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福島原発被害東京訴訟の判決を受けて~原告団・弁護団の「声明」を読み、報告集会の動画を視聴する

 2018年3月18日配信(予定)のメルマガ金原No.3110を転載します。
 
福島原発被害東京訴訟の判決を受けて~原告団弁護団の「声明」を読み、報告集会の動画を視聴する
 
日本経済新聞 2018/3/16 19:28
原発事故、回避できた」 東京地裁も国に賠償命令
(抜粋引用開始)
 東京電力福島第1原子力発電所事故を巡り、福島県内から首都圏への自主避難者ら47人が国と東電に慰謝料など約6億3千万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が16日、東京地裁であった。水野有子裁判長は国と東電の双方の責任を認め、原告42人に対して約5900万円の支払いを命じた。
 国と東電に賠償を求めた集団訴訟の判決は5件目で、東京地裁を含めた4件で国が敗訴。地裁段階では事故を防げなかった国の責任を認める流れが定着しつつある。先行する訴訟はいずれも控訴審で争われており、高裁の判断が注目される。
 水野裁判長は判決理由で、2002年に政府の地震調査研究推進本部がまとめた巨大地震の「長期評価」によって、国や東電が02年中には10メートル超の津波の襲来を予見すべきだったと指摘。「原子炉建屋の水密化などの対策で原発事故を回避できた」と述べ、対策を取らせなかった国の対応を違法とした。
 訴訟では、避難指示区域外からの自主避難者に対する慰謝料の金額も争われた。東電などは、国の指針に基づく慰謝料(原則1人12万円)を超える賠償責任はないと主張した。
 これに対し、判決は「健康被害の危険から自主避難した判断は合理的だ」と指摘。「原告らは居住地を自由な意思で決める権利を侵害された」として最大200万円の慰謝料を認めた。家財の購入費なども含めた賠償額は1人当たり42万~約406万円とした。
 原告側の弁護団によると、判決は原告4人が避難後に小学校でいじめを受けたと認定し、慰謝料を増額した。
(略)
 16日の判決後に記者会見した弁護団の中川素充弁護士は「国の責任は揺るぎなく、ほぼ決着した」と強調。「国は被害救済について無用な争いを避けるべきだ」と早期解決を求めた。
 ただ、元東京高裁判事で中央大法科大学院教授の升田純弁護士は「国が規制権限を行使しないことを違法とするハードルは本来、高い」と指摘。「過去の多くの最高裁判例に照らせば、高裁や最高裁が国の敗訴を簡単に維持するとは限らない」と慎重な見方を示す。
(略)
(引用終わり)
 
産経ニュース 2018.3.16 20:41
原発避難者訴訟「事故防げた」、東京地裁も国と東電に賠償命令 国敗訴は4例目
(抜粋引用開始)
 原告の大半は避難指示区域外からの自主避難者。水野裁判長は「放射性物質などで健康被害の危険があるとして避難した判断は合理的」とし、原則として23年12月までの避難に事故との因果関係を認めた。18歳未満の子供や妊婦がいる世帯については、24年8月の避難まで合理性を認めた。
(引用終わり)
 
 3月15日(木)の京都地裁に続き、翌16日(金)には東京地裁において、東電とともに、国の責任を認める判決が出たことにより(これで5件目中4件の判決が国の責任を認めた)、少なくとも「地裁段階では事故を防げなかった国の責任を認める流れが定着しつつある」という見方は動かなくなったと見てよいでしょう。
 
 ただし、「原則として23年12月までの避難に事故との因果関係を認めた。18歳未満の子供や妊婦がいる世帯については、24年8月の避難まで合理性を認めた。」というのは短か過ぎるだろうと誰しも思うのではないでしょうか。
 実は、この東京地裁の「判決要旨」は、私も所属するMLに流れてきたものの、まだ、福島原発被害首都圏弁護団のホームページやFacebookを見ても、テキストはもちろん、PDFもアップされていないようで、皆さんにご紹介することができません。
 「要旨」とはいえ、全部で27枚もありますので、テキスト化するのはなかなか大変かもしれません。
 そこで、「判決要旨」の中から、「第6 当裁判所の判断の要旨③相当因果関係及び損害総論」「2 本件区域外原告ら等の避難継続と本件事故との相当因果関係」「(3)小括」(24頁~)の部分を引用しておきます。
 
(引用開始)
 以上のとおり,本件事故によって放出された放射性物質によっても,本件事故の進展に伴う放射性物質汚染拡大可能性による健康被害の危険性の考慮によっても,原則として,平成23年12月までは本件区域外原告ら等の避難継続の合理性が基礎付けられるというべきであるが,平成24年1月以降については,これを基礎付けるものということは困難といわざるを得ない。
 ただし,18歳未満の子供及び妊婦については,少なくとも100mSv以上の被ばくに際しての発がんについて放射性物質に対する感受性が高いとされているので,合理的な一般人において,低線量被ばくにおいても同様と判断することは合理的であるから,同日以降であっても,相当な期間の避難は合理的と解すべきである。そこで、相当な期間であるが,本件事故から原則として相当と認める期間が約8か月であるから,同程度の期間である8か月(平成24年8月まで)と解することが相当である。そして、18歳未満の子供又は家族がいるとき,家族は本来同居し,助け合うことが原則であるから,その家族とともに避難等した者についても同様と解される。
 なお,以上は原則であり,本件区域外原告ら等の個別事情によって,平成25年3月までの避難継続について本件事故との相当因果関係を認めるべき本件区域外原告ら世帯も存在する。
(引用終わり)
 
 以下には、UPLAN(三輪祐児)さんによる、判決前の集会、判決直後の旗出し、そして報告集会の模様を伝えた動画と、福島原発被害東京訴訟原告団福島原発被害首都圏弁護団の連名で発表された「声明」全文をご紹介します。
 
20180316 UPLAN 福島原発被害東京訴訟判決(1時間58分)
 
福島原発被害東京訴訟東京判決を受けての声明
1 はじめに
 本日,東京地方裁判所民事第50部(水野有子裁判長,浦上薫史裁判官,仲吉統裁判官)は,福島原発被害東京訴訟について,国の責任を認め,被告国と被告東京電力に対し賠償を命じる判決言い渡した。
 この訴訟は,2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により,福島県内から東京都内へ避難を余儀なくされた原告ら17世帯48名(後に1名死亡)が,国と東京電力を被告として,2013年3月11日に提訴したものである。
2 被告らの責任について
 本判決では,まず,被告国は,2002年には,福島第一原発において炉心溶融を伴う重大事故をもたらす原発の敷地高を超えて敷地が浸水する津波が発生することを予見することができたとし,2006年までに電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発して東京電力に対し原子炉施設の安全性を確保する権限を行使していれば,本件事故結果を回避できたことを認めた。
 すなわち,被告国において2002年に敷地高さを超える津波を予見したうえで,被告東京電力において,津波による全電源喪失を想定したバッテリー設置,手順策定等の対策を講じさせていれば回避できたと判断した。
 このように本判決は,昨年3月の前橋地裁,10月の福島地裁,昨日の京都地裁に続いて,四度,司法の場において,福島原発事故について被告国及び被告東京電力の加害責任を明確にし,断罪したものである。
 このように福島第一原発事故における被告らの加害責任に関する論争は,決着がついたものと言って過言ではない。被告らは,今後,無用な争いを続けることなく,被害者に対して,加害責任を認め,謝罪し,誠意ある対応をすべきである。
3 賠償額について
(1)判決は,原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針を「金科玉条」のごとく掲げて,これを超える賠償請求を拒絶し続けている被告東京電力に対して,原賠法を引用し,自主的に参照される目安にとどまるものであり,裁判所を拘束するものではないとして,一蹴した。中間指針の裁判規範性については,これまでの各判決においても否定しており,もはや,論ずるまでのことではない。
(2)次に,判決は,原告らいわゆる区域外からの避難者についても,放射性物質の汚染による健康への侵害の危険が一定程度あるとして,避難をすることに合理性があると判断した。
 しかしながら,判決では,区域外避難者について,本件事故との間の相当因果関係が認められる損害が発生した期間として原則として2011年12月まで(ただし,子ども妊婦は2012年8月まで),旧緊急時避難準備区域からの避難者については,中間指針と同様2012年8月までに限定している。しかし,原告らの自宅・避難元の土壌汚染はなお放射線管理区域と指定される基準を超える状態が続いており,いまなお,放射線被ばくリスク回避行動をとるべき合理性があるというべきであって,避難期間を限定した判断には理由がないといわざるを得ない。
(3)そのうえで,判決は,それぞれの原告が本件事故によって被った精神的苦痛を個別具体的に認定したうえで,これをもとに原告らについて本件原発事故と因果関係のある精神的損害に対する慰謝料として区域外避難者について70万円~200万円(既払金による控除前の金額)を認めた。これらは中間指針に基づく賠償額を若干ではあるが上回っている点は評価したい。
 しかし,それでもなお認容された慰謝料額では,原発事故被害者の精神的損害を慰謝するためにはなお不十分であると言わざるをえないのであり,すべての原発事故被害者に対して適正な賠償を実現することは本判決においても,なお克服すべき課題である。
4 原発事故被害者の全面救済を
 2011(平成23)年3月11日に発生した福島第一原発事故から既に7年が経過した。にもかかわらず、放射能で汚染された地下水が海へ流出し続けるなど、依然として事故の収束の目途は立っていない。未だ多くの人々が避難を余儀なくされており、被災者の被った甚大な被害の原状回復と完全賠償も実現されていない。それどころか応急仮設住宅の無償提供打ち切りなど,避難者の生活を脅かす事態が進行している。
 これまでの各判決,そして,本日の判決において,被告国や被告東京電力の加害責任が司法の場においても明らかとなった今,国や東京電力が行うべきは,被害者の切り捨てではなく,加害責任を前提にした原発事故の過酷な被害実態を踏まえた完全賠償の実現及び生活圏の原状回復を含む生活再建のための諸施策をとることを強く求める。
 私たち原告団弁護団は,本判決を受けて,今後も,被告国及び被告東京電力の責任において,すべての原発事故被害者が原発事故前のくらしを取り戻すための原状回復措置をとること及び被害に対する完全賠償を実現させるために全力を尽くす決意である。
2018(平成30)年3月16日
福島原発被害東京訴訟原告団
福島原発被害首都圏弁護団 
(引用終わり) 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/原発賠償訴訟判決関連)
2018年3月17日
原発賠償京都訴訟「判決要旨」(2018年3月15日)を読む(付・記者会見&報告集会の動画紹介)