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野党共同提案「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」を支持する~付・「原発ゼロ基本法案の制定をめざす市民のつどい」を視聴する

 2018年7月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3208を転載します。
 
野党共同提案「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」を支持する~付・「原発ゼロ基本法案の制定をめざす市民のつどい」を視聴する
 
 7月5日に、現代人文社から興味深い憲法関連書の書籍が刊行されました。『国会を、取り戻そう!議会制民主義の明日のために』というタイトルの本で、以下の5人の憲法研究者の皆さんによる共編著です。
  石川裕一郎さん(聖学院大学政治経済学部教授)
  石埼学さん(龍谷大学法学部教授)
  清末愛砂さん(室蘭工業大学大学院工学研究科准教授)
  志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)
  永山茂樹さん(東海大学法学部教授)
 すぐに通読した上で、ブログでご紹介しようと思いつつ、用事に追われて(ブログを書くのもそうですが)なかなか読み進める時間が取れず、ようやく半分まで読み終わったところです。
 従って、ブログで本格的にこの本を取り上げるのはしばらく先のことになりそうなので、とりあえず、永山茂樹先生が執筆者を代表して書かれた「はじめに」の一部をご紹介しておきます。
 
「ところが困ったことに、今、日本では肝心の国会がうまく動いていないのです。このままだと、平和も男女平等も選挙もなかなか展望が開けません。そこで私たちは、憲法が国会のことをどう書いているか、現実の国会はどうなっているか、主権者はどうしたらよいのかといったことを、みなさんに知ってもらおうと思い、憲法を参照しながら問題を整理しました。これがこの本をつくった理由です。」
 
 まだ、半分までしか読んでいないと書きましたが、実は、私はこの本を読み始めるにあたり、個人的な関心を持つ論点がどう取り上げれているかが気になり、目次を参考に、関連していそうな論考にはざっと目を通しています。
 それは、今日のブログで取り上げるテーマとも密接な関連を持つことなのですが、「議員立法」と「野党の役割」というものです。
 国会に提出される法案には、内閣が提出する法律案(「閣法」と略称)と国会議員が提出する法律案(「衆法」または「参法」と略称)の2種類があるのですが、国会で成立する法律の圧倒的に多くが閣法であることはご承知のことと思います。本書では、志田陽子先生が、「Ⅱ-3 立法機能に問題はないか」の一部で触れられています。
 それから、国会における少数派である野党の役割については、「Ⅱ-4 熟議なしの採決は許されるか」(志田陽子先生)、「Ⅱ-10 野党は国会に必要ないのか」(石埼学先生)などにおいて、議決を行う前提としての会議のあり方、野党に多くの質問時間を配分することの合理性など、重要な問題点が指摘されていて勉強になります。
 ただ、おそらく採決されたとしても与党の反対多数で否決され、あるいはそもそも審議入りすらせずに廃案になったりすることの多い野党提出法律案の意義を、憲法学の視点からどう位置付けるか、という点についての論述は見つけられませんでした(もしかしたら未読の部分で触れられているのかもしれませんが)。
 
 私が、今の第196回国会(常会)で注目している野党提出法律案(衆法)とは、「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」です。
 衆議院に提出されたのが3月9日、議案提出者は、「長妻昭君外六名」となっています。
 
 提出した法案は以下のとおり。
 
原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法
 
 この法案は、2月22日、立憲民主党の政調審議会で取りまとめた法案を他の野党に共同提案を申し入れ、3月9日、立憲民主党日本共産党社会民主党自由党の4党に、無所属の会の2人の議員も加わって共同提出したものです。
 なお、立憲民主党案の段階の法案は、私のブログでご紹介していますが、どうやらそのまま国会に提出されたようです(立憲民主党の「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」を読む/2018年2月24日)。
 
 法案を衆議院に提出した3月9日、立憲民主党は、以下のような党声明を発表しました。
 
(引用開始)
原発ゼロ基本法案の提出にあたって
原発ゼロ・エネルギー転換の実現は、未来への希望
 
 
 本日、2018年3月9日、原発ゼロ基本法(正式名称:原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法)を、立憲民主党日本共産党社会民主党自由党が共同し、衆議院に提出いたしました。なお本法案には、無所属の会の一部議員の賛同も得ての提出です。
 本法案は立憲民主党の基本政策の柱であり、国民との約束として掲げた「1日も早く原発ゼロへ」を具現化するものです。「原発ゼロはリアリズムです」とお訴えてしてきましたがまさに原発ゼロ実現への第一歩となる法案です。
 あれから7年の歳月が過ぎようとしています。2011年3月11日、東日本大震災とともに発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、これまでの経済性や効率を優先する原子力発電に依存する経済社会システムに対し大きな疑問を投げ掛け、その抜本的な変革を迫るものとなりました。
 遡ること1965年5月、東海原子力発電所が臨界に達し発電を開始して以来、我が国は原子力の平和利用の名のもとに、原子力発電の推進に力を入れてきました。当時から放射線による人体や環境への悪影響、使用済み核燃料の処理技術が未確立であることなど、多くの不安・反対の声もありましたが、発電コストが安価である、二酸化炭素を発生させない、核燃料サイクルによりエネルギーを無限に手にできるなどの主張が、原子力発電に対する警鐘を打ち消し、ついには日本の原発では事故は発生しないとの「安全神話」を生み出すこととなりました。
 そのような中、東京電力福島第一原子力発電所で全電源喪失炉心溶融、水素爆発という最悪の事故が発生し、広がる放射能汚染が日本社会全体に大きな影を落とすこととなりました。事故収束、復興への多くの方々の献身的なご努力にあっても、いまなお復興への道は険しいと言わざるを得ないと感じています。
 原子力発電は、たとえ事故が発生しなくとも、使用済み核燃料、放射性廃棄物の処分問題や常に被曝の危険をともなう労働者の問題など、多くの矛盾をはらんでいます。そのリスクは人類の生存を脅かすほどのものがあり、人知を越えた存在であるとの認識も広がっています。原発の問題は倫理の問題だと言われるゆえんはここにあります。
 こうした原子力発電の厳しい現実に直面したいま、私たちには、わが国のこれまでの原子力政策が誤りであったことを認め、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因の更なる究明とその責任の明確化、事故の早期収束、すべての被災者の人権の回復に全力を尽くすと共に、速やかに全ての原子力発電所を停止し廃止する責務があると考えます。
 原発廃止は負担と困難のみを意味するものではありません。原発廃止・エネルギー転換の実現は、未来への希望でもあります。原子力発電所事故の経験から学び、人材を育て、新たな廃炉技術、放射性廃棄物の管理技術の研究・実用化を進め、原発ゼロへの確かな道筋を示すことにより、日本は世界の廃炉先進国として原発のない世界の実現に貢献することができます。
 原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を早期に確立することは緊要な課題です。そのために必須な省エネ・再生可能エネルギー利用拡大は、新しい環境調和・分権型社会システムの創造、新たな経済発展の契機でもあります。地域主導の再生可能エネルギー発電事業は地域における経済循環を生み出し、地域経済の再生、地域社会の自立に繋がります。特に、国はこれまで原子力発電事業に協力し日本の経済社会を支えてきた原発関連施設立地自治体に対し、原発依存から脱しつつ、雇用の確保、新しい経済自立を目指す取組を最大限支援する責務があります。
 日本の原発廃炉と省エネ・再生可能エネルギーへの転換は、原発輸出ではない新たな輸出産業となるものであり、エネルギーをめぐる紛争のない世界の実現に向けた大きな貢献ともなります。さらに日本が原発廃止・エネルギー転換を実現し脱炭素社会への道を歩み出すことは、地球規模の緊急課題である気候変動問題への解を世界に示すことにもなります。こうした、原発ゼロへの政策転換は、広島、長崎の原爆被爆を経験し核なき世界を希求する日本の責務です。
 この法案の作成に当たっては、日本全国でタウンミーティングを開催、国会内でも多くの関係団体の皆様、国民の皆様との対話を重ねてきました。いま、その成果がこの法案に結実しています。政治の不退転の決意と国の政策的挑戦に加え、地方自治体、企業、そして国民一人ひとりの協力があれば、必ずや、基本法に掲げた目標は達成することができます。持続可能な社会を実現するために、速やかに全ての原子力発電所を廃止し、省エネ・再生可能エネルギーへのエネルギー転換を図る改革に着手すべく、まずはこの基本法の成立を目指して今後も国民の皆様と共に歩んで参ります。
(引用終わり)
 
 さて、3月9日に衆議院に提出されたこの法案がその後どうなったかというと・・・。衆議院ホームページから、この法案の「経過」のページを閲覧してみると、「衆議院付託年月日/平成30年6月8日」「衆議院付託委員会/経済産業(委員会)」とあるのみで、そもそも審議入りしたかどうかすら判然としません。
 
 今国会は、7月22日まで延長され、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」や「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」などが成立し、最終週には「特定複合観光施設区域整備法案」も、与党(と維新の会)は何が何でも成立させる意気込みと伝えられています。
 他方、多くの衆法や参法は、そのまま廃案ということになる見通しです。
 けれども、仮にそのような店ざらし状態になることが高い確率で予想されるとしても、野党が「原発ゼロ基本法」のような独自の法案を作成・提出する意義は決して看過すべきではありませんし、その内容を多くの国民に知ってもらい、支持を求める活動もとても重要だと思います。
 
 最後に、遅ればせながらではありますが、去る6月28日(木)19時から、「なかのZEROホール」で開催された「原発を停止・廃止し、再生エネルギーへの転換を 原発ゼロ基本法案の制定をめざす市民のつどい」(共催:さようなら原発1000万人アクション、原発をなくす全国連絡会 協賛:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)の動画が公開されていますので、ご紹介します。
 
20180628原発ゼロ基本法集会(1時間22分)
2分~ 主催者あいさつ 鎌田 慧氏(さようなら原発1000万人アクション呼びかけ人)
15分~ 講演「原発ゼロ・自然エネルギー推進に向けた展望と課題」 吉原 毅氏(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟会長)
原発ゼロ法案の趣旨説明
32分~ 山崎 誠衆議院議員立憲民主党
1時間01分~ 藤野保史衆議院議員日本共産党
1時間16分~ 行動提起・閉会あいさつ 小田川義和氏(原発をなくす全国連絡会)