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性教協(“人間と性”教育研究協議会)による声明「教育への不当な介入に抗議し、包括的性教育の推進を強く求めます」(2018年4月6日)を読む

 2018年4月11日配信(予定)のメルマガ金原No.3114を転載します。
 
性教協(“人間と性”教育研究協議会)による声明「教育への不当な介入に抗議し、包括的性教育の推進を強く求めます」(2018年4月6日)を読む
 
 名古屋の市立中学校が、前川喜平氏(前文部科学事務次官)を特別授業の講師に招いた件で、自民党文部科学部会正副部会長である赤池誠章(あかいけ・まさあき)参院議員と池田佳隆(いけだ・よしたか)衆院議員が、文科省を通じて名古屋市教育委員会に「照会」という名の圧力をかけて大問題となりました。おかげで、ただでさえ各地の前川氏講演会に多くの人が押しかけていた流れが加速し、4月27日に前川さんと寺脇研さんを招いている青年法律家協会和歌山支部も、ついに会場をキャパ360の和歌山県勤労福祉会館プラザホープから、キャパ2,000の和歌山県民文化会館大ホールに変更することを余儀なくされたのでした(会場が変わりました!前川喜平氏寺脇研氏が語る「これからの日本 憲法と教育の危機」(2018年4月27日@和歌山県民文化会館大ホール)/2018年4月5日)。
 全くはた迷惑なことなので、赤池誠章議員が4年前に参議院憲法審査会において、自民党を代表して、「憲法自体が憲法違反の存在というものであります。」という珍発言を行ったという前歴(当時、私はブログで徹底批判していた)をあらためて暴露し、いささか腹の虫を収めたりしていました(赤池誠章氏(自民党)の参議院憲法審査会(2/26)での発言から考える/2014年3月2日)。
 
 さて、全国的なニュースバリューは上記事件ほどではなく、やや陰に隠れてしまったのが遺憾ですが、ほぼ同時期に、これも見過ごすことの出来ない事件、それも「懲りない自民党議員」と教育に関わる事件が起きたのをご記憶でしょうか。
 報道の一例として、朝日新聞デジタルの記事を挙げておきましょう(残念ながら、この続きは会員登録しないと読めません。
 
朝日新聞デジタル 2018年3月23日21時00分
性教育授業を都議が問題視、都教委指導へ 区教委は反論
斉藤寛子、山田佳奈
(抜粋引用開始)
 東京都足立区の区立中学校で今月行われた性教育の授業が、学習指導要領に照らして不適切だとして、東京都教育委員会が区教委に対して近く指導をすることがわかった。16日の都議会文教委員会で自民党の都議が授業の内容を問題視し、都教委が調査していた。区教委は「不適切だとは思っていない」としている。
 授業は3月5日、総合学習の時間で3年生を対象に教員らが実施。事前アンケートで「高校生になったらセックスしてもよい」と答えた生徒が44%いたことをふまえ、高校生になると中絶件数が急増する現実や、コンドームは性感染症を防ぐには有効だが避妊率が9割を切ることなどを伝えた。その上で「思いがけない妊娠をしないためには、産み育てられる状況になるまで性交を避けること」と話した。また、正しい避妊の知識についても伝えた。
 この授業について、16日にあった都議会文教委員会で、自民党古賀俊昭都議が「問題ではないのか」と指摘。都教委が区教委を通して授業内容を調査し、不適切な授業を行わないように区教委を指導し、来月の中学校長会でも注意喚起することを決めた。
(引用終わり)
 
 まあ、この冒頭部分を読むだけでも、「自民党古賀俊昭都議」というのは、もしかしたらとんでもない人間ではないかという疑念が浮かんだことでしょう。その疑いについては、「確信」に変えていただいて結構かと思います。
 2013年11月に書いた私のブログ(大半引用ですが)をご紹介します。
 
2013年11月29日
祝!七生養護学校事件勝訴確定
 
 時事ドットコムの記事の一部を再掲します。
 
(抜粋引用開始)
時事ドットコム(2013/11/29-18:18)
都議らと都の敗訴確定=養護学校性教育訴訟-最高裁
(引用開始)
 東京都立七生養護学校(現七生特別支援学校)に勤務していた教諭らが、性教育の授業を不当に批判されたなどとして、都議ら3人と都などに約3000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は28日付で、原告、被告双方の上告を退ける決定をした。都議ら3人と都に計210万円の支払いを命じた一、二審判決が確定した。
 一、二審判決によると、同校は知的障害のある子どもの性に関する問題行動を防ぐには正確な理解が必要との考えから、性器の模型を使うなど独自の性教育に取り組んでいた。都議らは2003年の同校視察の際、「感覚がまひしている」と教諭らを批判。その後都教委は「不適切な性教育をした」などの理由で教諭らを厳重注意とした。
 一、二審は、教諭らを批判した都議らの発言は侮辱行為で、教育への不当な支配に当たると指摘。都教委による厳重注意も違法と判断した。
(引用終わり)
 
 有名な「七尾(ななお)養護学校性教育弾圧事件」についての判決確定を伝える記事ですが、上記記事の中で、東京地裁、東京高裁、最高裁のいずれもが「都議ら3人と都に計210万円の支払いを命じた」内の都議の1人が古賀俊昭議員(自民党)なのです。最高裁で敗訴してもなお「懲りない」人間をどう評すればよいのか。
 もっとも、最高裁でも敗訴しながら「懲りない」ということで言えば、都教委も同断ですけどね。 
 
 ここで、私の拙い批判を吐露するよりは、しかるべき団体の声明が出ているだろうと思い、性教協一般社団法人"人間と性"教育研究協議会)のホームページをあたってみたところ、やはりありました。4月6日付で「声明 教育への不当な介入に抗議し、包括的性教育の推進を強く求めます」を発表していました。
 
 「声明」全文をご紹介する前に、私と性教協との関わり(というほどのものではありませんが)を少しご紹介すると、性教協が毎年開催している全国夏期セミナーが大阪の岸和田市で行われた際、ひょんなことから、同セミナーで万一妨害工作などによるトラブルが起きた場合に備えて待機する弁護士の役を頼まれるということがあったのです。本来、性教協とも性教育とも何の関係もない生活を送ってきた私のところに、何故そんな依頼があったかと言えば、性教協といつも密接に協力していた弁護士さんの都合がどうしてもつかなかったようで、間際になっても来てくれる弁護士が見つからず、切羽詰まった実行委員会事務局(その年は、何と私の幼なじみの同級生がその役だった)から、(岸和田に近いということもあったのでしょう)依頼されたというのが真相でした。
 結局、その年は妨害工作はなく、ほっと胸をなで下ろしたものでした。実は、私が「七尾養護学校事件」のことを知ったのも、このセミナーで、弁護士用に用意された部屋で待機中、何もすることがなかったので、資料に目を通していて「こんな事件があったのか!」と驚いたのでした。
 めったに性教育についての報道に注目することもなかった私が、2013年に「祝!七生養護学校事件勝訴確定」というブログを書いたのも、上記のようなご縁があったからでした。
 それにしても、各地での家庭教育支援条例を制定する動きを見るにつけても、このような性教育に対する弾圧と根っこは同じだ、ということを痛感します。
 前川喜平氏を招聘した名古屋市の中学校や同教委に対する不当な圧力ももちろん許しがたいことですが、こちらの都教委や古賀俊昭都議(自民党)の「懲りない」動きにも是非注目してください。そのためにも、性教協による以下の声明にじっくりと目を通し、出来れば周囲に広げていただければと希望します。
 
(引用開始)
声明
教育への不当な介入に抗議し、包括的性教育の推進を強く求めます
古賀俊昭都議は、自らが敗訴した「こころとからだの学習裁判」結果を真摯に受けとめるべきです。
◆都教委も裁判結果を真摯に受けとめたうえで、児童・生徒及び若者の健康と安全のために不可欠な性教育が前進するよう、本来の役割を果たすべきです。
 
  2018(平成30)年4月6日 一般社団法人"人間と性"教育研究協議会(性教協)
 
2018年3月16日、東京都議会文教委員会において、古賀俊昭都議(自民党)は、ある中学校で行われた人権教育の一環としての「自分の性行動を考える」という授業を取り上げ、「不適切な性教育の指導がされている」、「問題点がある。都教委はどう考えるか」と質問をしました。
東京都教育委員会は、その質問で求められた関係者への「指導」を進めるという答弁を行いました。
今回の質問で「問題点がある」とされ、「指導」の対象とされた教育実践は、「自分の性行動を考える」という人権教育の一環としての包括的性教育の授業です。
中学生たちを取り巻く、予期せぬ妊娠、人工妊娠中絶、性感染症等をはじめとした、性に関する深刻な現状を踏まえ、中学校を卒業した後、安全に、幸せに生きていってほしいという願いから、子どもたちの課題と知的要求に誠実に向き合い、学校ぐるみで検討し、実践した授業です。それは、国際的なスタンダード(『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』)を踏まえた「性の権利」としての性の学習を子どもたちに保障するものです。
こうした子どもたちの発達課題に応えようとする優れた性教育実践が、一部の都議、都教委によって「問題視される」ことは、教育内的事項への政治的介入であるばかりか、子どもたちの学習権、子どもたちが将来幸せに生きる権利を侵害する行為に他なりません。
 
質問の中で古賀都議は、その授業者が作成した「単元設定の理由」を読み上げました。
次のような内容です。
○若年層の性行動を伴う妊娠、人工妊娠中絶、性感染症の拡大などが社会問題となっている。
○全体の人工妊娠中絶の件数は減っているものの、十代の割合が高く、特に中学校を卒業すると急激に増えている現状。
○若者の性行動をあおるような情報が氾濫する一方で、性に関する学習不足から、性交に伴う妊娠や性感染症に関する知識も自覚もないというのが大きな要因。
古賀都議は、読み上げただけですぐに「不適切な性教育の指導がされている」と断じ、都教委に授業の内容を把握しているかを尋ね、さらに「私は問題があると思う。都教委はどう考えるか」と質問しました。
都教委は「区教委と連携して徹底した調査をする。当該校の管理職及び全教員に指導を進める。全都の中学校長会等にも指導をする」等と答弁しました。
 
いったい、古賀都議が読み上げた「単元設定の理由」に書かれた現状認識は間違っているのかどうか。都議も、都教委も、そのことをこそまず問題とするべきではないでしょうか。
第四次男女共同参画基本計画においては、望まない妊娠や性感染症に関する適切な予防行動について、「思春期の女性に対する取組みとしては、現状を踏まえた具体的かつ実践的な啓発を行うとともに、避妊や性感染症予防について的確な判断ができるよう、相談指導の充実を図る。」となっています。
都民の代表たる政治家であれば、若者たちの深刻な現状について、調査の上で自分の見解を持つべきです。
ただ、古賀氏は何よりもまず、自らが「教育への不当な支配」をしたとして敗訴した七生養護学校のいわゆる「こころとからだの学習裁判」結果(2013年最高裁決定)を真摯に受けとめるべきです。
古賀氏は反省を公に表明しない限り、法令や規範や学校教育について発言することなど、ダブルスタンダードの極みだと言わざるを得ないのではないでしょうか。
都教委も、裁判結果を踏まえず、若者の現状についての見解は一切示さず、人権教育としての性教育を問題視し、もっぱら行政的でしかも統制的な措置についてのみ答弁しています。
 
私どもは、古賀都議の質問と都教委の答弁には、以下に箇条書きにしたような問題点があると考え、都議と都教委の教育への不当介入に強く抗議するとともに、都議には質問の撤回を、都教委には、「指導」の中止と性教育の推進を求めるものです。
 
古賀都議の質問は、
①自身の違法行為(教育に対する不当な支配、教員への侮辱)が認定され、賠償金も支払った2013年の最高裁決定(=高裁判決)を歪め、無視し、虚偽の宣伝をしている点、
②自身が断罪された「教育への不当な介入」を全く反省していない点、
③中高生をはじめとした若者たちの性と健康をめぐる現実の諸問題を無視し、中高生に絶対に必要な内容の学習の実践を事実上阻害している点、
④特定の授業に関して、学校名や授業者の実名まで挙げて問題視し、教育の自主性を侵害し、教育実践への威圧・脅迫となっている点、
教育委員会に学校への不当な介入と支配を求めている点、
⑥私たちの団体(性教協)への誹謗中傷を行っている点、
等の問題があると考えます。
 
東京都教育委員会の答弁は、
最高裁決定(=高裁判決)において、「教育の公正、中立性、自主性を確保するために、教育に携わる教員を『不当な支配』から保護するよう配慮すべき義務を負っている」とされた自らの役割を全く踏まえず、都議の教育介入が当然であるかのように徹底した調査と指導を行うと明言している点、
②学習指導要領、「性教育の手引き」の片言を法律であるかのようにとらえ、教育実践を問題視している点。これも高裁判決を踏まえていない。
③具体的な措置として、
ア、当該校を所管する教育委員会(区教委)と連携し、今回の一連の授業の検証を徹底して行い、改めて課題を整理し、明確にする。
イ、今後、当該校において性に関する指導が適切に行われるよう、管理職及び全教員に教育課程上の課題、発達段階を踏まえた適正な授業のあり方、保護者の理解を得ることの重要性等について指導を進める。
ウ、各市教育委員会の担当指導主事連絡会、中学校長会、都内全公立中学校の保健体育主任連絡会等において、本事例の経緯や問題点、改善の方策等について周知し、都内公立中学校全校において性に関する指導が適切に実施されるよう指導する。
などと述べ、人権教育としての性教育を問題視し、抑圧しようとしている点、
等の問題があると考えます。
 
都教委の答弁は古賀都議の質問を契機として、中高生をはじめとした若者たちの性と健康をめぐる現実の諸問題を無視し、中高生に絶対に必要な内容の学習をやめるよう学校と教育活動を統制、拘束することに終始している、極めて非教育的で権力的な答弁です。
ア、イ、ウ共に、まったく不要であり、不当な措置です。
 
以上述べてきたように、私たちは、この事態を受けて、都議と都教委の教育への不当介入に強く抗議するとともに、都議には質問の撤回を、都教委には、「指導」の中止と、子どもたちを取り巻く現状を踏まえた性教育の推進を支援することを求めるものです。
                                                                             以上
(引用終わり)