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島田広弁護団長が語る「大飯原発訴訟控訴審現状報告」(13分)へのアクセス数を飛躍的に高めよう

 2017年8月22日配信(予定)のメルマガ金原.No.2912を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
島田広弁護団長が語る「大飯原発訴訟控訴審現状報告」(13分)へのアクセス数を飛躍的に高めよう
 
 私も登録しているあるメーリングリストに、「170820大飯原発訴訟控訴審現状報告「福島事故の反省はどこへ 崖っぷちの関電を救済する名古屋高裁金沢支部」」という約13分の動画(YouTubeにアップされています)を是非視聴して欲しいというアピールが流れてきました。
 すぐに視聴してみたところ、このビデオは、大飯原発福井訴訟弁護団団長の島田広弁護士(福井弁護士会)が、自ら訴訟の争点や審理の結果明らかになったことを分かりやすく解説し、訴訟への支援を訴えるというものでした。
 
170820大飯原発訴訟控訴審現状報告(12分59秒)

(冒頭及び末尾の部分を文字起こししました)
「皆さん。こんにちは。弁護士の島田です。大飯原発の運転差し止めを求める大飯原発福井訴訟の弁護団長です。今日は、今名古屋高裁金沢支部で進行している裁判がどうなっているかをお話します。ご存知のとおり、樋口判決は、多くの人々の命と生活とふるさとを奪い去ったあの福島第一原発事故の被害と向き合い、原発災害は、憲法上最も重要な価値を持つ人々の命と生活という人格権という権利の中核的部分を大規模に奪うものであり、その危険が万が一でもあれば、原発の運転を差し止めるのは当然と判断し、経済性優先、安全軽視の関西電力の姿勢を厳しく批判しました。」
(略)
「ここまで色々お話してきました。最後に私がどうしても皆さんにお伝えしたいことは、樋口判決を守る力が私たち一人一人の中にある、ということです。二度とフクシマを繰り返さないで欲しい、裁判所は住民の人権を守って欲しいという思い、皆さんがお持ちの当然の気持ちを、もう一度いろんな形で繋ぎながら、力を合わせようではありませんか。そして、真実から逃げ回り、不当に証拠調べを拒否してまで、関西電力に助け船を出すような今の不公正な裁判のやり方を改めさせ、樋口判決を守り抜きましょう。私からの報告とお願いは以上です。皆さん、お付き合いいただきありがとうございました。」
 
 以上の書き起こしでお分かりのとおり、現在、島田先生が弁護団長を務めておられる裁判は、2014年5月21日に、福井地方裁判所民事第2部(樋口英明裁判長)が言い渡した、大飯原発3、4号機の運転差止めを認めた画期的な判決(いわゆる「樋口判決」)の控訴審名古屋高等裁判所金沢支部)です。
 ここで、「樋口判決」のうち、人口に膾炙し、多くの人に感動を与えた部分を振り返っておきましょう。
 
(抜粋引用開始)
第4 当裁判所の判断
1 はじめに
 ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命,身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には,その被害の大きさ,程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。このことは,当然の社会的要請であるとともに,生存を基礎とする人格権が公法,私法を問わず,すべての法分野において,最高の価値を持つとされている以上,本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である。
 個人の生命,身体,精神及び生活に関する利益は,各人の人格に本質的なものであって,その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条,25条),また人の生命を基礎とするものであるがゆえに,我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。したがって,この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは,その侵害の理由,根拠,侵害者の過失の有無や差止めによって受ける不利益の大きさを問うことなく,人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できることになる。人格権は各個人に由来するものであるが,その侵害形態が多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき,その差止めの要請が強く働くのは理の当然である。
7 本件原発の現在の安全性と差止めの必要性について
 以上にみたように,国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると,本件原発に係る安全技術及び設備は,万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず,むしろ,確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
 前記4に摘示した事実からすると,本件原子炉及び本件使用済み核燃料プール内の使用済み核燃料の危険性は運転差止めによって直ちに消失するものではない。しかし,本件原子炉内の核燃料はその運転開始によって膨大なエネルギーを発出することになる一方,運転停止後においては時の経過に従って確実にエネルギーを失っていくのであって,時間単位の電源喪失で重大な事故に至るようなことはなくなり,破滅的な被害をもたらす可能性がある使用済み核燃料も時の経過に従って崩壊熱を失っていき,また運転停止によってその増加を防ぐことができる。そうすると,本件原子炉の運転差止めは上記具体的危険性を軽減する適切で有効な手段であると認められる。
 現在,新規制基準が策定され各地の原発で様々な施策が採られようとしているが,新規制基準には外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるまで強度を上げる,基準地震動を大幅に引き上げこれに合わせて設備の強度を高める工事を施工する,使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む等の措置は盛り込まれていない(別紙4参照)。したがって,被告の再稼動申請に基づき,5,6に摘示した問題点が解消されることがないまま新規制基準の審査を通過し本件原発が稼動に至る可能性がある。こうした場合,本件原発の安全技術及び設備の脆弱性は継続することとなる。
(略)
9 被告のその余の主張について
 他方,被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性,コストの低減につながると主張するが(第3の5),当裁判所は,極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり,その議論の当否を判断すること自体,法的には許されないことであると考えている。我が国における原子力発電への依存率等に照らすと,本件原発の稼動停止によって電力供給が停止し,これに伴なって人の生命,身体が危険にさらされるという因果の流れはこれを考慮する必要のない状況であるといえる。
 被告の主張においても,本件原発の稼動停止による不都合は電力供給の安定性,コストの問題にとどまっている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが,たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても,これを国富の流出や喪失というべきではなく,豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり,これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。
 また,被告は,原子力発電所の稼動がCO2(二酸化炭素)排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが(第3の6),原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって,福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害,環境汚染であることに照らすと,環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。
(引用終わり)
 
 なお、樋口裁判長は、福井地裁の部総括判事として、翌年(2015年)4月14日、高浜原発3号機、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を置き土産に(というか、この時点で既に転勤していましたが)名古屋家庭裁判所部総括判事として転勤していったのでした。
 これを「左遷」「飛ばされた」という評価が専らでしたが、それに異を唱える訳ではないものの、自分なりの考えをブログに書いたことがありました(年末雑感 「左遷人事」ということ/2015年12月31日)。
 調べてみると、その樋口裁判官も、今年の8月11日をもって定年退官されたようです。
 「ありがとうございました。」という御礼の言葉をお贈りしたいと思います。
 
 さて、控訴審名古屋高裁金沢支部)の状況です。
 島田広弁護団長の解説でも強調されていましたが、今年の4月24日に開かれた第11回口頭弁論において、島崎邦彦氏(東京大学名誉教授、前原子力規制委員会委員長代理)の画期的な(原告・被控訴人らにとって)証人尋問が行われたのでした。
 「福井から原発を止める裁判の会」ホームページの中の「大飯差止訴訟」のコーナーに訴訟関係資料が豊富に掲載されている中に、島崎邦彦氏の証人尋問調書がありました。
 これは貴重な証言の記録なので、時間を作ってじっくり読んでみたいと思います。
 
 なお、島崎証言については、脱原発弁護団国連絡会事務局長の只野靖弁護士が解説してくれている動画がありますのでご紹介しておきます。
 
そこが知りたい!脱原発裁判~大飯控訴審・島崎証言の意義(30分)

※上記レクチャー動画で使われたボードが読めます。
 
 ここで、島田広弁護団長による訴えに戻りましょう。
 「福井から原発を止める裁判の会」ホームページを閲覧していたら、島田弁護団長からのアピールの文書を見つけました。
 現在、毎月20日に行なわれている「高裁金沢支部 包囲行動」への参加・協力を呼びかけるものでした。
 
 
島崎証言を無視し,関電に助け船を出し,樋口判決を葬ろうとする裁判所に抗議を
~基準地震動は過小評価,安全審査は欠陥だらけ,なのに裁判所は審理打ち切り??~
 
(抜粋引用開始)
 ところが,大変残念なことに,内藤正之裁判長をはじめとした名古屋高裁金沢支部の裁判官らは,島崎証言には何ら関心を示さず,関西電力による地盤調査の杜撰さなど島崎氏の証言を裏付ける重要な事実に関する住民側の証人申請をすべて却下し,11月20日の口頭弁論期日で控訴審の審理を終結して樋口判決を葬り去ろうとしています。真実から目を背け,必要な証拠調べを打ち切って関西電力に助け船を出すような,不公正な裁判所に対し,住民側は同裁判官らの忌避を申し立てましたが,却下され,現在,最高裁に特別抗告中です。
 こうした裁判所の異常な動きは,決して金沢だけで起こっているのではありません。全国各地の裁判所で,行政追随を続けて福島原発事故を防げなかったことに対する「司法の責任」は忘れ去られ,規制委員会による問題だらけの安全審査をそのまま追認する,異常な裁判が続いています。そこには,行政に追随せず安全重視を貫いた樋口判決を敵視し,原発裁判を福島第一原発事故以前の「行政追随型」に戻そうとする最高裁の意図が働いています。
(引用終わり)
 
 ここまで読んできて(冒頭でご紹介した動画の原稿は、ほぼこのアピールを踏襲したものです)、弁護団長が自ら裁判の現状を解説する動画を作成して公開するという、前例があるのかどうかよく分からない珍しい行動に踏み切ったのも、上に引用した危機感がそうさせたのだということがよく分かりました。
 高裁も最高裁も、既にこの動画の存在に気がついて、毎日どれだけアクセスが伸びているかチェックしているかもしれません。
 8月19日に公開されてから4日目、総アクセス数は、私がこのブログの下書ををしている時点でまだ150にも達していませんでした。
 原発の廃絶を願う全ての市民が連帯し、声をかけ合い、この動画へのアクセス数を、最高裁の当局者が瞠目するほどのレベルまで押し上げましょう。
 ご協力をよろしくお願いします。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/島崎邦彦氏関連)
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