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院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」を視聴し、3/16国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチに声援を送る

 2018年3月9日配信(予定)のメルマガ金原.No.3101を転載します。
 
院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」を視聴し、3/16国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチに声援を送る
 
 昨日(3月8日)午前11時30分から、参議院議員会館において、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが主催する院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」が開催されました。
 本日、グリーンピース・ジャパンから発表されたプレスリリースの一部を引用します。
 
2018/03/09 「国連人権理の福島原発事故関連勧告、政府勧告受け入れを歓迎。今すぐ実行を」グリーンピース、避難者、人権弁護士らが訴え
(引用開始)
 国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、国際女性デーの昨日8日、福島県からの避難者の女性や人権弁護士らと開催した東京都内での勉強会で、国連の対日人権審査で出された東電福島第一原発事故関連の勧告について、日本政府が受け入れを表明したことを歓迎するとともに、勧告を受け入れるからには、ただちに実行するよう求めました。グリーンピースらは、この決定は数万人の避難者や市民社会にとって一つの勝利であるとの認識を示した一方、政府が、被害者に必要な支援をしているなど実情と異なる説明をしていることを非難し、今後、表面的な対応をとるのではなく、すみやかに政策を転換すべきと訴えました。
 昨年11月、国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)作業部会で、複数の国連加盟国が日本政府に、区域外避難者を含む被害者への住宅面、経済面、健康面等の支援の継続、許容放射線量を年間1ミリシーベルトに戻すこと、帰還に関する意思決定プロセスへの住民参加の促進等を勧告しました。特に女性や子どもの権利の尊重の必要性が強調されています。日本政府は5日、これらの4つの勧告の受け入れとコメントを公表しました。
(引用終わり)
 
 ところで、2017年11月14日、国連人権理事会による日本の普遍的定期的審査(UPR)作業部会での日本政府に対する勧告は、上記リリースで言及されている「東電福島第一原発事故関連の勧告」を含め、全部で217項目にも及びましたが、日本政府は、勧告を受け入れるか否かについての態度を文書(3月1日付)で明らかにしました。
 これを読むと、1つ1つの項目ごとに、
  Note. 留意する。
  Accept to follow up. 受諾する。
  Partially accept to follow up. 部分的に受諾する。
  Not accept. 受諾しない。
の別が明示されています。
 メディアでは、どうしても「受諾しない」項目を強調した報道になるのはやむを得ないところですが、以下のような記事を目に留めた方もおられるでしょう。
 
東京新聞=共同 2018年3月8日 朝刊
報道の自由 勧告を拒否 国連人権理審査で日本
(引用開始)  
ジュネーブ=共同】国連人権理事会による日本の人権状況の審査について、日本政府は七日までに、特定秘密保護法などで萎縮が指摘される「報道の自由」に関する勧告を拒否した。米国やオーストリアなどは、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の改正などを通じメディアの独立性を一層確保するよう求めていた。
 昨年十一月の作業部会で各国から出された二百十七項目の勧告を受諾するかどうか項目ごとに見解を公表した。百四十五項目を受け入れたが、死刑廃止要求など三十四項目を拒否、三十八項目は一部受け入れや留意とした。従軍慰安婦問題では、中国などが要求した元慰安婦への誠意ある謝罪と補償の勧告を拒否。韓国が要求した公正な歴史教育の実施に対しては留意するとした。
 人権理は今月十六日の会合で日本の見解を反映した報告書を最終的な勧告として採択する予定。勧告に法的拘束力はない。
 ドイツなどが要請した、東京電力福島第一原発事故後の住民に対する支援継続に関する勧告は受け入れた。沖縄の人々など少数派が社会的権利を享受できるよう対策強化を求めたペルーの勧告に対しては「アイヌ民族のみを先住民と認めている」として一部受け入れを表明した。
 広島、長崎の被爆二世の健康問題などでの救済措置拡大と、核兵器禁止条約の署名を求めた勧告はいずれも拒否した。
(引用終わり)
 
 ところで、昨日開かれた院内集会には、東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表で原発賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子さんも登壇してスピーチされていましたが、これは、グリーンピースが、国連の中でNGOが持つ最高位の「総合協議資格」を生かし、国連人権理事会本会合でのスピーカー申請を行った結果、森松さんが、3月16日にジュネーブで行われる国連人権理事会本会合でスピーチをすることが決定したことによります。
 2月22日に原発賠償関西訴訟の第17回弁論期日に出廷した際、森松さんから「多分国連人権理事会でスピーチできそうです」という話を伺ったのですが、その2日後にグリーンピース・ジャパンから正式決定のリリースが出されましたので(2018/02/24 母子避難中の森松明希子さん、国連人権理事会でのスピーチ決定ーー人権勧告への日本政府態度表明の場で、福島原発事故避難者の実情を訴え)、そのことを報道で知った方もおられるでしょう。
  国連人権理事会でのスピーチは森松さんだけが行いますが、サンドリからは、副代表の車田麻美さんも同行されます。今日、お二人から頂戴した手紙には、以下のように書かれていました。
 
「人権理事会でのスピーチ後は、フランスのグルノーブル、ヴァランス、リヨンなど、原発銀座と呼ばれる地域の方たちとの交流や講演会などを予定しております。今私たちの抱えている深刻な問題をより多くの世界の人々へ知っていただくためにできるかぎりのアピールをしてまいりたいと思います。」
 
 是非、体調には気をつけながら、精一杯のアピールをしてきていただきたいと願っています。
 そして、サンドリから【カンパのお願い】が呼びかけられています。これによると、関東の母子避難1家族(3人)とサンドリの2家族5人の合計3家族8人での渡欧のようです。ご協力をよろしくお願いします。
 
 ところで、サンドリ代表の森松さんについては、このブログでもたびたび取り上げていますが、副代表の車田麻美さんについては、実名をあげてご紹介したことは一度もありませんでした。森松さんのように、実名を公表してメディアに露出するというのは、心ないバッシングの矢面に立つ覚悟がいることで、多くの避難者はメディアやインターネットでの実名公表はどうしても避けることになります。
 車田さんがいつから実名公表に踏み切っていたのかは存じ上げないのですが、サンドリのホームページを閲覧したところ、「2018年3月9日(金)朝日新聞朝刊~東日本大震災7年 ふるさとを離れて 上~」で、車田さんを写真入りで大きく取り上げた朝日新聞の記事を紹介していることに気がつきました。
 私の事務所でも朝日新聞を定期購読していますが、この記事は見当たらないので、大阪版にだけ掲載されたのかもしれません。
 その記事の冒頭部分を引用します。
 
(引用開始)
 あの日、1歳の息子と福島県須賀川市の自宅2階にいました。外は雪模様でした。携帯電話から聞き慣れない警告音。地震が来る、どうしよう。バターン、ドーンという大きな音。ピアノが傾き、ドアが外れ、200㌔ある暖房機が倒れました。震度6強でした。
 夫は仕事でいません。息子と約20㌔離れた三春町の実家に避難しました。翌日、東京電力福島第一原発で爆発が起きました。原発まで約40㌔の三春町は町民に安定ヨウ素剤を配り始めました。
 ヨウ素剤?初めて聞く薬でした。町の文書に「安定ヨウ素剤には放射能による甲状腺ガンの発生抑止効果がある」と書いてある。「放射能」という文字に、ただごとではないと震えました。息子の分だけでも手に入れようとしましたが、住民票がなく、だめでした。親としてふがいなく、少しでも遠くへ逃げようと決めました。
(引用終わり)
 
 「三春町の実家に避難」「安定ヨウ素剤」「息子の分だけでも」「住民票がなく」「だめでした」「親としてふがいなく」という文字を追いながら、私がかつて書いた以下のブログを思い出してくださった方がどれだけいますかね。
 
2013年8月31日
『20年後のあなたへ-東日本大震災避難ママ体験手記集-』を読んで
2014年4月30日
もう一度「安定ヨウ素剤の予防服用」を考える
2014年12月18日
「知ること」は「行うこと」~『20年後のあなたへ~東日本大震災避難ママ体験手記集~』をあらためてお薦めします
2015年4月11日
原発賠償関西訴訟(第1回、第2回)を模擬法廷・報告会の動画で振り返る(付・森松明希子原告団代表が陳述した意見)
 
 私は、車田さんの体験を、ざっと思い出した限りでも、以上の4回ブログで取り上げています。それだけ大きな衝撃を受けた手記でした。
 上記朝日新聞の記事の末尾で、「2月には松原市の中学校の防災の授業で体験を話す機会がありました。関西の私大からも授業で話をしてとの依頼が来ました。原発事故からの避難の実態を話すことで、若い人たちが日本のエネルギー問題に関心を持っていただけたらと願っています。」とあるのを読んで、「良かった」と思いました(まるで身内のような気分ですが)。
 森松さん、車田さんの連名でいただいたお手紙には、「帰国後は、何らかの形で皆さまにご報告させていただきたいと思っております。」と書かれていましたので、楽しみに待ちたいと思います。
 
 さて、最後に、冒頭でご紹介した院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」の動画を、グリーンピース・ジャパンによる各登壇者の発言要約と併せてご紹介します。動画は、「多分、三輪祐児さんならきっと撮影してくださっているだろう」という期待に違わず、UPLANにアップされた動画をご紹介します。
 
20180308 UPLAN 国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?(1時間23分)
冒頭~ 普遍的定期的審査(UPR)の概要説明(被告人リーンピース・ジャパン広報担当)
11分~ 松本徳子氏:避難の協同センター代表世話人福島県郡山市から神奈川県に避難中
福島県は、区域外避難者への唯一の支援策である福島県民健康調査を縮小しようとしています。子を持つ親として、適切な健康モニタリングを継続してほしいと切に願います。また、山形県での避難者の追い出し訴訟のようなことが、関東やほかの地域でも起こらないか、避難者たちは非常に不安に感じています」
24分~ 伊藤和子氏:弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
「いま世界では、声を上げた女性の声を聞いていこうという潮流がありますが、避難している女性やこどもの苦難、苦しみながら福島県で子育てをいているお母さんたちの声は、残念ながら政治に反映されていません。事故後政府は、複数の国連勧告を受けてきたにもかかわらず、無視し続けています。表面的な態度表明にならないよう、これからが重要です」
35分~ 海渡雄一氏:弁護士、日弁連UPRワーキング委員、多くの福島原発訴訟を手がける
「日本政府が国連の勧告を受け入れることを慎重に歓迎します。政府は勧告を受け入れさえすれば十分だと思っているのかもしれませんが、それは誤りです。4カ国が日本政府に求めている変革を、政府が適切に実行していくのかどうか、私たちは注視していきます」
47分~ ヤン・ヴァンダ・プッタ: グリーンピース・ベルギー 放射線防護スペシャリスト 
「日本政府は、許容放射線量を年間 1ミリシーベルト以下に戻すという勧告を受け入れました。政府は、『長期目標』としてきた年間1ミリシーベルトの達成期限を、これまで明らかにしてきませんでした。しかし、原発事故からすでに7年が経過しているいまがその時です。もし、1 ミリシーベルトを遵守するなら、いまだ放射線レベルが国際基準の数倍を超えるような飯舘村浪江町の避難指示は解除はできないはずです」
1時間13分~ 森松明希子氏:東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表、原発賠償関西訴訟原告団代表、原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表、福島県郡山市から大阪府に母子避難中
「過去7年間、私たちはさまざまな人権侵害を経験しました。 私たちが受けている人権侵害や差別は、政府の私たちに対する態度をそのまま反映しています。それでも、私たちは放射線から逃れる権利を行使してきました。政府が今回、国連の勧告を受け入れたことが、社会が変わっていく出発点になると信じたいです」