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週プレNEWSが取り上げた「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題~目を離したらオシマイだ 

 2017年12月30日配信(予定)のメルマガ金原.No.3032を転載します。
 
週プレNEWSが取り上げた「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題~目を離したらオシマイだ 
 
 今年の8月12日から私のブログで始まった「図書館」シリーズ(実質的には「和歌山市民図書館」シリーズ)の第6回をお届けします。
 「2019年秋に南海和歌山市駅直結のビル内にオープンする新しい和歌山市民図書館の指定管理者の候補者が、レンタル大手「TSUTAYA」を運営する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」に決まった。市教委が30日発表した。」(12月1日付・朝日新聞和歌山版より)ことをブログに書いたのが12月1日でしたが、その時点では、開会中の和歌山市議会12月定例会に、CCCを和歌山市民図書館の指定管理者とする議案はまだ上程されていませんでした。
 どうせ、追加上程されて、最終日の12月15日に賛成多数で可決することが目に見えていましたので(実際そうなりましたが)、ブログには、あえて続報は書きませんでした(Facebookにだけ簡単に投稿しました)。
 ただ、あとから経過を振り返るためには、これもきっちりと書いておかなければと反省しました。議案と採決結果を、和歌山市議会ホームページから引用しておきます。
 
(引用開始)
平成29年度議会提出議案 平成29年12月議会
議案第39号
      平成29年度和歌山市一般会計補正予算(第7号)
 平成29年度和歌山市一般会計補正予算(第7号)は、次に定めるところによる。
 (債務負担行為の補正)
第1条 債務負担行為の追加は、「第1表 債務負担行為補正」による。
  平成29年12月6日提出
                 和歌山県和歌山市長 尾 花 正 啓
 
議案第40号
      指定管理者の指定について
 指定管理者を次のとおり指定したいので、地方自治法第244条の2第6項の規定により、議会の議決を求める。
  平成29年12月6日提出
                 和歌山県和歌山市長 尾 花 正 啓
施設の名称 和歌山市民図書館
指定期間  屏風丁17番地に移転し、供用開始する日から平成36年3月31日まで
 
施設の名称 和歌山市民図書館西分館
指定期間  和歌山市民図書館が屏風丁17番地に移転し、供用開始する日から平成36年3月31日まで
(引用終わり)
 
 議案39号については、12月6日の市議会本会議において、田又俊男財務局長が、「議案第39号は、平成29年度和歌山市一般会計補正予算(第7号)で、債務負担行為のみの補正でございます。2頁をお開き願います。債務負担行為の補正は、第1表のとおりで、市民図書館管理運営事業を平成35年度まで限度額15億197万2千円で追加するものでございます。」と説明しています(インターネット会議中継から書き起こし)。
 
平成29年12月議会 議員別採決状況
和歌山市議会議員は全部で38人。会派別人数は、至政クラブ19人、公明党議員団8人、日本共産党和歌山市会議員団5人、誠和クラブ4人、日本維新の会2人となっています。議員別採決状況を確認すると、議決に加わらない議長(至政クラブの古川祐典氏)を除く37人の内、議案第40号に反対したのは日本共産党の5人だけで、残る32人は全員賛成しました。ちなみに、6月定例会で採決された、和歌山市民図書館に指定管理者制度を導入する条令改正案には反対した日本維新の会の2人も、本議案には賛成しました。
 
 なお、12月15日に行われた討論及び採決についての議事録はまだ未公開ですが、インターネットによる議会中継は視聴できます。
 
和歌山市議会 議会中継
    ↓
「平成29年12月定例会」を選択
    ↓
「12月15日 委員長報告、討論、採決」を選択
    ↓
「討論(森下議員~・山野議員~)/採決」を選択
※冒頭で森下佐知子議員(日本共産党)が反対討論をしています(市民図書館指定管理者については主に6分頃に触れられています)。また、採決自体は11分頃です。
 
 さて、公式記録の確認は以上のようなことなのですが、年末を迎えて、インターネットニュースで「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題が大きく取り上げられて驚きました。
※注 「和歌山市民図書館の『ツタヤ図書館』化問題」という意味で(少し省力化して)「『和歌山市民“ツタヤ”図書館』問題」と言うことがあります。
 
 それは、一昨日(12月28日)から3日連続で週プレNEWS(集英社が運営する週刊プレイボーイの公式ニュースサイト)に掲載された記事です。Yahoo!ニュースなど、めぼしいネットニュースには転載されていますので、目にした方もおられるのではないかと思いますが、あらためて注目していただくために、本ブログでまとめてご紹介することにしました。
 まずは、週プレNEWSに連載された3本の記事にリンクし、特に興味深い内容を引用するとともに、若干のコメントを付け加えます。
 
2017年12月28日 
全国で波紋を呼ぶ“ツタヤ図書館”が和歌山でも異例の選定!「まるでゴミ処理場の建設みたい」?(取材・文/日向咲嗣
(抜粋引用開始)
  「まるでゴミ処理場の建設みたい」
 ある自治体関係者が漏らしたひと言に、この問題のおかしさが集約されている。
 和歌山県県都和歌山市が、2019年秋に開館が予定されている新しい市民図書館の指定管理者にレンタル大手CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)を選定し、12月15日の市議会で正式に承認された。
 全国にTSUTAYAを展開する同社が運営する通称・ツタヤ図書館は、2013年に佐賀県武雄市にオープンしたのを皮切りに、今年2月に開館した岡山県高梁(たかはし)市までに全国で4館が開館。来年には、山口県周南市と宮崎県延岡市(本の貸出はしないブックカフェ)でも開館が予定されている。
 開放感ある吹き抜けの空間に、カフェや書店を併設した施設として話題を呼び、街の活性化にも繋がると、当初は“地方創生のお手本”だと称賛されたツタヤ図書館。
 ところが、2015年8月、武雄市で『Windows98/95に強くなる』や浦和レッズ関連本、『埼玉ラーメンマップ』など、武雄市民にとっては極端に価値の低い古本を大量に購入していたことが発覚(過去記事参照)。同年に開館した海老名市(神奈川県)のツタヤ図書館でも、単なるメガネ拭きでしかないメガネクロスや、ゴーゴーバー(連れ出しパブ)、ファッションマッサージ店を掲載した『大人のバンコク極楽ガイド』などを購入していたことが問題視された(前回記事参照)。
 以来、称賛の嵐から一転、CCCのお粗末な図書館運営に批判が集中。誘致自治体では、指定取消や前市長への賠償請求を求める住民訴訟も相次いだ。
 そんなツタヤ図書館が、ついに人口36万人を擁する県庁所在地に進出したとあって、さぞや侃々諤々(けんけんがくがく)の議論が巻き起こったに違いないと思いきや、地元では話題にすらなっていない。それもそのはず、市議会ではまともな議論がほとんどなされていないのだ。
 同市のこれまでの市民図書館建設までの動きをまとめると、15年5月に南海電鉄和歌山市駅への移転の方針が示された後、翌年5月に基本計画を発表。この時、直営のほか民間企業へ全面的に運営を任せる指定管理者制度の導入も視野に入れた新図書館の検討がスタート。17年6月には、指定管理者制度導入の議案が議会でアッサリ可決。あっという間に図書館の民営化が決まってしまった。
 そして、指定管理者の公募が始まったのが10月18日。申込み受付期限の11月16日には、応募したのがCCCとTRC(図書館流通センター)の2社であることが判明。前々から噂にはなっていたものの、この時、初めて正式にCCCの名前が出た。
 大学教授など有識者で構成された選定委員会が公開プレゼンテーションを実施し、CCCを選定したと発表したのは、その2週間後の11月30日のこと。つまり、同社を選定するまでたったの2週間しかなかったということだ。
 プレゼンから選定結果発表までの期間は1週間しかない。同市の他部門における指定管理者募集スケジュールを見ると、これほどの短期間でスピード決定した事例は見当たらず、受託金額1500万円規模の駐車場指定管理者募集でさえ、プレゼンから発表まで1ヵ月程度をとっている。年間運営費3億円超の図書館業務をこれほどまでに“超特急”で進めるのは、あまりにも異例だ。
 市議会での議決も不思議な点が多い。選定結果発表は11月30日なのに、12月1日から始まる議会の一般質問通告は前日の11月29日に締め切っている。そのためか、委員会で審査や質疑はあったものの、議会本会議での質問や討議はほとんどなし。
 議会が始まって5日後の12月6日になって、ようやくCCCを新図書館の指定管理者とすることを承認する議案が追加提出され、最終日の12月15日に採決された。このスケジュールでは、地元図書館がツタヤ図書館になることに反対する市民がいたとしても、なんの抵抗もできなかっただろう。ある自治体関係者がこう驚く。
和歌山市って、人口36万人の県庁所在地ですよね…ちょっと信じられません。先行例の多賀城市宮城県)では、最初にCCCの名前が出てから議会で正式に議決されるまで、ひと通り議論や手続きを踏むために1年近くかかっています。それが1ヵ月未満で決めたなんて…」
(引用開始)
※金原コメント CCC決定に至る経過については、しっかりと裏付取材が行き届いており、私の目から見てもおかしな点はありません。また、上に引用はしませんでしたが、愛知県小牧市住民投票の結果「ツタヤ図書館」計画が白紙に)、山口県周南市(ダミー本騒動)、佐賀県武雄市と神奈川県海老名市(いずれも住民訴訟に発展)などの「先行事例」に触れつつ、そのような轍を踏まないために、議会運営も含めた住民対策を「裏で事細かにCCCが指南しているのではないか」という仮説を記者は検証していくことになります(ということで「中編」に続きます)。
 
2017年12月29日
内部文書を徹底検証ーー疑惑の“ツタヤ図書館“が新たに選定された和歌山でも裏で画策…?(取材・文/日向咲嗣
(抜粋引用開始)
 “第3のツタヤ図書館”として新装開館することになる宮城県多賀城市の職員が、2013年7月、武雄市の図書館・歴史資料館を訪問した時に作成された内部文書の一部がある。
 といっても、当時、話題沸騰だった武雄市のツタヤ図書館の視察報告ではない。『CCCと今後の打ち合わせ質疑応答』と題されたそのペーパーには、多賀城市教育委員会(以下、市教委)の役人とCCC担当者のやりとりが生々しく記録されている。この中には、予算や議会運営、条例の改正までスケジュールに組み込まれているから驚きだ。
 多賀城市では、この文書が作成された13年7月26日の2週間ほど前、菊地健次郎市長が突然、記者会見を開いて「CCCと新図書館建設へ向けて連携協定を締結する」と発表。ここからCCCが指定管理者として正式決定される14年6月まで、1年近くにわたって教育委員会や議会での議論・審査等、所定の手続きをひとつずつ踏んでいくわけだが、この内部文書作成時点では、まだ何も決まっていない白紙状態。CCCは指定管理者候補ですらなかった。
 図書館に関して言えば、いくら市長が「CCCに決めたい」と熱望したところで、審査権限を持つ教育委員会が「ノー」と言えばその計画は進まない。にも関わらず、市教委の役人が武雄市を訪問して、あたかも『指定管理者=CCC』が既成事実であるかのごとく、同社の図書館部門の主要メンバーと詳細な打ち合わせまで行なっていたのである。
 多賀城市市議会関係者がこう話す。
「市の職員3人が武雄市を『視察』と称して1泊2日で訪問していたのに、議会で追求されると、2日目は『視察しただけ』と、当局はその復命書(報告書)を1日分だけしか出しませんでした。するとその後、匿名で市議などに完全な文書が郵送されてきたのです」
 つまり、役所内部には市立図書館の“ツタヤ化”を快く思わない人間がいて、その人物が出来レースの実態を暴露するために「爆弾文書」をリークするべく送ったというわけだ。
 全12ページにわたる文書のポイントを見ていくと、まず注目したいのが「アジェンダ」と題されたレジュメ。「1.メンバーご紹介」から始まって「4.次回以降の定例会開催日確認」まで、視察当日の議事進行が記されている。「多賀城市教育委員会様」となっていることから推察すると、CCC側が作成した文書だろうか。これ以降、頻繁に市教委と担当者が綿密な打ち合わせを行なっていたことがわかる。
 この“密談”の深部に迫っているのが、2ページ目の「マスタースケジュール」だ。「議会関係」「図書館関係」「人員関係」「会員・システム関係」「個人情報関係」「FC企業関係」といった項目別に開館に向けて作業すべきこと、CCC側の担当者名などが整理されており、右に伸びたスケジュール表でそれぞれの実施時期やデッドラインがひと目でわかるようになっている。
 作業すべきこととは、議会運営から始まって、新図書館の開館準備作業、人材の採用・配置、図書貸出にTカード採用のための作業、個人情報保護対策、入居施設の建築やテナントについてまで、CCCサイドが市に開業までの工程表を提示している。
 中でも一番驚くのが、議会運営にまでCCCがこと細かに口出ししている点だ。蔵書購入費などの「予算確保」から、図書館運営を民営化するための「条例改正」、「指定管理制度の導入」「住民説明会」まで、いつまでに何をしなければならないかを手取り足取り指南しているようだ。
 予算の確保くらいは、民間事業者から行政へのお願いとして議題に上る例もあるだろうが、広く市民の意見を聞いて決めるべき指定管理者制度に関する「条例改正」を事業者側から言及するのは越権行為だろう。自社に便宜を図ることを要求しているととられかねない。
(略)
 このように、和歌山市と事前に話し合っていたかどうかについての回答(金原注:CCCからの)はなかった…が、この文書に記録されている日に多賀城市側と接触した事実は認めた。多賀城市のケースでは、早くからCCCの名前が出たため、議会開催のたびにCCCの指定管理者としての資質に疑義が呈せられ、その渦中、一部の週刊誌で“出来レース疑惑”も報道されている。
 そして、住民投票でノーを突きつけられ、建設計画が白紙に戻った愛知県・小牧市をはじめ、誘致予定地では“CCC反対運動”が次々と火を吹いた。
 両者は否定したものの、その教訓からCCCの指南の下、図書館の民営化(指定管理者制度導入)だけ先に決め、指定管理者の選定発表は開館予定から逆算して、ギリギリまで遅らせて短期集中で行なう…今回の“和歌山市方式”が編み出されたのではないか――?
 もしそうだとしたら、同様のことが今後、ツタヤ図書館を誘致する自治体でも取り入れられる可能性は高いといわざるを得ない。
(引用終わり)
※金原コメント (中編)では、宮城県多賀城市の内部文書(職員が議員にリークした模様)の分析を基に、「ツタヤ図書館」決定に至る過程におけるCCCの優越的地位(と言えば良いのでしょうか)を論証した上で、今回の「和歌山方式」がCCC主導によって編み出されたのではないか、そして、それが今後のモデルケースとなるのではないか、というのがこの記者の見通しであり、決定的な証拠を挙げるところまでは行っていないものの、かなりの程度納得できる優れた「仮説」であると思います。
 この「仮説」を評価する上でのポイントは、佐賀県武雄市の「ツタヤ図書館」に全国の自治体からの視察が相次ぐ人気を集めながら、実際にCCCを指定管理者とする自治体の数が伸びていないことでしょう。
 12月1日に書いたブログ(和歌山市民図書館が「ツタヤ図書館」に!?~市民の皆さん、嬉しいですか?)でも触れましたが、尚絅(しょうけい)大学文化言語学部教授で、
尚絅大学図書館長の桑原芳哉先生の論文「公立図書館における指定管理者制度導入の現状:昨年度からの変化と事業者に関する特徴」(尚絅大学研究紀要 人文・社会科学編 第48号:(13~25)(2016))の(表3 民間企業を指定管理者としている図書館:事業者別図書館数)によると、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)を指定管理者としている図書館は、2014年度「3館」であったものが、2015年度には「6館」と倍増していますが、宮城県多賀城市は、本館の他に分室2つもCCCを指定管理者としているため、実質的には4市(佐賀県武雄市、神奈川県海老名市、宮城県多賀城市岡山県高梁市)6館ということである旨、桑原教授ご自身からご教示いただきました。
 そして、今後は、2018年2月に山口県周南市(JR徳山駅前ビル)が開館すれば、新たな「ツタヤ図書館」は途切れるところであった訳ですから、人口減少に悩んでいるとはいえ、一応県庁所在地である和歌山市の市営図書館・指定管理者となったことは、CCCにとって、大きな営業上の成果でしょう。
 なお、CCCは、2018年3月開館予定の宮崎県延岡市の「延岡駅前複合施設」の指定管理者にもなっていますが、図書などの閲覧スペースもあるとはいえ、「図書館」とはいえないでしょうから、和歌山市は、久々にCCCを公立図書館の指定管理者とした通算6番目の自治体ということになります。
 どうでしょうか、言われるほど「ツタヤ図書館」って広がっていないでしょう。広がらないのには、それなりの理由があると考えるのが普通なのですけどね。
 余談ですが、周南市の「ツタヤ図書館」情報を検索していたところ、同施設の求人情報を見つけました(【2018年2月徳山駅前にオープン!】図書館・書店のオープニングメンバーの募集です)。
 「未経験者も大歓迎!本に囲まれた職場で働きませんか?。」という惹句はともかくとして、勤務条件を読んで驚きました。「雇用形態:アルバイト、パート」「職種・給与:司書/時給:900円~、書店・本屋/時給:860円~」「図書館スタッフ、書店スタッフの同時募集・司書資格・司書補資格保有者は時給900円、資格が無くても時給860円スタート
・昇給制度あります」
 うーん、書店のアルバイトが時給860円スタートで、図書館司書が900円スタートとは。和歌山市民図書館もこうなるんでしょうね。
 
2017年12月30日
議会にCCCの営業マン? 各地で炎上する“ツタヤ図書館”…和歌山市でも補助金注ぎ込み中身カラッポ!?(取材・文/日向咲嗣
(抜粋引用開始)
 にも関わらず、この12月15日には和歌山市でCCCが運営する新図書館の計画が議論もなくスンナリ決まった。反対派住民を押さえ込む“市民不在”の議会戦術(前々回記事参照)や、多賀城市・ツタヤ図書館(宮城県、2016年3月開館)で露呈した内部文書(前回記事参照)を見るにつけ、和歌山市でも最初から「TSUTAYAありきだったのでは?」との疑念が湧く。事実、その根拠になるネタには事欠かない。
 例えば、今年5月に発表された基本設計を担当したのは、代官山蔦屋書店を手がけた設計事務所アール・アイ・エー。同事務所は、海老名市立図書館の大規模改修や多賀城市立図書館も担当しているため、その時点で「CCCに決まっているのでは」と囁かれた。
 5月に開催された教育委員会の会議録では、図書館の条例改正案の部分だけが、なぜか「非公開」とされた。この時点でCCCの名前が出ていたから非公開にしたのではないかと勘ぐる声も出た。
(略)
 市議会関係者によれば、市当局が最も重視したのが提案価格だったというが、これも奇妙な話である。
 CCCが運営する図書館は、高層書架、独自分類、Tカード導入のためのシステム改修と、いずれも高コストな作り。海老名市や多賀城市では、運営費がツタヤ化される前の2倍を超えている。とりわけ独自分類を導入するには、市内図書館における全蔵書のラベルを張り替え、システムもそれに合わせて改修しなければならず、そのための費用も莫大。
 それにも関わらず、CCCがTRCよりも低い提案価格を出せたのは、そうした開館準備費用をすべて除外した「提案価格」設定になっているからだ。事実、募集要項には「システムに関する費用は市が負担するため含まれない」旨が明記されている。独自分類に関わる全蔵書ラベル総張り替え等の開館準備費用も、提案価格にはもちろん含まれていない。
(略)
 だが、莫大な開館準備費用を一切考慮に入れずにCCCを選定したのは、ネット回線の通信料金に例えれば月々の料金だけで比較したら少し安くみえるが、入会後に工事費や事務手数料などがバカ高くなることが一切考慮に入っていない選択ということになる。
 そこまでして、人口36万人を擁する県庁所在地である和歌山市は、一体なぜ“火中の栗”を拾わねばならなかったのか。あるツタヤ図書館ウォツチャーはこう話す。
 「和歌山市の市民図書館が移転を予定している南海和歌山市駅ビルの再開発は、国土交通省の社会資本総合整備計画に認定されている事業総額328億円にものぼる一大プロジェクトです。ここに市民文化センター、市民図書館などの公益施設のほか、商業施設や宿泊施設も建設して、中心市街地に賑(にぎ)わいを取り戻すことを目的としています。その目玉がツタヤ図書館なんですよ」
 市議会関係者によれば、総事業費328億円のうち、少なくとも80億円以上は国の補助金が投入される見込みという。図書館関連でいえば、本体の事業費30億円のうち15億円が補助金、広場と駐輪場合わせると約18億円もの国費が投入される予定だ。
 国の補助金をもらうためには、図書館などの公共施設の配置が必須条件。逆にいえば、図書館を入れれば莫大な補助金を得られるため、派手に施設の宣伝をして人を集めてくれるツタヤ図書館を誘致したいという思惑だろう。
(略)
 かくして、地域の文化振興とは縁遠い、壁面いっぱいに大量のダミー本を飾り立てた中身のない“張りぼて図書館”がまたひとつできてしまうのか。
 和歌山市では、かつて世界中に移民を送り出した歴史から、移民資料室を備えるなど貴重な資料のアーカイブを多数保持しているのだが、CCCに任せて、はたしてそれらは適切に維持・管理されるのだろうか。
 ちなみに、和歌山市が国に提出している事業計画によれば、328億円を投入した一大プロジェクトが掲げている中心市街地の「人口減少抑制効果」はたったの「835人」だという。ジャブジャブ補助金をつぎ込むだけで、中身カラッポの箱物行政では地方の文化はますます先細る一方だろう。
(引用終わり)
※金原コメント 引用部分で「今年5月に発表された基本設計を担当したのは、代官山蔦屋書店を手がけた設計事務所アール・アイ・エー。」とある「基本設計」とは、「和歌山市駅前地区第一種市街地再開発事業施設建築物基本設計」のことで、「基本設計報告書(公益施設棟抜粋)」を、和歌山市民図書館のホームページで見ることができます。
 たしかに、これを一覧するだけで、「ツタヤ図書館」をイメージしているとしか思えませんけどね。
 なお、設計事務所アール・アイ・エーが手掛けた宮城県多賀城市立図書館の写真が同事務所のホームページで見られます。
 また、募集要項に「システムに関する費用は市が負担するため含まれない」旨明記されていたとは知りませんでした。
 その他、引用はしませんでしたが、「和歌山市議会の中には、武雄市の樋渡啓祐前市長と親密で「まるでCCCの営業マンみたい」と地元で揶揄(やゆ)されるほど“ツタヤ図書館推し”の議員がいることはつとに有名」というそのT議員本人にも直接取材しており、
今回の記事が読み応えがあるのは、そのような姿勢のせいでしょう。
 ただし、最初から「CCC(ツタヤ))ありき」だったのではないか?という疑惑について、決定的と言えるほどの証拠を突き付けるまでに至っていないことも事実です(非常に疑わしいというところまでの説得力はありますが)。
 今後の追加取材に期待するとともに、和歌山市民としても、常に「和歌山市民“ツタヤ”図書館」問題から目を離さず、声をあげ続ける努力が必要でしょう。
 そういう意味からも、私は、一市民が和歌山市に対して行った情報公開請求の結果がどうなるか、興味津々で待っているのです。
 今回のCCCに指定管理者が決まったことについて、①選定委員人選の根拠、②選定委員の個々の配点結果、③2社の提案内容、④選定委員と業者とのヒアリングの議事録、⑤CCCを候補者に決めた根拠、を皆さんも知りたいですよね。
 市は、当初12月18日としていた情報公開の決定期限を、「開示請求に係る公文書の内容が複雑で、短期間に開示の可否を決定するのが困難であるため」45日延長して2月1日とするという通知を送ってきたと聞いています。
 年末年始をはさむとはいえ、45日間も何を考えることがあるのでしょうね。関係各位にお伺いでも立てるのでしょうか(CCCにも?)。
 
 最後に、この週プレNEWSは、他のネットニュースにも転載されています。ページが分割されていなかったり、コピペが簡単に出来たりして、使い勝手はこちらの方が良いものもありますし、どう考えても、週プレNEWS自体より多くの読者を持つ媒体もありますので、こちらにもリンクしておきます。なお、28日の記事を(前編)、29日の記事を(中編)、30日の記事を(後編)と称します。
 
[Yahoo!ニュース]
[Niftyニュース]
[Livedoor'NEWS]
[ニコニコニュース]
[excite.ニュース]
[Rakuten Infoseek News]
[Amebaニュース]
 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/図書館問題関連)
2017年8月12日
新しい和歌山市民図書館(2019年10月開館予定)に指定管理者制度が導入される
2017年9月16日
「市民と歩む図書館~図書館が変わる!?~」(9/30山本健慈さん&渡部幹雄さん/和歌山市勤労者総合センター)のご案内
2017年10月1日
「市民と歩む図書館~図書館が変わる!?~」(2017年9月30日)大成功!
2017年12月1日
和歌山市民図書館が「ツタヤ図書館」に!?~市民の皆さん、嬉しいですか?
2017年12月2日
「ツタヤ図書館」を通じて「図書館」そのものを学ぶために~「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」設立趣旨を読む
 
(次号予告)
 明日(2017年12月31日)大晦日は、過去3年に引き続き、「憲法をめぐる激動の2017年を和歌山の地から振り返る」をお送りします。さて、今年はどんな1年だったのか、憲法を守るために和歌山市民はどのように闘ったのか、主に、会紙「九条の会・わかやま」と「弁護士・金原徹雄のブログ」にリンクすることによって振り返ります。中身を詳しく知りたい項目(企画)についてはリンク先を精読してください。
 過去3年分の年末回顧にリンクしておきます。
2014年12月27日
憲法をめぐる激動の2014年を和歌山の地から振り返る
2015年12月31日
憲法をめぐる激動の2015年を和歌山の地から振り返る
2016年12月31日
憲法をめぐる激動の2016年を和歌山の地から振り返る