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枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第6回~行き詰まる外交と混乱する安全保障政策

 2018年8月20日配信(予定)のメルマガ金原No.3245を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第6回~行き詰まる外交と混乱する安全保障政策
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
2018年8月13日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
2018年8月14日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
2018年8月17日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第4回~モリカケ問題が招くモラルの崩壊
2018年8月18日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第5回~民主主義を履き違えている
 
 去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)で行われた枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介も今日を含めてあと2回となりました。
 この連載を始めるにあたり、何回の連載になるのか、やってみないと分からない、と書きましたが、無事、枝野代表自身が、「大きく七つ、安倍内閣の不信任に値すべき事項についてお話をさせていただきたいと思います。」と宣言した章立てに基づいて、7回で完結できそうです。
 このブログにお付き合いいただき、今日までこの演説を読み進めてくださった方がどれほどおられるのか、やや心許ないところではありますが、この連載の試みも、「国会可視化」の一助になればという思いでやっていることをご理解いただければ幸いです(ご参照・国会パブリックビューイング第1回シンポジウム「『国会を、取り戻す。』-国会可視化が政治を変える-」(2018年8月3日)を視聴する/2018年8月5日)。
 
 さて、第6回のテーマは「行き詰まる外交と混乱する安全保障政策」です。内容について、特にコメントすることもないのですが、「シビリアンコントロールは背広組が制服組をコントロールすることだと大きな間違いをしていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。違います。シビリアンコントロールは、むしろ、本当に正しい意味で日本語に近い日本語にするならば、民主的統制であります。」と指摘された点が、今回の「枝野学校」のハイライトだったでしょうか。
 
 次回はいよいよ最終回です。ご期待ください。
 
 なお、いつものように、「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第6回~行き詰まる外交と混乱する安全保障政策
 
第5回から続く
 
 大きな六番目の不信任の理由として、行き詰まる外交と混乱する安全保障政策について申し上げたいと思います。
 安倍総理は、日ロ関係に力を注ぎ、プーチン大統領と何度も会談を重ねて友好関係を強調してこられました。下関での首脳会談もありました。
 しかし、それ以降、共同経済活動で何か目立った活動はあったでしょうか。北方領土問題は前向きな進展があったでしょうか。
 繰り返しますが、安倍政権が発足して五年半になります。どうも、ロシアだけは日ロ関係の進展によっていろいろいいことはあるようですが、我が国にとって重要な北方領土問題の進展は全く見られず、行き詰まっていると指摘をせざるを得ません。
 朝鮮半島をめぐる問題は更に深刻であります。安倍総理や河野外務大臣は最大限の圧力のみを唱え続けました。北朝鮮との国交断絶を他国に求める発言まで河野外務大臣はなさいました。
 ところが、南北首脳会談、米朝首脳会談が実現をしました。もちろん、北朝鮮のこれまでの経緯を考えれば、このまま平和に向かって着実に進んでいくかどうかということは、私も一概に言える問題ではないというふうに思います。再び緊張する可能性も十分に高いと思っています。
 しかしながら、まさにここまでに至る経緯は、日本外交に主体的な姿勢は全く見られず、北朝鮮と、そしてトランプ大統領の動きに振り回されているとしか言えません。
 加えて、安倍総理がある意味で一丁目一番地で力を込めてこられた、私はこのことにこだわり続ける安倍総理の姿勢、最優先の課題として頑張ろうとする姿勢そのものは高く評価をしますが、その拉致問題について何か進展があったんでしょうか。五年半たっています。
 北朝鮮情勢が大きく変化をしている中、一基一千億円とも言われるイージス・アショアの配備、本当に続けていくのでありましょうか。
 防衛予算は六年連続の増大で、過去最大の五兆一千九百十一億円に上っています。その中には、安全性に疑問が更に高まっているオスプレイの配備も含まれています。
 米国の対外有償軍事援助、いわゆるFMS、これに基づく購入額がふえていますが、これは、圧倒的にアメリカ有利のいわゆる契約内容になっていると言われています。防衛装備の調達について、我が国の安全保障上の必要性よりも、アメリカが売りたいものを言い値で買っているという見られ方をしても仕方がない状況にあります。
 北朝鮮情勢が今大きく変動している中、完全に白紙撤回しろとまでは言いません、少なくとも、米朝の今後の進展を見ながら慎重に物事を進めていくぐらいのことはしてもいいんじゃないでしょうか。
 安全保障だけではなく、なし崩し的な日米FTAへの流れが加速していると危惧せざるを得ません。一方で、米国の復帰の見通しなきTPP11を強引に進めています。
 総理は、日米FTAについて念頭にないとおっしゃっています。当然のことだと思います。現状で二国間FTAを進めていけば、我が国にとっては到底のむことができない、我が国の一次産業なり、場合によっては第二次産業も含めて、我が国が受け入れがたい条件をアメリカにのまされかねない、そういう状況だというふうなことは理解をしています。
 したがって、念頭にないという考え方は支持するところでありますが、四月十八日の日米首脳会談では、日米二国間での新たな協議の創設で合意をさせられました。二国間FTAに向けた協議や米国産農産物の輸入拡大の圧力を受ける場へとなし崩し的に追い込まれつつあるという危惧は杞憂でありましょうか。
 他方で、TPP協定について、安倍総理は、米国抜きでは意味がないとおっしゃっておられました。
 米国復帰の見込みのないままTPP11を推進しているのは何なんでしょうか。TPP11協定では、セーフガード基準や輸入枠などについて、米国の参加を前提に設定されたオリジナルのTPPの水準について何ら調整することなく、そのまま維持されています。
 私どもは、そもそもTPPのオリジナルの水準についても交渉の敗北だと思っておりますが、そのオリジナルのTPPよりも更に深刻な影響を、米国の復帰がない中で国内農業がこうむることになる、これを放置して推進をしているという状況は、全く支離滅裂の状況にあります。
 外交、安全保障について更に危惧をしなければならないのは、シビリアンコントロールの空洞化であります。
 言うまでもなく、イラク南スーダンでの、ないとされていた日報を始めとして、これまで不存在とされていた自衛隊防衛省の文書が相次いで発見されていますが、その経緯や原因はいまだ明らかになっていません。組織的な隠蔽を言葉では否定しているものの、客観的な経緯からすれば、組織的な隠蔽がなければこんなことできない、そんなプロセスになっていますが、そうではないことについての合理的な説明は全くなされておりません。
 大臣や国会に適切な情報が提示をされなければ文民統制は成り立ちません。実は、財務省の改ざん以上に、まさに自衛隊という組織の文民統制にかかわる問題でありますので、深刻であるとも言えます。
 多くの皆さんが、いわゆる大本営発表が、第二次世界大戦に至るプロセスの中で、あるいは第二次世界大戦を通じて、結果的にいかに日本の国益を損なったのかということについては、これは立場を超えて共有していただけると思うんですが、まさに大本営発表という大きな過ちをした我が国は、こうしたことに陥らないようにしっかりとした情報の管理と公開を進めていかなければならない、そのことを通じて文民統制を機能させなければならないことは当然のことであります。
 そして、大本営発表という苦い教訓を、過去にしている中であるからこそ、自衛隊防衛省こそこうした問題に敏感でなければならないと思っています。
 加えて、現職の幹部自衛官が、現職参議院議員に向かって、おまえは国民の敵だとの暴言を吐きました。懲戒に至らない訓告処分であります。
 一般の国民の皆さんからいろいろな御批判を受けることについては、それは与野党を超えて、我々の役割、仕事として、それをしっかりと真摯に受けとめる姿勢が必要だと思いますが、現職の幹部自衛官がそのことを表明しながら、国会議員に対して国民の敵だとの暴言を吐いた、これは文民統制の観点から許されることではありません。
 意見が異なっておったとしても、自衛隊という実力組織の、まして幹部の方でありますから、国民の代表である国会議員に対して国民の敵とレッテル張りする姿勢は許されず、こんなことでは文民統制は成り立つはずがありません。
 文民統制に関連して言えば、沖縄県の米軍ヘリコプター不時着に関して、当時の松本文明内閣府副大臣は、それで何人死んだというやじを飛ばし、事実上の更迭をされました。先ほどの小野寺防衛大臣の赤坂自民亭問題への右往左往する言いわけ、稲田前防衛大臣が事実上の更迭に追い込まれたことなど、範をすべき政治がいいかげんな姿勢では、自衛隊という実力組織の統治が十分になし得ないのも必然であります。
 我が国では、シビリアンコントロール文民統制と訳してしまいました。その結果として、残念ながら、シビリアンコントロールは背広組が制服組をコントロールすることだと大きな間違いをしていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。違います。シビリアンコントロールは、むしろ、本当に正しい意味で日本語に近い日本語にするならば、民主的統制であります。
 実力組織については、まずは内閣が、そして議院内閣制であるこの議会がしっかりとコントロールする、それこそが本来のシビリアンコントロールであります。
 その本質をわきまえているならば、国会議員に向かって現職幹部自衛官が国民の敵と暴言を浴びせることはあり得ないし、そんなことがあったら厳しい懲戒処分がなされるのは当たり前であるし、そして、国会などに対して日報等を隠し、ごまかすなどということがあったら、厳しい処分がなされ、全貌解明をしなければならない。シビリアンコントロールを全く理解していない体制の中で、これ以上自衛隊に対する指揮権を持たせるわけにはいかないというふうに考えます。
 そもそも、安倍総理は、この自衛隊に関して、こんな国会答弁をされました。自衛隊員たちに、君たちは、憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれというのは余りにも無責任だという国会答弁であります。
 集団的自衛権の行使については議論があります。しかし、自衛隊の存在が憲法違反でないことは、既に明確であり、定着をしています。安倍総理は、憲法違反かもしれないと思いながら自衛隊を指揮していらっしゃるんですか。憲法違反かもしれないと思いながら予算を計上しているんですか。私も含め、自衛隊予算を含む予算に賛成したことのある者は、自衛隊は合憲であるとの前提に立たなければ論理矛盾になります。
 確かに、私が子供のころは、自衛隊憲法違反であるという意見も少なからず存在をしていたことを知っていますが、そして、ある時期までは、国会における野党第一党自衛隊違憲論に立っていたのも知っていますが、念のため申し上げますが、野党第一党である立憲民主党は、自衛隊は合憲であるという明確な立場に立っております。
 安倍総理の頭の中は……(発言する者あり)
 
〇議長(大島理森君) 御静粛に。
 
枝野幸男君(続) 安倍総理の頭の中は、二十年以上時間がとまっておられるんだと心配をせざるを得ません。
 
(第7回に続く)