2018年7月21日配信(予定)のメルマガ金原No.3215を転載します。
ペシャワール会現地代表、ピース・ジャパン・メディカル・サービス(PMS)総院長の中村哲医師からのアフガニスタン活動報告を読もうと思えば、まず、「中村医師から日々事務局に送信されてくる写真付きメールを紹介」している「ペシャワール会」公式サイトの中の該当コーナーを閲覧することになるのですが、「ホームページ上に掲載できるのは、メールを受信して数ヶ月後」になるとのことで、現時点では2018年2月10日付の報告が最新情報です。
数ヶ月遅れではあるものの、事務局によって整理された最近の中村先生からの写真付きメールを読んでいると、
「マルワリードⅡ流域では今、相当な速さで緑が広がっている。洪水と渇水で荒れた川沿いの荒れ地で耕作が始まったからだ。これに伴って流域各村の帰農が進んでいる。しかし一方、アフガン東部全域では2年続きの異常少雨で、記録的な河川水減少が観察され、川沿いの取水も困難に陥っている。クナール河上流の森の国・ヌーリスタンでも、凶作が伝えられている。作業地は何とか切り抜けつつあるが、全体では2000年に次ぐ旱魃と不作が予想される。乾燥した土地の上空は煙のように砂塵が覆い、遠景を見せない。昨年4月から現在まで、まともな降雨日は僅かに5日、異常事態の中、必死の作業が続けられている。」(2018年1月24日)とか、
「治安は当分好転する兆しがなく、一昨年来の異常少雨で干ばつが確実に、かつ容赦なく進行している。今春までに大きな降雨降雪がなければ、2000年に匹敵する悲劇が起き、それに伴う人口の流動化は政情不安に拍車をかけると予測される。」(2018年2月3日)
などという報告が続いており、PMS作業地周辺は、何とか灌漑用水を確保できているにしても、アフガニスタン全体としては、相当に危機的状況にあるように思われます。
近年、PMSも、JICA(国際協力機構)やFAO(国連食料農業機構)との共同プロジェクトにも取り組み、将来を見据えた活動に力を入れ始めているところですが、アフガニスタン政府としても、PMSモデルの全国展開に期待を寄せているようです(「降雨なし クナール河異常低水位 PMS 叙勲・表彰」2018年2月9日)。もっとも、そのアフガニスタン政府に、どの程度の統治能力があるのかは相当に疑問ではあるのですが。
そのようなことから、時々帰国して講演される中村哲先生の動画はないかと探してみたところ、今年の6月10日に千葉県船橋市で行われた講演会の動画が「なにぬねノンちゃんねる」からアップされていました(講演会のチラシがこちらのサイトに掲載されていました)。
収録から公開まで1か月以上かけて丁寧に編集されただけのことはあり、とても視聴しやすい動画であり、約2時間の講演を、今日(土曜日)の午後、一気に全編視聴しました。
冒頭~
中村哲氏講演
質疑応答
1時間07分~
①男性(研修医) 水を確保することにより現地の疾病は減少あるいは変化したか?/大きな事業を実行する組織を作る上で、技術者を確保したり、組織への協力者を増やすためにどのようにしたか?
1時間13分~
②男性(インターネットメディア「なにぬねノンちゃんねる」) 今まで一番印象に残っている素晴らしかったこと、逆に苦しかったことは?/中村さんがクリスチャンであることにより、何か問題が起きたことはなかったか?/私たちやより若い人たちに出来ることは?
1時間21分~
③女性 アフガニスタンの女性はどういう仕事をしているのか?
1時間27分~
④男性 水をめぐる国境を越えた紛争、あるいはコミュニティにおける水争いはなかったか?もしあったとすればその対処方法、将来への見通しは?
1時間34分~
⑤男性(元新聞記者) 現地の人々に受け入れられるための術やコツはあるか?
1時間39分~
⑥女性 先生は、岩波ブックレットから『アフガニスタンで考える 国際貢献と憲法九条』(2006年)という本を出されているが、9条改憲が取り沙汰されている状況の下、この問題(国際貢献と憲法九条)についての今の率直なお考えは?
1時間44分~
⑦女性 アフガニスタンにおける事業を引き継いでいくための教育を含めた方策は?
講演動画をインターネットで視聴したりして(巻末の過去ブログ参照)いつも感じるのですが、中村先生の講演会の醍醐味は、メインの講演部分よりも、質疑応答の方にあると思います。もちろん、ペシャワール会のアフガニスタンでの活動を振り返る約1時間の講演も、とりわけ初めて聴く方には深い感銘を与える内容です。
中村先生講演会に限りませんが、講演会が成功するか否かのかなりの部分は、質疑応答が充実した内容になるか否かにかかっています。
今回ご紹介した船橋市における講演においても、編集によってカットされた質問があったか否かは分かりませんが、少なくとも視聴できる7人の質問に対する中村先生の答えは、みんな感銘深く聴くことができました。
それは、必ずしも質問が素晴らしかったからということではなくても(例えば質問⑤)、中村先生の答えが「深い」からなのです。そのニュアンスは、実際に聴いていただくしかないのですが(そのために視聴の目安時間と質問内容を書いておきました)。
2005年12月1日 和歌山市民会館小ホール
「氷河の流れのように~憲法9条に守られて~」
主催:9条ネットわかやま創立総会実行委員会
2008年4月19日 和歌山市民会館市民ホール
「中村哲医師講演会 アフガン最前線報告」
主催:和歌山県平和フォーラム
2010年10月29日 和歌山市民会館小ホール
「アフガン最前線報告~アジアの同朋としての同じ目の高さをもって~」
(弁護士・金原徹雄のブログから/中村哲氏関連)
2016年9月13日
2017年3月30日
2017年11月18日
中村哲さん「KYOTO地球環境の殿堂」入り記念講演(2/11)と「20年継続体制」に向けて