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日本弁護士連合会「大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書」を是非読んで欲しい

 2018年1月12日配信(予定)のメルマガ金原.No.3045を転載します。
 
日本弁護士連合会「大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書」を是非読んで欲しい
 
日本弁護士連合会会則(昭和二十四年七月九日制定)
   第一章 総則
 (名称)
第一条 本会は弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号。以下「法」という。)の規定するところにより、日本弁護士連合会と称する。
 (人権と正義の源泉)
第二条 本会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉である。
 (目的)
第三条 本会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務に鑑み、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士、弁護士法人及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。
(会員)
第四条 本会は、弁護士、弁護士法人及び弁護士会をもって組織する。
(以下略)
 
 弁護士以外の方には馴染みのない「日本弁護士連合会会則」です。私自身、正直「通読」したことは一度もありません。もちろん、必要に応じて参照したことは何度もありますが、今日久しぶりに会則の冒頭部分を読んでみて驚きました。今年、弁護士になって足かけ30年となる身でありながら、第二条が、「本会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉である。」と規定していることに(多分)初めて気がつきました。
 もちろん、この表現は、「弁護士法」冒頭の以下の規定に基づきます。
 
弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
 (弁護士の使命)
第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。
 
 弁護士法第一条自体は、弁護士になる前から知っていましたが、日弁連が「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉」と宣言していたとは知りませんでした。「源泉」とは、どうも意味が取りにくい表現ですね。一度、日弁連の「会則」解説書(おそらくあるでしょう)を読んでみよう。
 
 それはさておき、私が日弁連会則など読み返してみたのは、弁護士法第一条第2項中の「弁護士は、・・・法律制度の改善に努力しなければならない。」という努力義務の規定が、日弁連会則にどう反映しているのかを調べたくなったことによります。そしてぶつかったのが「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉」という規定でったという次第です。
 私が、なぜこんなことを調べようと思ったかといえば、日本弁護士連合会が2017年12月22日に決定し、昨日(2018年1月11日)執行した「大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書」をご紹介しようと思ったからです。
 日本弁護士連合会ホームページ(トップページ)⇒日弁連の活動⇒会長声明・意見書等と進んでもらえば分かりますが、日弁連は、全国各地の弁護士会とともに、様々な問題についての「会長声明」や「意見書」を発表しています。その法的根拠が弁護士法第一条であり、日弁連会則の第二条という訳です。
 
 さて、「大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書」です。この種の意見書を「日弁連の意見」として取りまとめ、公表しようとすれば、まず担当委員会で素案を練り上げ、その後執行部(正副会長会等)の了解を得た上で、理事会の承認を得るという手続が必要です。
 今回の意見書については、日弁連・災害復興支援委員会が所管委員会であり、東日本大震災の際に、宮古ひまわり基金法律事務所所長として大活躍した(現沖縄弁護士会)小口幸人(おぐち・ゆきひと)弁護士が取りまとめの中心の1人であったようで、実はこの意見書の存在を知ったのも、意見書を記者会見で発表した小口さんのFacebookへの投稿を、日弁連・災害復興支援委員会の津久井進委員長(兵庫県弁護士会)がシェアしていたのを読んだからでした。
 以下に、小口さんのFacebookへの投稿と記者会見を伝える報道をご紹介しておきます。なお、小口さんの投稿は「公開設定」であり、投稿の趣旨から考えて、全文転載も許されるだろうと(私が勝手に)判断しました。
 また、弁護士ドットコムNEWSは、簡にして要を得た良記事すぎて、カットするところが見当たりませんでした。
 
小口幸人Facebook
(抜粋引用開始)
 約2年携わってきた「大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書」が日本弁護士連合会で執行され、記者会見をしてきました。
 憲法改正議論の巻き添えになることなく、しっかりと法改正をしてほしいと思います。少し説明させてください。
 政府は、東日本大震災の教訓を踏まえた法改正は全て終えた、積み残しはないという立場です。しかし、2011年3月、唯一慌てて震災のためにした立法措置の教訓が活かされていません。選挙の延期と任期の延長です。阪神淡路大震災のときにも、震災を受けて選挙の実施が困難だとして、特措法が成立し選挙と任期が延長されました。その後、災害に強い選挙制度への見直しがされないまま東日本大震災が起き、同じことが起きました。
 日本には1700を超える市町村があり、首長と議会の選挙が行われていますから、例えば南海トラフ地震が起きたときにも、どこかの「自治体の選挙前だ、延期しなければ」となる可能性が十分にあります。それが、投票日前日だったら、特措法成立までの時間もないでしょう。また、東日本大震災においては、首長が災害で亡くなるという不幸も起きました。任期を伸ばしても亡くなった方は帰ってきませんから、少しでも早く、選挙できる制度にしておく必要があります。
 一見、そんなの無理だと思いがちですがそうではありません。今の選挙制度は、決められた日に、決められた唯一の場所に足を運んで投票するという、とてつもなくアナログな方法に限定されています。だからこそ、災害に弱いのです。
 例えば、どこにいても投票できる選挙制度になっていれば、せめて被災者の方だけでも避難先から投票できるようになれば選挙は実施できます。
 「備えていないことはできない」というのが重要な教訓です。災害が起きてからではなく、起きる前に、恒久的な対策が必要不可欠なのに、政府はこれに取り組んでいないのです。
 憲法を改正して災害後の議員任期延長をできるようにすべきと考える人にとっても、延長する期間は短い方がいいに決まっています。延期なしに実施できる場合が増えた方がいいことも争いはないでしょうから、災害に強い選挙制度にする努力をしてほしいと思います。
 今回の意見書では、現行法に既にある制度を少し変えるだけで、ここまで災害に強くなるというのを具体的に示したつもりです。もちろん、憲法改正が不要だという立場の人にとっても、災害に強い選挙制度にすることに異論はないはずです。
 どこの党のどの先生のところにも説明にあがりますので、ぜひ、災害大国だからこその、災害に強い、災害が起きても影響を受けにくい選挙制度にするための努力を初めていただきたいと思います。
(引用終わり)
 
弁護士ドットコムNEWS 2018年01月11日 16時11分
「今の選挙制度は災害に弱すぎる」日弁連、恒久的な制度要望…東日本大震災では被災地に大きな負担
(引用開始)
 公職選挙法が大規模災害に対する十分な備えを欠いているとして、日弁連は1月11日、法改正を求める意見書を安倍晋三首相ら4大臣に送付した。
 災害の状況に応じて、柔軟な選択ができるように、(1)大規模災害時に投票期日だけでなく、選挙自体の延長を可能とすること、(2)避難先での投票や郵便投票を容易にすること、などを求めている。
 現行法では、災害が起きても、投票日をずらす「繰り延べ投票」などしか対策がなく、意見書の作成に携わった小口幸人弁護士(日弁連災害復興支援委員会幹事)は、「今の選挙制度は災害に弱すぎる」。
 たとえば、1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災では、被災地の選挙期日を延期するため、特例法を作る必要に迫られた。あらかじめ、公職選挙法で恒久的な制度を用意しておくべきというのが、日弁連の考えだ。
 また、仮に延期になったとしても、選挙はできるだけ早く行われるのが望ましい。たとえば、東日本大震災では、大槌町岩手県)の町長が震災で死去し、約半年間、町長が不在となった。ただし、現状の仕組みで選挙をすると、被災地に大きな負担を強いてしまうことにもなる。
 意見書では、有権者を管理する選挙人名簿のバックアップを義務付け、被災者が避難先の最寄りの選挙管理委員会などから投票できるような仕組みが必要だと提案している。
(引用終わり)
 
 それでは、意見書そのものをご紹介します。以下には「第1 意見の趣旨」のみ引用しますが、PDFファイルで6枚少々という分量であり、分かりやすく書かれていますので、是非全文をリンク先でお読みいただければと思います。
 
大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書
2017年(平成29年)12月22日 日本弁護士連合会
(抜粋引用開始)
第1 意見の趣旨
 国は,被災者の選挙権を保障するために,以下のような公職選挙法の改正を速やかに行い,現行の選挙制度を,大規模災害が発生した場合であっても選挙を実施できる制度に改めるべきである。
1 平時における備えとして,全国の選挙管理委員会に対し,選挙人名簿のバックアップを取ることを法的に義務付けること。
2 大規模災害が発生した場合に実施できる選挙制度として,指定港における船員の不在者投票類似の制度(避難者が避難先の市町村の選挙管理委員会に出向いて投票を行うことができる制度)を創設するとともに,郵便投票制度の要件を緩和すること。
3 大規模災害が発生した場合に選挙自体を延期できる制度を創設すること。
(引用終わり)
 
 なお、本意見書の「第2 意見の理由/4 大規模災害が発生した場合に対応するための制度の創設/(1)大規模災害が発生した場合でも実施できる選挙制度の創設/③」に以下のような提言がなされているのにも注目していただければと思います。
 
(引用開始)
③ なお,先に述べたように選挙権は極めて重要な権利であるところ,住民票所在地を離れている国民の選挙権を実質的に保障するという面では,被災者の選挙権の問題と学生の選挙権の問題は類似している。18歳選挙権の導入に伴い,大きな問題となっている学生の選挙権の問題,すなわち住民票所在地を離れている学生の投票場所の問題も早急に解決すべきである。具体的には,住民票所在地で投票できることを法律上明記するとともに,学生についても上記②の制度(※金原注 大規模災害の被災者が避難先の最寄りの選管で不在者投票が出来る制度)に準じた制度を構築することにより,選挙権行使を可能とするよう,新たな立法措置を講じるべきである。
(引用終わり)
 
 1月7日に和歌山市はたちのつどい会場前で新成人の意識調査(シールアンケート)を行った民青同盟のメンバーに伺ったところ、昨年の選挙に行かなかったと答えた新成人の中には、住民票を実家に置いたまま遠隔地の大学に在籍していたため投票できなかったと答えた人もいたということでした(和歌山市・新成人アンケート2018(後編)~今年は賑わっていました(結果レポート)/2018年1月7日)。
 これはかねてから問題点を指摘されていたことであり、「大規模災害に備えるため」ではないものの、国民の基本的権利である選挙権の行使を実質的に保障すべきという趣旨は共通しており、併せて意見書に盛り込んだということだろうと思います。
 実際に、具体的な制度設計をするとなれば、色々と解決しなければならない技術的な問題はあるでしょうが、非常に重要な提言として、「大規模災害に備えるため」の公職選挙法改正とともに、実家に住民票を置いたままの学生の選挙権行使についても、改善策の検討が進むことを期待したいと思います。
 なお、余計なことかもしれませんが、上記引用部分のうち、「住民票所在地で投票できることを法律上明記するとともに」(意見書PDFファイル・4頁17~18行)とあるのは、「住民票所在地以外で(も)投票できることを法律上明記するとともに」の方が文脈的にみて「適切」と思うのですが、どんなものでしょうかね。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/小口幸人弁護士関連)
2016年7月22日
災害支援でも高江でも~小口幸人弁護士の活躍
上記ブログの中で、小口弁護士が、マガジン9などで発表した論考(大規模災害を口実として憲法に緊急事態条項を設けることの危険性、「国会議員の任期延長」も必要ないことなどを分かりやすく論じています)をご紹介していますので、併せてお読みいただければと思います。
 なお、現在、自民党憲法改正推進本部で検討中と言われている「緊急時の国会議員の任期延長」問題についての小口弁護士の見解は上掲論考をお読みいただければ分かりますが、今回の日弁連「意見書」は、議員任期延長をめぐる憲法改正についていずれの立場をとろうと、法的対応が必要な問題についてまず議論し、改正を進めるべきとの提言となっていることを申し添えます。
2016年11月2日
「マスコミが伝えない現実!! 沖縄・高江で今何が起こっているか」(10/31@京都市)での伊佐真次さんと小口幸人さんの訴え