カジノ実施法案(特定複合観光施設区域整備法案)の慎重審議を求める野党5会派「要求事項」を読む
2018年6月3日配信(予定)のメルマガ金原No.3167を転載します。
カジノ実施法案(特定複合観光施設区域整備法案)の慎重審議を求める野党5会派「要求事項」を読む
1月22日に召集された第196回国会(常会)も、6月20日の会期末をにらみながら、与野党対決法案の採決を目指す与党が会期延長の方針を固めたと報道されるなど、情勢は緊迫の度を増しています。
と言ったものの、こう問題法案が多いと、何がどうなっているのか、いちいち状況をフォローするのも大変です。
ということで、少し調べてみたところ、
〇働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案⇒5月31日衆議院で修正して可決(賛成:自由民主党、公明党、日本維新の会、希望の党)・現在参議院で審議中〇特定複合観光施設区域整備法案⇒衆議院で審議中(5月22日に内閣委員会に付託)
であり、この他に、「日本国憲法の改正手続に関する法律」について、与党が提案している現行の公職選挙法とのずれを解消する内容の改正案に対し、野党が求めるテレビCM規制などの取扱もからみ、どうやら与野党共同提案の目は消えたようであり、こちらも目が離せません。
今日は、上記諸法案のうち、カジノ実施法案(特定複合観光施設区域整備法案)についての最新の情勢を確認しておきたいと思います。
6月1日の衆議院内閣委員会での審議の模様を伝えた報道を引用します。
朝日新聞デジタル 2018年6月1日21時18分
カジノ法案、6日にも委員会採決の構え 野党反発(大久保貴裕)
(抜粋引用開始)
カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案を審議する衆院内閣委員会が1日開かれ、野党側は国民の理解が広がっていない現状などを指摘した。安倍晋三首相は依存症対策などを強調。与党は6日にも委員会採決に持ち込む構えで、野党は反発を強めている。
(略)
首相は「認定にあたっては基準に適合するか厳正に審査する。透明性を確保した上で公平かつ公正に実施することが重要で、具体的な審査方法は、今後、検討する」と述べたうえで、加計問題について「民間委員において議論がなされ、議事録はすべて公開されている」と付け加えた。
委員会終了後、野党5会派は国会内で記者会見を開き、十分な審議時間の確保や、経済効果の試算などのデータを政府側が提出することなどを求めた。
(引用終わり)
上の朝日新聞の記事にある野党5会派による国会内記者会見については、IWJによる中継動画が公開されています(全編動画視聴のためには会員登録が必要です)。
※IWJ会員登録
ハイライト動画(3分30秒)
会見出席者は、阿部知子氏(立憲民主党、衆議院議員)、稲富修二氏(国民民主党、衆議院議員)、中川正春氏(無所属の会、衆議院議員)、塩川鉄也氏(日本共産党、衆議院議員)、玉城デニー氏(自由党、衆議院議員)の5人でした。
全編動画は22分、各党から出席した方は、いずれもこの法案に通暁した方であり(当たり前ですが)、短い発言時間の中に、要領良く法案の問題点を指摘しておられて勉強になりました。
野党5会派による要求事項がまとめられていますので、ご紹介します(立憲民主党ホームページより)。
(引用開始)
カジノを含むIR整備法案審議に当たっての要求事項
2018 年 6 月 1 日
●国民の声を聞くこと。国民の多くがIR、カジノについて、反対、疑問の意見を持って
●十分な審議時間を確保すること。昨日の参考人質疑でも「国会で慎重かつ十分な審議を」と要望されていた。また 200 条を超える新法は、介護保険法以来、21 年ぶりのことであり、きわめて重要な法案であることは、与野党共通の認識である。介護保険法が、3国会にわたって 50 時間超の審議を行ったことを踏まえて、それを下回らない審議時間を確保すること。
●充実した審議に資するための資料の提出を求める。
・IRの経済効果について、我が国における規模、また社会に及ぼす負の影響を含め、政府としての試算を示すこと。
・350 項目に及ぶ政省令事項について、その概要を明らかにすること。
・IR法案提出に向けた与党協議における議論の論点及び政府提出資料の開示。
・その他
以上
(引用終わり)
私も、この文書を読んで、「200条を超える新法は、介護保険法以来、21年ぶり」ということを初めて知りました。
衆議院で審議中の「特定複合観光施設区域整備法案」については、リンク先で確認してください(全251条+附則16条)。
衆議院インターネット審議中継
↓
カレンダー検索(会議名→内閣委員会)
5月30日(内閣委員会)
5月31日(内閣委員会)
6月1日(内閣委員会)
5月31日は参考人質疑が行われており、賛成の立場から、美原融氏(大阪商業大学総合経営学部教授)と石川耕治氏(GT東京法律事務所弁護士)が、反対の立場から、鳥畑与一氏(静岡大学人文社会科学部教授)と新里宏二氏(日本弁護士連合会カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ座長)が、それぞれ意見陳述されています。
また、6月1日には、安倍首相が出席しています。
さて、6月6日にも与党は内閣委員会での採決に持ち込むと報道されていますが、さて、どうなりますか。
最後に、この法案について考える際に、かねて私が疑問に思っていることを書いておきます。
このカジノ実施法案(特定複合観光施設区域整備法案)は、2016年12月に議員立法で成立したカジノ推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)に基づくものですが、この推進法の審議に際し、公明党は党議拘束を外し、賛否の判断を各議員に委ねるという対応を行いました。その結果、賛成議員の方が反対議員よりも多かったものの、反対した議員の中には、私の記憶に間違いがなければ、山口那津男代表や井上義久幹事長などの有力者が含まれていたと思います。
今回の特定複合観光施設区域整備法案は閣法(内閣提出法案)ですから、与党である公明党が賛成するのは当たり前と思われるかもしれませんが、私は、推進法案に反対しながら実施法案に賛成するということについて、政治家としての態度に何も矛盾はないのか?山口代表は公的な場での釈明を行ったのか?ということがとても気になっています。
推進法案に賛成したけれど、実施法案には賛成できないという立場は、論理的にはあり得ると思いますが、その逆は「あり得ない」でしょう。論理的に説明しがたいことをやろうというのですから、そこには「政治家としての良心を眠らせる」必要が絶対にあるはずです。
もっとも、山口代表や公明党から、既に上記の点についてのしかるべき釈明が行われていたとしたら、私の不明をお詫びしなければならないことをお断りしておきます。
(弁護士・金原徹雄のブログから/カジノ問題関連)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判
2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
2017年3月26日
2017年4月5日
「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)
2017年6月21日
2017年7月5日
カジノ実施法案の準備状況とNNNドキュメント『ギャンブル依存~抜け出せない"病"回復と衝動の狭間~(仮)』(7/30)のお知らせ
2017年8月18日
予告編・「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!
2017年8月19日
「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!(本編)
2017年8月30日
あと1日!(8/31まで)「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の意見を送ろう
2017年9月1日
2017年9月3日
「第24回全国市民オンブズマン和歌山大会」に参加して
2017年9月4日
大阪弁護士会シンポジウム「カジノ実施法の制定阻止に向けて」(9/16)への参加を呼びかけます
2017年9月16日
「カジノ実施法の制定阻止に向けて」(大阪弁護士会)」に参加して
2017年11月3日
11/30カジノ問題を考える和歌山ネットワーク・創立総会のご案内(記念講演:井上善雄弁護士)
2017年12月6日
日弁連・院内学習会「カジノ解禁(実施法の制定)に反対する」(2017年12月5日)を視聴する