2018年7月10日配信(予定)のメルマガ金原No.3204を転載します。
日本記者クラブでは、今年の2月から3月にかけて全5回にわたり、シリーズ研究会「憲法論議の視点」を開催し、6人の憲法研究者の意見を聴くという機会を設けました(第3回「第九条」のみ異なった立場の2人が登壇)。
しかも、動画だけではなく、内容を文字起こしした会見詳録も随時追加で公開されていましたので、私のブログでもまとめてご紹介しました(動画と詳録で学ぶ「憲法論議の視点」(日本記者クラブ)~総論、憲法改正の国民投票、第九条、新しい人権、統治機構/2018年4月20日)。
ただ、ブログで取り上げた時点では、第3回(第九条)と第5回(統治機構)の会見詳録が未掲載でした。
その後、未掲載だった2回分についても会見詳録がアップされていましたので、4月20日に書いたブログの増補版をお届けしようと思い立ったのですが、その機会に、前回は各回の会見リポートを引用していたのを、今回はリンクにとどめ、代わりに、会見詳録の冒頭に添えられた簡潔な会見内容の紹介を引用することにしました。従って、今日のブログは、4月20日にお送りしたものの増補版ではなく、改訂版と称することにしました。
報道機関、記者だけではなく、私たち国民1人1人にとっても、「憲法改正」にどう向き合うのか?国民投票において自らの1票をどう投じたら良いのか?という、思えば、過去において経験したことのない立場に置かれる可能性が高まっている訳で、実際の改憲発議の前に、冷静な事前準備がどの程度実行できるかによって、後世に恥じることのない立派な国民投票だったと評されるか否かが決まると考えるべきなのでしょう。
5本の動画を視聴する時間のない人も、会見詳録をお読みになることをお勧めしたいと思います。
なお、会見詳録の末尾には、講演者が用意されたレジュメ等の資料も添付されています。
2018年02月13日 13:00~14:30 9階会見場
宍戸常寿東京大学教授
会見詳録
「安倍首相が新年会見で「憲法改正に向けた国民的議論を一層深めていく年にしたい」と発言するなど、改憲論議の高まりが予想されるなか、日本記者クラブでは、自民党の改正案が決まり是非論争一色になる前に、憲法改正を考える枠組みについての、新進気鋭の憲法学者による5回シリーズの連続研究会「憲法論議の視点」を企画した。
宍戸教授は、憲法論議を有効なものにする条件として「憲法改正をすること、あるいは、しないことを自己目的化しない」ことをあげ、「広い観点から社会全体で質疑討論を尽くすことが必要で、そのためにもメディアあるいはジャーナリストの間で健全な協力と論争をしてほしい」と要望した。
2018年02月19日 15:00~16:30 10階ホール
只野雅人一橋大学教授
会見詳録
発議に設けられている高いハードルは、国会の審議の質を高めることを狙っているとも言えるが、与党内の事前調整が重視され、議員同士が議論する機会の少ない現在の国会で、質の高い議論が望めるか。
発議後の国民投票運動が選挙運動と一番大きく違う点は自由を原則にしていること。広告放送については運用面で不透明さが残るが、国会での議論が不十分なため、メディアの自主的な対応に期待されている。
手続法の中には公務員と教育者に対する規制など多くの課題が残されている。政治日程を優先して「精密な考慮」を欠くことになれば、国民は判断することが難しくなる。
司会:土生修一 日本記者クラブ専務理事・事務局長」
2018年03月12日 14:30~16:30 10階ホール
会見詳録
より多角的な視点からテーマに迫るために、今回のシリーズでは唯一、立場の違う2人のゲストをお呼びした。会見は、自民党の党大会直前で、改憲に向けた自民党改正案の最終的な取りまとめ時期にあたり、参加者の関心も高かった。
2018年03月15日 14:30~16:00 9階会見場
山本龍彦慶応大教授
会見詳録
情報化社会において人は、自分の情報を隠すだけでなく、開示することをも選択的に行うことにより、社会の中における自己=ペルソナ(persona)を作り上げている。
AIにより個人の情報が類型的・確率的に評価されることにより、民主主義そのものがリスクに直面する可能性を指摘し、憲法改正の意義について考察した。
2018年03月20日 13:30~15:00 10階ホール
曽我部真裕京都大学教授
会見詳録
「5回シリーズ「憲法論議の視点」の最終回は、京都大の曽我部教授が登壇した。テーマは、統治機構。今回は、条文にとらわれない「実質的意味での憲法」の視点から、現状における統治機構の諸課題を指摘し、中長期的に憲法を考える論点を提示した。
具体的な課題の指摘は以下の通り。