2017年10月13配信(予定)のメルマガ金原.No.2962を転載します。
「九条俳句」裁判、さいたま地裁が画期的判決~思想・信条を理由とした公民館誌への掲載拒否と認定
今日(10月13日)も、午後6時過ぎまで大阪市での会議に出席していたため、事務所に戻ったのは8時を回っており、このところいつもそうですが、「今日のブログ、どうしよう?」と思いながらネタ探しを始めました。
すると、とても嬉しい判決が、さいたま地方裁判所第6民事部(合議係)で言い渡されたというニュースに接しました。
朝日新聞デジタル 2017年10月13日20時00分
「九条守れ」俳句訴訟、掲載拒否は「不公正」 地裁判決
(抜粋引用開始)
集団的自衛権の行使容認に反対するデモについて詠んだ俳句を「公民館だより」に掲載することを拒まれたのは、憲法が保障する表現の自由などに反するとして、作者のさいたま市の女性(77)が、公民館を所管する市に慰謝料を求めた訴訟の判決が13日、さいたま地裁で言い渡された。大野和明裁判長は公民館側が「思想や信条を理由として掲載しないという不公正な扱いをした」などとして原告の訴えを一部認め、市に5万円の支払いを命じた。
(略)
■事案の概要
14年6月の句会で、女性が詠んだ「梅雨空に 『九条守れ』の 女性デモ」が特選となった。東京・銀座であった、集団的自衛権の行使容認に反対するデモに加わったのをきっかけに詠まれた俳句だった。
句会の翌日、公民館の職員から「世論を二分するテーマで、公民館だよりには掲載できない。代わりの句を提出できないか」と提案があり、句会の代表代行は断った。
女性も公民館に電話したが、この職員が掲載できないことを伝えた。公民館は同年7月、掲載できない理由を、さいたま市の職員でもある館長名義の文書で「公民館は特定の政党の利害に関する事業は禁止している。世論が大きく分かれているものは広告掲載を行わない」と説明した。
ただ、公民館は同年12月、この点を訂正し、「公平中立の立場であるべきだとの観点で、掲載は好ましくないと判断した」とする文書を改めて作成した。
■地裁の判断
公民館は句会が提出した秀句を3年8カ月にわたり公民館だよりに掲載しており、女性が自分の俳句が公民館だよりに掲載されると期待するのは当然だ。この期待は、思想の自由、表現の自由が基本的人権として憲法が保障しているのに照らせば、法的保護に値する人格的利益だ。
被告のさいたま市は、俳句の掲載は中立性に反しており、掲載しなかったことには正当な理由がある、と主張する。ただ、掲載によって公民館がクレームを受ける可能性はあっても、句会の名称や作者名も明示されるため、公民館が俳句と同じ立場とみられることは考えがたい。
掲載を見送った経緯をみると、判断根拠を示した文書を変更するなど場当たり的説明で、十分な検討が行われた形跡がない。公民館が俳句を掲載しなかったことに正当な理由があったとはいえない。職員らは、女性が「憲法9条は集団的自衛権の行使を容認するものと解釈すべきでない」との思想や信条を持っていると認識し、これを理由に不公正な取り扱いをしたというべきだ。
職員らが十分に検討しなかったのは、職員らが小学校や中学校の元教員で、国旗(日の丸)・国歌(君が代)の議論など、憲法に関連する意見の対立を目の当たりにし、辟易(へきえき)し、一種の「憲法アレルギー」に陥っていたと推認される。
(引用終わり)
「九条俳句」市民応援団ホームページには、訴状以下の訴訟関係資料が掲載されており、いずれ判決についても掲載されると思いますが、今晩確認した時点ではまだ今日の判決結果もアップされていませんでした。
また、世間の耳目を集める判決については、地裁のそれであっても、裁判所ホームページに掲載されることが多いのですが、通常、掲載されるまで何日間かかかります。
この「九条俳句」だけではなく、従来なら問題にもならなかった平和運動、護憲運動が、「政治的である」という非常に「政治的な」レッテルを貼られ、不利益な取扱を行政などから受けるという事例が全国各地で起きており、そのような事態は、私自身の周辺でも見聞きするようになってきています(今年の夏など、場合によっては仮処分の提起が必要か?と考えて、この「九条俳句」裁判の訴状をざっと読んだりしたものでした。事例は相当に違うものだったし、結局、仮処分の必要はなくなったのですが)。
そのような意味から、行政が「公平中立」という隠れ蓑の陰に隠れて、実質的な「忖度」主義、「事なかれ」主義に流れることを戒める、非常に有意義な判決だと思います。
勇気をもって提訴に踏み切った「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の作者、訴訟を勝利に導いた弁護団の皆さん、訴訟関係者を支え続けた市民応援団の皆さんに心より敬意を表します。
是非、この判決についての知識を多くの市民が共有できるよう、私も勉強しなければと思います。
※「訴状」(平成27年6月25日)