2018年4月26日配信(予定)のメルマガ金原No.3129を転載します。
CNN.co.jp 2018.03.31 Sat posted at 10:21 JST
ガザで大規模デモ、イスラエル軍と衝突 17人死亡、1400人超負傷
(抜粋引用開始)
ガザ(CNN) パレスチナ自治区ガザの対イスラエル境界沿いで30日、「帰還の行進」と呼ばれる抗議デモが行われ、パレスチナのリヤド・マンスール国連代表によると、イスラエル軍との衝突で少なくとも17人が死亡、1400人超が負傷した。デモは1948年のイスラエル建国の翌日に当たる5月15日まで、6週間にわたり続く見通し。
パレスチナ保健省によると、負傷者は1416人に上る。うち758人は実弾、148人はゴム弾による負傷で、頭部や腹部、背中に重傷を負った例もあると明かした。
イスラエル国防軍(IDF)は声明で、数千人のパレスチナ人がガザ地区全域で「暴動」を起こし、タイヤを燃やしたり投石を行ったりしたと言及。暴徒鎮圧のための手法で応じ、主要な扇動者に対しては発砲したとしている。
(略)
(引用終わり)
(抜粋引用開始)
【4月14日 AFP】 パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)とイスラエルとの境界付近で続く、抗議デモに参加したパレスチナ人らとイスラエル軍との衝突で、死者数は13日までに34人に上っている。一連の衝突では他にも数百人が負傷している。
3週連続となったデモの参加者は過去2週よりは少なかったが、それでもかなりの人数が集まり、ガザの保健省によると、新たにパレスチナ人1人が死亡、数十人以上が負傷した。
同省によると、一連の衝突ではこれまでに、銃撃による負傷者122人や催涙ガスによる負傷者を含め500人以上が負傷している。
イスラエル軍は、同軍が1万人と推定する「暴徒」が、境界沿いのフェンスを破壊して突破しようとした他、火炎瓶や爆発物を使用したと主張している。
(略)
3月30日に始まったデモは、6週間にわたって続けられる予定で、パレスチナ難民に向けて、今はイスラエル領となっているかつての自宅への帰還を呼び掛けるものだ。イスラエルはこれを同国の破壊を呼び掛けているに等しいと主張している。
(引用終わり)
4月14日付のAFPの記事で、上には引用しませんでしたが、こういう文章も含まれており、考え込まされます。
「ガザ地区北部での抗議デモに娘たちと息子とともに参加した女性は「死ぬのは怖くない。ガザでは既に死んだようなものだから」と語った。」
ところで、私の中東やパレスチナ問題についての知識の大半は、放送大学における高橋和夫教授の講義で学んだことによって得られたものでした。その間の事情は、巻末にリンクした過去の私のブログに書いているとおりです。
その高橋教授も先月(2018年3月)をもって、定年まであと2年を残して放送大学を退任され、私自身、在籍年限の関係から、全科履修生になって満10年が経過する来年3月には、めでたく(?)放送大学を卒業予定ですから、高橋先生の謦咳に接する機会もなくなっていくのかな、と少し寂しく感じたりしています。
それに、私が放送大学を視聴する主たるメディアであったケーブルテレビ(J:COM)が、今年の3月末をもって放送大学の放送を打ち切ってしまったので、新たにBSを受信できる環境を整えない限り、放送大学の開講科目を視聴しようとすれば、インターネットの学生専用ページからアクセスするしかなく、どうも不便で仕方がありません。このため、来年4月に再入学しようという意欲もかなり減退しているのですが、ただ、高橋和夫先生が、現在開講中のラジオ科目「国際理解のために('13)」やテレビ科目「パレスチナ問題('16)」を改訂される予定があるとかで、そちらも、履修制限がなければ、是非受講したいとも思いますので、なかなか悩ましところです。
さて、現在のガザにおける事態に先立つ昨年11月13日に、高橋和夫先生が、高橋真樹さん(ノンフィクションライター)とともに、TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』に出演した際の録音が公開されています。
2017.11.14 火曜日11:57
そして、その文字起こし版が、SYNODOSに掲載されましたので、一部引用しておきます。ただし、「パレスチナ統一政府が発足へ」という「期待」については、今のところ「残念ながら・・・」という結果になっていますので、冒頭の、高橋和夫先生が「パレスチナ問題とは何か」という最も基本的な説明をされている部分のみ引用しました。この問題を、私は全15回の講義(放送大学「パレスチナ問題('16)」)として受講したのです。
なお、高橋真樹(たかはし・まさき)さんが、パレスチナ現地の状況について詳しくお話されています。一々引用はしていませんが、是非お読みいただければと思います。
SYNODOS 2018.04.03 Tue
(抜粋引用開始)
高橋和夫 よろしくお願いします。
荻上 そして、本日は、ノンフィクションライターの高橋真樹さんにもおいでいただいております。高橋真樹さんは1997年からパレスチナを断続的に取材されています。難民の支援活動もしていて、今年『ぼくの村は壁で囲まれた―パレスチナに生きる子どもたち』を現代書館から出版されました。よろしくお願いします。
高橋真樹 よろしくお願いします。
100年ほど前、ヨーロッパで迫害を受けたユダヤ人たちが、パレスチナには自分たちの祖先が住んでいたのだから、こんな迫害ばかりのヨーロッパから抜け出してパレスチナに国を作ろうと運動を起こしました。しかし、当時そこにはパレスチナ人が住んでいた。住んでいる方としては、いじめられたからといって国を作られても困ります。両者の間で土地をめぐる争いが始まった。というのが大雑把な話です。
高橋和夫 はい。和平への期待が最も高まったのは、ノルウェーの仲介でオスロ合意ができた時です。これにより、パレスチナ側は国際的にイスラエルを認める代わりに、イスラエル側は、ガザ地区と西岸地区の大半から撤退するという話になっていました。双方が満足するわけではありませんが、それなりの妥協点に落とし込めたかな、というところでした。しかし、それもうまくいかなかった。
高橋和夫 ええ。もちろん、国際的に認められたイスラエルはしっかりあります。そしてガザ地区はパレスチナ人が支配している。ただしガザ地区は出口も閉められていて完全に包囲された巨大な監獄状態です。もう一つはヨルダン川西岸地区です。こちらはパレスチナ人が支配しているように言われますが、実際に彼らの支配下にあるのはほんの数%の地域であとはイスラエル軍が支配しています。パレスチナ人の地域はチーズの穴のような感じで、飛び地になっています。そして、パレスチナ人は飛び地の間を自由に動けません。
オスロ合意が結ばれた時、パレスチナ人の代表だったアラファト氏は、これからパレスチナにスイスのような平和な国を作るのだとおっしゃいました。しかし結果はチーズの穴です。パレスチナ人としては、納得がいっていません。
高橋和夫 イスラエルの市民は870万ほどいます。その四分の一は、イスラエル市民権を持ったパレスチナ人です。イスラエルが建国されたとき、多くのパレスチナ人が追い出されました。しかし残った人たちもいました。その人たちと、その子孫がイスラエル市民権をもったパレスチナ人として存在するわけです。そしてパレスチナ人は、ガザ地区と西岸地区にいます。前者に200万、後者に300万くらいです。
ここで重要なのは、両者を比べると、今はおそらくパレスチナ人の方が多数派だということです。パレスチナ人の方が、子供をたくさんつくるので。イスラエルとパレスチナ地区全体で見ればパレスチナ人の人口が増えていて、ユダヤ人は少数派になっているという状況です。
高橋和夫 そうですね。ヨルダン川西岸地区とガザ地区を全部返してもらっても、その面積をイスラエルと比べると78対22、わずか22%ほどです。そして現在、その22%の大半はイスラエルの支配下にあります。実際にパレスチナ人の土地と言えるのは、ほんの数%の地域、7、8%がいいところという感じです。
荻上 やはり宗教の問題と領土の問題が入り組んでいるのでしょうか。
高橋和夫 私は基本的には、土地の問題だと思っています。よくユダヤ教とイスラム教の問題だといわれますが、パレスチナ人にもたくさんキリスト教徒がいるのです。単純にユダヤ教とイスラム教の争いと言い、キリスト教を切り離してしまうのはそうしたパレスチナ人に対して失礼だと思います。さまざまな宗教の人々がいるなかで、自分の宗教の正当性を主張しあっているのではありません。問題の核心は、土地が誰のものなのか、水が誰のものなのか、という問題です。
(引用終わり)
(弁護士・金原徹雄のブログから/高橋和夫氏関連)
2013年8月17日
2015年1月23日
2016年8月6日
2017年1月26日
2017年5月1日
2017年8月17日
2017年9月7日
2018年1月19日