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原子力市民委員会が『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』を発表~過去の蓄積にも注目しよう

 2017年12月27日配信(予定)のメルマガ金原.No.3029を転載します。
 
原子力市民委員会が『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』を発表~過去の蓄積にも注目しよう
 
 3.11東京電力福島第一原子力発電所事故から2年余りが経過した2013年4月15日、民間の有識者が集まり、「原子力市民委員会」が設立されました。
 設立趣意書の一部を引用します。
 
(引用開始)
 脱原発社会建設のための具体的道筋について、公共政策上の提案を行うための専門的組織として「原子力市民委員会」を設立することとした。1956年に設立された政府の「原子力委員会」をはじめ、原子力政策に関与する政府の諸組織(原子力規制委員会経済産業省総合資源エネルギー調査会、復興庁など)に対抗する組織として、脱原発へ向けた原子力政策改革の具体的方針を提案すること、およびそのために必要な調査研究を行い、その成果を公開することが目的である。
(略)
 政府の原子力委員会は、最重要の政策文書として「原子力政策大綱」を定め、それ以外にも多くの専門部会等を設置し、問題別の報告書を発表してきた。また随時、委員会としての見解・声明を発表してきた。
 原子力市民委員会は、それに対抗した政策提言活動を進めていきたい。その最重要の報告書となるのは「脱原子力政策大綱」である。設立1周年を目処に、第1回の脱原子力政策大綱を公表したい。基本的には毎年、改訂を加えていく予定である。参加者たちの間で意見の一致がみられない論点については、複数案についてそれぞれ長所・短所を明記して、並記する。無理に一本化する必要はない。また、脱原子力政策大綱以外にも、重要度の高いテーマについて各論的な報告書を随時まとめる。急を要する重要問題については適宜、見解・声明を発表する。
(略)
 この市民委員会は、認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金(略称:高木基金)の特別事業として設立され、同基金からの助成を主たる財源として運営される。
(略)
 脱原発は一朝一夕には実現できない。ドイツでもシュレーダー政権下で脱原発合意(2000年)ができてから、メルケル政権による脱原発決定(2011年)まで11年の歳月を要した。この間、前進局面もあれば後退局面もあった。日本でも同様の経過は避けられないだろう。また脱原発には一定の痛みが伴う。脱原発が実現してからも長期にわたり、私たちは原子力負の遺産の返済に追われ続けるだろう。それでも脱原発の道筋をつけることにより、よりよい未来を孫子の代に手渡すことができる。日本の脱原発を願う全ての人々の参加を期待する。
(引用終わり)
 
 巻末のリンク一覧をご覧いただければお分かりのとおり、私もこれまで何度か原子力市民委員会の活動をブログで取り上げてきましたが、散発的であったことは否めません。
 たまたま、一昨日(12月25日)、原子力市民委員会が『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』を公表し、そのための記者会見を開いたということを知ったのを機に、これまでの原子力市民委員会の活動の成果として公表されてきた報告書などを、まとめてご紹介することにしました。
 
 まず、一昨日公表された『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』の「はじめに」の全文を、少し長くなりますが、全文引用します。これによって、これまでの原子力市民委員会の活動の概要がご理解いただけると思うからです。
 
(引用開始)
 原子力市民委員会は、脱原発社会の実現に向けて最善の道筋をつけるための公共政策を提言する専門的組織として、2013年4月に設立され、調査、分析および公論形成活動を進めてきた。設立にあたっての状況認識と活動姿勢について述べた「原子力市民委員会 設立趣意書」を本書巻末に再録したので、ご参照いただきたい(☞ pp.295-296)。
 設立後1年間の研究と討議、そして各地で開催した意見交換会をふまえ、原子力市民委員会は2014年4月に『原発ゼロ社会への道 ─ 市民がつくる脱原子力政策大綱』(以下、「大綱 2014」と略記)を発表した。本書『原発ゼロ社会への道 2017 ─ 脱原子力政策の実現のために』は、大綱 2014の続篇であり、展開である。その意味で「大綱 2017」ではあるのだが、大綱 2014 が脱原発政策の大きな青写真を示すべく、理念・倫理・原理を説明しつつ、あるべき制度や組織を大胆に提案したのに対し、本書では、現状の批判的分析により深く踏み込んで記述している。その意味では、あまり「政策大綱」らしくない。しかし、本書での記述・分析を通じて、脱原発を妨げる要因が具体的に把握され、脱原発にむけた政策転換のための急所が明らかになるだろう。
 私たちが提示する脱原子力政策の骨組みは、大綱 2014 から大きな変更は無い。東京電力福島第一原発事故のもたらした被害の現実に向き合うこと、事故の後始末に長期的な視点を取り入れること、核廃棄物の全体像をふまえた対処を考えること、エネルギー転換と地域経済転換を軸に脱原発のロードマップ(行程表)を描くこと、そして何よりも民主主義と道理性をふまえた議論のプロセスを重んずること、などがその骨格である。これらの検討を通じ、脱原発こそが倫理・経済・技術・環境のすべての面で合理的かつ現実的な選択であることを示していく。
 読者には、ぜひ大綱 2014 と本書をあわせて読んでいただきたいが、本書を先に読まれる方のために、各章の最初に「総説」を置き、2014 年時点での主な論点を振り返り、それ以降の私たちの研究や議論がどのように展開してきたかを簡潔に示すようにした。章の構成は 2014 年版のそれを踏襲している。新しく設置を提案する組織や制度の名称(仮称)に〈 〉をつけて示したのも2014 年版と同様である。
 原子力市民委員会では、大綱 2014を発表した翌年と翌々年に、それぞれ年次報告書を刊行して、原子力政策・エネルギー政策の現状と東電事故の被害対策・被害者支援および事故炉への対処の課題について問題提起を重ねてきた。年次報告 2015では「原子力発電復活政策の現状と今後の展望」と題して、政府が進める原発復活政策(というよりは原発延命政策)について詳細かつ批判的に分析した。年次報告 2016では、「ますます無理を重ねる原子力政策とその歪み」と題して、政府が原発延命に無理を重ねることによって、経済・財政・安全規制・エネルギー政策・被害者支援・復興政策など、さまざまな面で深刻な歪み(ゆがみ・ひずみ)が生じてきている実態を明らかにした。これら年次報告書で示した論点は、より実証的なかたちで本書に反映されている。
 また、原子力市民委員会では、4つの部会(☞ p.297)で調査と討議を進める一方、いくつかの重点テーマについてプロジェクトチームを編成し、特別レポートをまとめてきた。
 特別レポート1『100年以上隔離保管後の「後始末」』(2015年6月刊;改訂版2017年11 月刊)
 特別レポート2『核廃棄物管理・処分政策のあり方』(2015年12月刊)
 特別レポート3『「人間の復興」に必要な医療と健康支援とは?』(2016年11月刊)
 特別レポート4『原発立地地域から原発ゼロ地域への転換』(2017年4月刊)
 特別レポート5『原発の安全基準はどうあるべきか』(2017年12月刊)
これら特別レポートの成果も本書に反映されている。しかし、調査と提言をして終わりということではない。これらの知見をもとに、異なる価値観や経験をもつ幅広い人々が議論に参加する機会を提供すること、それを脱原発に向けた公論の形成と政策転換につなげていくことが原子力市民委員会の任務である。今後、本書や特別レポートを「叩き台」に各地での公開フォーラムや意見交換会を開催していく。多くの方々の参加を呼びかけたい。また、原子力市民委員会は、議会、議員あるいは政党によるヒアリングにも積極的に応じる用意がある。
 なお、本書に収録した文章の多くは、2017年5月から7月にかけての時期に書かれたものである。その後の査読と編集校閲の段階で、事態の進展があった出来事の一部(地層処分地の選定に関わる「科学的特性マップ」の発表、廃炉ロードマップの改定、原発安全規制における火山灰濃度基準の改定、日米原子力協定の延長についての米国側の態度表明など)については本文の記述または脚註に追加させることができたが、原賠訴訟の千葉地裁判決・福島地裁判決、柏崎刈羽原発の適合性審査など、本書に収録できなかった重要事項も少なくない。それらについては、今後の取り組みのなかで分析と批判を進めていきたい。
 本書では、論述や提案の客観的な根拠を示すため、脚註をかなり多めに付けている。脚註の番号は、第1章、第2章、第3章、第4章ではそれぞれ1番、201番、301番、401 番から、第5章は601番から、終章は801番からとなっている。
 原子力市民委員会は、髙木仁三郎市民科学基金(略称:髙木基金 www.takagifund.org)の特別事業として運営され、全面的に一般市民からの寄付に支えられている。財政面だけでなく、公開の委員会・学習会・意見交換会・フォーラム・記者会見などといった各種イベントへの参加、報告書・声明等への賛同や批評など、さまざまな形で寄せられる市民の熱い思いこそが私たちを支える希望であり、脱原発を可能にする駆動力である。もちろんご批判も歓迎する。これまでご支援くださった各地の皆様にあらためて感謝申し上げるとともに、今後とも一層のご支援をお願いしたい。
(引用終わり)
 
 それでは、以下に、上記「はしがき」で言及されている原子力市民委員会による各種報告書にリンクするとともに、目次の内の章立ての部分を引用します(いずれもPDFファイルがホームページ上で公開されている他、書籍の形でも市販されています)。
原子力市民委員会の本
 ただし、「特別レポート5『原発の安全基準はどうあるべきか』(2017年12月刊)」は
原子力市民委員会のホームページにはまだ未掲載のようです。
 ざっと目次を眺めるだけでも、この間の議論の積み重ねが偲ばれます。是非この蓄積を多くの人が共有できるように広められればと思います(その前に、まず私自身、読んでいかなければと思いました)。
 
原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱』(2014年4月12日発表)
序章 なぜ原発ゼロ社会を目指すべきなのか
はじめに
第1章 福島原発事故の被害の全貌と人間の復興
第2章 福島第一原発事故炉の実態と「後始末」をめぐる問題
第3章 放射性廃棄物の処理・処分
第4章 原発再稼働を容認できない技術的根拠
第5章 原発ゼロ社会への行程
終章 「原子力複合体」主導の政策決定システムの欠陥と民主的政策の実現への道
おわりに 日本の脱原発を世界に広げていく
資 料
 
『年次報告 2015 原子力発電復活政策の現状と今後の展望』(2015年6月8日発表)
第一部 原子力発電復活政策の現状と今後の展望
はじめに
1 続く被災者の困難―切り捨て政策の変更を求めて
2 再稼働政策への評価
3 原子力政策への評価
2
第二部 原子力市民委員会 2014 年度活動報告
おわりに
 
『年次報告2016 ますます無理を重ねる原子力政策とその歪み』
はじめに
第1章 無理な帰還促進政策がもたらす歪み ─人間なき復興
第2章 現実を直視しない事故処理の進め方
第3章 核燃料サイクル政策のさらなる迷走
第4章 原発ゼロに向けての障壁と選択
第5章 原発“介護”政策の動向
第6章 なぜ原発再稼働を認めるべきでないか
原子力市民員会2015年4月~2016年6月活動記録と今後の予定
 
原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』(2017年12月25日発表)
はじめに
概要
第1章 東電福島原発事故の被害と根本問題
第2章 福島第一原発事故現場の実態と後始末
第3章 核廃棄物政策の課題
第4章 原子力規制の実態となし崩しの再稼働
第5章 原発ゼロ時代のエネルギー政策の展望
終章 原発ゼロ社会を創造するために
※15頁~27頁に全体の「概要」が掲載されていますから、まずこれを読むことをお勧めします。
※2017年12月25日(月)午後1時から、衆議院第1議員会館において開かれた「発表のつどい」の模様がUPLANによってYouTubeにアップされています。
20171225 UPLAN【記者会見・意見交換会】「原発ゼロ社会への道2017-脱原子力政策の実現にむけて」発表のつどい(2時間19分)
1分~ 趣旨説明 菅波 完氏(高木仁三郎市民科学基金事務局長)
原発ゼロ社会への道 2017」の概要紹介
第1章について
12分~ 島薗 進氏(上智大学グリーフケア研究所所長、原子力市民委員会 座長代理・福島原発事故部会長)
17分~ 満田夏花氏(国際環境NGO FoE Japan、原子力市民委員会 座長代理)
第2章について
30分~ 筒井哲郎氏(プラント技術者の会、原子力市民委員会 原子力規制部会長)
第3章について
42分~ 伴 英幸氏(原子力資料情報室共同代表、原子力市民委員会 核廃棄物部会長)
第4章について
59分~ 筒井哲郎氏
第5章について
1時間10分~ 大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授、原子力市民委員会 座長代理・原発ゼロ行程部会長)
終章について
1時間28分~ 満田夏花氏
国会議員挨拶 1時間36分~ 菅直人衆議院議員立憲民主党
意見交換 1時間40分~
 
特別レポート1『100年以上隔離保管後の「後始末」』(2015年6月刊;改訂版2017年11月刊)
まえがき
1 提案の主旨
2 大工程
3 現行作業の問題点
4 検討過程の説明
5 検討結果
6 隔離保管中の安全性について
7 デブリの状態について
8 結論――リスク最小の選択を
 
特別レポート2『核廃棄物管理・処分政策のあり方』(2015年12月刊)
序章
第1章 核廃棄物の管理・処分の基本原則
第2章 東京電力福島原発事故廃棄物の管理・処分政策
第3章 事故由来放射能汚染物の管理・処分に関する重要な論点
第4章 従来型の核廃棄物の管理・処分政策
 
特別レポート3『「人間の復興」に必要な医療と健康支援とは?~原発事故5年、いま求められていること~』(2016年11月刊)
はじめに
講演再録
原発事故から5年 臨床医から見たフクシマ」牛山 元美(さがみ生協病院内科部長)
「栃木県における原発事故被害と支援ニーズの分析―被害者アンケートと聞き取り調査から―」清水 奈名子(宇都宮大学国際学部准教授)
「「人間の復興」に必要な医療と健康支援とは?」白石 草(OurPlanet-TV 代表)
パネルディスカッション
 牛山 元美、清水 奈名子、白石 草
 島薗 進(原子力市民委員会座長代理、第1 部会長、上智大学グリーフケア研究所所長)
 満田 夏花(同委員会座長代理、国際環境NGO FoE Japan 理事)
 司会:細川 弘明(同委員会事務局長、京都精華大学人文学部教授)
※2016年6月12日(日)、文京シビックセンター・スカイホールで開催された原子力市民委員会主催の公開フォーラム「『人間の復興』に必要な医療と健康支援とは?~原発事故5年、いま求められていること~」の記録です。
 この公開フォーラムの動画もUPLANによってアップされています。
 
特別レポート4『原発立地地域から原発ゼロ地域への転換』(2017年4月刊)
はじめに 
第1章    なぜ地域脱原発を進めるのか
第2章    原発立地自治体の経済・財政の実態
第3章    原発ゼロ地域への転換政策  
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「原子力市民委員会」関連)
2013年12月24日
原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』(原子力市民委員会)について
2015年3月10日
「高浜原発再稼働問題をどう考えるか」(3/9原子力市民委員会)を視聴して学ぶ
2015年12月30日
原子力施設立地・周辺自治体の財政・経済自立に向けた課題」(12/26第十五回 原子力市民委員会)を視聴しながら高浜原発再稼働を思う
2016年1月2日
原子力市民委員会 特別レポート No.2「核廃棄物管理・処分政策のあり方」を読む