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翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋立承認の撤回に向けた意向を表明しました(2018年7月27日)

 2018年7月27日配信(予定)のメルマガ金原No.3221を転載します。
 
翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋立承認の撤回に向けた意向を表明しました(2018年7月27日)
 
 すい臓癌による治療を続行しながら公務に復帰した翁長武志沖縄県知事が、本日(7月27日)、記者会見を行い、名護市辺野古の新基地建設のために仲井眞前知事が行った埋立て承認を撤回する意向を表明しました。
 辺野古新基地建設反対派から強く求められていた「埋立て承認の撤回」ですが、おそらくはこれが知事としての「最後のカード」だろうと言われており、いつそのカードをきるか、(ご自身の体調も含めて)あらゆる事情を総合考慮した上で、今日の表明になったものと思います。
 
 沖縄県の公式サイトを閲覧したのですが、今日の会見関連の資料を見つけることができませんでした。
 そこで、記者会見の動画及びその全文文字起こしをアップしてくれている琉球新報のサイトにリンクし、ご紹介することにしました。
 記者会見自体は30分程度で、それほど長いものではありませんが、「視聴するのがつらい」という方もおられるかもしれませんので、その際は、まず文字起こし版を通読いただければと思います。
 
翁長知事が辺野古承認の撤回を表明(30分)
 
琉球新報WEB版 2018年7月27日 13:26
翁長雄志沖縄県知事の承認撤回表明記者会見の全文(記者との質疑応答含む)
 
 以下に、冒頭で読み上げられた「知事コメント」を全文引用します。
 
(引用開始)
知事コメント「聴聞手続きに関する関係部局への指示について」読み上げ
 「本日、辺野古新基地建設にかかる公有水面埋め立て承認の撤回に向けて、事業者である沖縄防衛局への聴聞の手続きに入るよう、関係部局長に指示をしました。
 辺野古新基地建設にかかる公有水面埋め立て処分には、「環境保全および災害防止に付き十分配慮」という基幹的な処分要件が事業の実施中も維持されるために、事前に実施設計や環境保全対策等について協議をすることや、環境保全図書等を変更する場合には、承認を得ることなどを事業者に義務づけて留意事項を付しております。
 しかし沖縄防衛局は、全体の実施設計や環境保全対策を示すこともなく公有水面埋め立て工事に着工し、また、サンゴ類を事前に移植することなく工事に着工するなど、承認を得ないで環境保全図書の記載等と異なる方法で工事を実施しています。
 留意事項で定められた事業者の義務に違反しているとともに、「環境保全および災害防止に付き十分配慮」という処分要件も充足されていないものと言わざるを得ません。
 また、沖縄防衛局が実施した土質調査により、C護岸設計箇所が軟弱地盤であり護岸の倒壊などの危険性があることが判明したことや活断層の存在が専門家から指摘されたこと、米国防総省は航空機の安全な航行のため飛行場周辺の高さ制限を設定しているところ国立沖縄工業高等専門学校の校舎などの既存の建物等が辺野古新基地が完成した場合には高さ制限に抵触していることが判明したこと、米国会計検査院の報告で辺野古新基地が固定翼機には滑走路が短すぎると指摘され、当時の稲田防衛大臣が、辺野古新基地が完成しても民間施設の使用改善等について米側との協議が整わなければ普天間飛行場は返還されないと答弁したことにより、普天間飛行場返還のための辺野古新基地建設という埋め立て理由が成り立っていないことが明らかにされるなど、承認時には明らかにされていなかった事実が判明しました。
 これらの承認後の事実からすれば、「環境保全及び災害防止に付き十分配慮」の要件を充足していないとともに、「国土利用上適正かつ合理的」の要件も充足していないものと認められます。
 この間、県では、様々な観点から国の埋め立て工事に関する内容を確認してきましたが、沖縄防衛局の留意事項違反や処分要件の事後的不充足などが認められるにもかかわらず、公有水面埋め立て承認処分の効力を存続させることは、公益に適合し得ないものであるため、撤回に向けた聴聞の手続きを実施する必要があるとの結論に至ったところです。
 私は、今後もあらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地はつくらせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えであります。
(引用終わり)
 
 仲井眞弘多前知事が2013年12月27日に行った公有水面埋立承認については、翁長知事がこれを取り消し、その後、訴訟で争われたものの、複雑な経緯を経て、県側が敗訴したことは(何となく、かもしれませんが)ご承知のことと思います。
 ちなみに、翁長知事による取消通知書はこれです。
 
公有水面埋立承認取消通知書(平成27年10月13日)
 
 はなはだ簡単に言えば、「取消し」というのは、原処分(仲井眞知事による公有水面埋立承認)が、そもそも公有水面埋立法上、承認すべきでなかったにもかかわらず、違法に承認したものであることを理由として、承認時に遡って取り消す(なかったことにする)という行政処分です。
 これに対し、「撤回」というのは、上記「知事コメント」を子細にお読みいただければ分かるとおり、原処分の違法性には一切触れず(それは訴訟で斥けられたので)、事業者である沖縄防衛局が原処分(公有水面埋立承認)に付された「留意事項」を遵守していないこと、また、承認後、「環境保全及び災害防止に付き十分配慮」(公有水面埋立法4条1項2号)や「国土利用上適正かつ合理的」(同法4条1項1号)などの承認のための要件を充足していないこととなる新たな事実が判明したことなどを挙げ、将来に向かって公有水面埋立承認の効力を消滅させる意思表示です。
 
 今後予想される行政的、司法的手続がどうなるのか、読み切れないところもあるのですが、ご参考までに、沖縄タイムスによる観測記事にリンクしておきます。
 
沖縄タイムス+プラス プレミアム 2018年7月27日 14:50 
承認撤回、国の対抗策は? 沖縄県と再び法廷闘争へ 想定される4つのケース
 
 最後に、今日の記者会見における翁長知事の最後の言葉(質疑)を引用しておきます。
 
(引用開始)
 ―承認撤回は移設阻止の最後のカードと言われている。知事はあらゆる手法駆使して造らせないという公約を今後、どのように実現していくのか。
 「今、長々と話しをしたので、若干さわるものがあると思いますが、撤回というと、まず裁判に勝たないといけない。本会議でも話しをしたので問題ないと思いますが、今の日本の米に対しての従属は、日本国憲法の上に日米地位協定があって、国会の上に日米合同委員会がある。この2つの状況の中で日本はアメリカに対して何も言えない状況がある。これはもし違うなら反論しながら『そうじゃないよ。ちゃんと憲法日米地位協定抑えているよ、国会も日米合同委員会から報告させているよ』と日本の最高権力がそうやっているならいいが、F15から何から飛んでいくのをみんな日米合同委員会で決められて、何も問題がないということで国会でも議論にならない。
 こういう中で撤回ができないときにどうなるんだと、効力を発しないときどうなるんだと、なりますが、それこそ米韓合同軍事演習がストップしたこと、トランプさんが金正恩と会ったこと、アジアが大きく変わりつつあること、アジアは経済ということから世界の中で一番発展していますから、アジアは中国とも米国とも安保条約結んでいるところはベトナムでもタイでもどこもありませんのでね、距離を測りながら国際外交をやっている。
 日本だけが寄り添うようにして米国とやっている。それに関して司法も行政もなかなか日本国民、今の現状から言うと厳しいものがあるかもしれませんが、そういう動きは必ず日本を揺り動かす、今の日本の動きではアジアから閉め出されるのではないかというものを感じている。その辺のところは撤回以外にも何か変わる要素がありますか、というところにも入ってくると思いますね」
(引用終わり)