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枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した

 2018年8月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3239を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
2018年8月13日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
 
 去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)で行われた枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介も、今日で第3回目を迎えました。
 この部分の冒頭における枝野代表の「安倍内閣を信任できない三つ目の理由は、アベノミクスの行き詰まり、限界の露呈であります。」を要約して、「アベノミクスは限界を露呈した」としておきました。
 
 このブログのために読み直してみて、安倍内閣不信任の7つの主要な理由のうち、比較的地味な印象を受けるアベノミクス批判を行うこの部分に、枝野代表は相当に力を入れているという印象を受けました。
 2016年の衆議院総選挙(つまり立憲民主党結党)からそれほど間の無い頃、枝野代表に対するインタビューを視聴したか読んだかした際、「次に政権交代の現実的なチャンスが巡ってくるのは、アベノミクスが崩壊した後だろう」という趣旨の発言を枝野氏が行っていたということを記憶しています。私は、「枝野氏は、政党を率いるほどの政治家として、当然持たなければならない現実認識力を持っている」と感心したものでした。
 
 7月20日の演説での「アベノミクスは限界を露呈した」という部分においても、アベノミクスに対抗する経済政策の旗を立て(他の野党の賛同も得られる)、来たるべき政権交代に備えようという意気込みが感じられる、と言っては過褒でしょうか。
 
 なお、いつものように、「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
 
第2回から続く
 
 安倍内閣を信任できない三つ目の理由は、アベノミクスの行き詰まり、限界の露呈であります。
 そのアベノミクスの結果として生じたさまざまな副作用のみが、ますます顕著なものとなっています。このままでは、国民生活と、そして日本社会の分断によって、社会そのものを崩壊に至らせかねないぎりぎりのところに来ていると思っています。
 確かに、アベノミクスの成果なのかどうかは別として、株価あるいは輸出企業を中心とした企業収益にはよい数字も見られていますが、実質賃金や個人消費には全くつながっていません。アベノミクスが始まって五年半になっています。もはや、まだ始めたばかりだから結果にはつながりませんという言いわけが許される時期ではありません。
 そもそも、経済を活性化させることで税収をふやし、財政再建を実現すると称していた財政再建目標は、五年たっても全く実現できず、五年先送りをした。どういうことだかわかりますか。五年やって成果が上がらず、五年先送りをした。成果がゼロだから、これまでの期間と同じ期間が必要なんですよね。半分進んでいるなら、二年半で済みますよね。全く進んでいないということです。
 二%の物価上昇目標、それは一義的な責任は日銀かもしれませんが、この物価上昇目標は、当初、二年程度とおっしゃっていました。今、何年でしょうか。五年半です。六度の先送りです。もはや、この目標自体が達成できなかった、失敗だったというのが当然じゃないでしょうか。
 あえて申し上げますが、徹底した金融緩和、円安を目的としていたとは言えないにしても、そのことによる円安。財政出動。確かに、かつては正しい経済刺激策だったと私は思います。今回も、輸出企業の収益増など、一定の部分的な成果は上がっていることを認めます。
 しかし、先ほど申しましたとおり、そもそも、こうした手法が通用するこの百五十年間の状況と、我が国の置かれている状況が、根本的に変化をしているのではないか、そのことが問われているのではないでしょうか。だから、本来効果が上がるはずの金融緩和をとことんアクセルを踏み、財政出動にとことんアクセルを踏んでも、個人消費や実質賃金という、国民生活をよりよくするという経済政策の本来の目的にはつながらないところでとまっているのではないでしょうか。
 私は、政治的な言い方としては、こうした金融緩和などによるアベノミクス、いわば強い者、豊かな者をより強く豊かにする政策であるという言い方をしてきました。御異論はあるかもしれませんが、結果的に、大きな輸出企業などを中心として、強い者がより強く、豊かな者がより豊かになったというのは、先ほど来部分的な成果として挙げたものの言いかえとして、決して間違ってはいないと思います。
 これもあえて申し上げます。
 そのこと自体は、ある時期までは私は正しかったと思います。日本の戦後復興、高度成長の時代、日本が貧しかった時代は、まさに貧しい日本が豊かになるためには、海外に物を売ってお金を稼がなければ豊かになれませんでした。海外に物を売って豊かになる。しかし、貧しい国ですから、高品質、高性能、あるいは新製品の開発、そうしたところで、時の先進国、主にアメリカでありましたが、そうした国と互角に競争できるような力はまだまだありませんでした。
 したがって、安い労働力を武器として、安いものをたくさんつくる。安いからたくさん売れる。そうしたことによって、世界にメード・イン・ジャパンを売り、そのことによって得た利益によって国内を豊かにしていく。
 したがって、まず、国内を豊かにする前に、輸出によって稼ぐために輸出企業を育てる。輸出企業が育つために何をやっていくのかというところに経済運営の力を注力する。
 私は、自民党がまともだった時代のこうした政策というのは決して間違っていなかった、時代に合致をしていたと思っています。問題は、特にバブル崩壊以降の我が国の状況がこうしたやり方の通用している時代状況にあるのか、世界経済の状況にあるのかということだというふうに思っています。
 実は、多くの皆さん、勘違いをされているんじゃないかと思いますが、バブル崩壊以降の日本経済の低迷、これは、部分的な数字はよくなったと自民党の皆さんが幾らおっしゃっても、実質経済成長率などの数字を見れば、バブル崩壊以降、一貫して、せいぜい一%前後の低成長が続いている。バブル崩壊前は平均をすると四、五%の経済成長をしていたところから、大きく我が国の成長力が落ちた。これは否定のできない、そして、これは民主党政権の時代も含めて、この三十年近くの間、一貫している我が国の状況であります。こうした状況の原因が外需にある、輸出にあると勘違いをしているんじゃないでしょうか。
 確かに、日本を代表する輸出企業は、そして輸出産業は、新興諸国の追い上げ、グローバル化の進展などによって、大変厳しい競争環境の中に置かれています。実際、その結果として、日本を代表する輸出企業が経営危機に陥るなどというニュースが年に何社も出てくるというような状況もあります。「サザエさん」のスポンサーがかわったのは大変残念です。
 問題は、では、輸出産業全体がこの三十年近く経済成長していないのかということです。
 実は、バブル崩壊の前と後で、日本の輸出に関しての成長力はほとんど下がっていません。大変厳しい経済環境のもとでありますが、日本の輸出企業、輸出産業は、この競争の中でも実は着実な経済成長を遂げているんです。
 もちろん、こうした経済成長を遂げてきた背景には、我が国のそうした企業を支援する、バックアップするという政策の支えがあったことも否定はしません。しかしながら、厳しい環境の中でもバブル崩壊前と比べて大差ない成長を遂げている輸出産業に、もっと頑張って成長して国内を引っ張れといっても、それは無理な相談なんです。今の成長力をどう維持していくのかということが、この厳しい環境の中、三十年頑張ってきた日本の輸出産業と輸出企業に対して、政府のできることなのではないでしょうか。
 本当にやらなければならないのは、実は、バブルの前と後で大きく変わったのは、個人消費が大きく落ち込み、落ち込んだままであるということであります。個人消費がふえない限り日本の経済の安定的な成長が実現できないのは、もう自明の理であると私は考えます。
 問題は、この三十年近くの間進めてきた政策が、個人消費を着実にふやしていくという観点から見たときにどういう意味を持ってきたのかということであります。
 例えば、労働法制、今回の高度プロフェッショナル制度も問題でありますが、実は、この三十年の間に派遣法が逐次改悪をされて、学校を卒業して就職をするというのは、私は今五十四歳ですが、私が学校を卒業する時代には正社員になるというのは当たり前のことでありましたが、今、若い人たち、必ずしも、超一流大学を卒業される方は別かもしれませんが、正社員になれたら、よかったね、正社員じゃないけれども、就職があって、まあまあしようがないね、こういう実態があるということを皆さん御存じでしょうか。
 そして、非正規の方が異様に数が多かった、いわゆるロストジェネレーションと言われる世代の皆さんは、仕事をしながらのオン・ザ・ジョブ・トレーニングの機会にも恵まれることなく、今なお非正規で低収入という状況の中で年を重ねておられます。
 我が国は、ただでさえ少子化、人口減少の中にあります。人口が減少すれば、もちろん、一人当たりの消費量をふやすということで個人消費の全体量をふやしていくということは可能ではありますけれども、しかし、まさに消費者の数が減れば消費がマイナスの方向に向かう、そういう大きな要素となることは間違いありません。
 そうした構造の中で、政治がやらなければならないことは何なんでしょう。実は、やらなければならない第一のことは、格差の是正であります。格差の是正は、今やらなければならない経済政策です。景気対策です。
 日本では、当たり前の経済についての大原則、その中で、なぜかどなたもおっしゃらない、ほとんどの方はおっしゃらない大原則があります。それは、金持ちほど金を使わないという大原則です。
 これは、例えば価格は需要と供給のバランスで決まるのと同じように、経済の大原則です。消費性向という、手にした所得の中でどれぐらいが消費に回るのかという比率、これは所得が大きいほど低くなる、これは経済の大原則です。したがって、格差が拡大をすれば消費が落ち込むのは、経済のイロハのイです。その中で、結果的かもしれませんが、強い者、豊かな者をより強くする、そうした政策の結果として、格差が拡大し、固定化をしてしまっている、その結果として消費が拡大をしない、これが今の日本の置かれている状況であります。
 格差の是正は、貧しい人たちが気の毒だからというだけではありません。格差を是正し、低所得の人たちの賃金、所得を底上げすれば、低所得であれば、消費性向はほぼ一〇〇%です。したがって、この人たちの手にした所得、収入は、ほぼ全額が消費に回ります。しかも、低所得、低賃金ですから、こうした方が、例えば、海外のブランド品を買うとか、海外旅行に行くとか、海外に投資をするとか、そうしたところにお金が使われる比率は、どう考えてもほとんどありません。国内におけるまさに内需の拡大に直接つながる、それが、所得の低い人たちの所得を底上げする政策の持っている、経済政策としての意味であります。
 したがって、いかに格差を拡大させずに、そして格差を是正していくのか、所得の低い人たちから中間の人たちの所得をどう底上げしていくのか、このことが、国内における消費を拡大させる、日本経済を立ち直らせる王道であると私は考えます。
 あえてつけ加えれば、労働法制などを、むしろ規制を強化することによって、働いた賃金に応じて、所得を得る、そうしたことがすきっと回っていく社会をつくっていかなければなりません。
 例えば、我が国では、トラック運送などに携わるドライバーの方が大変な人手不足です。低賃金で人手不足です。後で申し上げる介護や保育の皆さんと同様です。おかしいんです。先ほど申しました、価格は需要と供給のバランスで決まるんです。それが、資本主義社会であるならば大原則です。人手不足であるのに低賃金というのは、マーケットがどこかでゆがんでいるからです。そのゆがみを正すのは政治の役割です。
 低賃金であるならば、賃金が上がる、そのことによって、賃金が高いなら、重労働かもしれないけれども頑張ってやろう、そういう方がふえて、市場は機能して、必要な人員が確保されることにつながるんですが、残念ながら、例えば今回の長時間労働を規制する働かせ方改悪法案の中の数少ない改善部分である長時間労働の規制も、低賃金、重労働、長時間労働であるトラックドライバーの皆さんなどに対する部分については、先送りをされてしまいました。
 もちろん、どんな産業に携わっている皆さんでも、過労死、過労自死などに至れば、先ほど申しましたとおり、家族を含めて大変、残された人たちに大きな傷を残しますし、何よりも御本人がやりきれないものでありますが、交通事故などにつながれば、それ以外の方々にも影響が及ぶような仕事の人たちの長時間労働規制を後回しにせざるを得ない。それだけこうした人たちの人手不足が、低賃金を背景に行われているこの市場のメカニズムのゆがみを正すことこそが、実は格差の是正につながり、低賃金の人たちの賃金の底上げにつながり、経済、消費の拡大につながっていくということを申し上げたいと思います。
 更に申し上げると、経済、消費をふやすために、あと二つ大事なことがあります。一つは高齢者の老後であります。
 今の日本の高齢者の皆さんは、まさに日本の右肩上がりの高度成長をつくってくださった世代の皆さんです。もちろん、同じ世代だからといって、皆が同じような生活環境にいるわけではありません。高齢者でも、貯蓄もなく、大変厳しい生活をされている方も少なからずいらっしゃいます。そして、人によって、持っていらっしゃる資産の規模には大きな違いはあるでしょう。しかしながら、まさに老後のためにこつこつお金をためよう、そしてそのことが可能であった高度成長をつくってこられた世代の皆さんですから、実は、日本の高齢者の皆さんは、老後のために蓄えた貯蓄が、それぞれに若干ずつでも持っていらっしゃる方がほとんどです。
 問題は、こうしたお金が老後になってもほとんど使われていないという現実であります。あの世に預金通帳は持っていけない、講演会などでは、よく高齢者の皆さんに向かってこう言うと、笑っていただきます。皆さん、わかっておられます。にもかかわらず、老後のためにと思って蓄えたお金が老後になって使えない。なぜでしょうか。それは、元気なうちはいいけれども、病気や、あるいは介護が必要な状況になったときに、せめてわずかな預貯金でも残しておかないと心配だという意識に、多くの高齢者の皆さんが陥ってしまっているからであります。その結果、一千五百兆を超えるとも言われている国民金融資産、そのうちの多くの部分を占めている高齢者の皆さんの貯蓄が消費に回りません。
 こうした皆さんの貯蓄が、全部を一気に使ってくださいと言っても、やはり将来不安が一気になくなるわけではありません。例えば、今持っている貯蓄の半分を二十年かけて使いませんかと。それだけでも数兆円単位の消費の拡大に確実につながります。御本人にとっても、自分が若いころ稼いでためてきたお金で充実した老後を過ごすことができる、そして、お金を使っていただくことによって現役世代の経済が回っていく、一石二鳥です。それができないのは、介護のサービスが不足をしていること、年金や医療などを含めた老後の不安が大きいからです。老後の安心を高めることこそが経済政策です。景気対策です。
 子供を持たないという選択をされたり、子供を持ちたいと思いながら持てなかった人たちに対する心ない発言が、残念ながら自民党議員の方々から何度となく繰り返されました。子供を産むか産まないかという選択は、まさに自己決定です。それぞれのカップルがみずから決めることです。あるいは、持ちたくても持てなかった人たちもたくさんいらっしゃいます。
 その一方で、持ちたいと希望する人たちが希望をかなえることができて、そうすれば、必ず我が国の出生率は大きく高まります。子供の数はふえます。そのことは、結果として消費をふやし、経済を活性化させることにつながります。
 したがって、産む、産まないの選択を迫るのではなくて、産みたいと希望しながらそれをできていない人たちを、どうやってその希望をかなえていただけるのか、そのことこそが政治のやっていくべき役割だと思います。
 なぜ、産み育てたいと希望する人たちがそのことを実現できないのか。まさに、子育てと教育と雇用の、この三つの大きな問題があるからにほかなりません。
 一つは、保育所の不足に代表される子育て支援が不足であること。そして、教育の問題。
 教育、かつて、私の時代も、奨学金をもらって頑張っているんだね、あの人はねという同級生もいましたが、非常に数が限られていました。しかし、今や奨学金をもらわないと進学できないという人たちの比率は圧倒的に高まっています。
 私は国立大学の出身ですが、某私立大学を受けたいと言ったら、学費は最低限出せるけれども、なかなか、いろいろなことを含めて、全体の大学時代の金は出せないねと言われて、国立大学を選択しました。その当時と比べて国立大学の授業料はべらぼうに上がってしまっていて、国立なら行かせられるけれどもというような、そうした状況ではなくなってしまっています。
 こうしたことなどを背景にして、せっかく子供を産み育てるならばちゃんとした教育を受けさせたい、子育て支援は不十分、教育には金がかかる、産み育てたいと思っても断念している、あるいは二人、三人、産み育てたいけれども一人で断念をしている人たちが山ほどいらっしゃいます。そうした人たちが安心して子供を産み育てることができるようにする、まさに教育の格差の是正や保育所の増設は景気対策、経済対策です。
 失われた世代、ロストジェネレーションという言葉を先ほど申しましたが、そうした象徴的な世代の皆さんに限らず、若い人たちの間には、例えば、結婚し、家庭を持ち、子供を産み育てたいという希望すら持てないような低所得、不安定な働き方を余儀なくされている人たちが山ほどいます。そうした人たちが安定的な仕事を得、そして安定的な収入を得ることができたときには、その中の一定比率の人たちは、家族を持ち、そして子供を産み育てたいという希望を持つことができ、そこにつながっていくでありましょう。
 結果的に消費を拡大させることにつながる、少子化に歯どめをかける、希望する人たちにその希望をかなえていただけることを実現するためには、まさにこうした子育てや教育や雇用の政策を打つことこそが景気対策、経済対策であるという時代に入っているのです。
 立憲民主党は、こうした観点から、景気対策として、保育士の賃金の底上げを、そして介護職員の賃金の底上げを急いで行うということを提起し続けてきています。他の野党の皆さんにも御協力をいただき、共同して国会に法案も提出をさせていただいています。
 これは、一義的には景気対策という側面を持っている経済政策です。確かに、こうした長期的な財源を必要とする政策のためには安定財源が必要だという理屈はわからないわけではありません。しかし、景気対策として効果があるならば、建設国債は、財政規律のある意味別枠という扱いでばんばん発行されています。今や、いわゆる従来型大型公共事業と比べてこうした社会保障関連の投資の方が経済波及効果が大きい、それこそそういうデータも存在をしている時代に入っています。
 経済波及効果の大きい、しかも、我が国が今直面している消費不況をどう脱却するか、老後の安定、そして子育ての支援、そして、そこに携わっている所得の低い人たちの所得の底上げにつながる介護職員や保育士への賃金の底上げという政策は、ここに集中的に財源を投資するということこそが、まさに、どこに向けて景気対策を進めていくのかという象徴的な姿であり、少なくとも、カジノを進めるよりは百万歩経済に効果のある政策だと私は確信をいたしております。
 所得の低い人、所得の不安定な人たちの所得を下支えすることは景気対策、経済対策という側面があるということを申し上げましたが、そうした側面もあわせて、特に地方の活性化のための経済政策としてこの国に必要なのは、一次産業に従事する人たちの所得の安定を図ることであるというふうに思います。
 それぞれの地方において、地域の社会と経済を支えているのは一次産業に従事する皆さんです。その人たちの比率はかなり低下をしている地域はあるかもしれませんが、しかし、基幹となる産業として一次産業がしっかりと回っていく、そこで仕事をしている人たちが地域の中心を担って、あるいは消費を促していく中心を担っていく、こうしたことが必要な地域が日本じゅうの圧倒的に広い面積を占めているというふうに思っています。
 米作農家の経営安定に大きく貢献してきた米の直接支払い制度について、安倍政権は平成三十年産米から廃止をしました。我々が推進した農業の戸別所得補償制度は、それに先立って廃止をされています。
 一次産業の中においては、市況やあるいは天候によって大きな利益を上げる年もありますが、逆に、そうした状況によって翌年の再生産も不可能なぐらい所得が得られないときもあります。どんな年でも最低限、翌年の再生産が可能な安定的な一次産業の経営を担っていただく、そのためにいわゆる所得補償制度をとることは、先進国の農業政策などにおいては今や常識となっています。
 私たちは、これはまさに農業を守る、食の安全を守る、緑を守ると同時に、まさに、特に過疎地域などにおける経済を回していく最低限の前提条件として必要なことだと思っていますが、安倍政権はこれに逆行する政策を今のようにとっているわけです。
 そもそも、卸売市場法改正を始め農政関連改革法を成立させましたが、農業を他産業と同一視し、目先の経済効率のみを過度に追求するのみで、多面的機能を評価し維持するための方向性に逆行をしています。
 いわゆる土地改良予算は一方で大幅に伸びており、安倍農政は、小規模農家、つまり地域社会を経済の面も含めて支えている人たちを切り捨てる一方で、従来型の農業土木を推進している。誰のための農政なのかと申し上げたいし、まさに土地改良などの農業土木はいつまで継続するかわからないわけです。
 それぞれの地域において、これから長期にわたってそこに暮らし続ける、住み続ける、営みを続ける、そのためには、一次産業で最低限食べて再生産をしていけるという基盤を整えなければ、過疎地域に暮らす人たちはいなくなります。
 安倍政権は、こうした、暮らしを、社会を下から支えて押し上げるという、今我が国がとらなければならない経済政策の方向とは逆行し、強い者をより強くする、豊かな者をより豊かにする、そうすれば世の中全体がそこに引っ張られてよくなる、あるいは豊かさが滴り落ちるという、全く時代おくれになった政策に拘泥をし、社会の分断と貧困を招き、そして、思ったとおりの経済の安定的な成長をもたらすことができないという結果をもたらしています。逆行しているのは明確です。
 例えば、この国会でも、生活保護費の母子加算を縮小しました。私は、この国会の一番最初の本会議でこの点について指摘をしましたら、六割の人はふえるんだという答弁にとどまりました。まさに安倍政権の姿勢を私は象徴していると思います。
 確かに、母子加算等については、六割の方がふえるというのは客観的な事実です。その方はふえるんだから結構なことです。しかし、六割はふえるというのは、四割は減るということを認めていらっしゃるわけです。せめて、四割は減るけれども、こういう人たちだから減っても大丈夫なんだという説明をしなければ、この四割を切り捨てていることにほかならないじゃないですか。
 保育所の数をふやすことも、努力をしているとおっしゃっていますが、おっしゃっているだけで、保育士の賃金増による待機児童対策よりも無償化を優先する政策をいまだに推進をしています。
 確かに、無償化が実現できるなら結構なことです。我々も将来の方向として目指したいと思っています。しかしながら、限られた財源とおっしゃっているのは、いつも政府・与党じゃないですか。限られた財源を無償化に回すことが本当に合理的なんですか。
 今、何よりも手を差し伸べなければならないのは、保育所に入りたいと思っているのに入れていない人。その人たちに保育所を提供することこそが、無償化よりも優先度は圧倒的に高いんじゃないですか。
 しかも、現在の保育料の仕組みも、所得に応じて段階をつけていますから、実は、無償化されて一番恩恵を受けるのは、高額の所得を得ていながら保育所に子供を預けることができている人たちです。私は、その人たちも、財源があるならば、無償で安心してお子さんを預けていただける、そこを目指すべきだと思いますが、優先順位は、所得が低いのに保育所にも入れないような、そちらの人たちを救うことなのは当たり前じゃないですか。
 こんなちぐはぐなことをやっておいて、先ほど来、やっているじゃないかというやじが飛んでいますけれども、やっているんですか。やっていないじゃないですか。逆行しているじゃないですか。
 税だってそうです。これは低所得者ではありませんが、一部の中堅層の給与所得者を狙い撃ちする控除の見直しをしたのは誰ですか。国際観光旅客税なども含めて、取りやすいところから取るという税制の改悪を進め、例えば金融所得課税などは先送りをしているじゃないですか。
 強い者、豊かな者には優しく、厳しい環境にある人たちには厳しく。それは、繰り返しますが、そうした皆さんが気の毒だからにとどまりません。こうした皆さんの所得を底上げして消費をしていただかない限り、従来型の経済政策を幾ら打っても、消費が伸びない限り、我が国の安定的な経済の再生はあり得ません。
 経済についてはあと三十分ぐらい話したいことがあるんですが、最後に安倍総理の典型的な勘違いを申し上げて、次のテーマに移りたいと思います。
 一月三十一日の参議院予算委員会安倍総理は、国民生活の困窮化の一例としてエンゲル係数の上昇が見られることを質問され、物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれていると場違いな答弁をされています。
 こんな認識なんですから、所得の低い人たちの所得を底上げしなければ景気を回復させることはできないという今の社会において、日本経済を立ち直らせることは到底できないということを最後に強く指摘をしておきたいと思います。
 
(第4回に続く)