2018年3月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3106を転載します。
立憲デモクラシーの会の呼びかけ人には、憲法学、政治学(だけではありませんが)を中心として、著名な学者が綺羅星のごとく並んでいますが、その中でも、東京大学の石川健治教授(憲法学)は代表的なスター級の学者でしょう(と言われてもご本人は喜ばれないでしょうが)。
同会が主催する立憲デモクラシー講座の最初の講師が石川教授でした。その時の演題「「一億総活躍」思想の深層を探る―佐々木惣一が憲法13条を「読む」―」を一瞥するだけでも、「アカデミックだなあ」と感心する(もしかすると「敬遠する」?)方も多いでしょう。もっとも、これでは何のことか分からないのではと考えた私は、ブログで紹介するにあたり、「佐々木惣一が発見した「国民の存在権」(憲法13条)と自民党改憲案」と勝手に「改題」してしまいましたが(余計に分かりにくくなった?)。
ところで、立憲デモクラシー講座が第Ⅲ期に入っているのと併行しながら、同会が、デモクラシータイムスと連携してYouTube版・立憲デモクラシー講座をスタートさせたことは、既に2週間ほど前のブログでご紹介しました(YouTube版・立憲デモクラシー講座が始まった~第1回(山口二郎氏)、第2回(杉田敦氏)、第3回(長谷部恭男氏)のご紹介/2018年2月18日)。
また、第2回の杉田敦氏の動画について、【音声改良版】がアップされましたので、これもあらためてご紹介しました(YouTube版・立憲デモクラシー講座第2回「立憲政治とは何か」(杉田敦法政大学教授)のご紹介~【音声改良版】再アップ/2018年3月12日)。
第3回までの山口二郎氏(法政大学教授・政治学)、杉田敦氏(法政大学教授・政治学)、長谷部恭男氏(早稲田大学教授・憲法学)に続き、いよいよ第4回~第6回(収録は2018年2月15日)に、石川健治教授が登場し、「9条」について語っておられます。
これまでと同様、デモクラシータイムスの升味佐江子(ますみ・さえこ)さんを聴き手として、講師が分かりやすくレクチュアーするという形式で進行します。
これまでの講座は、1時間以内程度が目安となっていましたが、今回の石川教授のお話は、力が入ったからか、第1部(第4回)45分、第2部(第5回)30分、第3部(第6回)63分のトータル2時間18分という「大河」講義となっています。
レベルは・・・正直言って「高い」と思います。ただ「法学部を出ました」とか、「大学の教養課程で憲法を受講したことがあります」というだけでは、歯が立たないかもしれません。
けれども、この間の安倍政権による立憲主義や9条に対する攻撃を何とか跳ね返そうと奮闘を続け、おりおりの情勢についての学習を積み重ねて来られた方であれば、きっと強い問題意識をもって受講できるでしょうし、必ずや得るところが多いと確信します。
以下、デモクラシータイムスによる紹介文を添えて3本の動画をご紹介します。
「2018/02/22 に公開
①から③まで、大河講義をお楽しみください。
第1回の今回は、constructionの根源的意味から、立憲・形式・実質の緊張関係、明治憲法の成り立ちを立憲主義、美濃部達吉を中心とする、より立憲的実質と組んで立憲を支えようとする試みが、同じく実質であった統帥権の独立をも取り込むこととなり崩壊した過程と戦後の立憲が形式憲法と組んで支えられてきた状況をおさらいします。そして、憲法9条が、国内的に自由の確保につながる立憲を支えるとともに、対外的には仮想敵を前提とする同盟政策を否定し共に生きる安全保障政策をとることを定めたという価値に至ります。
ぜひ、かぶりつきでお聞きください。」
「2018/03/01 に公開
9条に今の自衛隊の存在を認める項目を一つ加えるだけ、何も変わりませんよ、という言葉にごまかされそうになります。
しかし、9条を変えて自衛隊を書き込むことは、憲法の立憲主義の側面を変質させます。「外交」ではなく「軍事」の選択肢を権力に正面から認め、「軍事」を例外から原則に転換すること。それが、権力分立と人権保障によって人々の私的自由を守ってきた立憲主義の変質に繋がる、そのことを考えなければならない。石川先生の講義は、さらに熱を帯びます。私たちの私的な領域を確保し、自由を守ってきた立憲主義の思想は、単純な多数決による決定に警鐘を鳴らし、民主主義の暴走を抑えてきました。その背景を抜きに、9条の改正は語れません。
収録は、2018年2月15日」
「2018/03/13 に公開
立憲主義は、多様な価値観の共存を維持するために、私的な自由の領域と公共空間を峻別し、権力の圧迫に抗し、他方で人々に公共空間に私的な価値観を持ち込まないことを求めます。どんなに素晴らしい価値観であっても、それを公が個人に押し付けることはできません。
そうすると、すべての戦争を否定し絶対的平和主義を身上とする人も、この考えを公共空間に持ち出し、他人に押し付けることはできない。自分が正しいと考える思想も、公共空間に持ち出して他人に強要することはできない、たとえそれが9条であっても(そうなんですか!)
私的な領域を守るために、立憲主義は公共空間の権力を細分化し分立させる。軍権、宗教、金権を分離することで、権力が私的領域を侵害することを止めてきた。9条は、権力から軍権を奪い、そのことで私的領域の自由を守っている。
他方で、9条は300万の国民とアジアの2000万の人々の犠牲の上にあり、平和主義の象徴であるという考え方が、絶えず境界線を押し破って私的領域に侵入してこようとする公共空間・権力の圧力を押し戻す重要な熱源であった・・・。
立憲主義の常識と9条の持つ意味・・・刺激的な講義でした。」
(余談)
その後、放送大学で憲法を受講したことはないのですが(あまり期待もしていないので)、本当に「放送大学超える」かどうか気になる方は、放送大学OCW(オープン・コース・ウェア)で全15回の講義のうちの1回分だけ公開されている岡田信弘客員教授(北海道大学名誉教授)「事例から学ぶ日本国憲法('13)」「第3回_選挙制度と政党」(45分)を視聴してみてください。
(弁護士・金原徹雄のブログから/YouTube版・立憲デモクラシー講座)
2018年2月18日
2018年3月12日
(弁護士・金原徹雄のブログから/立憲デモクラシー講座)
2015年11月15日
2015年12月12日
山口二郎法政大学教授による「戦後70年目の日本政治」一応の総括~12/11立憲デモクラシー講座 第3回)
2016年1月8日
中野晃一上智大学教授による「グローバルな寡頭支配vs.立憲デモクラシー」~1/8立憲デモクラシー講座第4回)
2016年1月31日
2016年3月28日
2016年4月11日
2016年4月25日
2016年5月15日
2016年6月16日
2016年10月22日
2016年11月21日
2016年12月17日
2017年1月16日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第4回・山口二郎法政大学教授「民主主義と多数決」のご紹介
2017年3月11日
2017年5月5日
2017年6月29日
2017年12月17日
2018年1月30日
2018年3月3日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第3回・石田淳氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)「安全保障のディレンマと立憲デモクラシー」のご紹介