん)ナル子女(しじょ)ハ強健(きょうけん)ナル母(はは)ヨリ生(う)マル。母(はは)タルモノニ保健衛生(ほけんえいせい)ノ思想(しそう)ヲ徹底(てってい)セシメ、常(つね)ニ活動(かつどう)ト休息(きゅうそく)トニ関(かん)スル正(ただ)シキ考慮(こうりょ)ヲ払(はら)ハシムルト共(とも)ニ、積極的(せっきょくてき)ニ心身鍛錬(しんしんたんれん)ノ方途(ほうと)ヲ講(こう)ジ、以テ(もって)心身(しんしん)ノ保健(ほけん)ヲ向上維持(こうじょういじ)セシムルコトハ極(きわ)メテ肝要(かんよう)ナリ。特(とく)ニ産前産後(さんぜんさんご)ノ保健衛生(ほけんえいせい)ニハ万全(ばんぜん)ノ処置(しょち)ヲ講(こう)ゼシム。
 
【三、母性ノ教養訓練~奈良県立図書情報館版】
三、母性ノ教養訓練
 家庭教育ハ固ヨリ父母共ニソノ責ニ任ズベキモノナリト雖モ子女ノ薰陶養護ニ關シテハ特ニ母ノ責務ノ重大ナルニ鑑ミ、先ズ母性ノ教養訓練ニ力ヲ致シ健全ナル母性ノ感化ヲ子ニ及ボシ次代ノ皇國民ノ育成ニ遺憾ナカラシムルト共ニ、健全ニシテ明朗ナル翼賛家庭ヲ建設セシメンガ爲ニ特ニ左記諸項ノ徹底ニツキ留意スルヲ要ス
イ、國家觀念、社會觀念ノ涵養
 母性ノ活動ヲ中心トスル家庭生活ハ單ナル家庭内部ニ留マラズ常ニ國家生活、社會生活ノ一環ナルコトヲ理解セシメ一家ノ子女ノ育成モ亦皇國ノ子女ノ育成ナルコトノ自覺ニ導ク
ロ、日本婦道ノ修鍊
 個人主義的外來思想ノ浸潤ヲ排シ日本婦人本來ノ柔順、溫和、貞淑、忍耐、犠牲、奉公等ノ美德ヲ守リ、之ガ涵養錬磨ニ努メシム
ハ、母性ノ自覚
 子女ハ母性ノ反映ニシテ更ニ將來世界ヲ動カス者ハ今日搖籃ヲ動カス母性ノ手ニアルコトヲ思ヒ、子女ノ薰陶養護ニ對スル母性ノ責任ト使命ヲ自覺セシム
ニ、時局認識
 家齊ヒテ國治マル、國家活動ノ基礎ハ家庭ノ整備ニアルコトハ古今ノ通則ナリト雖モ特ニ大東亞建設途上ニ於イテ家庭生活ガ如何ニ目的完遂ニ大ナル關連ヲ有スルカヲ自覺セシメ、更ニ子女ヲシテ次代ノ大東亞指導者トシテ教育スル爲ニ斷エズ時局ニ關スル綜合的認識ヲ母性ニ与へ、時局ト母性ノ責務ニ關シテ常ニ正鴻ナル識見ヲ養成セシム
ホ、科學的教養ノ向上
 國民ノ科學的興味ハ幼少ノ間ニ養ハル、幼少者ノ科學的興味ハ母性ノ科學的教養ニ負フトコロ極メテ大ナリ、然ルニ從來我が國女性ノ科學的教養ニ關シテハ低調ノ憾尠シトセズ、茲ニ於テ特ニ母性ノ科學的教養ノ向上ヲ圖リ直接的ニハ家庭各般ノ問題ヲ科學的ニ處理シ、國策ヘノ協力ヲ徹底セシムルト共ニ延イテハ次代ノ科學的向上ニ寄與セシム
ヘ、健全ナル趣味ノ向上
 母性ノ趣味ノ向上ガ家生活ヲ豊カニシコレヲ明朗ナラシムルト共ニ子女ノ品性陶冶ニ影響スルトコロ大ナル所以ヲ認識セシメ、日常生活ノ間、健全優美ナル趣味ノ向上ニ努メシム
ト、強健ナル母體ノ鍊成
 強健ナル子女ハ強健ナル母體ヨリ生ズ、母タル者ニ保健衛生ノ思想ヲ涵養シ常ニ榮養ト活動ト休息ニ關スル正シキ考慮ヲ拂ハシムルト共ニ積極的ニ心身鍛鍊ノ方途ヲ講ジ以テ健全ナル母體ヲ保持セシムルコトハ極メテ刊要ナリ、特ニ産前産後ノ保健衛生ニハ萬全ノ處置ヲ講セシムル要アリ
 
三、母性(ぼせい)ノ教養訓練(きょうようくんれん)
 家庭教育(かていきょういく)ハ固(もと)ヨリ父母(ふぼ)共(とも)ニソノ責(せめ)ニ任(にん)ズベキモノナリト雖(いえど)モ、子女(しじょ)ノ薰陶養護(くんとうようご)ニ關(かん)シテハ、特(とく)ニ母(はは)ノ責務(せきむ)ノ重大(じゅうだい)ナルニ鑑(かんが)ミ、先(ま)ズ母性(ぼせい)ノ教養訓練(きょうようくんれん)ニ力(ちから)ヲ致8いた)シ、健全(けんぜん)ナル母性(ぼせい)ノ感化(かんか)ヲ子(こ)ニ及(およ)ボシ、次代(じだい)ノ皇國民(こうこくみん)ノ育成(いくせい)ニ遺憾(いかん)ナカラシムルト共(とも)ニ、健全(けんぜん)ニシテ明朗(めいろう)ナル翼賛家庭(よくさんかてい)ヲ建設(けんせつ)セシメンガ爲(ため)ニ、特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ノ徹底(てってい)ニツキ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス
イ、國家觀念(こっかかんねん)、社會觀念(しゃかいかんねん)ノ涵養(かんよう)
 母性(ぼせい)ノ活動(かつどう)ヲ中心(ちゅうしん)トスル家庭生活(かていせいかつ)ハ、單(たん)ナル家庭内部(かていないぶ)ニ留(とど)マラズ、常(つね)ニ國家生活(こっかせいかつ)、社會生活(しゃかいせいかつ)ノ一環(いっかん)ナルコトヲ理解(りかい)セシメ、一家(いっか)ノ子女(しじょ)ノ育成(いくせい)モ亦(また)皇國(こうこく)ノ子女(しじょ)ノ育成(いくせい)ナルコトノ自覺(じかく)ニ導(みちび)ク。
ロ、日本婦道(にほんふどう)ノ修鍊(しゅうれん)
 個人主義的(こじんしゅぎてき)外來思想(がいらいしそう)ノ浸潤(しんじゅん)ヲ排(はい)シ、日本婦人(にほんふじん)本來(ほんらい)ノ柔順(じゅうじゅん)、溫和(おんわ)、貞淑(ていしゅく)、忍耐(にんたい)、犠牲(ぎせい)、奉公(ほうこう)等(とう)ノ美德(びとく)ヲ守(まも)リ、之(これ)ガ涵養錬磨(かんようれんま)ニ努(つと)メシム。
ハ、母性(ぼせい)ノ自覚(じかく)
 子女(しじょ)ハ母性(ぼせい)ノ反映(はんえい)ニシテ、更(さら)ニ將來(しょうらい)世界(せかい)ヲ動(うご)カス者(もの)ハ、今日(こんにち)搖籃(ようらん/金原注「ゆりかご」かも?)ヲ動(うご)カス母性(ぼせい)ノ手(て)ニアルコトヲ思(おも)ヒ、子女(しじょ)ノ薰陶養護(くんとうようご)ニ對(たい)スル母性(ぼせい)ノ責任(せきにん)ト使命(しめい)ヲ自覺(じかく)セシム。
ニ、時局認識(じきょくにんしき)
 家(いえ)齊(ととの)ヒテ國(くに)治(おさ)マル。國家活動(こっかかつどう)ノ基礎(きそ)ハ家庭(かてい)ノ整備(せいび)ニアルコトハ、古今(ここん)ノ通則(つうそく)ナリト雖(いえど)モ、特(とく)ニ大東亞建設(だいとうあけんせつ)途上(とじょう)ニ於(お)イテ、家庭生活(かていせいかつ)ガ如何(いか)ニ目的完遂(もくてきかんすい)ニ大(だい)ナル關連(かんれん)ヲ有(ゆう)スルカヲ自覺(じかく)セシメ、更(さら)ニ子女(しじょ)ヲシテ次代(じだい)ノ大東亞指導者(だいとうあしどうしゃ)トシテ教育(きょういく)スル爲(ため)ニ、斷(た)エズ時局(じきょく)ニ關(かん)スル綜合的認識(そうごうてきにんしき)ヲ母性(ぼせい)ニ与(あた)へ、時局(じきょく)ト母性(ぼせい)ノ責務(せきむ)ニ關(かん)シテ常(つね)ニ正鴻(せいこう)ナル識見(しきけん)ヲ養成(ようせい)セシム
ホ、科學的教養(かがくてききょうよう)ノ向上(こうじょう)
 國民(こくみん)ノ科學的興味(かがくてききょうみ)ハ幼少(ようしょう)ノ間(かん)ニ養(やしな)ハル。幼少者(ようしょうしゃ)ノ科學的興味(かがくてききょうみ)ハ母性(ぼせい)ノ科學的教養(かがくてききょうよう)ニ負(お)フトコロ極(きわ)メテ大(だい)ナリ。然(しか)ルニ從來(じゅうらい)我(わ)が國(くに)女性(じょせい)ノ科學的教養(かがくてききょうよう)ニ關(かん)シテハ低調(ていちょう)ノ憾(うらみ)尠(すくな)シトセズ。茲(ここ)ニ於(おい)テ特(とく)ニ母性(ぼせい)ノ科學的教養(かがくてききょうよう)ノ向上(こうじょう)ヲ圖(はか)リ直接的(ちょくせつてき)ニハ家庭各般(かていかくはん)ノ問題(もんだい)ヲ科學的(かがくてき)ニ處理(しょり)シ、國策(こくさく)ヘノ協力(きょうりょく)ヲ徹底(てってい)セシムルト共(とも)ニ、延(ひ)イテハ次代(じだい)ノ科學的向上(かがくてきこうじょう)ニ寄與(きよ)セシム。
ヘ、健全(けんぜん)ナル趣味(しゅみ)ノ向上(こうじょう)
 母性(ぼせい)ノ趣味(しゅみ)ノ向上(こうじょう)ガ家生活(かていせいかつ)ヲ豊(ゆた)カニシ、コレヲ明朗(めいろう)ナラシムルト共(とも)ニ、子女(しじょ)ノ品性陶冶(ひんせいとうや)ニ影響(えいきょう)スルトコロ大(だい)ナル所以(ゆえん)ヲ認識(にんしき)セシメ、日常生活(にちじょうせいかつ)ノ間(かん)、健全優美(けんぜんゆうび)ナル趣味(しゅみ)ノ向上(こうじょう)ニ努(つと)メシム。
ト、強健(きょうけん)ナル母體(ぼたい)ノ鍊成(れんせい)
 強健(きょうけん)ナル子女(しじょ)ハ強健(きょうけん)ナル母體(ぼたい)ヨリ生(しょう)ズ。母(はは)タル者(もの)ニ保健衛生(ほけんえいせい)ノ思想(しそう)ヲ涵養(かんよう)シ、常(つね)ニ榮養(えいよう)ト活動(かつどう)ト休息(きゅうそく)ニ關(かん)スル正(ただ)シキ考慮(こうりょ)ヲ拂(はら)ハシムルト共(とも)ニ、積極的(せっきょくてき)ニ心身鍛鍊(しんしんたんれん)ノ方途(ほうと)ヲ講(こう)ジ、以テ(もって)健全(けんぜん)ナル母體(ぼたい)ヲ保持(ほじ)セシムルコトハ極(きわ)メテ刊要(かんよう)ナリ。特(とく)ニ、産前産後(さんぜんさんご)ノ保健衛生(ほけんえいせい)ニハ萬全(ばんぜん)ノ處置(しょち)ヲ講(こう)ゼシムル要(よう)アリ。
 
 
超訳 4 子供を正しく育ててください】
 子供を正しく育てることは家庭教育の中核です。父親と母親の愛情の下、健全な家風の中で、ちゃんと使い物になる、将来の天皇に無条件で奉仕する献身者を作り出してください。そのために下記のことに注意してください。
イ 天皇に献身する信念を身につけさせてください
 日本は世界で一番素晴らしい国です。それは天皇のおかげであり、あなたたちは天皇に恩返しをしなければならないのです。日本人として生まれたことの喜びと誇りをもって、幼い頃から天皇に尽くすという信念を自ら固めさせてください。
ロ 強いメンタルを鍛えさせてください
 強い身体、我慢強さ、勇敢さをきたえ、大東亜戦争への士気を高め、強い決意と戦争に協力するための力を培ってください。
ハ 素直な子に育ててください
 清らかさと素直さと明るい性格、そして高潔な品位を持った、兵隊向きの子に育てましょう。
ニ よくしつけてください
 子供の自発性をいたずらに阻止してはいけませんが、自制心を身につけさせる訓練をし、良い習慣を身につけさせてください。強い兵隊のベースとするために、勤労、節約、我慢の精神を育てて、習慣にさせてください。それを通じ、幼い頃から天皇に尽くすという信念を自ら固めさせましょう。
ホ 身体を鍛えさせてください
 子供の身体の発育状況や健康状態を気にしつつ、身体をきたえさせてください。ただ、身体が強いだけでは兵隊としては足りません。加えて、勇敢さを身につけさせてください。大東亜共栄圏における指導的な国民としての精神を育むのです。
 
【四、子女の薫陶擁護~『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版】
四、子女ノ薫陶養護
 子女ノ薫陶養護ハ家庭教育ノ中核ナリ父母ノ慈愛ノ下、健全ナル家風ノ中ニ有為ナル次代皇国民ノ錬成ヲ為スベク特ニ左記諸項ニ留意スルヲ要ス
イ、皇国民タルノ信念ノ啓培
 我ガ国体ノ万邦無比ニシテ皇恩ノ宏大無辺ナル所以、日本人トシテ生ヲ享ケタルコトノ喜ビト矜トヲ体得セシメ以テ幼少ノ間ニ自カラ尽忠報国ノ信念ヲ固メシム
ロ、剛健ナル精神ノ鍛錬
 質実剛健堅忍持久、勇往邁進ノ精神ヲ養ヒ気宇ヲ高大ナラシメ強固ナル意志ヲ鍛錬シ其ノ実践力ヲ培養セシム
ハ、醇乎タル情操ノ陶冶
 清雅ニシテ醇乎タル情操ヲ陶冶シ明朗闊達ナル性格ト高潔ナル品位トヲ涵養セシム
ニ、良キ躾
 子女ノ自発的活動性ヲ徒ニ阻止スルコトナク自立自制ノ訓練ヲ加ヘ日常生活ノ間自カラ良習慣ヲ修得セシム就中剛健ナル国民ノ基礎ニ培フ為ニ勤労、節倹、忍苦ノ精神ヲ涵養シ之ガ習慣ヲ養ハシム
ホ、身体ノ養護鍛錬
 子女ノ身体ノ発育情況、健康状態ニ留意シ之ガ養護ニ力ムルト共ニ積極的ナル鍛錬ヲ重ンジ強健ナル身体ノ中ニ雄渾ナル気魄ヲ培養セシム
 
四、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)
 子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ハ家庭教育(かていきょういく)ノ中核(ちゅうかく)ナリ。父母(ふぼ)ノ慈愛(じあい)ノ下(もと)、健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ中(うち)ニ有為(ゆうい)ナル次代(じだい)皇国民(こうこくみん)ノ錬成(れんせい)ヲ為(な)スベク特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ニ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、皇国民(こうこくみん)タルノ信念(しんねん)ノ啓培(けいばい)
 我(わ)ガ国体(こくたい)ノ万邦無比(ばんぽうむひ)ニシテ皇恩(こうおん)ノ宏大無辺(こうだいむへん)ナル所以(ゆえん)、日本人(にっぽんじん)トシテ生(せい)ヲ享(う)ケタルコトノ喜(よろこ)ビト矜(ほこり)トヲ体得(たいとく)セシメ以テ(もって)幼少(ようしょう)ノ間(かん)ニ自(おのず)カラ尽忠報国(じんちゅうほうこく)ノ信念(しんねん)ヲ固(かた)メシム。
ロ、剛健(ごうけん)ナル精神(せいしん)ノ鍛錬(たんれん)
 質実剛健(しつじつごうけん)、堅忍持久(けんにんじきゅう)、勇往邁進(ゆうおうまいしん)ノ精神(せいしん)ヲ養(やしな)ヒ気宇(きう)ヲ高大(こうだい)ナラシメ強固(きょうこ)ナル意志(いし)ヲ鍛錬(たんれん)シ其(そ)ノ実践力(じっせんりょく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
ハ、醇乎(じゅんこ)タル情操(じょうそう)ノ陶冶(とうや)
 清雅(せいが)ニシテ醇乎(じゅんこ)タル情操(じょうそう)ヲ陶冶(とうや)シ明朗闊達(めいろうかったつ)ナル性格(せいかく)ト高潔(こうけつ)ナル品位(ひんい)トヲ涵養(かんよう)セシム。
ニ、良(よ)キ躾(しつけ)
 子女(しじょ)ノ自発的(じはつてき)活動性(かつどうせい)ヲ徒(いたずら)ニ阻止(そし)スルコトナク自立自制(じりつじせい)ノ訓練(くんれん)ヲ加(くわ)ヘ日常生活(にちじょうせいかつ)ノ間(かん)自(おのず)カラ良習慣(りょうしゅうかん)ヲ修得(しゅうとく)セシム。就中(なかんずく)剛健(ごうけん)ナル国民(こくみん)ノ基礎(きそ)ニ培(つちか)フ為(ため)ニ勤労(きんろう)、節倹(せっけん)、忍苦(にんく)ノ精神(せいしん)ヲ涵養(かんよう)シ之(これ)ガ習慣(しゅうかん)ヲ養(やしな)ハシム。
ホ、身体(しんたい)ノ養護鍛錬(ようごたんれん)
 子女(しじょ)ノ身体(しんたい)ノ発育情況(はついくじょうきょう)、健康状態(けんこうじょうたい)ニ留意(りゅうい)シ、之(これ)ガ養護(ようご)ニ力(つと)ムルト共(とも)ニ、積極的(せっきょくてき)ナル鍛錬(たんれん)ヲ重(おも)ンジ、強健(きょうけん)ナル身体(しんたい)ノ中(うち)ニ雄渾(ゆうこん)ナル気魄(きはく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
 
【四、子女ノ薰陶擁護~奈良県立図書情報館版】
四、子女ノ薫陶養護
 子女ノ薫陶養護ハ家庭教育ノ中核ナリ、斯教育ハコヽニ重點ヲ置き父母慈愛ノ下、健全ナル家風ノ中ニ有爲ナル次代皇國民ノ鍊成ヲ為ル(金原注:「ル」は「ス」の誤記か)ベク、特ニ左記諸項ニ留意スルヲ要ス
イ、皇國民タルノ信念ノ啓培
 我ガ國體ノ萬邦無比ナル所以ヲ知ラシメ、皇恩ノ感謝ト共ニ日本人トシテ生ヲ享ケタルコトノ喜ビヲ體得セシメ以テ幼少ノ間ニ自カラ奉公ノ信念ヲ固カラシム
ロ、剛健ナル精神ノ鍛鍊
 盡忠報國、質實剛健、堅忍持久、勇往邁進ノ精神ヲ養ヒ、強固ナル意志ヲ鍛鍊シ、其ノ實踐力ヲ培養セシム
ハ、醇乎タル情操ノ陶冶
 健全ナル兒童文化ノ活用ニヨリ醇乎タル情操ヲ涵養シ明朗濶達ナル性格ヲ養ヒ豊カナル生命力ヲ培養セシム
ニ、良キ躾
 子女ノ自發的活動性ヲ活カシツヽ自立自制ノ訓練ヲ加ヘ、日常生活ノ間自カラ良習慣ヲ修得セシム 就中勤勞ノ精神ヲ尊重シコレガ習慣ヲ養フコトハ剛健ナル國民ノ基礎ヲ培フ意味ニ於テ特ニ意ヲ用ヰル要アリ
ホ、身體ノ養護鍛鍊
 子女ノ身體ノ發育情況、健康狀態ニ留意スルト共ニ積極的ナル鍛鍊ヲ重ンジ、強健ナル肉體ノ中ニ雄渾ナル氣魄ヲ培養セシム
 
四、子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)
 子女(しじょ)ノ薫陶養護(くんとうようご)ハ家庭教育(かていきょういく)ノ中核(ちゅうかく)ナリ、斯(かかる)教育(きょういく)ハコヽニ重點(じゅうてん)ヲ置(お)き父母(ふぼ)慈愛(じあい)ノ下(もと)、健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ中(うち)ニ有爲(ゆうい)ナル次代(じだい)皇國民(こうこくみん)ノ鍊成(れんせい)ヲ為(な)ル(金原注:「ル」は「ス」の誤記か)ベク、特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ニ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、皇國民(こうこくみん)タルノ信念(しんねん)ノ啓培(けいばい)
 我(わ)ガ國體(こくたい)ノ萬邦無比(ばんぽうむひ)ナル所以(ゆえん)ヲ知(し)ラシメ、皇恩(こうおん)ノ感謝(かんしゃ)ト共(とも)ニ、日本人(にっぽんじん)トシテ生(せい)ヲ享(う)ケタルコトノ喜(よろこ)ビヲ體得(たいとく)セシメ以テ(もって)幼少(ようしょう)ノ間(かん)ニ自(おのず)カラ奉公(ほうこう)ノ信念(しんねん)ヲ固(かた)カラシム。
ロ、剛健(ごうけん)ナル精神(せいしん)ノ鍛鍊(たんれん)
 盡忠報國(じんちゅうほうこく)、質實剛健(しつじつごうけん)、堅忍持久(けんにんじきゅう)、勇往邁進(ゆうおうまいしん)ノ精神(せいしん)ヲ養(やしな)ヒ、強固(きょうこ)ナル意志(いし)ヲ鍛鍊(たんれん)シ、其(そ)ノ實踐力(じっせんりょく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
ハ、醇乎(じゅんこ)タル情操(じょうそう)ノ陶冶(とうや)
 健全(けんぜん)ナル兒童文化(じどうぶんか)ノ活用(かつよう)ニヨリ醇乎(じゅんこ)タル情操(じょうそう)ヲ涵養(かんよう)シ、明朗濶達(めいろうかったつ)ナル性格(せいかく)ヲ養(やしな)ヒ豊(ゆた)カナル生命力(せいめいりょく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
ニ、良(よ)キ躾(しつけ)
 子女(しじょ)ノ自發的活動性(じはつてきかつどうせい)ヲ活(い)カシツヽ、自立自制(じりつじせい)ノ訓練(くんれん)ヲ加(くわ)ヘ、日常生活(にちじょうせいかつ)ノ間(かん)、自(おのず)カラ良習慣(りょうしゅうかん)ヲ修得(しゅうとく)セシム。 就中(なかんずく)勤勞(きんろう)ノ精神(せいしん)ヲ尊重(そんちょう)シ、コレガ習慣(しゅうかん)ヲ養(やしな)フコトハ剛健(ごうけん)ナル國民(こくみん)ノ基礎(きそ)ヲ培(つちか)フ意味(いみ)ニ於(おい)テ、特(とく)ニ意(い)ヲ用(もち)ヰル要(よう)アリ。
ホ、身體(しんたい)ノ養護鍛鍊(ようごたんれん)
 子女(しじょ)ノ身體(しんたい)ノ發育情況(はついくじょうきょう)、健康狀態(けんこうじょうたい)ニ留意(りゅうい)スルト共(とも)ニ、積極的(せっきょくてき)ナル鍛鍊(たんれん)ヲ重(おも)ンジ、強健(きょうけん)ナル肉體(にくたい)ノ中(うち)ニ雄渾(ゆうこん)ナル氣魄(きはく)ヲ培養(ばいよう)セシム。
 
(後編に続く)