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和歌山県が公表した「旧優生保護法に関連した資料等の保管状況等調査結果」(2018年7月2日)を読んで

 2018年7月3日配信(予定)のメルマガ金原No.3197を転載します。
 
和歌山県が公表した「旧優生保護法に関連した資料等の保管状況等調査結果」(2018年7月2日)を読んで
 
 本日(7月3日)午後1時から3時まで、和歌山弁護士会館において、通算3回目の「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」が実施されました。
 残念ながら(と言うべきでしょうか)、今回も相談はありませんでしたが、和歌山弁護士会では、今後も随時相談を受け付けています。
  和歌山弁護士会  
  電話:073-422-4580 FAX:073-436-5322
 
 今日の相談会については、私もブログでご紹介しましたが(和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年7月3日)実施のお知らせ~今度が3回目です/2018年6月24日)、
和歌山弁護士会が開いた記者会見の模様を、地元紙のわかやま新報が伝えてくれていましたので、一部ご紹介します。
 
わかやま新報 18年06月30日18時57分
優生保護法の被害相談会 3日弁護士会
(抜粋引用開始)
 和歌山弁護士会(山下俊治会長)は3日午後1時から3時まで、和歌山弁護士会館(和歌山県和歌山市四番丁)で「全国一斉旧優生保護法による不妊手術110番」の来館相談と電話相談を実施する。
 和歌山弁護士会人権擁護委員会委員長の藤井幹雄弁護士と同高齢者・障害者支援センター運営委員会委員長の長岡健太郎弁護士が、同弁護士会館で記者会見を行い発表した。
(略)
 記者会見で藤井弁護士は「ご本人自ら相談するのはハードルが高いので、周りの方が本人に伝えてほしい」、長岡弁護士は「和歌山でも間違いなく被害がある。被害実態をぜひ相談してほしい」と呼び掛けた。
(引用終わり)
 
 ところで、和歌山での強制不妊手術の実態(というほどのものではありませんが)について、昨日、和歌山県から以下のような発表がありました。
 
優生保護法に関連した資料等の保管状況等調査結果
(発表は7月2日付、県ホームページでの公開は7月3日)
連絡先 福祉保健部 健康局 健康推進課 
担当者 森、尾﨑 
電話 073-441-2642(内線2642)
FAX 073-428-2325 
E-mail e0412001@pref.wakayama.lg.jp
 
 厚生労働省から照会のあった本調査について、本県の調査結果は次のとおりです。
 なお、今回の調査により新たに個人が特定された情報はありません。
 
1 旧優生保護法において、作成・提出等が定められている資料と同内容の資料の保有状況 
 「優生手術台帳」1冊(昭和24年~昭和60年(ただし、申請のない年もある。))
 
2 優生手術の申請、審査、手術実施の各段階における件数
・申請件数193件の内訳は、男24件、女157件、不明12件で、第4条に基づく申請が179件、第12条に基づく申請が14件でした。
 なお、審査の結果、手術を行うことが「適当(適)」と認められたのは165件、「不適当(否)」となったものが2件、いずれの記載もないものが26件でした。
・手術実施日の記載があるのは127件、手術未実施の記載のあるのは9件であり、55件については、いずれの記載もありませんでした。                
・第3条関係で確認できた資料はありませんでした。
(※詳細は別紙のとおり)
 
3 その他の統計資料等(※情報公開コーナー・文書館に保管)
・「衛生統計年報」昭和24年(和歌山縣の衛生統計)、昭和38年~47年
・「事業概要(健康対策課)」昭和58年~61年、平成元年~6年、平成8年、平成9年
 
<調査の概要>
(1)調査目的
 旧優生保護法第3条(第1項第4号及び第5号を除く。)、第4条、第12条に基づき実施された優生手術にかかる資料や記録の現時点での県等の保有状況を把握するため
(2)調査対象
 旧優生保護法が施行されていた昭和23年から平成8年までの都道府県等における行政機関(本庁、公文書館、保健所等)が保有する資料や記録等
(3)調査事項
①旧優生保護法において、作成・提出等が定められている資料及びそれらと同内容が記載されているその他の資料
②上記資料から把握できる優生手術の申請、審査、手術実施の各段階における件数
③その他、優生手術に関係する情報が含まれている統計資料や説明資料、記録等
 
PDFによる報道発表資料
優生保護法に関連した資料等の保管状況等調査結果
優生手術台帳に基づき作成(昭和24年~昭和60年)された性別・年齢階層等一覧
(引用終わり)                                             
 
 以上の和歌山県による調査は、厚生労働省が本年4月25日付で各地道府県に依頼した「旧優生保護法に関連した資料等の保管状況等調査の実施について」(回答期限6月29日)に基づいて行われたものだと思います。他府県のホームページでも、調査結果を公開しているところがいくつかあります。
 
香川県 2018年6月25日
優生保護法に関連した資料等の保管状況等調査結果について
 
神奈川県 2018年6月29日
優生保護法に関する調査結果について
 
新潟県 2018年7月3日
優生保護法に関する調査について厚生労働省に報告を行いました
 
 和歌山県が公開した調査結果の中で注目されるのは、昭和24年から同60年までの間の各年ごとに、優生保護審査会によって手術適当と判断された人及び優生手術台帳に手術日の記載のある人の性別・年齢階層別の人数が一覧表示されていることです。
 一例として、今から60年前の昭和33年(1958年)を見てみると、
 
(審査会で「適」とされた人・合計12人)
 男性 0人
 20~29歳の女性 3人
 30~39歳の女性 7人
 40~49歳の女性 2人
(優生手術台帳に手術日の記載がある人・合計8人) 
 男性 0人
 20~29歳の女性 1人
 30~39歳の女性 5人
 40~49歳の女性 2人
 
であったことが分かります。
 つまり、この年に旧優生保護法による手術を受けた人の中で最も若かった人(女性)の年齢を20歳、最も高齢であった人(女性)の年齢を49歳であったと仮定すれば、この年優生手術を受けた人の現在の年齢は、80歳~109歳に分布することが分かります。
 そして、この一覧表を概観すると、和歌山県で最も積極的に優生手術が行われていた時期が、昭和25年(1950年)から同39年(1964年)までの15年間であったことが読み取れます。
 実際、審査会で「手術適当」と判断された193人のうち、昭和40年(1965年)以降に審査された人は23人(他に年不明の人が29人)、手術台帳に手術日の記載がある127人のうち、昭和40年以降に手術した人は11人に過ぎません。
 
 以上から、和歌山県下で優生手術の対象となった人たちのおおよその年齢分布が明らかになりました。昭和20年代から30年代にかけて手術を受けた方々は、既に手術から半世紀以上が経過しています。該当者の高齢化ということが、和歌山県での一斉相談に今のところ反応がない一因であることは間違いないでしょう。
 従って、当事者のもとに直接相談会の情報を伝えることには大きな困難がともなうと言わざるを得ません。是非、周囲の支援者、知人などを介して、必要な情報が当事者のもとに伝わるよう、呼びかけを継続し、一層の工夫をこらす必要があると思います。
 
 和歌山弁護士会では、引き続き、「旧優生保護法による不妊手術」についての相談を随時受け付けています。
  和歌山弁護士会  
  電話:073-422-4580 FAX:073-436-5322
 相談を和歌山弁護士会に申し込んでいただければ、同会人権擁護委員会と高齢者・障害者支援センター運営委員会において適切に対応します。
 心当たりの方がお近くにおられれば、是非一度「弁護士会に相談してみたはどうか」とお勧めください。
 
 なお、本日の全国一斉相談の結果については、いずれ、優生保護法被害弁護団ホームページに掲載されるはずなので、ご確認ください。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/旧優生保護法関連)
2018年3月28日
和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年3月30日)実施のお知らせ
2018年4月3日
放送予告(4/15)NNNドキュメント「57年目の告白 強制不妊 産み育てる尊厳奪われ」
2018年5月17日
和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年5月21日)実施のお知らせ
2018年6月4日
NHKサイトで聴きかつ読む「旧優生保護法下での強制不妊手術」&ハートネットTV:闇に埋もれた真実は(1)「私も不妊手術を受けさせられた」のご案内
2018年6月24日
和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年7月3日)実施のお知らせ~今度が3回目です
2018年6月27日
放送予告・「私の人生を返して下さい~旧優生保護法 国が強制した不妊手術~」(2018年7月8日@テレメンタリー