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枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称

 2018年8月13日配信(予定)のメルマガ金原No.3238を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
 
 昨日(8月12日)の第1回「高度プロフェッショナル制度の強行」に引き続き、去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)での枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介です。今日の第2回は、「カジノ強行と『保守』の僭称」と名付けてみました。
 安倍首相率いる自民党は「保守」ではない、自分こそ保守本流だ、ということは、かねてからの枝野代表の主張ですが、それを国会の場で全面展開する機会がやって来た、ということでしょうか、この部分には非常に力が入っています。
 なお、8月6日の岩上安身さんによるインタビューの中で枝野氏自身が認めておられたように(ハイライト動画ではカットされていたかもしれません)、持統天皇による「すごろく禁止令」を引用してカジノ合法化反対の論拠としたのは、日本共産党が最初であったようです。議員立法によるカジノ解禁推進法案の審議に際し、2016年12月2日の衆議院内閣委員会では清水忠史議員が(毎日新聞参照)、
同月8日の参議院内閣委員会では大門実紀史議員が(しんぶん赤旗参照)、
それぞれ論陣を張っています。ちなみに、出典は「日本書紀」だそうです。日本共産党スタッフの調査能力の高さがしのばれるエピソードです。
 枝野代表は、「国民民主党・無所属クラブ、無所属の会日本共産党自由党社会民主党市民連合及び立憲民主党・市民クラブを代表し、安倍内閣不信任決議案について、提案の趣旨を説明」したのですから、共産党からも別に文句が出る心配はなかった訳です。 
 それから、連載の各回に「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第2回「カジノ強行と『保守』の僭称」
 
第1回から続く
 
 不信任に値する二つ目の大きな理由は、カジノを強行したことであります。
 七世紀末、我が国は持統天皇の時代ですが、すごろく禁止令が発令されました。以来、我が国は、千年を超える期間、賭博は違法であるという法制度のもとで歴史と伝統を積み重ねてきました。例外は、公営ギャンブルという、財源確保のためにやむなく行われた非営利目的の特別なものだけであります。
 カジノの収益で経済成長を目指す。そもそも、千年以上にわたって違法とされてきたものを使って利益を上げて、そして経済を成長させる、そのこと自体がみっともない政策ではないですか。
 持統天皇以来の歴史を一顧だにもせず、こんなばかげた制度を強行する人たちに、保守と名乗ってほしくはありません。
 保守と称する皆さんは、保守とは何かとわかって自分たちを保守と名乗っていらっしゃるんですか。
 保守という概念は、フランス革命を契機に発生した政治概念です。フランス革命における急進過激な変革に対して、これはやり過ぎだという立場から保守という概念が発生しました。
 そして、保守の本質は何か。それは、人間とは不完全な存在であるという謙虚な人間観であります。
 人間は、全ての人間が不完全なものであるから、どんな政治家がどんないい政治をやろうとしても、完璧な政治が行われることはあり得ない、常に政治は、社会は未完成、不完全なものである。それが、人間は不完全なものであるという謙虚な姿勢に基づく保守の一丁目一番地です。
 このこと自体で、今の自民党安倍政権が保守ではないというのは明確であるというふうに思いますが、こうした謙虚な人間観に基づき、今生きている私たちの判断だけでは間違えることがある、したがって、人類が長年にわたって積み重ねてきた歴史の積み重ねというものに謙虚に向き合い、人類がその中で積み重ねてきた英知というものを生かしながら、それを改善していくに当たっても、間違っているのではないかという常に謙虚な姿勢を持ち、そして、みずからを省みながら、一歩ずつ世の中をよくしていく、これが保守という概念の本質であります。
 保守反動という日本語がありますけれども、そもそも反動では保守はありません。今も不完全な社会である、しかし過去においても理想的な時代はあり得なかった、未来においても理想は実現できない、でも、今あるものをちょっとずつでもよくしていこう、これが保守ですから、保守と反動は相対立する概念であります。
 一方で、穏健保守という日本語もあり得ません。なぜならば、保守とはもともと穏健なものであります。反対意見を封殺し、自分が正しい道を信じて邁進する、まさに保守思想が否定をした、フランス革命の急進的な思想であります。したがって、保守とはそもそも穏健なものであり、穏健でない保守が保守を名乗るのは自己矛盾であります。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 御静粛に。
 
枝野幸男君(続) そもそも、今のような保守概念からすれば、日本における保守とは何を大事にしなければならないのか。
 明治維新以来の百五十年も確かに日本の歴史であります。しかし、日本の歴史は、文字に残っているものだけでも千五百年を超える歴史を持っています。明治維新以降の歴史だけを見て、それが日本の歴史と伝統だと勘違いしている人たちが、特にこの辺には多いんじゃないですか。だから、持統天皇以来の日本の歴史と伝統も知らないで、カジノだなんという、我が国の伝統に反するばかげたことを進めているんじゃないですか。
 そもそもが、我が国の歴史と伝統を考えたときに、明治維新というのは、それまで千五百年近くにわたって、少なくとも文字に残る歴史だけでも積み重ねられてきた我が国の歴史が、西欧近代化文明の流入によって急激に変更を余儀なくされた、その結果として、それまで積み重ねられた歴史と伝統が大きく変更させられた百五十年であります。
 今我が国が直面をしている時代認識は、明治維新以来百五十年間歩んできた、この歩みというものが大きな転換点を迎えている、私は、今の日本はそういう状況にあると思っています。
 イギリスにおいて産業革命が起こって以来始まった近代化の歩み、これは、規格大量生産によって経済を急激に発展させる、そのことによって、私たちも、物質的に豊かな文明の中で暮らしてくることができました。私は、これまでの歩みは、世界史的においても日本史においても、それはさまざまな、その間に問題のある時代というのはあったにしても、大きな人類の前進であったというふうに思っています。
 しかし、今、先進国が、特に我が国は、第二次世界大戦以降、日中、日米戦争以降、急激な近代化、つまり経済成長したがゆえに、その壁に最も早く急激に直面をしていますけれども、先進国が共通して大きな壁にぶつかっている。それは、従来の規格大量生産によって安いものをたくさん、いいものをつくれば、そのことによって経済は発展し、そのことによって一人一人の暮らしがよくなっていくという、これが現実に機能しなくなっている、そういう時代に入っている。だからこそ、社会の格差、分断というものが、日本だけではありません、先進国共通して深刻な問題になっています。
 そのときに、日本の歴史と伝統を大事にするのであれば、こうした近代欧米文明、産業革命以来の規格大量生産型の文明が入ってくる前からある我が国の歴史と伝統こそをもう一度見詰め直す、それこそが私は真っ当な保守のあり方だというふうに思います。
 もちろん、人権意識、そのことによる男女平等を始めとして、あるいは先ほど申し上げました労働法制もそうかもしれません、さまざまなものが欧米から流入したことによって進化をしたものもたくさんあります。それをもとに戻せというのではありません。しかし、それまで積み重ねてきた我が国の社会のあり方のよい部分を、そうした人権問題などについての意識が大きく前進をした中でどう取り入れて、それを生かして、今先進国が共通して直面している壁にどう立ち向かっていくのか。私は、本来の保守のとるべき道はそういう道であるというふうに思っています。
 ちなみに、きょうは五党一会派を代表しての趣旨説明をさせていただいておりますが、趣旨説明の担当者ということでお許しをいただいて、立憲主義について一言述べさせていただきたいと思います。
 立憲主義というのは、言うまでもなく、権力も自由ではあり得ない、どんな権力も憲法というルールに基づいて運用されなければならない、そういう考え方であり、近代社会の大前提であります。
 そして、その憲法とは何なのか。まさにこれこそ、歴史と、そしてさまざまなその中での苦難の中から先人たちが積み重ねてきた社会の大前提となるべきルール、権力が従わなければならないルール、さまざまな苦難の歴史を乗り越えて先人たちが積み重ねてきたルールが結集されている、それが憲法であります。
 だからこそ、多くの国において、憲法を変える手続においては、今生きている有権者の半分だけでは簡単には変えられないという仕組みを多くの国で採用しているのは、まさに憲法というのは、歴史に基づいた人類の英知の積み重ねの結集であり、それによってどんな権力も拘束されなければならない、こういう考え方に立っているからにほかなりません。
 まさに、立憲主義とは保守思想そのものであります。積み重ねられてきた先人たちの知恵というものに基づいて、それを動かすときには、急進的な理想に邁進をするのではなくて、今あるところからより改善、一歩ずつ改善していくにはどうしたらいいのかを考える。まさに、立憲主義保守主義も同じ考え方である。
 私は、であるので、私こそが保守本流であるということを、自信を持って、日ごろから皆様方にお訴えをさせていただいているところであります。
 こうした保守……(発言する者あり)いいですか、しゃべって。こうした保守の本質を全く勉強せずに自称保守を名乗っている人たちを相手にしてもしようがないんですが。
 各論だけを申し上げても、カジノ法案はギャンブル依存症をふやす。ギャンブル依存症は、まさにこれに陥った当人だけの問題ではありません。家族や地域社会を含めて、多くの人たちがそのことによって社会的、経済的に大きなダメージを受けます。カジノの収益で経済成長する側面が百歩譲って存在するとしても、カジノ依存症による社会的、経済的なマイナスの方が圧倒的に大きいと言わざるを得ません。
 しかも、今強行されようとしているこのカジノ法案は、カジノ事業者が金を貸せる、とんでもない貸金業法の事実上の例外まで盛り込んでいます。まさに、ギャンブル依存症になろうとしている人たちに金を貸しまくって、ますますギャンブル依存症、ギャンブルによる多重債務につながっていく仕組みではありませんか。
 外資に対する規制も十分ではありません。残念ながらと言うべきか、当然のことながら、我が国ではカジノ事業の運営をした経験はありません。どう考えても、外資規制を十分に行わなければ、カジノ運営の経験、ノウハウの高い人たちが資本流入という形をもってこの事業による収益をかすめ取っていくのは目に見えているじゃないですか。日本人がギャンブルで損をした金で海外のカジノ業者を潤わせる、まさに国を売るようなことではないですか。
 私は、裏づけのないことで直截な批判をしようと思いませんが、しかしながら、安倍総理トランプ大統領との会合の席に、アメリカを代表するようなカジノ業者の方が御一緒していたというようなことも伝えられています。まさに、アメリカに我が国を売るための法律を今強行しているんだと言われても仕方がないんじゃないでしょうか。
 大体、カジノのために日本に来る外国人観光客がいる、あるいは、そのことによって外国人観光客を集めなければ外国人観光客が来てくれない、そんなに日本は情けない国なんですか、保守と称している皆さん。
 我が国には、特に世界の多くの国々の皆さんから見れば、そうした皆さんとは違った歴史、風土、文化あるいは生活様式、そして自然、我が国にはさまざまな、観光資源として魅力あるものがあります。まだまだそうしたものが世界の皆さんに十分に伝えられていない部分も山ほどあります。あるいは、受入れの体制が十分でないために、魅力ある観光資源を持ちながら外国人観光客がなかなか来ていただけていないところも少なからずあります。
 まさにやるべきは、そうした観光資源をいかに魅力的なものとして世界に売り出し、そして、まさに日本本来のよさを見ていただくために日本に来ていただく、これこそ、日本の歴史と伝統を大事にする人たちの立場の意見ではないかと私は思うんですけれども。
 いずれにしても、災害復旧の中心を担うべき国土交通大臣が災害対応よりも優先させて急がなければならない法案でないのははっきりとしています。今からでも遅くはありません。まだ参議院の本会議は開かれていません。今からでも考え直して、一旦立ちどまり、まずは国土交通大臣を中心に災害復旧に、この間、カジノにうつつを抜かしていたことの反省も含めて、全力を挙げていただいて、仕切り直しをされるべきであるということを強く申し上げたいと思います。
 
(第3回に続く)