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原発賠償京都訴訟「判決要旨」(2018年3月15日)を読む(付・記者会見&報告集会の動画紹介)

 2018年3月17日配信(予定)のメルマガ金原No.3109を転載します。
 
原発賠償京都訴訟「判決要旨」(2018年3月15日)を読む(付・記者会見&報告集会の動画紹介)
 
日本経済新聞=共同 2018/3/15 10:36(2018/3/15 11:39更新)
原発避難、国と東電に賠償命令 京都地裁判決
(抜粋引用開始)
 東京電力福島第1原発事故の影響で避難を強いられたとして、福島県などから京都府に避難した住民174人が国と東電に慰謝料など約8億4660万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は15日、国と東電の責任を認め、110人に対する約1億1千万円の支払いを命じた。全国で約30ある同種の集団訴訟では5件目の判決で、国の責任を認めたのは3件目。
 津波対策を巡る国と東電の責任の有無や範囲のほか、原告の大半を占める自主避難者が事故前に住んでいた避難指示区域外での低線量被曝(ひばく)の危険性が主な争点。
 浅見宣義裁判長は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した「長期評価」に基づき、国が津波をある程度予見することは可能で、東電に対して対応を命じなかったのは違法と指摘。避難指示に基づく避難でなくとも、個人ごとの当時の状況によっては自主的に避難を決断するのも社会通念上、合理性があると判断した。
 原告側弁護団は原告のうち64人の請求が棄却された点などを不服として控訴する意向を示した。原子力規制庁は「関係省庁で判決内容を踏まえ、対処方針を検討することになる」とコメントし、東京電力ホールディングスも「判決内容を精査し対応を検討する」としている。
 昨年3月の前橋地裁と同年10月の福島地裁の判決では、国と東電の責任を認めたが、同年9月の千葉地裁は東電にだけ賠償を命じ、国への請求は退けた。今年2月の東京地裁判決は東電の責任を認めたが、国は被告になっていなかった。
 京都訴訟の原告は事故当時の福島、宮城、茨城、栃木、千葉各県の住民。うち29人は東電が賠償対象とした区域の外に住んでいた。健康への影響を恐れ、大半が国の指示によらず自主的に避難せざるを得なかったとして、1人当たり原則550万円を求めた。
(略)
(引用終わり)
 
毎日新聞 2018年3月15日 10時26分(最終更新 3月15日 23時49分)
原発避難訴訟 国と東電の賠償責任認める 京都地裁
(抜粋引用開始)
国の責任、司法判断として定着しつつある
 淡路剛久・立教大名誉教授(民法・環境法)の話 判決は、自主避難をせざるをえなかった原告の個別事情を踏まえ、避難の相当性を認めた。被害実態に必ずしも即していない中間指針に基づく賠償を司法的に是正する内容で、重要な判断だ。一方、東電からの賠償額で十分として請求を棄却された人がかなりおり、裁判所の損害認定額が低かったと感じる。国の責任は前橋、福島両地裁に続き、京都地裁でも認められ、司法判断として定着しつつある。国は賠償の基準や期間、さらには地域復興についても、政策のあり方を見直す必要があるのではないか。
避難の判断基準、司法がより具体的に示す
 除本理史(よけもとまさふみ)・大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話 避難が合理的かどうかの判断基準を、司法がより具体的に示した。中間指針で賠償対象となった区域の外でも、司法が独自に賠償を認定する流れが定着してきた点も注目すべきだ。ただ、放射性物質の汚染による不安が長く続いていることを考えると、避難の時期を12年4月1日までで区切ったのは短すぎる。
(引用終わり)
 
 2013年9月17日、福島などから京都に避難している33世帯91人の方が、国と東京電力に対する損害賠償を求めて京都地方裁判所に提訴した原発賠償京都訴訟。その後、2014年3月に第二次提訴が、2015年7がつに第3次提訴が行われ、2017年9月29日に結審しました。
 関西で国と東電の責任を追及して提訴された原発賠償請求訴訟は、他に、ひょうご訴訟(神戸地裁)と関西訴訟(大阪地裁)がありますが、京都訴訟も含め、この3つの訴訟の原告団弁護団、支援団体は、密接な連携をとりながら訴訟を続けてきました。私自身、原発賠償関西訴訟の弁護団の一員として大阪地裁に出廷した際や、弁論終結後の進行協議の際には、京都訴訟弁護団事務局長の田辺保雄弁護士の姿をお見かけしないことはありませんでした。
 その京都訴訟について、関西の先陣を切り、一昨日(3月15日)午前10時から、判決が言い渡されました。
 判決が言い渡されて間がなく、ざっとした印象では、避難の相当性を認めるべき基準(避難基準)が厳し過ぎるのではないかとか、認定された損害額のレベルが低過ぎるのではないかというような印象は受けますが、早急に詳細な判決の分析が必要でしょう。
 けれども、毎日新聞へのコメントで淡路剛久立教大名誉教授が述べておられるとおり、国の責任を認める判決の流れは(京都の判決で4件中3件、翌日の東京地裁でも国の責任が認められたので5件中4件)確実に「定着しつつある」という評価となりますので、その意義は大きいと思います。
 
 以下に、この判決を考えるための素材として、IWJ京都による中継動画「原発賠償京都訴訟判決日開廷前後の裁判所前の模様及び記者会見&報告集会」と、「原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会」ホームページに掲載された「判決要旨」をご紹介します。
 IWJ京都は、これまでも原発賠償京都訴訟関連の中継に取り組んでくださっており、また「原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会」ホームページに、素早くテキスト化された「判決要旨」が掲載されたことも素晴らしいことだと思います。両団体に心から感謝します。
 
IWJ京都
原発賠償京都訴訟判決日開廷前後の裁判所前の模様及び記者会見&報告集会 2018.3.15
記事公開日:2018.3.16取材地:京都府 動画
 
原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会」ホームページより
 
判決(PDF・477頁)
判決・別冊 当事者の主張(PDF・293頁)
 
判決要旨(PDF)
 
判決要旨(テキスト)
(引用開始)
平成25年(ワ)第3053号 損害賠償請求事件
平成26年(ワ)第649号 損害賠償請求事件
平成27年(ワ)第2241号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成29年9月29日
                                主     文
1 被告らは,別紙認容額等一覧表の各認容額欄に金額の記載がある各原告に対し,各自,同一覧表の各認容額欄記載の金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 別紙認容額等一覧表の各認容額欄と各請求額欄の金額が異なる記載の原告らの被告らに対するその余の請求及び同一覧表の各認容額欄に「棄却」の記載がある原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用の負担は,以下のとおりとする。
(1)原告番号1,10-2及び25-2と被告らとの間にそれぞれ生じた費用は,全て被告らの負担とする。
(2)別紙認容額等一覧表の各認容額欄に金額の記載がある各原告(上記(1)の原告らを除く。)と被告らとの間にそれぞれ生じた費用は,各原告に対応する別紙認容額等一覧表の「被告ら負担割合」欄記載の割合を被告らの負担とし,その余を各原告の負担とする。
(3)別紙認容額等一覧表の各認容額欄に「棄却」の記載がある各原告と被告らとの間にそれぞれ生じた費用は,全て各原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 ただし,被告らが,それぞれ,別紙認容額等一覧表の担保額欄に金額の記載がある各原告に対し,同金員の担保を供するときは,当該担保を供した被告は,当該原告との関係において,その仮執行を免れることができる。
                            事 実 及 び 理 由
第1 事案の概要等
 本件は,平成23年3月11日,被告東電が設置し運営する福島第一原子力発電所福島第一原発)1~4号機において,東北地方太平洋沖地震(本件地震)及びこれに伴う津波(本件津波)の影響で,放射性物質が放出される事故(本件事故)が発生したことにより,原告らがそれぞれ本件事故当時の居住地で生活を送ることが困難となったため,避難を余儀なくされ,避難費用等の損害が生じたとともに,精神的苦痛も被ったと主張して,原告らが,被告東電に対しては,民法709条及び原賠法3条1項に基づき,被告国に対しては,国賠法1条1項に基づき,それぞれ損害賠償を求める事案である。
第2 本件における主たる争点
1 予見可能性の有無について(争点①)
2 被告東電の責任について(争点②)
3 被告国の責任について(争点③)
4 避難の相当性について(争点④)
5 損害各論について(争点⑤)
第3 当裁判所の判断
1 予見可能性の有無について(争点①)
(1)予見可能性が要求される趣旨からすれば,予見の対象となる危険は,回避措置をとりうる程度に具体的であれば足りるというべきであり,結果回避可能性の問題は別としても,本件における予見対象は,福島第一原発1~4号機付近において,O.P.(小名浜港工事基準水面)+10mを超える津波が到来することで足りる。
(2)原子力発電所を管理する被告東電や原子力発電所の施設の安全性に関して監督権限を有している経済産業大臣は,常に最新の知見に注意を払い,現在の原子力発電所の安全性について,万が一でも事故が発生しないといえる程度にあるのかどうか,常に再検討することが求められている。
 ここでいう最新の知見は,統一的通説的見解でなければ採用することができないというわけではない。長期評価は,地震に関する調査,分析,評価を所掌事務とする被告国の専門機関である地震本部が,地震防災のために公表した見解であり,地震又は津波に関する学者や民間団体の一見解とは重要性が明らかに異なり,単に学者間で異論があるという理由で採用に値しない,少なくとも検討にも値しないということはできない。むしろ,このような公式的見解については,地震及び津波の被害がどの程度の大きさになり得るのか,被害発生の確率はどうかなどについて,公式的見解に疑問点があればその払拭も含めて,積極的に検討を行うことにより,さらなる原子炉施設の安全性の向上を図るべきであるといえる。
(3)そうすると,平成14年2月に津波評価技術が刊行された後,同年7月に長期評価が公表されており,三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの区域における地震発生の可能性が指摘されているのであるから,被告らは,このような波源に関する最新でしかも公的な知見をあてはめた場合に,津波評価がどのような結果となるのかを算出すべきであったといえる。それをしていれば,それぞれO.P.+10mを超える津波が到来することを予見できたといえる。
(4)シビアアクシデント対策の義務は,地震津波予見可能性を前提にした回避義務と同様になると解される。そうすると,地震津波予見可能性を認める以上,シビアアクシデント対策の義務の予見可能性及び回避義務を独立して論じる必要はない。ただし,被告国の責任については,規制権限不行使の違法性を判断するには,被告国の規制権限の目的,権限の性質など権限行使が期待される諸事情を考慮することになることから,シビアアクシデント対策が求められる事情(設計基準事象を逸脱する外部事象の発生など)を考慮することになる。
2 被告東電の責任について(争点②)
(1)慰謝料の増額事由としての過失の有無
 被告東電が原子炉施設を安全に保つために果たすべき義務は,津波への対応だけでなく,多種多様のものが含まれており,高度な注意義務を負っていることに加えて,内部溢水への対応を講じたり,溢水勉強会をはじめとした勉強会や津波防災の検討を行ったりしており,被告東電が津波に対する対応を怠ったことが,義務を果たすには十分ではなかったとはいえる。しかし,これで慰謝料の増額事由とはならず,同事由となると解される故意と同視できる重過失にあたるとまでは認めることはできない。
(2)民法709条の請求について
 被告東電が,原賠法に基づく責任を負うことがあったとしても,原賠法の趣旨に鑑みれば,原子力損害に関し,民法上の一般不法行為責任を追及することはできない。
3 被告国の責任について(争点③)
(1)権限不行使の違法について
 電気事業法の文言上も,技術基準適合命令が詳細設計の場合に限ると明文で規定されているとは言い難く,実質的に考えても,原子炉施設の安全を確保するためには,新しい知見に基づいて基本設計部分についても対応しなければならない必要性があることからすれば,段階的安全規制論を前提としても,経済産業大臣は,電気事業法40条の技術基準適合命令を行使する権限を有していた。仮に,被告国のような解釈を前提とし,上記権限を有していなかったとしても,経済産業大臣は行政指導により基本設計部分についての変更を求めた上で,被告東電が従わない場合には,炉規法に基づく設置許可を取り消すか,明文上の規定はないものの,取消権限の分量的一部として,原子炉の運転の一時停止を命じることができると解すべきである。
 そして,津波到来の危険が間近に迫っているというような緊急状況ではなかったとはいえ,①地震津波の経験やそれへの被告国の対応等を通して,防災意識が高まってきた中で,被告国の機関である地震本部が,防災対策のためにとりまとめた公式的見解である長期評価の見解によれば,津波到来の危険をある程度具体的に予見することは十分可能であったこと,②原子炉施設は高度な安全性が要求されていること,③予見の内容が自然科学的知見を要するもので,その性質上確実な予測までは期待できないこと,④原子力災害は一旦起きれば取り返しがつかない重大な被害を生じ得ること,⑤権限行使にあたっては被告東電の不利益を考える必要があるものの,権限行使は困難ではなかったこと,⑥被害の防止の措置は一般人にはなしえず,経済産業大臣の権限行使によってしかなし得ないこと,⑦施設周辺の住民を中心とした生命,身体,財産等の具体的利益を保護する電気事業法及び炉規法の各趣旨などによると,どれほど遅くとも,平成18年末時点においては,経済産業大臣は権限行使をすべきであり,そうすれば本件事故を回避できた可能性は高いといえる。
 したがって,平成14年以後,遅くとも平成18年末頃時点においては,経済産業大臣電気事業法40条に基づく技術基準適合命令又は炉規法上の権限を行使して,被告東電に対して,長期評価の見解に基づく津波高の試算をさせるとともに,敷地高を超える津波へ対応をすることを命じなかったことは,その規制権限を付与された目的,権限の性質等に照らし,その許容される程度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるから,経済産業大臣の権限不行使は,職務上の法的義務に反し違法であると認められる。
 また,経済産業大臣に過失も認められることからすれば,被告国は,国賠法1条1項に基づき賠償する責任を負う。
(2)責任割合について
 被告東電は原賠法3粂1項に基づく責任を,被告国は国賠法1条1項に基づく責任を,それぞれ負うところ,いずれもが各原告に対する損害全額に寄与したものと認められる。そうすると,共同不法行為の成否にかかわらず,賠償責任としても被告国は,被告東電とともに,原告らに対して全額について責任を負う。福島第一原発1~4号機の安全管理については,一次的に責任を負うのは,事業者である被告東電であり,被告国は二次的,後見的責任であるという側面があるものの,これは被告らの間における責任負担割合を決める事情として考慮されるものに過ぎず,それを被告らの各原告に対する責任にも及ぼす法律上の根拠にはならない。
4 避難の相当性について(争点④)
(1)低線量被ばくに関する科学的知見は,未解明の部分が多く,LNTモデルが科学的に実証されたものとはいえず,1mSvの被ばくによる健康影響は明らかでないことに加えて,国内法において年間1mSv等の線量の基準が取り入れられることとなったICRP勧告も,線量限度を設けることは政策上の目安であるなどというものであるから,空間線量が年間1mSvを超える地域からの避難及び避難継続は全て相当であるとする原告らの主張を採用することはできない。
 一方,年間追加被ばく20mSvという基準は,政府による避難指示を行う基準としては,一応合理性を有する基準であるということができるが,政府による避難指示を行う基準が,そのまま避難の相当性を判断する基準ともなり得ない。
 避難指示による避難は,当然,本件事故と相当因果関係のある避難であるといえるものの,そうでない避難であっても,個々人の属性や置かれた状況によっては,各自がリスクを考慮した上で避難を決断したとしても,社会通念上,相当である場合はあり得るというべきである。
(2)避難の相当性の判断基準
 避難の相当性を認めるべきは,下記ア~ウの場合(避難基準)である。
ア 本件事故時,中間指針が定める避難指示等対象区域に居住していた者が避難した場合。
イ 本件事故時,中間指針追補の定める自主的避難等対象区域に居住しており,かつ,以下の(ア)又は(イ)のいずれかの条件を満たす場合。
(ア)平成24年4月1日までに避難したこと。ただし,妊婦又は子どもを伴わない場合には,避難時期を別途考慮する。
(イ)本件事故時,同居していた妊婦又は子どもが上記(ア)本文の条件を満たしており,当該妊婦又は子どもの避難から2年以内に,その妊婦又は子どもと同居するため,その妊婦の配偶者又はその子どもの両親が避難したこと。
ウ 本件事故時,自主的避難等対象区域外に居住していたが,個別具体的事情により,避難基準イの場合と同等の場合又は避難基準イの場合に準じる場合。
 個別具体的事情としては,①福島第一原発からの距離,②避難指示等対象区域との近接性,③政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報,④自己の居住する市町村の自主的避難の状況(自主的避難者の多寡など),⑤避難を実行した時期(本件事故当初かその後か),⑥自主的避難等対象区域との近接性のほか,⑦避難した世帯に子どもや放射線の影響を特に懸念しなければならない事情を持つ者がいることなどの種々の要素を考慮して,判断する。
(3)(2)の基準により,避難の相当性を認めた原告は143名,一部認めた原告は6名,認めなかった原告は15名,その余は避難していないか,避難時胎児であった者である。
5 損害各論について(争点⑤)
(1)避難指示等の有無にかかわらず,避難が相当の場合には,避難先での生活継続による損害も,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。
 避難指示等による避難の場合には,避難指示が続く限りは,その間の避難生活に伴う損害は,当然本件事故と相当因果関係のある損害ということができる。避難指示等の解除後も相応の期間の避難生活による損害は,やむを得ないものであって,本件事故と相当因果関係のある損害と評価する。
(2)自主的避難の場合であったとしても,避難後,避難生活を継続することはやむを得ないから,それによって生じた損害も,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。ただし,避難の相当性で認定した避難時から2年経過するまでに生じた損害について,本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
(3)訴訟においては,個別の証拠によって損害を立証することが求められるのであって,直接請求やADR手続において認められた額がそのまま最低限の賠償につながるとまで認めることはできない。ただし,直接請求やADR手続における賠償額に相当する損害が原告らにも生じているであろうことが事実上推認されるという限度においては,これらの手続において利用されている基準等を基にすることは許される。ただし,その位置づけは補充的なものである。
 既にADR手続において損害と認められた損害については,一定の資料に基づいてなされていることなどから,原告らに生じた損害を認定するにあたり,前提として考慮するのが相当である。
(4)上記の考えを具体化し,各損寮費目について,個別に認定し,既払額を控除し,原告数174名のうち,一部認容を含めて請求を認容した原告は110名,棄却した原告が64名であり,合計すると,請求額は約8億5000万円,認容額は約1億1000万円である。
(引用終わり)