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国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチ紹介~付・4か国からのUPR福島勧告と日本政府による返答

 2018年3月21日配信(予定)のメルマガ金原.No.3093を転載します。
 
国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチ紹介~付・4か国からのUPR福島勧告と日本政府による返答
 
 去る3月9日の本ブログで「院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」を視聴し、3/16国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチに声援を送る」という記事を書きました。
 東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表、原発賠償関西訴訟原告団代表、原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表である森松明希子さんが、グリーンピースの申請により、ジュネーブで行われる国連人権理事会本会合でスピーチできることになったことをお伝えしたものです。
 
 予定では3月16日と聞いていましたが、グリーンピースのプレスリリースによると、現地時間の3月19日に、森松さんよる2分間の英語によるスピーチが行われたようです。
 
2018/03/19 国連の福島勧告、政府は「同意しただけ」にせず、施策への即時反映をーー原発事故被害者とグリーンピースが国連人権理事会で演説
プレスリリース - 2018-03-19
(抜粋引用開始)
 国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)と、東京電力福島第一原発事故の被害者である森松明希子さんは、本日19日(スイス時間)、スイス・ジュネーブで開催されている国連人権理事会で日本政府が福島原発事故関連の勧告に正式同意したその場で、「同意しただけ」にせず、ただちに施策に反映させることを求める演説を行いました。
グリーンピースの仲介で演説した、福島県郡山市から大阪府への母子避難を続けている森松さんは、福島原発事故直後に、情報を知らされず、無用な被ばくを重ねたこと、汚染された水を飲むしかない状況で赤ん坊に母乳を与えた経験を語り、放射能から逃れ、健康を享受することは「基本的原則」と訴え、日本の憲法は、「全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利」と書かれているが、日本政府は市民をまもるための施策は、ほとんど実施してこず、放射線量の高い地域への帰還政策にばかり力を注いでいると批判しました。そして、国連加盟国に向け「今後も、福島県を含む東日本の、特に放射線に感受性の高い子どもたちを、さらなる被ばくからまもることに力をかしてください」と呼びかけました。
グリーンピース・ジャパンのエネルギー担当の鈴木かずえも演説し、グリーンピースの調査で避難指示解除後も公衆被ばく限度、年間1ミリシーベルトを何倍も超える汚染が確認されたこと、区域外避難者の住宅支援が打ち切られ、立ち退き訴訟まで起こっていること、福島県の子どもたちの甲状腺がん検査の縮小が多くの保護者の反対の中、検討されている実情を語りました。また、このような原発事故被害者をないがしろにする政策は、原発再稼動の推進政策と直結したものであると日本政府を批判し、勧告を受け入れたいま、政策を改めるよう政府に求めました。
(略)
(引用終わり)
 
 森松明希子さんによるスピーチ(英語)の日本語訳がグリーンピース・ホームページに掲載されていましたので引用します。
 なお、森松さんのスピーチの音声が、グリーンピース・ジャパンYouTubeチャンネルにアップされていますので、併せてご紹介します。
 
2018 年 3 月 19 日 人権理事会
森松明希子さん演説日本語訳
(引用開始)
森松明希子と申します。避難者である母親たちと、グリーンピースとともにきています。
わたしは、2011 年 5 月、福島の災害から逃れるために、二人の子どもを連れて避難しました。
原発事故直後、放射能汚染は広がりました。
わたしたちには、情報は知らされず、無用な被ばくを重ねました。
空気、水、土壌がひどく汚染される中、わたしは、汚染した水を飲むしかなく、赤ん坊に母乳を与えてしまいました。
放射能から逃れ、健康を享受することは基本的原則です。日本の憲法は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利」と書かれています。
しかし、日本政府は市民をまもるための施策は、ほとんど実施してきませんでした。
そのうえ、日本政府は放射線量の高い地域への帰還政策にばかり力を注いでいます。
日本政府は、国連人権理事会での勧告を、ただちに、完全に受け入れ、実施をしてください。
国連加盟国のみなさんの日本の人々の権利擁護のはたらきに感謝します。今後も福島、そして東日本の、特に、脆弱な子どもたちを、さらなる被ばくからまもることに力をかしてください。
ありがとうございました。
                                                                            以上
(引用終わり)
 
3月19日 スイス・ジュネーブ 国連人権理事会での森松明希子さんの演説(2分09秒)
 
 ところで、森松さんのスピーチの中身を知りたいと思ってグリーンピース・ジャパンのホームページを閲覧したところ、上記の演説原稿日本語訳を発見したのですが、それと同時に、「オーストリア、ドイツ、ポルトガル、メキシコからのUPR福島勧告と日本政府による返答、およびグリーンピースのコメント)」をまとめたファクトシート(日本語)が掲載されているのに気がつきました。これは貴重なものだと思いますので、全文引用したいと思います。
 
国連⼈権理対⽇審査福島勧告に「同意だけ」でなく、施策に反映を
(引用開始)
2017年11月に国連人権理事会の人権状況審査「普遍的定期審査(UPR)」作業部会で、加盟国が日本へ217項目の勧告を出しました。その中で、オーストリアポルトガル、ドイツ、メキシコの4カ国から東電福島原発事故被害者への支援の継続、政策への住民参画、許容放射線量年間1ミリシーベルト遵守、医療サービスへのアクセスなどが勧告され、日本政府は2018年3月、この4つの勧告すべてのフォローアップに同意しました。被害当事者のみなさまを始め、これらの勧告を広めたり、はたらきかけをした市民の成果です。しかし、文書で示された日本政府の見解は、すでに「必要な支援は提供している」というものであり、事実と異なります。
勧告に法的な拘束力はありませんが、同意すれば、日本政府は、勧告の内容の改善がなされるかフォローアップしなければなりません。勧告と、それに対する日本政府の返答は以下のとおりです。(勧告は外務省訳、返答はグリーンピースによる仮訳)
 
オーストリアの勧告:福島の高放射線地域からの自主避難者に対して、住宅、金銭その他の生活援助や被災者、特に事故当時子供だった人への定期的な健康モニタリングなどの支援提供を継続すること。
日本政府の返答:フォローアップに同意する。日本政府は子ども被災者支援法他にのっとって必要な支援を提供している。福島県は、福島県民健康調査をしている。
グリーンピースのコメント:日本政府の返答は、事実と異なります。区域外避難者(いわゆる自主避難者)への住宅支援は2017年3月に打ち切られています。子ども被災者支援法で求められている施策は具体的に実施されていません。福島県民健康調査は事故当事子どもであった福島県民の甲状腺スクリーニングにほぼ限られている。
 
ポルトガルの勧告:男性及び女性の両方に対して再定住に関する意思決定プロセスへの 完全かつ平等な参加を確保するために、福島第一原発事故の全ての被災者に国内避難民に関する指導原則を適用すること。
日本政府の返答:フォローアップに同意する。日本は、原則の主旨を尊重し、女性と男性のプロセスへの参加を確実にするための努力の継続をする。
グリーンピースのコメント:国内避難民に関する指導原則は、「すべての国内避難民は,移動の自由および居住選択の自由に対する権利を有する」(原則14)、「1.管轄当局は,国内避難民が自らの意思によって,安全に,かつ,尊厳をもって自らの住居もしくは常居所地に帰還することまたは自らの意思によって国内の他の場所に再定住することを可能にする条件を確立し,かつ,その手段を与える第一義的な義務および責任を負う。管轄当局は,帰還しまたは再定住した国内避難民の再統合を容易にするよう努める。2.自らの帰還または再定住および再統合の計画策定および管理運営への国内避難民の完全な参加を確保するため,特別の努力がなされるべきである」(原則28)としています。原発事故避難者を「国内避難民」と定義し、これらの原則の、行政および被災者への周知を行い、適用を確実にすべきです。
参考:国内避難民に関する指導原則
 
ドイツの勧告:特に許容放射線量を年間1ミリシーベルト以下に戻し、避難者及び住民への支援を継続することによって、福島地域に住んでいる人々、特に妊婦及び児童の最高水準の心身の健康に対する権利を尊重すること。
日本政府の返答:フォローアップに同意する。
グリーンピースのコメント:日本政府は、年間1ミリシーベルトを「長期目標」と位置付けていますが、いつまでに達成するという時限を設けていません。時限を明確にすべきです。また現在検討されている年間1ミリシーベルトから導き出された毎時0.23マイクロシーベルトという「除染の目安」の引き上げはされるべきではありません。
 
メキシコの勧告福島原発事故の被災者及び何世代もの核兵器被害者に対して、医療サービスへのアクセスを保証すること。
日本政府の返答:フォローアップに同意する。日本は健康保険制度によって万人に医療サービスへのアクセスが保障されている。そして原爆被ばく者援護法のもと、広島、長崎の原発犠牲者への追加的な支援を提供している。(原爆被害者の二世への放射能による遺伝的な影響に関する科学的知見がえられていないため、日本は原爆被ばく者援護法によって原爆被ばく者の2次世代への支援の提供は考慮していない。)
グリーンピースのコメント:「原発事故被災者や被爆2世への医療サービスへのアクセス」を皆保険制度でよしとすることはメキシコの勧告の曲解です。原発事故被災者への医療の無償提供の制度化をすすめるべきです。                       
                                                                            以上
(引用終わり) 
 
 最後に、森松さんたち一行(たしか3家族8人だったと思う)は、国連人権理事会でのスピーチの他に、フランスのリヨンを始めとする各地での講演なども予定しており、日本を出発してからの活動状況については、「子ども達を福島事故の被ばくから守る母親ツアー」というFacebookページが開設され、随時、最新情報が写真付きでアップされていますので、是非注目してください。
 森松さんたちによる帰国後の報告会を楽しみに待ちたいと思います。
 それにしても、わずか2分間のスピーチですが、しっかり訴えられたと思います。
 また、このニュースをNHKが比較的大きく扱ってくれたことも良かったですね。
 森松さん、お疲れ様でした。
 
NHK NEWS WEB 3月20日 5時33分
国連人権理事会で原発事故避難者が支援訴え
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/森松明希子さん関連)
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