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自民党定期党大会(2018年3月25日)で「改憲4項目」はどうなったのか?

 2018年3月26日配信(予定)のメルマガ金原.No.3098を転載します。
 
自民党定期党大会(2018年3月25日)で「改憲4項目」はどうなったのか?
 
 去る3月22日に開催された自民党憲法改正推進本部の全体会合で、憲法9条改正案につき、紆余曲折の末、細田博之本部長への一任が取り付けられ、これにより、同党が推進しようとしている改憲4項目の条文案の姿がほぼ明らかになってきたことを先日のブログに書きましたが(自民党改憲4項目が事実上まとまる~「安倍退陣」そして「安倍なき安倍改憲NO!」のために/2018年3月23日)、今日はその続編です。
 
 多くの方と同じように、私も、昨日(3月25日)開催された第85回自由民主党定期党大会で、この改憲4項目がどのように取り扱われたのか気になり、ネット情報を検索したり、今朝事務所に配達された朝日新聞(大阪本社版)に目を通したりしました。
 私の事務所に届いた朝日新聞の一面トップの見出しを書き写せば、「改憲発議 年内厳しく 支持急落、日程窮屈に」とあり、本文には、「党改憲推進本部が急いでまとめた「改憲4項目」の条文案が大会で披露されることはなかった」と書かれていました。
 他方、安倍晋三首相(総裁)の演説については、「森友学園問題をめぐる文書を財務省が改ざんした問題のおわびから始まった」とした上で、「悲願である憲法改正を訴えたのは、21分間に及んだ演説の最終盤になってからだった。「いよいよ結党以来の課題である憲法改正に取り組む時が来た。今を生きる政治家の、自民党の責務だ」首相は「自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではありませんか」と述べ、9条1項、2項を残して自衛隊を明記する自身の改正案の実現に向けて強い意欲を示した。ただ、昨年5月に示した2020年の改正憲法施行という目標を口にすることはなかった」と伝えています。
 
 ただ、これでは手続的に何が報告され、何が審議され、何が承認されたのか(されなかったのか)が判然としません。
 そこで、私は、自民党のホームページを閲覧してみましたが、どうも党大会については、「党内活動」のコーナーに掲載された簡単なレポート「第85回党大会 安倍総裁「結党以来の課題に取り組む時が来た」」(平成30年3月25日)しか載っていないようでした。
 これを読みながら昨日の自民党大会の式次第を再現してみました(正確性は保証の限りではありません)。
 
1 橋本聖子参院議員会長とスペシャルゲスト・高木美帆さんによる対談
2 開会宣言 佐々木紀党青年局長代理&自見はなこ党女性局次長
3 議長団選出(田山東湖党茨城県連幹事長、大久保孝栄党三重県連女性局長、川越桂路党鹿児島県連青年局長)
4 党務報告&運動方針の提案 二階俊博幹事長が党務報告を行いました。
5 表彰
7 挨拶 安倍晋三総裁
8 「昴」&「群青」歌唱 スペシャルゲスト・谷村新司さん
9 出席者全員で「いい日旅立ち」を合唱(閉会)
 
 「議事終了後、恒例の安倍晋三総裁による演説が行われ、新たな国創りに向けた熱き思いを力強く訴えました」とありますので、とりあえず、この総裁演説は、党内手続とは無関係な単なる「熱き思い」ということのようです。
 私が知りたいのは、二階幹事長によって行われた「党務報告&運動方針の提案」であり、党務報告の中で改憲4項目がどように取り上げられたのか、活動方針では改憲がどう位置付けられたのかということでした(方針が承認されたことは間違いないでしょうから)。
 けれども、自民党ホームページを読んでも、そのような詳しい内容についてのレポートはなく(見つけられず)、やむなくマスコミ報道を探したところ、私が所属するMLに流れてきた情報により、以下の産経ニュースの存在を知りました。産経は、とてもまともな報道機関とは思えないネトウヨ並みの記事も平気で載せますが、「現場の記者にはちゃんとした人もいるんだなあ」と思わせるまともな記事が(無料で)WEBサイトに掲載されることもあります。以下に、安倍首相による演説を紹介した部分はカットし、二階幹事長について触れた部分を抜き出して引用します。
 
産経ニュース 2018.3.25 21:04更新
自民党大会】安倍晋三首相、憲法9条への自衛隊明記を訴え 自民党大会で「違憲論争に終止符を打つ」
(抜粋引用開始)
(略)二階俊博幹事長は党憲法改正推進本部が9条を含む「改憲4項目」の条文素案をまとめたことを報告し、「改憲の実現を目指す」と明記した平成30年度運動方針案を採択した。
(略)
 これに先立ち、二階氏は党務報告で、推進本部が改憲4項目の「条文イメージ・たたき台素案」をまとめたことを説明した。これを踏まえ「衆参の憲法審査会で議論を深め、各党の意見も踏まえ、憲法改正原案を策定し、憲法改正の発議を目指す」と明言した。
 二階氏は「国民の理解を得て(改憲を)進めていくことが重要だ」とも強調し、全国で研修会を積極的に開くよう党員に求めた。
 採択された運動方針では、前文に続く最初の項目に改憲を取り上げ、「憲法審査会での幅広い合意形成を図るとともに、改正賛同者の拡大運動を推進する」と記した。具体的には、自衛隊▽大災害時などの緊急事態▽参院選「合区」解消▽教育の充実-の改憲4項目を列挙した。
(引用終わり)
 
 結局、事務所で読んだ朝日新聞(大阪本社版)とネットで読んで自民党ホームページと産経ニュースの記載を総合すると、
①二階幹事長による党務報告の中で、党憲法改正推進本部での意見集約の概要が報告されたが、条文案までは紹介されなかった。
②提案された運動方針には、改憲4項目は明示されたが、条文案までは示されなかった。
改憲4項目について「憲法審査会での幅広い合意形成を図るとともに、改正賛同者の拡大運動を推進する」という運動方針が採択された。
ということになるようです。
 
 従って、3月22日段階で「ほぼまとまった」と考えられる改憲4項目についての条文案についても、党大会ではオーソライズされておらず、まだまだ変更の可能性あり、と見ておくべきでしょう。特に、公明党との与党協議における「落としどころ」をどの辺りと想定しているのか、ということが重要かなと思います。
 
 以上で、今日、私がブログで書こうと思い立った目的は大体達しましたので、これで終わりにしてもよいのですが、最後に「付録」として、安倍晋三氏が自身の演説の最後で強調した「9条」改憲自衛隊明記)についての「熱き思い」を引用しておきます(やはり、産経ニュースから引用します)。ちなみに、この演説の文体から推測するに、安倍首相の最も有力なスピーチライターと言われている谷口智内閣官房参与が関与している可能性が高いように思われます(私の想像に過ぎませんが)。
 
産経ニュース 2018.3.25 14:17
自民党大会】安倍晋三首相の総裁演説全文 憲法自衛隊明記「違憲論争に終止符打つのは自民党の責務」
(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相(自民党総裁)が25日の党大会で行った演説全文は次の通り。
                                      ◇
 財務省の決裁文書書き換え問題をめぐり、皆様には大変ご心配をおかけしており申し訳ない思いでございます。この問題によって、国民の皆さんの行政に対する信頼を揺るがす事態となっており、行政の長として、その責任を痛感しております。行政全般の最終的な責任は内閣総理大臣であるこの私にあります。改めて、国民の皆様に深くおわびを申し上げる次第であります。
 なぜ、このようなことが起こったのか徹底的に明らかにし、全容を解明してまいります。その上で二度とこうしたことが起こらないように、組織を根本から立て直していく、その責任を必ず果たしていくことをまず冒頭、皆さまにお約束を申し上げます。
(略)
 そしていよいよ、結党以来の課題である憲法改正に取り組むときがきました。4項目について議論を重ねてまいりました。もちろん、第9条においても改正案をとりまとめてまいります。
 先々週、私は防衛大学校の卒業式に出席しました。陸海空の真新しい制服に身を包んで、任官したばかりの若い自衛官たちから、ことに臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える。この重い宣誓を最高指揮官、総理大臣として受けました。
 そうです皆さん、彼らは国民を守るためにその命をかける。しかし、残念ながらいまだに多くの憲法学者は彼らを憲法違反だという。違憲論争が今でもあります。結果、ほとんどの教科書にはその記述があり、自衛官たちの子供たちもこの教科書で学ばなければならない。
 皆さん、このままでいいのでしょうか。この状況に終止符を打とうではありませんか。憲法にしっかりとわが国の独立を守り、平和を守り、国と国民を守る。そして自衛隊を明記し、この状況に終止符を打ち、そして違憲論争に終止符を打とうではありませんか。これこそが私たち、今を生きる政治家の、そして自民党の責務であります。敢然とこの使命を果たし、新しい時代を皆さんつくりあげていこうではありませんか。そのことを皆さんとともにお誓い申し上げ、自民党総裁としてのご挨拶とさせていただきたいと思います。誠に本日はありがとうございました。
(引用終わり)
 
 上記の演説に一々突っ込みを入れることは本稿の目的ではありませんが、一点だけ、「任官したばかりの若い自衛官たちから、ことに臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える。この重い宣誓を最高指揮官、総理大臣として受けました。」とある部分だけは見過ごすことはできません。
 自衛官に任官する場合の服務宣誓の文言をより正確に再現すれば、一般自衛官の場合、以下のとおりです。
 
自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
 第五章 隊員
  第四節 服務(第五十二条
(服務の宣誓)
第五十三条 隊員は、防衛省令で定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
 
自衛隊法施行規則(昭和二十九年六月三十日総理府令第四十号)
 第三章 隊員
  第四節 服務の宣誓
(一般の服務の宣誓)
第三十九条 隊員(自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等及び非常勤の隊員(法第四十四条の五第一に規定する短時間勤務の官職を占める隊員を除く。第四十六条において同じ。)を除く。以下この条において同じ。)となつた者は、次の宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなければならない。自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等又は非常勤の隊員が隊員となつたとき(法第七十条第三項又は第七十五条の四第三項 の規定により予備自衛官又は即応予備自衛官自衛官になつたときを除く。)も同様とする。
     宣 誓
 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
 
 自衛隊員の服務宣誓にある「日本国憲法及び法令を遵守し」という一文をあえて演説原稿に引用していない理由は言うまでもありませんよね。憲法尊重擁護義務を課されながら(首相も自衛隊員もそうです)、誰よりもその義務を無視している者が、自衛隊員の服務宣誓を引用して称揚するなど、自衛隊法をも自衛隊員をも冒涜するものだと私は思います。皆さんはどう考えられるでしょうか。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/自衛隊員の服務宣誓関連)
2013年8月29日
自衛隊員等の「服務宣誓」と日本国憲法
2014年7月3日
今あらためて考える 自衛隊員の「服務宣誓」
2015年5月31日
もう一度問う 自衛隊員の「服務の宣誓」~宣誓をやり直さねばおかしい