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中村哲さん「KYOTO地球環境の殿堂」入り記念講演(2/11)と「20年継続体制」に向けて

 2017年11月18配信(予定)のメルマガ金原.No.2990を転載します。
 
中村哲さん「KYOTO地球環境の殿堂」入り記念講演(2/11)と「20年継続体制」に向けて
 
 国立京都国際会館で開催されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)において、いわゆる「京都議定書」が採択されてから今年がちょうど20年となる節目の年を迎えました。「京都議定書誕生20周年記念 地球環境京都会議(KYOTO+20)」(主催:京都市)が12月10日に開催されると告知されていますが、とても全国的な話題になっているようには思えませんね。
 
 その会議が開かれた国立京都国際会館内に、「KYOTO地球環境の殿堂」入りされた方々の肖像写真を展示してその名誉を讃えるコーナーがあるそうです(私はまだ拝見したことはありませんが)。
 「KYOTO地球環境の殿堂」とは、ホームページによると、「世界で地球環境の保全に多大な貢献をされた方々の功績を讃え、永く後世に伝えるために、KYOTO地球環境の殿堂運営協議会(構成団体:京都府京都市京都商工会議所環境省大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所、公益財団法人国際高等研究所、公益財団法人国立京都国際会館)により、2010年に創設されたもの」であり、「本殿堂を拠点として、人類の未来を守るという京都議定書の精神を、京都から世界に広く発信し、地球環境問題の解決に向けたあらゆる国、地域、人々の意志の共有と取組の推進に資することを目的として」いるとのことです。
 
 なぜ「KYOTO地球環境の殿堂」をご紹介したかというと、昨年(2016年)10月に発表された「KYOTO地球環境の殿堂」第8回殿堂入り者3人の中に、中村哲医師も含まれており、今年2月11日に京都国際会館で開かれた表彰式及び「京都環境文化学術フォーラム」国際シンポジウムにおいて、同医師が行った記念講演(32分)の動画が視聴できることに気がついたからです。
 ちなみに、第8回殿堂入り者3人は、以下の方々でした。オギュスタン・ベルク教授と中村哲医師による2月11日に行われた記念講演及びホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダノ前ウルグアイ大統領のビデオメッセージと併せてご紹介します。
 
(引用開始)
オギュスタン・ベルクAugustin Berque)氏 1942年生 フランス
【フランス国立社会科学高等研究院 教授】
 モロッコ・ラバト生まれ。パリ大学にて、地理学と中国語を学び、1969年に地理学の博士号、1977年にはパリ第4大学で文学の博士号を取得する。地理学者、東洋学者として、1979年よりフランス社会科学高等研究院教授を務めている。
 1969年に初来日して以来、北海道大学講師、東北大学客員研究員、日仏会館フランス学長、宮城大学教授、国際日本文化研究センター客員研究員などとして、通算17年以上滞在し、日本の文化や風土への造詣を深め、フランスにおける日本理解に大きく貢献している。和辻哲郎の『風土』を深く読み込み、人間が自然の中に刻み込まれ、両者の関係が風土そのものであるという、地理学と存在論を融合した通態的風土論を提起し、独自の「風土学」を構築した。
※記念講演(30分)
 
ホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダノ(José Alberto Mujica Cordano)氏 1935年生 ウルグアイ
【前ウルグアイ大統領】
 ウルグアイの前大統領(2010年3月1日より2015年2月末まで)。大統領時代の月給の9割を慈善団体に寄附し、その質素な暮らしから「世界で最も貧しい(質素な)大統領」として知られている。
 2012年ブラジルのリオデジャネイロで開かれた「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)において、貧富の格差が広がり貧困が大きな問題となっている現代のグローバリズム、消費主義社会、物質主義社会に対して疑問を呈し、我々自身の生活スタイルを見直すべきだとしたスピーチにより、世界から注目を浴びる。
※ビデオメッセージ(8分50秒)
 
中村 哲(Nakamura Tetsu)氏 1946年生 日本
【医師、ペシャワール会 現地代表、PMS(ピース・ジャパン・メディカル・サービス) 総院長】
 福岡県生まれ。九州大学医学部卒。専門は神経内科(現地では内科・外科もこなす)。
国内の病院勤務を経て、1984年にパキスタン北西辺境州(現:カイバル・パクトゥン・クワ州)の州都ペシャワールに赴任する。パキスタンカイバル・パクトゥン・クワ州でハンセン病の診療をはじめアフガニスタン難民や貧困層の診療に携わる。1989年よりアフガニスタン国内、東部山岳医療過疎地での診療活動を開始する。2000年に顕在化したアフガニスタンの大旱魃で栄養失調、腸内感染症などが急増したことから、水利事業に着手する。アフガニスタンの農村復興に携わり現在に至る。
※記念講演(32分)
(引用終わり)
 
 中村哲医師が、アフガニスタンで実施してきた「緑の大地計画」の背景として、気候変動(中村先生は「気候変化(Climate Change)」という用語を使われていますが)による砂漠化の急激な進行があったということは、上記記念講演(特に終わりの方)でも言及されていますし、各地で行われている講演でも強調されていることだと思います。
 
 ところで、中村哲先生によるアフガニスタン報告の詳細は、ペシャワール会ホームページに順次掲載されています。
 特に詳しいのは、「中村医師から日々事務局に送信されてくる写真付きメールを紹介」しているコーナーですが、「ホームページ上に掲載できるのは、メールを受信して数ヶ月後」になるとのことで、実際、現時点では2016年12月26日付の報告分までがアップされています。
 この他に、年に4回発行される「ペシャワール会報」の内、巻頭の中村哲医師による報告はホームページでPDFが読めるようにされています。
 今年の6月28日発行の132号に掲載された中村先生の「「20年継続体制」に向けて日本側の支援強化を。2016年度現地事業報告」を是非皆さまにもお読みいただきたいと思います。
 その中から、「20年継続体制」の一部とまとめの部分を引用します。「緑の大地計画」の将来にどう道筋を付けるかということに真剣に取り組まれていることがうかががえると思います。
 
(引用開始)
 PMSでは、今後2020年までに地域の安定灌漑を実現すると共に、次の展開を見据えて維持体制の確立を図る。このため、16年3月にガンベリ試験農場の貸与契約を20年として、アフガン政府と協約を結んだ。
 次の20年間(2036年まで)に新たな展開を予測し、これに備えるためである。見通しがつかない政情の中で、いつでも変化に即応できる体制をとり、水利施設=地域の護りを固める。こうして農村社会に土着化し、維持の上で予期せぬ事態に備え、将来的に「モデル」としての役割を発揮する。広域展開に際して、これが不可欠の基礎だと思われる。
 日本ペシャワール会側も既にPMS・Japan(PMS支援室)を設置、この動きに強化を図り、長期継続体制を目指すに至った。
(略)
2016年度を振り返って
 ゆく者は斯くの如しか。昼夜をおかず。
 ペシャワール赴任から33年が経ちました。歳をとったせいか、川の流れを見ながら、この間の出来事を夢のように思い返すことが多くなってきました。多くの友人や仲間、先輩たちも他界し、ここまで生き延びて事業が続いていることを奇跡のように感じています。 最近アフガニスタンの報道が絶え、偶に日本に伝わるのは爆破事件、テロ、誤爆や難民など、恐ろしいことや悲しいことばかりです。いつの間にか「テロ」という言葉が人々の頭脳に定着し、対テロと言えば何でも正当化できるような錯覚が流布しています。しかし、今世界が脅えるテロの恐怖は、16年前の2001年、「アフガン報復爆撃」に始まりました。
 あの時が分岐点でした。飢餓に苦しむ瀕死の小国に対し、世界中の強国が集まってとどめを刺しました。無論、罪のない大勢のアフガン人が死にました。そして「二次被害」の一言で、おびただしい犠牲は「仕方ない」とされました。まるで魔女狩りのようにテロリスト狩りが横行し、どんな残虐な仕打ちも黙認されました。平和を求める声も冷たい視線を浴び、武力が現実的解決であるかのような論調が横行しました。
 分明は倫理的な歯止めを失い、弱い立場の者を大勢で虐待することが世界中で流行り始めたのです。別の道は本当になかったのでしょうか。
 他方、干ばつと飢餓はやまず、多くの人々が依然として飢餓と貧困にあえいでいます。
 アフガニスタンで起きた出来事から今の世界を眺めるとき、世界は末期的状態にさしかかっているようにさえ見えます。無差別の暴力は過去の自分たちの姿です。敵は外にあるのではありません。私たちの中に潜む欲望や偏見、残虐性が束になるとき、正気を持つ個人が消え、主語のない狂気と臆病が力を振るうことを見てきました。
 このような状況だからこそ、人と人、人と自然の和解を訴え、私たちの事業も営々と続けられます。ここは祈りを込め、道を探る以外にありません。祈りがその通りに実現するとは限りませんが、それで正気と人間らしさを保つことはできます。
 そして、この祈りを共有する多くの日本人とアフガン人の手で事業が支えられてきたこと、そのことに救いを見るような気がしています。
 今また20年継続体制を打ち出し、事業を次の代に引き継ぐ時がやってきました。この良心の絆を絶やさず、最後の体当たりのつもりで臨みたいと考えています。これまでの温かいご関心に感謝し、ご協力を切にお願い申し上げます。
(引用終わり)
 
 なお、2月11日の「京都環境文化学術フォーラム」国際シンポジウムでの記念講演は、30分余という限られた時間しかなかったためにはしょられた部分もあったようです。
 そこで、このブログでも既に紹介済みですが、昨年の8月に日本記者クラブで行われた講演の動画も再掲しておきます。
 
中村哲 ペシャワール会現地代表 2016.8.26(1時間17分)
 
(参考 和歌山市で行われて私も参加した中村哲医師による過去3回の講演会)
2005年12月1日 和歌山市民会館小ホール
 「氷河の流れのように~憲法9条に守られて~」
 主催:9条ネットわかやま創立総会実行委員会
2008年4月19日 和歌山市民会館市民ホール
 「中村哲医師講演会 アフガン最前線報告」
 主催:和歌山県平和フォーラム
2010年10月29日 和歌山市民会館小ホール
 「アフガン最前線報告~アジアの同朋としての同じ目の高さをもって~」
 主催:9条ネットわかやま、憲法9条を守る和歌山弁護士の会
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/中村哲氏関連)
2016年9月13日
再放送を見逃すな!~『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲アフガニスタン~』と『沖縄 空白の1年~“基地の島”はこうして生まれた~』
2017年3月30日
「緑の大地計画」のこれまでとこれから~中村哲さん、日本記者クラブで語る(2016年8月26日)