2018年8月8日配信(予定)のメルマガ金原No.3233を転載します。
日本記者クラブが今年の2月から連続開催しているシリーズ研究会「朝鮮半島の今を知る」については、6月28日に行われた柳澤協二さん(元内閣官房副長官補)の回までは既に一括してご紹介済みです(柳澤協二氏が語る「北朝鮮核問題に見る戦略理論の混迷」~シリーズ「朝鮮半島の今を知る」(日本記者クラブ)から/2018年7月1日)。
その後、第13回まで開催されていますので、本日は前回の続編として、第11回~第13回の動画と会見メモ(陳昌洙氏については会見メモがなかったので会見リポート)をご紹介します。
この3回の中では、やはり今年の5月に写真集『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)を刊行された写真家の初沢亜利(はつざわ・あり)さんの回がまず関心をひかれます。
2012年に『隣人。38度線の北』(徳間書店)という写真集を出されている初沢さんのように、継続して北朝鮮を撮影してこられた方だからこそ肌で分かる「北朝鮮の変化」が、インパクトのある写真と明晰な語り口で説明されていきます。
これは是非皆さんにも視聴していただきたいと思います。
2018年07月10日 14:00~15:30 9階会見場
朝鮮半島の今を知る(11)
宮本悟氏(聖学院大学教授)(1時間37分)
(会見メモ)
米朝会談後の展望を考えるうえで抑えるべきポイントを指摘した。
「北朝鮮指導部内も一枚岩ではない。内部で生じる雑音が対話の障害になるかもしれない」
「米朝がかなり進展しなければ日朝の進展はない。日本が交渉したいと言えばいうほど交渉は遠のく。どしっと構えるべき」
また、北朝鮮報道について、「常套句に頼った報道も目立つが、これは説明の放棄」との苦言も呈した。
2018年07月11日 13:30~14:30 10階ホール
朝鮮半島の今を知る(12)「隣人、それから。:38度線の北」
初沢亜利氏(写真家)(1時間28分)
(会見メモ)
訪朝経験は計7回、直近は今年2月。「以前と比べ、平壌市民の服装がカラフルになり自動車も急増した。街の様子からは、制裁で追い込まれ友好路線へ転換したとは思えない」。地方も含め北朝鮮の日常生活を撮影した貴重な映像を紹介しながら感想を語った。
2018年07月26日 15:00~16:30 9階会見場
陳昌洙氏(世宗研究所日本研究センター長)(1時間23分)
(会見リポート)
国益見据え、日韓で新たなルール作りを
つまずきの原因は何か。陳氏によれば、北朝鮮はすでに核実験場を破壊して見せ米国に譲歩したと思っているし、一方、米国も米韓軍事演習を中止し、首脳会談を受け入れたこと自体が譲歩と認識している。このため、双方が「次は相手がどう出るか」と神経戦になっていると分析した。
ただ、終戦宣言をしたとしても、その後の道のりは必ずしも平坦ではない。韓国政府は、南北の軍事境界線に張り付く軍隊を南に後退させて信頼を醸成したい考えだが、在韓米軍の存在意義にもかかわり、米国は慎重だ。「これから在韓米軍のあり方について議論が本格化してくる」と予想した。
では、日韓関係はどうあるべきか。
米朝首脳会談後の国際情勢は米中対立という二つの陣営に分けられた構図ではなく、互いに利益を求めて複雑化していく。陳氏は「北東アジアの新しいルールを日韓が一緒に作るべきだ」と強調する。
陳氏は、韓国がかつてのようには日本を重要視せず、日本も歴史問題で韓国への不信感を募らせていることを憂慮。しかし、「国益はどこにあるのか、日本と韓国がもう一度考えるときだ」とみる。
今年は1998年の小渕恵三首相と金大中大統領による「日韓パートナーシップ宣言」から20年の節目にあたる。たとえば、「共通の課題である少子高齢化に両国が手を組んで取り組むのはどうか」とアドバイスする。互いに利益を追求することが、対立を乗り越えていく上で重要だということだろう。
北海道新聞社東京支社編集局長 近藤 浩
(参考サイト)