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ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2017-2018」第1稿(守ろう9条 紀の川 市民の会)

 2018年3月2日配信(予定)のメルマガ金原.No.3094を転載します。
 
ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2017-2018」第1稿(守ろう9条 紀の川 市民の会)
 
 2015年1月の設立以来、私も運営委員に名前を連ねる地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」では、いつの頃からか、毎年の総会のために用意する議案書は、運営委員が分担執筆することとなり、私はずっと「情勢分析」のパートを担当しています。
 そして、いつも「毎日更新」するブログの素材探しに苦労している私としては、書いたばかりの「情勢分析」の第1稿を、そのままブログに掲載するのが恒例になってしまいました。
 総会当日に配布する議案書は、運営委員が議論した結果に基づくものですから、会の作成文書ですが、第1稿は、あくまで私個人の意見でまとめたものに過ぎません。
 
 2014年の第10回総会以降の分をブログに掲載しており、巻末にリンクしておきますが、その第10回総会のために書いた「情勢分析」は、特定秘密保護法の強行成立を阻止できず、近く集団的自衛権の行使が容認されるのでは?という切迫した状況を踏まえて書かれたものでした。4年前の分析を読み返してみると、「米海兵隊新基地建設を絶対に受け入れないと表明する稲嶺進市長を再選させた沖縄県名護市長選挙をはじめ、国が強引に推進しようとする反動的政策に、地方からNOの声を突き付ける動きが顕在化している」とあり、稲嶺氏の落選という結果に直面した4年後の現在の状況を思う時、危機感がいや増さずにはおきません。
 結局、総会議案書には掲載されず、ブログでだけ紹介した4年前の「危機を克服するための展望(オプション)」も、この4年間の時の経過によって、「白い猫でも黒い猫でも、鼠をとる猫は良い猫だ」セオリーも、「猫の手も借りたい」セオリーも、そのままでは通用しなくなってしまいました。
 安倍首相に冷淡であった(そういえばイスラエルのネタニヤフ首相にも冷淡だった)オバマ米大統領が任期を終えて退任し、続くトランプ大統領に、恥も外聞もなくこびへつらう安倍首相の姿を見せつけられることになり、天皇陛下は来年には皇位を譲って退位されることになりました。
 今さら過ぎ去った過去を懐かしんでも仕方がありませんが、やはり通常の正攻法だけではなく、あらゆるオプションも用意した上で、全力を傾注する必要がある局面、それも4年前よりもはるかに厳しい局面を迎えているということをあらためて確認するためにも、以下に、今年の「情勢分析」第1項に加え、4年前の「情勢分析」第1項から、議案書には使われなかったオプションをご紹介します。
 
 なお、3月24日(土)に行われる第14回総会では、三重短期大学教授(憲法学)の三宅裕一郎先生に記念講演をお願いしています。どなたでも参加できますので(入場無料・予約不要)、是非ご参加いただきたく、開催概要を以下に再掲します(※総会を予告した私のブログ)。
 
[開催概要]
守ろう9条 紀の川 市民の会 第14回 総 会
日時 2018年3月24日(土)午後2時~4時30分
場所 河北コミュニティセンター 2F 多目的ホール
     和歌山市市小路192-3(TEL:073-480-3610)
     南海本線紀ノ川駅」下車徒歩3分(改札口を左折し踏切を越え180m、右側)
     和歌山バス・六十谷線(川永団地⇔南海和歌山市駅)「梶取東バス停」前
◎第1部 記念講演 14:10~15:45
  憲法9条が果たしてきた役割~「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?~
  講師 三宅 裕一郎 氏
               三重短期大学法経科教授(憲法学)
◎第2部 総会議事  15:50~16:30
※会員でなくても参加できます。もちろん無料です。多くの方にご参加いただきたいと願っています。
主催:守ろう9条 紀の川 市民の会   お問合せ先:073-462-0539 原 通範
 

守ろう9条 紀の川 市民の会 第14回総会(2018年3月)
議案書・情勢分析 第1稿
 
1 安保法制に基づく運用の常態化が目指されている
 PKO協力法に基づき、民主党政権時代の2012年から南スーダンに派遣されていた陸上自衛隊の施設部隊に、2016年3月に施行された安保法制に基づく「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」の任務が付与されたのは同年12月の部隊交代に際してであった。ちなみに、2017年5月の撤収まで、上記任務が実行されることはなかった。
 また、同じく安保法制によって可能となった改正自衛隊法95条の2による「合衆国軍隊等の部隊の武器等の防護のための武器の使用」は、2017年5月、護衛艦「いずも」、「さざなみ」に米海軍補給艦防護の任務が発令されて実際の運用が始まったが、政府が詳細な実態の公表を拒んでおり、その後の運用実績は判然としないものの、自衛隊による米軍防護が常態化しているのではないかと懸念される。
 以上のとおり、安保法制に基づいて自衛隊に付与された新任務の運用実績を積み重ね、既成事実化しようという動きが続いている。
 
2 戦時法制の準備が着々と
 2013年の特定秘密保護法、2014年の集団的自衛権行使容認の閣議決定、2015年の安保法制(施行は翌2016年)に続き、2017年6月には、広汎な国民の反対を押し切り、いわゆる共謀罪法(組織的犯罪処罰法の一部改正)が成立するに至った。
 このように、安倍政権5年間によって、戦時を想定した法制度が着々と整備されるに至り、いよいよその総仕上げとしての憲法「改正」、とりわけ9条と緊急事態条項が攻防の焦点となっている。
 
3 安倍改憲メッセージ
 2017年5月3日、安倍晋三首相は、党内手続すら経ることなく、9条1項、2項を残した上での自衛隊明記と高等教育の無償化を挙げた上で、東京オリンピックが開催される2020年までに憲法「改正」の施行を目指したいとのメッセージを唐突に発した(読売新聞+改憲集会へのビデオメッセージ)。
 自民党憲法改正推進本部では、安倍首相の意向に沿い、①9条(自衛隊明記)、②教育無償化の他に、③参議院合区解消、④緊急事態対応(議員の任期延長)を加えた4項目についての検討を急いでおり、3月25日の党大会までに「改正」案を一本化すると言われており、日本国憲法施行後、初めての改憲発議に至る可能性が非常に高まっている。
 
4 2017年10月の衆議院議員総選挙
 2016年の参議院議員通常選挙の結果、自民党公明党の与党に、日本維新の会など、改憲に積極的な政党を加えたいわゆる改憲勢力が、衆参両院で2/3以上の議席を確保するという状況となっていたが、2017年10月に行われた衆議院議員総選挙の結果、野党第一党民進党が、希望の党立憲民主党、無所属に3分裂し、野党共闘の足並みに乱れが生じた結果、自民党に公示前議席と同じ284議席追加公認を含む)の確保を許し、いわゆる改憲勢力が両議院の2/3を超えるという状況の継続を許す結果となった。
 ただこの選挙においても、公示1週間前に急遽結成された立憲民主党が、比例区で約1100万票の得票を集めたこと(自民党は約1850万票、公明党は700万票弱)、各地の市民連合が働きかけた野党共闘が、かなりの地域において効果を発揮していたことなど、今後に繋がる成果もあったことを忘れてはならない。
 
5 国会での改憲発議阻止の闘いと国民投票を見すえた闘い
 3で述べたとおり、自民党による憲法「改正」案の取りまとめは急ピッチで進んでいる。もっとも、自民党案が固まったからといって、そのまま憲法改正原案が国会に上程されるということにはならない。与党公明党とのすり合わせも必要であるし、野党からも一定数の賛同を得られるように働きかけが行われるだろう。
 私たちは、まずは、国会発議を阻止するための運動に全力で取り組む必要がある。全国各地の団体・個人が「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」(3000万人署名)に全力で取り組んでいるのは、何よりも発議阻止のためである。その際、以下の諸点への配慮は重要である。
 第1に、3000万人署名を呼びかける「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会に九条の会が加わった枠組みであることからも分かるように、これまで地道な活動を積み重ねてきた地域9条の会と平和団体労働組合などの諸団体との極力幅広い共同の取組を各地で具体化すべきこと。第2に、希望の党公明党を、留保なしに「改憲勢力」とラベリングして、わざわざ「あちらの陣営」に追いやるような愚は避けること。さらに、投票所から遠ざかってしまったが、政治に無関心ではない層への働きかけを特に重視すべきこと、などである。
 しかし、それでも改憲発議がなされてしまった場合には、全力をあげて国民投票での否決を目指さなければならない。日本国憲法の改正手続に関する法律では、国民投票運動に対する規制は非常にゆるやかであり、豊富な資金力を有する陣営に有利であると言われており、その弊害に対処する改正は必要であるが、他方、工夫次第では、これまでの選挙では声が届かなかった層への浸透が可能かもしれない。そのような国民投票を見すえた具体的な対策も準備が必要と考えるべきだろう。
 

守ろう9条 紀の川 市民の会 第10回総会(2014年3月)
議案書・情勢分析 第1項 から 
3の2 危機を克服するための展望(オプション
 
 今、日本が直面している危機を克服するためには、これまでの既成観念にとらわれていてはならず、極論すれば、「白い猫でも黒い猫でも、鼠をとる猫は良い猫だ」セオリーを受け容れる覚悟さえ必要かもしれない。
 そのような観点から見れば、現時点で、安倍政権を打倒できる(またその動機もある)最大の力の保有者は米国合衆国政府である。
 12月26日の靖国参拝で「失望した」という異例の声明を出したオバマ政権の忍耐がいつまで続くのか、ということは注視していく必要がある。おそらく、尖閣をめぐる日中間の緊張が高まれば高まるほど、米国政府の忍耐は限界に近づいていくだろう。
 一定レベルの日中間の緊張は米国の国益に適うとしても、実際に武力紛争にまで至り、米国が日中間の紛争に「巻き込まれる」事態を、米国政府は決して容認できないはずである(民主党であろうが共和党であろうが)。そのような事態は決定的に米国の国益を損なうからである。
 もっとも、これは究極の「他力本願」であり、しかも、日本の政権の命運は米国政府の思いのまま、という悪例をさらに1つ付け加えることの弊害も決して小さくないので、これをあてにする訳にはいかない。
 それから、これは「白猫黒猫」セオリーというよりは「猫の手も借りたい」セオリーかもしれないが、これまで「9条の会」の働きかけが弱かった保守的な層に訴えかける素材として、憲法99条の「憲法尊重擁護義務」を捨てて顧みない安倍政権と、誠実にこれを守ろうとされる天皇・皇后両陛下を対比させ、憲法の平和主義を守ることこそが、皇室の意向に沿うことなのだと説得することは十分考慮に値する。
 9条の会の中には「反皇室」の立場に立つ人もおり、そういう人たちにこの方策をお勧めする訳にはいかないが、日本国憲法が、個人の尊重(基本的人権の尊重)、民主主義、平和主義などと並び、象徴天皇制を採用したことを受容する者にとって、天皇・皇后両陛下が昨年(2013年)のそれぞれの誕生日にあたって公表・発言された文章・おことばは、周到に考え抜かれた「護憲論」であり、これを私たちの運動に活用するのは当然のことである。
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/「守ろう9条 紀の川 市民の会」総会議案書関連)
2014年1月30日
ある地域9条の会の総会議案書「情勢分析」パート(第1稿)
2015年3月25日
ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2014-2015」(第1稿)
2016年2月4日
ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2015-2016」(第1稿)
2017年3月14日
植松健一立命館大学教授(憲法学)講演のお知らせと「情勢分析2016-2017」(守ろう9条 紀の川 市民の会)