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自民党の改憲4項目が事実上まとまる~「安倍退陣」そして「安倍なき安倍改憲NO!」のために

 2018年3月23日配信(予定)のメルマガ金原.No.3095を転載します。
 
自民党改憲4項目が事実上まとまる~「安倍退陣」そして「安倍なき安倍改憲NO!」のために 
 
 昨日(3月22日)開催された自民党拳法改正推進本部の全体会合で、憲法9条改正案につき、紆余曲折の末、細田博之本部長への一任が取り付けられたと一斉に報じられました。
 これについて、一体何についての一任なのか分からないと石破茂氏が批判する一方、細田氏は、従来の9条改正についての有力案についての2つの修正案のうち、どちらを選ぶかについての一任だとの認識を示すなど、「党内に火種を残」すことになりました(後掲の毎日新聞)。
 
 もっとも、これだけでは自民党内で何を議論していたのかさっぱり分からないでしょうから、従来の有力案と、22日の会合で提案された修正案のうち、細田本部長が推す案とを比較してみましょう。毎日新聞の記事から引用します。
 
(引用開始)
<これまでの有力案>
9条の2第1項 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
第2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
<22日の修正案>
9条の2第1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
第2項(有力案と同じ)
(引用終わり)
 
 以上の2案を読み比べても、どこがどう違うのかよく分からないという方は、毎日新聞の記事本文も読んでいただきましょう。
 
毎日新聞2018年3月22日 21時23分(最終更新 3月23日 01時40分)
9条改憲案 自民「必要最小限度」削除 細田氏に一任
(引用開始)
 自民党憲法改正推進本部の細田博之本部長は22日の全体会合で、安倍晋三首相の意向に沿って9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持しつつ自衛隊の存在を明記する憲法改正について、これまでの有力案から「必要最小限度」を削除する修正案を提示した。会合では修正を支持する意見が多数を占め、同本部は今後の対応を細田氏に一任。細田氏は修正案に基づき条文化を進める。
 15日の全体会合では、第2項維持派が「自衛隊」明記案と「自衛権」明記案に分かれ、細田氏は一任を取りつけられなかった。そこで修正案は「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つ」という自衛隊の目的は変えず、「必要最小限度の実力組織」という定義を見直した。
 会合では(1)「必要な措置をとることを目的として」自衛隊を保持する案(2)「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として」自衛隊を保持する案--の修正2案のうち、自衛権明記を主張してきた議員が(2)案を容認した。細田氏は「その方向で(まとめる)」と記者団に語った。
 改憲自衛隊の任務や権限は変わらないという首相の国会答弁を踏まえ、有力案は、自衛隊を「戦力」と区別した「必要最小限度の実力組織」という政府見解を援用した。根本匠事務総長は会合後、憲法解釈は(2)案でも「これまでと変わりはない」と説明した。
 しかし、細田氏らが当初、自衛権明記案を採用しなかったのは、集団的自衛権の限定的な行使を認めた安全保障法制を巡る世論の対立が再燃すると懸念したためだ。「必要な自衛の措置」を認めれば、集団的自衛権の全面行使が可能になる余地が生じる。推進本部は「実際の条文案は専門家の意見も聞いて確定する」というが、他党が修正案に反発するのは確実だ。
 一方、石破茂元幹事長は全体会合で第2項削除を改めて主張。細田氏は「2項削除の意見があることは付記したい」と理解を求めたが、石破氏は「自民党の意思決定のあり方としては極めて異例だった」と記者団に不満を述べ、党内に火種を残した。
 これで、自衛隊明記▽緊急事態条項▽参院選の「合区」解消▽教育充実--の改憲4項目の方向性が決まり、自民党は25日の党大会で報告する。【田中裕之、小田中大】
(引用終わり)
 
 以上の記事中の「「必要な自衛の措置」を認めれば、集団的自衛権の全面行使が可能に
なる余地が生じる。」というところがポイントではあるのですが、それは、<これまでの有力案>なら良い、というようなことでは全くありません。それに、「必要最小限度の実力組織」という表現が落ち、「必要な自衛の措置をとることを妨げず」と変更したことにより、フルスペックの集団的自衛権行使を憲法上可能にするという彼らの真の目的が浮き彫りになり、かえって闘いやすいくらいです。
 もっとも、一応この修正案で公明党との与党協議に臨み、公明党の意向に最大限配慮して「譲歩」したということにして、<これまでの有力案>を落としどころにする、という戦術も何やらチラホラするような気がしないでもありませんが。
 
 なお、9条以外の3項目も含め、昨日の段階で自民党憲法改正推進本部が取りまとめた全4項目の条文案をネットで探したのですが見つけられず、やむなく、今朝事務所に配達された朝日新聞(大阪本社版)朝刊から書き写しました。
 
朝日新聞大阪本社 2018年3月23日(金)朝刊 4面 より
自民の改憲4項目 条文案
(引用開始)
 自民党が22日までにとりまとめた改憲4項目の条文案は以下のとおり。9条は党憲法改正推進本部の細田博之本部長が有力と考える案。
 
 9条
9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
2 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
(3月22日に示され、細田氏が有力と考える案)
 
 緊急事態条項
64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で(※「の」の誤記?)定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
73条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で(※「の」?)定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
2 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(3月20日に自民党総務会に提示)
 
 合区解消
47条 両義院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとすることができる。
2(※と書かれていないけれど、2項でしょう) 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
92条 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。
(2月16日に了承)
 
 教育
26条 略 
2 略 
3 国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。
89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
(2月28日に了承)
(引用終わり)
 
参考・現行「日本国憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
 
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
 
 あらためて9条以外の条項案を読んでみると、「何、これ?」のオンパレードですね。
こういう「改正案」で、3月25日の自民党大会を経て、与党や協力してくれそうな野党との協議に入っていこうということでしょうか。
 
 一方、国会の内外では、森友学園問題に関わる公文書改ざん事件をめぐって、安倍政権の責任を追及する動きが急であり、一刻も目を離すことができません。
 実際、一昨日(3月21日)、悪天候の中、新宿駅東南口で行われた立憲民主党による「まっとうな政治を求める緊急大街宣:東京大作戦 AGAIN」での枝野幸男代表による演説などを聴いていると、明日にでも安倍内閣を総辞職に追い込まなければ嘘だと思いますもの。
 
枝野幸男氏(立憲民主党)スピーチ「まっとうな政治を求める緊急大街宣:東京大作戦 AGAIN」[7/7]2018.3.21 @新宿駅東南口(18分)
 
 実は、私は、「安倍退陣」を目指す運動と、「安倍改憲NO!」を目指す運動の関係やいかに?ということがやや気になっています。
 当面の優先課題が「安倍退陣」であることは間違いないでしょうが、仮に安倍政権を総辞職に追い込めたとしても、後継内閣は、引き続き自公連立政権の枠組みで登場する可能性が高いでしょう。その場合、「安倍退陣」と同時に「安倍改憲」も消滅するものでしょうか?今の自民党の劣化、人材払底(「憲法自体が憲法違反の存在」と公言したり、ちびまる子ちゃんが「友達に国境はな~い!」と訴える文部科学省のポスターにかみついたりした赤池誠章(まさあき)参院議員が文部科学部会長ですよ)から考えると、「安倍なき安倍改憲」も十分あり得るのではないかというのが私の懸念です。
 そういう心配を以前書いたことがあったな?と振り返ってみると、昨年の9月14日のブログで以下のようなことを書いていました。
 
2017年9月14日 
「安倍9条改憲NO!」のために「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」はまだまだ頑張ります
(抜粋引用開始)
 今年の5月3日に顕在化した「安倍9条改憲」の危機は、東京都議選での自民党の敗北によっても、少しも去ってなどいません。代表選前後からの民進党の状況を踏まえれば、危機は一層深化していると言っても良いでしょう。健康問題を含め、安倍首相退陣の可能性が高まれば高まったで、衆参両院で改憲勢力が2/3以上の議席を確保しているうちに、何が何でも改憲発議をという政治的圧力が高まるでしょうし、走り出してしまった機関車にブレーキをかけるだけの理性と能力が自民党に備わっているかも疑わしく、場合によっては、「安倍なき安倍9条改憲」という事態もあり得るという想定が必要なのではないかと考えられます。
(引用終わり)
 
 上の文章を書いた時点では、まだ衆議院は解散されておらず、ましてや民進党の代表自らテロをしかけて自党を解体するに至るとは夢にも想像していませんでした。その割には、概ねその後の見通しは誤っていなかったのではないかとやや自慢したい気もします(空しいですけどね)。
 
 まずは「安倍退陣」、次いで「安倍なき安倍改憲NO!」が私たちのこれからの目標であることをしっかりと認識する必要があると思います。