2018年5月13日配信(予定)のメルマガ金原No.3146を転載します。
皆さんは、伊藤忠商事の社長、会長を歴任した後、民主党政権時代の2010年6月から2012年12月まで、中華人民共和国駐箚特命全権大使を務めた丹羽宇一郎(にわ・ういちろう/1939年1月生)さんが、「立憲デモクラシーの会」設立時からの呼びかけ人のお一人(経済界からはただ1人)であることをご存知だったでしょうか?
元々、憲法学者と政治学者が中心となった立ち上げた同会ではあるものの、それにしても、自然科学関係が池内了氏と益川敏英氏の2人だけとは少なすぎはしないか?と思っていましたので、呼びかけ人リストのそのすぐ下に「経済界 丹羽宇一郎 元中国大使」と、ぽつんと1人だけ書かれていることに、私は最初から気がついていました。
従って、その丹羽元駐中国大使が、立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期の5人目の講師として登壇されるという予告を見ても、少しも不思議な気持ちは起きませんでした。
一昨日(5月11日)午後6時から、早稲田大学早稲田キャンパス・3号館402教室において、丹羽宇一郎さんが「戦争に近づくな」と題して講演されました(主催:立憲デモクラシーの会)。
いつものようにUPLANによる中継動画がアップされていますので、ご紹介します。
20180511 UPLAN 丹羽宇一郎「戦争に近づくな」(1時間41分)
もう少し音声レベルが高ければ、と思う方には、安価な外付けスピーカー(USB電源が主流)の購入を検討されてはどうですか?とお勧めします。1,000円~2,000円で満足のいく製品が入手できるようです(1,000円以下というのもありますが)。
ところで、丹羽さんについては、私は昨年の12月に、以下のようなブログを書いています。
2017年12月12日
そこでは、丹羽さんが昨年の8月以降、戦争を振り返る際に節目となる日に、「東洋経済ONLINE」に発表した論考をご紹介しました。その節目の日というのは、以下の5日です。
8月 6日 広島への原爆投下(1945年)
8月15日 敗戦の国民への公表(1945年)
9月18日 満州事変開戦(1931年)
9月29日 日中国交正常化(1972年)
12月8日 太平洋戦争開戦(1941年)
その後、このシリーズには次の1編が追加されていました。沖縄戦が始まった日「3月26日(1945年)」に発表されました。
「怒りに身が震え、涙が止まらなかった」
丹羽 宇一郎:元伊藤忠商事社長・元中国大使 2018年03月26日
(抜粋引用開始)
求めて戦争体験者の話を聞かねばならない
戦争を知らない世代が、戦争に近づいているように見える。いま日本には、日本は強くなければ他国に侵略され、蹂躙(じゅうりん)される、だから日本はもっと強い武力を持つべきという主張がある。私はこうした主張に強く異を唱える。
沖縄の悲劇は負け戦だったからか。日本軍が強ければ沖縄の人々を救えたのか。こうした問いに対しても、私は否と答える。
力対力では、悲劇を増殖させるだけだ。日本が強ければ、今度は日本軍が他国の人々を犠牲者にすることになる。これは、すでに中国やフィリピンで起きた事実である。大という文字が付こうが付くまいが、虐殺は非道の極みだ。
米軍が、日本軍が、特別なのではない。戦争による非人間性は人類の業である。戦争は人から人間性を奪う。被害者にならなければ、加害者になる。悲劇の加害者であることを強いられる国民も、やはりある種の被害者といえよう。
だから力対力、武力対武力で国際問題を解決するという姿勢では、人類を幸福にする道から遠ざかっていくことになってしまうだろう。
戦争では、結局、国民が犠牲になる。真っ先に犠牲になるのは弱者だ。女性や子どもが犠牲者となる。それが戦争の真実である。戦争に近づいてはいけないのだ。そのためにも、われわれは戦争の真実を知ろうとしないまま、一生を過ごすことがあってはならない。
沖縄の人々が、かつて味わった苦しみ、悲しみ、怒り、絶望をわれわれは知るべきである。沖縄を含め、日本全国にいる戦場体験者、戦災体験者の方々には、戦争を知らない世代が具体的なイメージを持てるよう、つらい思い出をあえてお話ししてくださることを願う。
われわれは、求めて戦争体験者の話を聞かなければいけない。もうわずかしか時間は残されていないのだ。それが、今日、73年前に沖縄戦の始まった3月26日に涙をこらえて私が思うことである。
(引用終わり)
「戦争に近づいてはいけないのだ。そのためにも、われわれは戦争の真実を知ろうとしないまま、一生を過ごすことがあってはならない。」というのが、一昨日の講演の主題でもあったはずだと思います。
(弁護士・金原徹雄のブログから/立憲デモクラシー講座)
2015年11月15日
2015年12月12日
山口二郎法政大学教授による「戦後70年目の日本政治」一応の総括~12/11立憲デモクラシー講座 第3回)
2016年1月8日
中野晃一上智大学教授による「グローバルな寡頭支配vs.立憲デモクラシー」~1/8立憲デモクラシー講座第4回)
2016年1月31日
2016年3月28日
2016年4月11日
2016年4月25日
2016年5月15日
2016年6月16日
2016年10月22日
2016年11月21日
2016年12月17日
2017年1月16日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第4回・山口二郎法政大学教授「民主主義と多数決」のご紹介
2017年3月11日
2017年5月5日
2017年6月29日
2017年12月17日
2018年1月30日
2018年3月3日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第3回・石田淳氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)「安全保障のディレンマと立憲デモクラシー」のご紹介
2018年4月29日
(弁護士・金原徹雄のブログから/YouTube版・立憲デモクラシー講座)
2018年2月18日
2018年3月12日
2018年3月14日
2018年4月6日