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日本記者クラブ「公文書管理を考える」~三宅弘弁護士、仲本和彦沖縄県公文書館アーキビスト、福田康夫元首相、磯田道史国際日本文化研究センター准教授、加藤丈夫国立公文書館館長

 2018年6月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3178を転載します。
 
日本記者クラブ「公文書管理を考える」~三宅弘弁護士、仲本和彦沖縄県公文書館アーキビスト福田康夫元首相、磯田道史国際日本文化研究センター准教授、加藤丈夫国立公文書館館長
 
 本日お送りするのは、去る6月2日に配信した「日本記者クラブ「公文書管理を考える」第3回までを視聴する~三宅弘弁護士、仲本和彦沖縄県公文書館アーキビスト福田康夫元首相」の増補版です。
 前回は6月1日に行われた福田康夫内閣総理大臣まで(第3回)のご紹介でしたが、その後、6月5日に磯田道史国際日本文化研究センター准教授(第4回)、6月7日に加藤丈夫国立公文書館館長(第5回)の会見があいついで行われましたので、この2回分を追加しました。
 
 あらためて、過去5回の登壇者の顔ぶれを振り返ってみましょう。
 
第1回 三宅弘氏(弁護士、公文書管理委員会委員長代理)
第2回 仲本和彦氏(沖縄県公文書館アーキビスト
第3回 福田康夫氏(元内閣総理大臣
第4回 磯田道史氏(国際日本文化研究センター准教授)
第5回 加藤丈夫氏(国立公文書館館長)
 
 日本記者クラブでは、今回の「公文書管理を考える」シリーズのように、特定のテーマに関して様々な識者を招くことも多く、時として、非常に新鮮な角度からの見方を知ることができて有益です。
 全部一度に視聴するのは大変ですが、少しずつでも計画的に視聴されれば、きっと貴重な知見が得られることと思います。
 
 
2018年04月16日 15:30~16:30 10階ホール
「公文書管理を考える」(1)三宅弘・弁護士(1時間07分)
(会見リポートから引用開始)
数百人規模の公文書管理庁新設でチェック強化を
 昨年来の森友・加計両学園を巡る問題が再燃し、公文書管理が改めて注目されている。内閣府の諮問機関である公文書管理委員会の委員長代理を務める三宅弘弁護士が、最近の問題を踏まえて解説した。
 役所内で複数の職員間の連絡に使われれば公文書の「組織共用性」という定義を満たすのに、職員が「個人のメモ」として作れば公文書扱いされていないケースや、役所の意思決定に関わる文書なのに保存期間「1年未満」に設定されて勝手に捨てられてしまうケースを厳しく批判。3月の朝日新聞の報道で発覚した財務省の文書改ざんを「昨年1年間の議論は何だったのか」と嘆いた。
 自衛隊の国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報について、防衛省がいったん廃棄したと説明した後に次々に見つかっている問題にも触れ、「外務省外交史料館同様に、史料館を設けて戦略的な集中管理をすべきだ」と提言した。
 改善策も示した。改ざんや不作成に対しては公文書管理法を改正して科料などの罰則規定を設けることや、安易な文書廃棄を防ぎ国として文書のチェック態勢を強化するために、内閣府公文書管理課を改組・独立させた数百人規模の公文書管理庁を作ることを呼びかけた。
 さらに①公文書の定義の一つである「組織共用性」を廃止して役所で保存すべき文書の範囲を広げること②情報公開法を改正して「知る権利」を明記すること③情報公開訴訟で開示・不開示が争われた文書について、裁判所に密室での閲覧権を与えて公平な判断を促す「インカメラ審理」の導入すること――を求めた。
 三宅弁護士は15年にわたって公文書管理や情報公開について、専門家の立場から発言を続けてきた。これまでは地味な分野で脚光を浴びることが少なかったが、国民の関心が高い今こそ、解決の好機になるかもしれない。
毎日新聞社会部  青島 顕
(引用終わり)
 
2018年05月11日 14:00~15:30 10階ホール
「公文書管理を考える」(2)仲本和彦・沖縄県公文書館アーキビスト(1時間37分)
(会見リポートから引用開始)
独立した管理機関設置など提言
 森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽など公文書管理を巡る問題が相次いで発覚している。1997年から9年間、米国立公文書館(NARA)で資料調査を行い、沖縄県公文書館アーキビストとして活躍する仲本和彦さんが、日本の公文書管理制度へ改善策を提言した。
 仲本さんの案は①公文書の定義を「組織の共有」に限定しない、②独立した記録管理院を創設、③レコードマネジャーの配置、④罰則規定を設ける―の4点だ。
 日本の公文書管理法では行政ファイルの破棄に関し首相に「協議し同意を得なければならない」とされ査察も首相が「提出を求めることができる」にとどまっている。しかし、米国では政府から独立した国立公文書館長が査察し、破棄も処分計画書を点検し、利害関係者がコメントできるよう官報に告知した後になされると違いを解説。政府の意向で破棄がされないよう、会計検査院のように独立した組織の設置などを求め「抜本的改革をしていかないとこの問題はなくならない」と指摘した。
 米国では国家戦略として記録管理が取り組まれているという。特に課題となっているのが電子媒体の保存で100年先にも閲覧できるようにするため産官学で取り組んでいると紹介した。トランプ大統領が駆使するツイッターも公文書として保存されるという。
 仲本さんは制度不備だけでなく、現在の国会論争にも苦言を呈した。首相の関与など「安倍おろし」に終始している点を疑問視し「本質は行政がゆがめられる土壌があることだ。公文書記録の管理をどうするかもっと突っ込んだ議論をしてほしい」と訴えた。今を生きる国民への説明責任だけでなく、将来の国民が政策点検するのに重要な公文書。新国立公文書館の建設までに、公文書の役割を国民が考える機会にしたい。
沖縄タイムス東京支社  上地 一姫
(引用終わり)
 
2018年06月01日 15:00~16:00 10階ホール
「公文書管理を考える」(3)福田康夫・元首相(1時間01分)
(会見リポートから引用開始)
失態続出 「家内は悲憤慷慨」
 森友、加計両学園や自衛隊の日報などの問題をめぐり「政と官」の関係が再び問われている。福田康夫元首相は小泉内閣官房長官として行政資料の保管・活用の旗を振り、自らの福田内閣で公文書管理法の制定に道筋をつけた。質問は相次ぐ失態をどう見るかに集中した。
 なぜ公文書の管理が大切か。
 「記録を残すのは、大げさに言えば歴史を積み上げている。その石垣は一つ一つがちゃんとした石じゃないと困る。正確な文書を積んでくださいということです」
 「改ざんだとか資料が無いというようなことは当初考えてなかった。あり得るのかと思いました」
 公文書管理法に罰則は必要か。
 「罰則規定を入れると文書を作らないんじゃないかと危惧して入れなかった。罰則で縛るよりも、一人ひとりの公務員が『この記録は残さないといけない』と思ってくれることの方がはるかに価値がある」
 福田氏は公務員採用時の研修強化や行政で何が起きたかを伝えるメディアの重要性に言及した。
 記者泣かせの「福田節」はいまも健在だった。行政が国民から信頼を得ていくには政治のリーダーシップが大事だと強調しつつ、安倍晋三首相や麻生太郎副総理・財務相への直接の批判にならないように慎重で穏当な言い回しを続けた。
 会見が終わりが近づくと「現状に怒ってはいないんですか」との直球の質問が出た。「私の家内ほどは怒ってない」と笑いを誘ってかわす回答に、司会者がすかさず「奥様はどういう風に怒っていらっしゃるんですか」と再質問。福田氏は少し考えてから答えた。「悲憤慷慨(ひふんこうがい)してますよ」
 情報公開の先進国である米国に少しでも近づけたいと、自ら積極的に取り組んだ公文書管理制度。当時は思いもしなかった不祥事の続出を残念に思う心情が伝わってきた。
(引用終わり)
 
2018年06月05日 15:00~16:30 9階会見場
「公文書管理を考える」(4)磯田道史・国際日本文化研究センター准教授(1時間28分)
(会見リポートから引用開始)
「政治は暴れ馬、公文書は手綱」 
 カルテは誰のものか。それは患者がそのコピーを持って、別の病院でセカンドオピニオンを聞くためのもので、患者の命を守るためのものだ。同じように、国民の生命・財産を扱う公文書はまさに国民の財産です。それを公務員が書き換えたり、破棄したりしてはならない――。
 極めて今日的な題材で、公文書管理について語るかと思えば、農民出身でありながら、備中松山藩五万石の藩政改革を奇跡的に成し遂げた幕末明治の儒者山田方谷が、信用を失った藩札を、見学者の見守る中、河原で焼却したエピソードを通して、公にとって都合の悪い情報も公開して、国民の信頼を得ることの大切さを説いた。
 茨城大学准教授だった時代、東日本大震災に遭遇し、防災史を研究しようと、過去600年に3度の大津波に襲われた浜松市に移り住み、静岡文化芸術大学に。そして、2年前からは歴史の宝庫である京都にある国際日本文化研究センターに移った。古文書を求めて東へ西へ。当代を代表する人気歴史学者の話は、古今東西の事象を具体的に語り、記者たちをぐっと引きつけた。
 ただし、公文書絶対主義ではない。大切なのは資料批判、資料を読み解く眼であることも強調した。家康が、武田信玄に大敗した三方ヶ原の戦い(1572年)の史料は、後世になるにつれて信玄軍の数が多くなり、江戸初期の史料では2万人だったのが、江戸後期には4万人を超えたという。そこには家康の敗戦を小さく見せるために史料を書き換えた可能性を指摘、史料の嘘を見抜くことも重要と語った。
 ただ、その嘘が分かるのは、昔の文書がいくつも残っており、史料間の矛盾があるためである。
 「政治は暴れ馬です。乗る国民がそれを操縦する手綱が公文書です」
 『日本史の内幕』(中公新書)も評判の学者は、形容も卓抜だ。
読売新聞社編集委員  鵜飼 哲夫 
(引用終わり)
 
2018年06月07日 13:30~14:30 9階会見場
「公文書管理を考える」(5)加藤丈夫・国立公文書館館長(1時間18分)
(会見リポートから引用開始)
人とカネかけ記録文化養成を
 公文書管理に対して、国は人とカネの投下をいかに怠ってきたか。加藤氏の話を聞いて痛感した。
 国の省庁は年間約350万冊文書ファイルを作成し、1年~30年の保存期間を設定。保存期間満了後に廃棄するか、公文書館などに移して保管するのかを決める。その判断の妥当性を内閣府公文書管理課がチェックした後で、国立公文書館が二重にチェックし、年間約5000件について異議を申し立てるという。加藤氏は「内閣府公文書管理課は20人体制だが、専門家はほとんどいない」と指摘し、専門家のいる公文書館の役割の重さを強調した。
 国立公文書館の担当職員はデータ化された文書ファイルのリストをパソコン上でにらみ、作成部署やファイル名の付け方を手掛かりに点検する。1人当たり年間約20万件処理する必要があるから、担当職員は残業を余儀なくされているという。
 加藤氏の話は文書管理の専門家(アーキビスト)の養成の重要性を説いた場面でさらに熱を帯びた。国立公文書館アーキビストは現在30人。東京五輪パラリンピック後に着工を見込む東京・永田町の新館完成までに150人に増員し、中央官庁に各1人、地方にも配置したいという。公的な資格制度の導入の必要性にも言及した。「陸上のトラック競技にたとえれば欧米に1周も2周も遅れている。10年以内に追いつくためにエネルギーを費やしたい。それが国民の行政への信頼につながる」
 森友・加計学園自衛隊の日報問題と公文書の信頼を揺るがす事態が次々に起きている。政府・与党は改革の必要性で声をそろえるが、実効性が上がるのかは不透明だ。
 本物の改革を実現させるには、証言より記録を信頼する文化を作り、それを人とカネをかけて育てることが必要だろう。企業経営者出身で、行政に対して第三者の視点を持つ館長がいま果たすべき役割は大きい。
毎日新聞社社会部  青島 顕
(引用終わり)
 
(参考法令)
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)
公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)