2017年11月22日配信(予定)のメルマガ金原.No.2994を転載します。
昨日(11月21日)午後6時30分から、和歌山市あいあいセンター6階ホールにおいて、憲法9条を守る和歌山弁護士の会がリレートーク「自民党・改憲4項目の検証」を開催しました。既に本ブログでも、2度にわたって事前告知をしているところですが、参加できなかった方にも是非参考にしていただければと考え、小谷英治さんに、動画の収録とYouTubeへのアップをお願いしました。小谷さんは、既に昨晩のうちに動画をアップしてくださっていますので、この動画と併せ、4人の弁士(当日用意された「めくり」にそう書かれていました)が準備したレジュメを掲載することによって、リレートークの報告に代えたいと思います。
ただ、動画を見ていただく上で一つお断りとお詫びをしておかなければならないことがあります。それは、第4トーク「国民投票をみすえたこれからの運動」の中で、藤井幹雄弁護士が、自民党「日本国憲法改正草案」第53条に言及した際、どれだけの期間内に臨時国会が召集されなければならないとしているのかにつきど忘れしたため、演台近くにいた私が指を2本立ててサインを送り、「2週間」だとアドバイスした件です。
これは後の質疑応答の際に阪本康文弁護士から指摘があったとおり、正しくは「20日」なのです。私自身、「2週間」と言ったものの、間違っているかもしれないという不安はあったのですが、あいにくスマホなど持たない主義(という大層なものではありませんが)であったためその場で確認できませんでした。
現行規定
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
いずれにせよ、藤井弁護士が自民党改憲案53条に言及したのは、2015年、2017年と、野党が憲法53条に基づいて臨時国会召集決定を要求したにもかかわらず、憲法に「いつまでに」と書いていないことをよいことに、ぬけぬけと無視を決め込んだ安倍政権のような振る舞いを二度と許さぬために、自民党改憲案のような(!)「立憲的改憲」を行うという「改憲」もあるのだから、「改憲」とか「改憲派」とかいう言葉によって安易にレッテル貼りをし、本来なら共闘できる者をわざわざ「あちら側」に押しやる(排除する)愚は避けねばならない、ということだと思います(藤井先生、これでいいですよね?)。
冒頭~ 司会 伊藤あすみ弁護士
0分~ 開会挨拶 山﨑和友弁護士(代表世話人)
31分~ 第2トーク「緊急事態条項」 浅野喜彦弁護士
1時間41分~ 質疑応答
1時間52分~ 閉会挨拶 豊田泰史弁護士(代表世話人)
レジュメPDFファイル
2017年11月21日(あいあいセンター6Fホール)
主催 憲法9条を守る和歌山弁護士の会
[目次]
第2トーク 緊急事態条項 弁護士 浅野 喜彦
1 自衛隊明記(9条加憲論)とは?
(1)安倍首相の提起した自衛隊明記論
「9条については,平和主義の理念はこれからも堅持していく。そこで,例えば,1項,2項を残し,その上で,自衛隊の記述を書き加える。そういう考え方もある中で,現実的に私たちの責任を果たしていく道を考えるべきだ。」「自衛隊を合憲化することが使命ではないかと思う。」
(2)国民の自衛隊に対する評価
A 認められると思う 62
どちらともいえない 22
認められないと思う 11
わからない・無回答 5
Q 自衛隊に求める役割(複数回答)
A 人命救助や災害復旧 90
テロの防止,対策 63
他国からの侵略や攻撃に対する防衛 62
国連平和維持活動(PKO)への参加 47
同盟国と共同で行動すること 33
自衛隊の存在は認めない 0
9条の2 前条の規定は,我が国を防衛するための必要最小限度の実行組織として自衛隊を設けさせることを妨げるものと解釈してはならない。
2 憲法9条1項,2項について
(1)9条1項「国際紛争を解決する手段としては」の意味
①戦力・武力の行使が「国際紛争を解決する手段として」行われるのは当然のことで,特に意味は無い…あらゆる戦争・武力の行使が第1項により放棄(全面 的放棄説)
(2)9条2項前段「前項の目的を達するため」の戦力の不保持の意味
①「保持しない」のは「侵略のための戦力」にとどまり「自衛のための戦力」は保持できる(限定不保持説)
②「国際平和を誠実に希求する」という1項全体の目的を指す=その文言どおり「一切の戦力」もたない(全面不保持説・政府見解)
(3)9条2項後段「交戦権の否認」の意味
①およそ戦争をする権能の否認
②交戦国に認められた国際法上有する権利の否認(政府見解)
(4)政府見解のまとめ
9条1項について自衛のための戦争等は放棄されていないとする限定放棄説をとり,2項について全面的に戦力を持たないとする結果,自衛のための戦争,武力の行使が不可能になるとの見解
3 自衛隊の合憲性
・要件
①我が国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が発生
②これを排除するために他の適当な手段がない場合に限り
③我が国に対する武力攻撃を排除するために必要最小限度にとどまる
・根拠
⇒「自衛のための必要最小限度の実力」は,憲法9条2項前段により禁止された「戦力」にあたらない
⇒これまでの政府解釈とは整合するが…
(2)平成26年7月1日「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定)
・要件
①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由,及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
②これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るための他に適当な手段がない場合に限り
③必要最小限度の範囲で
・安保法制型自衛隊
・7月1日閣議決定に基づく安保法制で付与された任務・権限
②重要影響事態や国際平和共同対処事態において外国軍隊と一体化したといえる範囲まで後方支援活動(協力支援活動)を拡大
③国際平和維持活動(PKO)等に従事する自衛隊に駆けつけ警護等の新たな任務遂行のための武器使用権限を付与
④艦船・航空機を含む米軍等外国軍隊への武器等防護のための武器使用を自衛官に認めたこと
4 自衛隊への統制(9条の2 2項)
現行自衛隊法7条の規定とかわらない。
⇒一般行政作用との相違は?
⇒①のもとでも,自衛隊の行動範囲が拡大。
今後さらに拡大することに⇒空文化。歯止めがなくなる危険。
(「自衛隊」規定の解釈のために,さらに9条1項,2項の解釈を非制限的なものに変更する可能性もありうる)
(2)どのような「自衛隊」を求めるのか?
条文案であれば,安保法制型自衛隊を追認することになる。
あえて加憲するとすると,制限をかける必要があるが…。
②安保法制型自衛隊
条文案であれば,あえて記載する実質的な意味は無い。
むしろ解釈が広がる可能性。
③自衛軍
不十分
(3)「我が国を防衛するための必要最小限度」は制限根拠となるか
6 まとめ
国民が求める「自衛隊」とはどのようなものか。
明記することで,非武力による平和と反対を指向する。
<条文>
第2章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第9条の2 前条の規定は,我が国を防衛するための必要最小限度の実行組織として自衛隊を設けさせることを妨げるものと解釈してはならない。
自衛隊法(昭和29年6月9日法律第165号)
(自衛隊の任務)
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及 び安全の確保に資する活動
二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を 通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
(※2項は,平成18年法律第118号で追加された)
第二章 指揮監督
(内閣総理大臣の指揮監督権)
第二章 安全保障
(平和主義)
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
(国防軍)
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
第2トーク「緊急事態条項」 弁護士 浅野 喜彦
第1 緊急事態論の根拠=国家緊急権
1 国家緊急権とは何か
内容
①立憲主義の一時的停止
②人権の制限
③権力の集中
どうして国家緊急権が必要とされるのか
・国家の自然法的権利という考え方
行使の方法
・憲法そのものに根拠規定を創設する方法
2 濫用事例
戦前の明治憲法
3 日本国憲法に国家緊急権条項を設けなかった理由
過去の反省からあえて外した
徹底的な平和主義を採ることとの調和
4 国家緊急権条項を設置する際の注意点
①必要性の有無
立憲主義を停止しなければ対処できないような状況か
憲法の改変まで必要なのか、法律でも対処できるのではないか
②濫用防止措置は十分か
国会・国民はどのように関与するのか
緊急権の期間や内容は
秘密保護法など他の制度との相互作用
第2 改憲4項目の1つ:緊急事態「対応」
・その内容は
今のところはっきりしない
・現時点ではどのように考えるべきか
第3 自民党草案における緊急事態「条項」
1 対象となる緊急事態
1)外部からの武力攻撃
2)内乱等による社会秩序の混乱
テロリズムはここに含まれる
3)大規模な自然災害
全国的な防災気運の高まりを意識
4)その他の法律で定める緊急事態
2 緊急事態宣言の手続要件
1)包括委任
「内閣総理大臣は、(中略)特に必要があると認めるときは」
「法律の定めるところにより、閣議にかけて」
2)国会の承認
「事前または事後に」
判断材料が特定秘密に指定されるおそれ
3)期間
100日ごとの更新は必要だが、期間自体には上限がない
3 緊急事態宣言の効果
国会(国民)の立法権を取り上げる規定
民主的基盤の弱い内閣が立法権を取得
事後に国会の承認が必要だが、不承認となった場合の失効規定はない
2)国等の指示に従う国民の義務
努力義務ではない=強制をともなう
「基本的人権に関する規定は、最大限に尊重」されるが・・・
自民党Q&Aにいう「小さな人権」とは
3)議会の延期・議員の任期延長
必要性の問題
恣意的な利用のおそれ
第1 教育無償化について
(1)幼児教育の無償化
・3歳から5歳までの完全無償化
・低所得世帯の0歳から2歳児の無償化
※消費税10%の引き上げによる財源を活用
(2)高等教育の無償化
・大学授業料の高騰→低所得世帯の子供が教育を受けにくくなっている
・安倍首相「高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものにしなければならない」
2 現行の憲法26条
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」(1項)
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。」(2項)
(1)子どもの教育を受ける権利(子どもの学習権)
→親・親権者:子どもに教育を受けさせる責務
→国:教育制度を維持し、教育条件を整備すべき義務(社会権)
(2)「義務教育は、これを無償とする」
※小中学校の授業料不徴収(最大判昭39.2.26)
(3)「法律の定めるところにより」(憲法26条1項、2項)
→教育基本法、学校教育法等
3 教育無償化のために憲法改正は必要か
民主党政権は法律により高校授業料の無償化を実現
※当時の自民党は「理念なき選挙目当てのバラマキ政策」と批判
→「法律の定めるところにより」教育制度の整備は可能
第2 参議院の合区解消について
(1)現行憲法47条
「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」
→たたき台(追加)
「各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。」「参議院議員の全部または一部については、改選ごとに各広域的な地方公共団体の区域から少なくとも一人が選出されるよう定めなければならない。」
(2)現行憲法92条
→たたき台(追加)
3 合区解消のために憲法改正は必要か
・地域代表としての性格をもつ参議院?地方の声が国政から失われる?
→憲法43条「全国民を代表する選挙された議員」
・「選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」(憲法47条)
→改憲のシナリオ作りか
第1 はじめに
→宣戦布告
第2 今後の運動の視点:共闘か排除か。今回の総選挙の経過、結果が示唆を与えてい る。
1 ひとくくりに「改憲」と言ってもさまざま
9条改憲
緊急事態条項創設
高等教育無償化
参議院合区解消
知る権利・環境に関する規定追加
内閣(首相)の解散権制限案
その他統治機構の規定の改正
2 9条に改正についての考え方もさまざま
安倍自衛隊明記案
護憲的改正案(自衛隊の活動の限界を明記)
第3 国民投票に向けて
国会発議から60~180日で国民投票
1 国会発議までの我々の活動
平和を希求する市民と幅広い連帯を!
一括しての国民投票にさせない。
国会議員への働きかけ
2 国会発議後国民投票までの活動
公職選挙法のような制限はない。
テレビ新聞広告にも規制がない。→財力の差をどう埋めるか。
組合・サークルの機関誌で、SNSで、サウンドデモで、そして戸別訪問で、呼びかけることが可能
金がなくても、「人」がいる。いろんな考え方の人との連帯を!
<条文>
日本国憲法の改正手続に関する法律
(国民投票の期日)
第二条 国民投票は、国会が憲法改正を発議した日(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第六十八条の五第一項の規定により国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正の発議をし、国民に提案したものとされる日をいう。第百条の二において同じ。)から起算して六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行う。
○2 略
○3 略
(投票日前の国民投票運動のための広告放送の制限)
第百五条 何人も、国民投票の期日前十四日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、次条の規定による場合を除くほか、放送事業者の放送設備を使用して、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることができない。
(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
2017年6月16日
2017年6月22日
2017年6月27日
2017年6月30日
立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む
2017年7月9日
2017年7月12日
2017年7月18日
2017年7月20日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」発表記者会見(6/26)
2017年7月26日
2017年7月31日
2017年8月2日
2017年8月9日
2017年8月23日
2017年9月5日
2017年9月9日
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9.8 キック・オフ集会大成功~3000万人署名活動スタート!
2017年9月13日
2017年9月14日
2017年9月15日
2017年9月18日
2017年10月11日
2017年10月17日
憲法(特に9条)についての各党「公約」比較~とても分かりやすくなっていた
2017年10月22日
2017年10月23日
2017年10月26日
2017年10月28日
2017年10月29日
地域からの結集を!~「9条改憲NO!全国市民アクション・国立」の「キックオフ集会inくにたち」を視聴する
2017年10月31日
2017年11月4日
2017年11月6日
2017年11月7日
2017年11月8日
2017年11月10日