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動画と詳録で学ぶ「憲法論議の視点」(日本記者クラブ)~総論、憲法改正の国民投票、第九条、新しい人権、統治機構

 2018年4月20日配信(予定)のメルマガ金原No.3123を転載します。
 
動画と詳録で学ぶ「憲法論議の視点」(日本記者クラブ)~総論、憲法改正国民投票第九条、新しい人権、統治機構
 
 私のブログでは、シリーズ全5回の内、第3回をフューチャーしてご紹介しましたが(9条改憲、賛成派(井上武史九州大学准教授)と反対派(青井未帆学習院大学教授)の意見に耳を傾ける(3/12@日本記者クラブ/2018年4月10日)、
日本記者クラブが、今年の2月から3月にかけて、5回にわたって開催したシリーズ研究会「憲法論議の視点」については、全回の動画だけではなく、内3回分(第1回「総論」、第2回「憲法改正国民投票」、第4回「新しい人権」)については、内容を文字起こしした改憲詳録も公開されていますので、ここでまとめて5回分をご紹介しておこうと思います。
 なお、日本記者クラブの企画意図を知るために、各回ごとに付された「会見リポート」を引用することにしました。
 報道機関、記者だけではなく、私たち国民1人1人にとっても、「憲法改正」にどう向き合うのか?国民投票において自らの1票をどう投じたら良いのか?という、思えば、過去において経験したことのない立場に置かれる可能性が高まっている訳で、実際の改憲発議の前に、冷静な事前準備がどの程度実行できるかによって、後世に恥じることのない立派な国民投票だったと評されるか否かが決まると考えるべきなのでしょう。
 5本の動画を視聴する時間のない人も、会見詳録(まだ2回分公開されていませんが)をお読みになることをお勧めしたいと思います。
 
2018年02月13日 13:00~14:30 9階会見場
宍戸常寿東京大学教授
シリーズ研究会「憲法論議の視点」(1)「総論」
会見詳録
(引用開始)
視座を熟考する機会に
 施行から70年余を迎えた日本国憲法を改正する初めての国民投票に向き合うことに〝なるかもしれない〟という歴史的な地点に今、私たちは立っている。
 改憲論議安倍晋三首相がアクセルを踏み込む形で進んでいる。自民党が目指す今年中の国会発議に至るのかは現時点では見通せない。だが国会の議論がヒートアップする前に憲法とその改正の意味を整理しておきたいとの狙いから「シリーズ研究会・憲法論議の視点」を企画した。
 考えたポイントは二つある。一つ目は政党の議論に縛られず、幅広い観点を取り上げることだ。全5回の研究会は「総論」から始め、「国民投票」「9条」「新しい人権」「統治機構」と網羅的なテーマ設定とした。
 二つ目は、40代を中心に気鋭の憲法学者をゲスト講師に招くことだ。大御所による「太平洋の両岸から弾を撃ち合う」ようなかみ合わない議論は避けたい。論点を整理し、報道に当たっての視座を熟考する機会となる研究会にしたいと考えた。
 初回の「総論」には100人を超える方に参加していただき、関心の高さを裏付けた。宍戸常寿東大教授の濃密な問題提起は、短い時間の中で憲法全般に触れてほしいという難しい要望に応えるものだったと思う。宍戸氏は憲法改正の意義から憲法典と付随法の関係などの基本的な論点整理の上に、自民党改憲を目指す4項目などへの具体的な言及、メディアへの注文までを整理。有意義な改憲論議の条件は「憲法現実の何を具体的に確認・変更するのか、しないのかを明らかにすることだ」と指摘し、「国民が『真意』に基づく投票行動ができるよう、社会全体で質疑・討論を尽くすべきだ。賛成・反対の判断の対象・帰結を明らかにする報道が求められる」と提起した。
企画委員 共同通信社論説副委員長  川上 高志
(引用終わり)
 
2018年02月19日 15:00~16:30 10階ホール
只野雅人一橋大学教授
シリーズ研究会「憲法論議の視点」(2)「憲法改正国民投票
会見詳録
(引用開始)
 2回目は只野雅人一橋大教授に「憲法改正国民投票」を解説していただいた。只野氏は国民投票を国会審議までを含めた「代表民主制のプロセス」として捉えることが重要だとし、「議員同士の有益な討論がほとんどない国会論議にもっと批判的な目を向けるべきだ」と語った。
 実際に国会発議が行われた時、どう報道するのかは非常に難しい課題だと考えている。国民投票は改正案に賛成か反対かの意思表示しかできない。しかし多くの国民の意識はその中間で揺れ動くだろう。宍戸氏は「ネットや会員制交流サイト(SNS)との比較でメディアの社会的存在意義が問われる」と指摘し、メディアのアクセス権と反論権、広告の扱いなどを今から検討するよう求めた。
 初めて経験する改憲報道に向けて、研究会が論点を突きつめて、整理する機会にしていただければと思う。
企画委員 共同通信社論説副委員長  川上 高志
(引用終わり)
 
2018年03月12日 14:30~16:30 10階ホール
青井未帆学習院大学教授/井上武史九州大学准教授
シリーズ研究会「憲法論議の視点」(3)「第九条」
会見詳録 未掲載
(引用開始)
相反する意見を参考に
 シリーズ研究会「憲法論議の視点」の3回目は、現下の最大テーマともいえる「第9条」を巡り、ともに憲法学者で主張が異なる青井未帆学習院大教授と、井上武史九州大准教授が論じ合った。白熱した議論となり、会場からの質問も相次いだ。
 まず井上氏が9条について「条文と意味が乖離し、統治者の行為を統制できない。立憲主義の面で問題ではないか」「国際貢献の足かせになっていないか。それは憲法の国際協調主義に反しないか」「武力行使の範囲を憲法で固定するのは合理的か。法律で対応する国は多い」と課題を次々に挙げ、改憲に理解を示す。
 その上で、自衛隊を合憲にするという安倍政権の政策目標を達成するには、戦力保持を禁じる9条2項は維持しつつ、その後に「前項の規定は、自衛のための必要最小限度の実力の保持を妨げない」との条項を加えればいいと提案した。
 一方、青井氏は「9条は日米安保条約などと無関係ではいられず、9条とその解釈、諸政策、憲法文化で構成する『9条プロジェクト』という広い視点で捉えるべきだ」とし、集団的自衛権行使の否定や専守防衛、攻撃型兵器不保持、行政機関という自衛隊の位置付けにより「平和国家を担保してきた」と主張する。
 また軍隊を率いる「統帥」に注目。憲法に関わらず存在するもので「明治憲法下は天皇大権となって敗戦し、現憲法下では潜った形だった。自衛隊を明記する改憲で再び統帥と向き合うことになるが、今の政治の力量では大いに不安」と指摘した。
 質疑では「国民の信任を得ている自衛隊」と違憲論との関係、集団的自衛権の捉え方などが問われた。その応答も含め、2人の相反する意見は、自民党改憲条文案を受けた今後の論議で大いに参考になる。
(引用終わり)
 
2018年03月15日 14:30~16:00 9階会見場
山本龍彦慶応大教授
シリーズ研究会「憲法論議の視点」(4)「新しい人権(プライバシー、AI)」
会見詳録 
(引用開始)
憲法の2本柱を議論
 シリーズ研究会「憲法論議の視点」の締めくくりとなる4、5回目は、人権と統治機構という、憲法の2本柱について、気鋭の憲法学者が最新の論点を披歴した。
 4回目は、山本龍彦慶大教授が、AI(人工知能)社会のリスクに切り込んだ。
 企業が新卒採用者の適性判断にAIを用いるようになると、一部の大学生は、どの企業にエントリー・シートを出しても、次から次に不採用となる事態が起きうる。理由は、SNSの友達に市民活動家がいるからかもしれず、数年前に外国の反政府活動家の写真に「いいね」を押したからかもしれない。だが、本当の理由は誰にも分からない――。
 サイエンス・ホラーのような話だが、永田町でほとんど顧みられていない憲法課題といってよい。山本氏は幸福追求権(憲法13条)などを根拠としたプライバシー権の中でも自己情報コントロール権的な規定を設けることで解決する案を示し、「憲法事実(憲法改正の必要性)があるのではないか」と話した。
読売新聞調査研究本部主任研究員  舟槻 格致
(引用終わり)
 
2018年03月20日 13:30~15:00 10階ホール
曽我部真裕京都大学教授
シリーズ研究会「憲法論議の視点」(5)「統治機構」
会見詳録 未掲載
(引用開始)
 5回目は、統治機構の課題を曽我部真裕京大教授が取り上げた。
 立憲主義の考え方からは、権力を縛る憲法の「統制力」だけでなく、迅速・的確に権力を行使する「推進力」も求められているとの認識を示す一方で、現在の日本では与党が強く、政権交代がないことが問題だとして、野党に奮起を促した。また、日本の国会では法案について丁寧な逐条審議が行われていないこと、請願権の活用が求められること、といった課題も摘示された。
 質疑では、民主党政権の失敗を念頭に出席者から「政権交代と言われても、我々は幻滅してしまっている」といった疑問の声も上がったが、曽我部氏は「政権交代は政官の関係にも(良い方向で)影響する。その重要性を改めて申し上げたい」と訴えた。
読売新聞調査研究本部主任研究員  舟槻 格致
(引用終わり)