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「南部さんの国民投票法講座」(マガジン9)に注目しよう

 2018年5月3日配信(予定)のメルマガ金原No.3136を転載します。
 
「南部さんの国民投票法講座」(マガジン9)に注目しよう
 
 事前の予報が不順な天候を繰り返し伝えていため、果たして予定通り開催できるのか危ぶんでいた“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2018”ですが、みんなの祈りが通じ、無事予定通りのスケジュールで開催することができました。おまけに、目分量からの推測ではありますが、過去最大の人出ではないかという気がするほど、多くの方においでいただき、楽しんでいただくことができました。
 出演してくださった皆さま、西の丸広場に集ってくださった皆さま、本当にありがとうございました。
 先例にならい、まずFacebookに写真レポートをアップし、それをブログにまとめようと思いますが、今日の間には合いませんので、明日以降ということにさせていただきます。
 
 昨日は、自民党憲法改正推進本部による日本記者クラブでの記者会見の模様をご紹介しましたが、もしも自民党の思惑通り、憲法改正案を国会が発議することになったら、次に待ち構えているのは国民投票です。
 その手続を定めた「日本国憲法の改正手続に関する法律」は、広告が事実上野放しに近いなど、様々な欠陥が指摘されており、本当に改憲発議したいなら、まず手続法をまともなものに改正しなければならないのではないのか?ということが問題となります。
 
 先日、本間龍さんと南部義典さんの共著(対談)『広告が憲法を殺す日 国民投票プロパガンダCM』(集英社新書)の内容を少しご紹介しました(「憲法」についての新書を2冊買った、これから読むけどお薦めします~『五日市憲法』『広告が憲法を殺す日 国民投票プロパガンダCM』/2018年4月25日)。
 
 上記書籍の共著者のうち、南部義典(なんぶ・よしのり)さんの略歴を、南部さんが長らく「立憲政治の道しるべ」を連載しているマガジン9から引用しておきます。
 
(引用開始)
南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。衆議院議員政策担当秘書慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク国民投票広報機構」代表。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。国民投票法に関し、衆議院憲法審査会、衆議院参議院日本国憲法に関する調査特別委員会で、参考人、公述人として発言。主な著書に『図解 超早わかり国民投票法入門』(C&R研究所、2017年)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社、2007年)、『広告が憲法を殺す日 ――国民投票プロパガンダCM』(共著、集英社新書、2018年)、『18歳成人社会ハンドブック ――制度改革と教育の課題』(共著、明石書店、2018年)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会、2017年)、などがある。(2018年4月現在)
(引用終わり)
 
 『広告が憲法を殺す日 国民投票プロパガンダCM』を購入する前から私の書棚に並んでいた南部さんの著書は、上にも紹介されている『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(2007年/現代人文社)でした。
 この法律が出来て間もない時期の出版で、他に頼りにできるような解説書もほとんどなく、憲法学習会のためのレジュメ作成などにあたってはかなり参考にさせてもらいました。 ただし、本間さんとの対談で南部さんご自身が認めておられるとおり、民主党議員の政策担当秘書としてこの法律の立法過程に関わっていた南部さんも、国民投票運動における広告規制の重要性には気付いていなかった、ということを反映し、極力規制をなくし、自由な運動を保障するということに力点を置いた解説が『Q&A解説 憲法改正国民投票法』中において展開されているという印象を受けます。
 
 さて、法律が出来てから10年以上、いよいよ憲法改正国民投票が現実の政治日程にのぼるかもしれないという状況を迎え、マガジン9条での南部さんの連載も、「立憲政治の道しるべ」特別編として、「南部さんの国民投票法講座」が始まっています(2018年1月~)。
 もちろん、これまでも「立憲政治の道しるべ」で、たびたび国民投票法のことは取り上げてこられたのですが、「憲法改正についての話題が多くのぼるなか、「国民投票」について知りたいという声が聞かれるようになりました。この連載では、国民投票までの流れから、国民投票法について知っておくべき点や課題について説明していきたいと思います。」(連載第1回)ということで、短期連載が始まりました。
 非常に分かりやすく、かみ砕いた説明がなされていますので、是非1人でも多くの方にお読みいただきたく、ご紹介します。
 
マガジン9  南部さんの国民投票法講座  2018年1月24日
第1回 国民投票までの流れを知ろう(南部義典)
(抜粋引用開始)
 この憲法96条が定める憲法改正手続きの具体的な内容についての法律が「国民投票法」で、2007年5月に制定されました。正しくは「日本国憲法の改正手続に関する法律」といいます。
 これとは別に、国会の組織や運営のあり方を定める「国会法」という法律も同様に、憲法改正の手続きに関する事項を定めています。「国民投票と法」というカテゴリーは、憲法国民投票法、国会法の三本柱で成り立っています。
(略)
 この講座では、国民投票法の第1条から順番に条文を読み込んでいくような進め方はしません。各回、主なトピックを拾いながら、掘り下げていきますので、気軽に読み進めていただければ幸いです。
 初回となる今回は、「国民投票までの流れを知ろう」と題し、その手続きを大まかに説明します。
※金原注 ここで掲載されている南部さん作成の「国民投票までの流れ(衆議院参議院の場合)」はとても分かりやすい図表です。しっかり読んで頭に入れると良いと思います。
(引用終わり)
 
マガジン9  南部さんの国民投票法講座 
第2回 ここが問題!国会で審議される憲法改正原案(南部義典)
 http://maga9.jp/180221-2/ 2018年2月21日
(抜粋引用開始)
 憲法改正原案も、通常の議員立法と同じく、提出者の人数には制限がありません。理屈の上では、議員1名でも提出することができます。
 しかし、仮に提出者が1名しかいない場合、(6)衆議院本会議における趣旨説明、質疑から(13)参議院憲法審査会における採決の直前までのすべてのプロセスにおいて、答弁をすべて1名でこなさなければならなくなります。それは物理的(体力的)に無理でしょう。
 現実問題としては、衆議院参議院で揃って、単独で3分の2以上の議席を持つ政党(会派)は存在しないことから、(5)のように憲法改正原案を複数政党(会派)で「共同提出」することが議論の前提となります。提出者も、共同提出に合意した政党(会派)からそれぞれ選ばれることになり、通常は複数名いることが想定されます。
 例えば、自民党希望の党公明党日本維新の会が共同して、憲法改正原案を衆議院に提出したとします。この場合、提出者の内訳は、自民党4名、希望の党2名、公明党1名、日本維新の会1名といったように、大政党(会派)からは複数名選ばれることになります。繰り返しますが、提出者が1名しかいないと、その政党(会派)に対する質疑のさい、答弁の負担がすべてその人だけに掛かってしまいます。おそらく、自民党ではベテラン1名、中堅1名、若手2名くらいでポジショニングを行い、答弁を分担するはずです。
(略)
 表の(5)憲法改正原案を共同提出、のところに、「内容関連事項ごとに区分」と記しています。私が考えるに、これが憲法改正原案に関する最も重要なルールですが、法律では「(議員が憲法改正原案を提出するに当たっては)内容ごとに関連する事項ごとに区分して行うものとする」としか定めていないので(国会法第68条の3)、何が内容関連事項に当たるのか、その判断基準を明確にする必要があります。
 まさに、憲法改正原案の大きさ(サイズ)を決める問題ですが、有権者には憲法改正案ごとに1枚の投票用紙が与えられ、投票することになっているので、「投票単位の問題」にも直結しているのです。
 内容関連事項をどう判断すべきか、国民投票法(案)が国会で審議されていた2006年~07年当時も議論になりました。法案の提出者は「①個別の憲法政策ごとに民意を問うという要請、②相互に矛盾のない憲法体系を構築する要請、のバランスである」と繰り返し答弁していました。①を重視すれば、できるだけ細かく区分することが必要になりますが、あまり細かく区分しすぎると憲法体系に矛盾が生じることから、ある意味、当然のことを述べているにすぎません。具体例を以て、当てはめていくしかありません。
(引用終わり)
 
マガジン9  南部さんの国民投票法講座 
第3回 国民投票運動って、イメージできますか?(南部義典)
 http://maga9.jp/180321-1/ 2018年3月21日
(抜粋引用開始)
 国民投票運動の定義ですが、国民投票法100条の2が「憲法改正案に対し、賛成又は反対の投票をし、又はしないよう勧誘する行為」と規定しています。
 まず、運動の対象は「憲法改正案」です。国民投票法14条1項1号は、憲法改正案を「国会の発議に係る日本国憲法の改正案」と定義しています。あくまで、国会が発議した憲法改正案です。前回扱った「憲法改正原案」は、国会が発議する前のものなので、国民投票運動の対象にはなりません。国会の発議とは無関係な、巷にあふれている憲法改正案(私案)も、国民投票運動の対象とはなりません。国会が憲法改正の発議をするまでは、憲法改正案は世の中に存在しないことから、発議までの間、100条の2が定める意味の国民投票運動は、行いようがないということにもなります。
 また、国民投票運動に該当するのは、賛成投票、反対投票をする(しない)よう、勧誘する行為です。「勧誘」がキーワードであり、その意味は、相手方の意思に明示的に働きかけることです。対面でも、ネット上でも「賛成投票をしてほしい」「反対投票をしないでほしい」と言うのは、相手方の意思に明示的に働きかけているので、国民投票運動に該当します。一方、「私は、賛成投票をすることを決めた」「私は、反対投票をするつもりだ」と言うだけでは、自らの意見を述べて(示して)いるだけで、相手方の意思に明示的に働きかけたこと(投票の勧誘)にならないので、国民投票運動には該当しません。国民投票そのものを棄権(ボイコット)するよう勧誘する行為が国民投票運動に該当するかどうか、政府の解釈はいまだに確定していません。
(略)
 国民投票運動をどのように行うのかという、運動の態様に話を進めます。
 国民投票法は、運動の態様については「原則自由」という理念に則っています。(表1)では、国民投票運動の例としていくつか示していますが、選挙運動としては禁止されているものも、国民投票運動としては「ほとんど」認められます。「原則自由」なので、ポジティブな説明は実際、難しいです。私が例示したもの以外でも、どんどんアイデアを出して、実行に移していただくことできます。
 反対に、⑤許されない行為はあるのかということですが、ここでは、二つの類型を説明します。
 まず、組織的に、多数人を相手に行われる買収行為です。違反があった場合には、3年以下の懲役、禁錮、または50万円以下の罰金に処せられます。「多数人を相手に」とは、一体何人以上を相手にした場合をいうのか、国民投票法の規定(第109条)だけでは明らかにならず、裁判例が出るのを待つしかありません。
 少なくとも言えるのは、選挙の場合では、たった一人を相手に買収が行われるだけでも買収罪が成立するのに対し、国民投票では犯罪とならないということです。例えば、喫茶店で友人どうしのA君とB君が歓談しているとします。たまたま、憲法改正案に賛成すべきか反対すべきかという話題となり、最終的にB君が意見を変え、二人は意気投合した結果、A君が「B君、賛成投票の約束をしてくれてありがとう。うれしいから、今日は僕がおごるよ」と言ってB君の会計もしたとします。この場合、選挙では買収罪が成立しますが、国民投票では不可罰となります。
 もう一つは、いわゆる国民投票運動CMが投票期日の14日前から禁止されるという点です(国民投票法105条)。よく、スポットCMの禁止とも言われますが、国民投票法は番組のスポンサーとなるCM(タイムCM)とスポンサーとならないCM(スポットCM)を区別していないので、国民投票運動CMと呼ぶのが正確です。
 なぜ、「投票期日の14日前から禁止される」のか。国民投票法の基本的な考え方は、投票期日に賛成・反対双方のCM合戦が過熱すると、有権者が冷静な判断ができなくなってしまうおそれがあるので、それを避けるため、一定の「冷却期間」を置くということです。
 もう一つの理由付けとしては、CMとはもともと国民投票運動の手段としては高額なもので、資金力を持つ者が優位に立って、効果的に行うことができることから、賛成・反対の立場でCMの総量が偏在することがないよう、間接的な意味で、総量規制を及ぼす(一定期間、賛成・反対のCM総量をどちらもゼロとする)という点が挙げられます。
 「投票期日の14日前から禁止される」ことを反対に解すると、投票期日の15日前(の午後12時)までは許されることになります。また、冒頭で、国民投票運動は「勧誘」がキーワードであると述べましたが、賛成投票・反対投票の勧誘をその要素としないCMは、概念の上では国民投票運動CMではなくなるので、規制の網には掛からず、投票期日まで放送できるということになります。憲法改正案の内容に関して、一定の印象(プラス、マイナス)を与えるにとどめ、勧誘表現を直接含まない態様のものが挙げられます。
 仮に、憲法9条改正案(自衛隊明記案)が発議されていたとしたら、被災地でがれきの下に埋もれている子ども、お年寄りを救出する自衛隊員の姿を訴えるだけのCMは、投票期日14日前から投票期日までの間でも放送することができます(イメージとして説明しています)。賛成投票・反対投票の「勧誘」を要素としていないので、国民投票運動CMには該当しないからです。商品広告で多く採られている手法が(価格も示さなければ、「買って下さい」とも言わない)が、国民投票にも応用されるケースといえるでしょう。
(引用終わり)
 
マガジン9  南部さんの国民投票法講座 2018年4月18日 
第4回 国民投票広報協議会の役割とは?(南部義典)
(抜粋引用開始)
 個別に指摘しましたが、国民投票広報協議会が行う事務のいずれも(国民投票公報、憲法改正案広報放送、憲法改正案広報広告)、その詳細は決まっていません。どの政党(会派)も、公式に検討を始めたことさえありません。先例が何一つないことから、この点は非常に深刻なことです。
 法的には、国会が憲法改正の発議をすれば、その瞬間から国民投票運動は可能となります。国民が、賛成、反対の判断をするのには、国民投票広報協議会から発せられる各種の情報が頼りになります。国民投票運動が盛り上がろうとしているときに、国会側が広報のあり方を「これから考えます。しばしお待ちを」というのでは、時機を逸することは明らかです。本来、憲法改正の中身の話に深入りする前に、広報のあり方をどうするか、各党各会派で十分な合意を整えておくべきなのです。
 もう一つ、問題が残っています。選挙の際の政見放送、候補者経歴放送は、その期間中、同じ内容が流れ続けます。他方、国民投票は、期間が60〜180日間とかなり長いことから、同じ内容の広報放送が流れ続けたりすると、視ている有権者が飽きてしまったり、発議後に生じた新たな争点に対応できないなどの問題が生じます。国民投票運動期間の終盤で、役に立たない広報が続いては、国民投票そのものへの関心を薄めてしまいます。そこで、広報の内容を、期間の途中で変更することを検討すべきです。
(引用終わり)