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枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第7回(完)~官僚システムの崩壊

 2018年8月22日配信(予定)のメルマガ金原No.3247を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第7回(完)~官僚システムの崩壊
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
2018年8月13日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
2018年8月14日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
2018年8月17日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第4回~モリカケ問題が招くモラルの崩壊
2018年8月18日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第5回~民主主義を履き違えている
2018年8月20日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第6回~行き詰まる外交と混乱する安全保障政策
 
 去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)で行われた枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介も、いよいよ今回の第7回で最終回となりました。
 最後のテーマは「官僚システムの崩壊」です。
 枝野代表も指摘されているとおり、学校法人森友学園への国有地売却に関する決裁文書の組織的改ざんを指示した元理財局長の佐川宣寿国税庁長官が3カ月の停職処分相当で済まされたことに象徴される、安倍内閣と官僚組織との、あってはならない、規(のり)を超えた不祥事の数々は、まさに「官僚システムの崩壊」と言うしかない状況に立ち至っていると、多くの国民は感じているはずです。
 和歌山でもそうでしたが、文部科学省事務次官経験者である前川喜平さんの講演会に、全国各地で、主催者の予想を遙かに超えた多くの聴衆が詰めかけたという事象は、そのような国民の官僚組織に対する厳しい視線の裏返し、すなわち「前川さんのような高級官僚は他にいないのか!?」という悲鳴にも似た意識の表れであろうと思います。
 
 枝野幸男氏の2時間43分に及ぶ演説の文字起こしを最後まで読み切っていただいた方は、どのように感じられたでしょうか。安倍内閣が不信任に値する事情を、主として第196回国会(常会)召集後の事実の中から7項目に整理して論じたものです。
 「自分なら、こういうテーマも指摘する」ということもあったかもしれません。他方、「枝野氏の主張は言いがかりに過ぎない」という意見の人もいるでしょう(そういう人は私のブログなど読まないでしょうけど)。
 実は、会議録の続きを読めば、枝野氏に続き、以下の7人の方が、内閣不信任決議案に対する反対討論及び賛成討論を行っています。
 
反対討論 金田勝年氏(自由民主党) 13分
賛成討論 山内康一氏(立憲民主党・市民クラブ) 15分
反対討論 伊藤渉氏(公明党) 13分
賛成討論 玉木雄一郎氏(国民民主党・無所属クラブ) 16分
反対討論 浦野靖人氏(日本維新の会) 6分
賛成討論 岡田克也氏(無所属の会) 9分
賛成討論 志位和夫氏(日本共産党) 10分
 
 以上のとおり、自民党公明党の与党に加え、日本維新の会内閣不信任決議案に反対しました。その理由について、浦野議員がどう語っているかを引用しておきましょう。
 
「政治はゼロか一〇〇ではありません。今の与野党を比較すれば、どちらに内閣を預けることがよいのかと問われれば、安倍内閣。したがって、野党提出の内閣不信任決議案には賛成できないということです。」
 
 まあ、ここまで正直に、日本維新の会を代表してその立場を表明されているのですから、日本維新の会をかりそめにも「野党」などと称しては申し訳ないでしょう。
 ・・・というようなことも、国会の会議録を読むと分かってきます。
 枝野代表による2時間43分の演説を読み通すという今回の企画を機に、衆参両院のインターネット審議中継や会議録に親しみ、国民の代表が一体どんな議論をしているのか、自ら知ろうと努力する習慣を身につけていただければ幸いです。
 
 なお、いつものように、「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第7回(完)~官僚システムの崩壊
 
第6回から続く
 
 七つ目の問題点を申し上げます。それは、官僚システムの崩壊です。
 日本は、政治は二流とか三流とかやゆされても、官僚システムが一流だからしっかりしているんだということが言われていた時期がありましたが、安倍内閣はこの官僚システムを破壊しています。
 森友、加計問題や、自衛隊日報の改ざんや隠蔽の問題、厚生労働省の働き方データの捏造問題など、既に述べてきた官僚の皆さんの不祥事は言うに及びませんが、こういうところで使う言葉ではありませんが、本当に省庁横断的に、さまざまな役所で考えられないような不祥事が相次いでおります。
 福田財務事務次官は女性記者にセクハラ発言をしたと報道され、音声も公表されました。しかし、次官はセクハラを認めないまま辞任をされました。財務省の対応も、被害者に二次被害を生じさせかねない不適切なものでありました。セクハラということでは、厚生労働省局長による、厚生労働省女性職員に対する、セクハラと疑われるようなメールを複数回送付していた問題もありました。
 厚生労働省という点では、私はこれが深刻な問題だと思っていますが、東京労働局長が記者会見の場で取材記者に対し、皆さんの会社に行って是正勧告をしてもいいんだけどと発言し、十二日後に、局長職は更迭されましたが、軽い処分で済んでいます。報道機関の皆さんの労働条件というものの実態も、しっかりと各種労働法制を守ってやっていただきたい。厳しい状況であることも知らないわけではありませんが、公権力が恣意的な運用を公言したんです。考えられない不祥事です。
 労働行政において是正勧告をするというのは相当強い公権力の行使ではありませんか。税務署が、例えば財務省の言うことを聞かなければ税務調査に入るぞと公言したらどうなりますか。警察が、言うことを聞かないんだったら逮捕するぞと言ったら、犯罪を犯してもいないのに、家宅捜査に入るぞと言ったらどうなりますか。これに匹敵するような公権力の行使を恣意的に使うぞということを記者に向かって公言をする。私は、公務員失格であり、やめていただかなければならない、それぐらいに匹敵する処分をすべきである問題だったと思います。
 外務省では、先ほど申しましたが、公表されているのは、国家公務員として信用を損なう行為があったということで停職九カ月の処分がなされた職員がいらっしゃいます。セクハラ疑惑は報道されていますが、詳細は未公表のままです。
 セクハラについては二次被害の防止というのが大変重要であり、被害者保護の見地から詳細を公表できない場合があることは私は理解をいたします。とはいいながら、公文書を組織的とも言えるような形で改ざんした佐川前理財局長が停職三カ月です。その三倍の停職九カ月です。よっぽどひどいセクハラをしたんでしょうね。セクハラじゃないなら、よっぽどひどい信用を損なう行為について、一定の説明があってしかるべきではないですか。
 会期末になって、文部科学省の局長が裏口入学という受託収賄容疑で逮捕をされました。森友、加計問題も学校にまつわる問題です。学校用地を裏口で安く取得しようとした問題であり、設置認可を裏口で受けようとした疑惑でありますので、魚は頭から腐るという言葉もあるように、総理を見習って裏口入学をしようとしたのかなと疑わざるを得ません。
 あまたいる国家公務員の中に、残念ながら不祥事を犯す者がいるからといって、内閣の政治責任を問うものではありません。確かに、たくさんいる国家公務員の中にある不祥事に対して一々政治責任をとろうとしていたら、どの内閣も一週間もたないかもしれません。
 今回はそういう問題ではありません。安倍内閣発足から五年半、内閣人事局制度を悪用し、官僚人事を専断し、官の世界にも安倍一強体制を築いてきた中での相次ぐ不祥事であります。
 そもそも、モリカケ自衛隊の改ざん、隠蔽は、幹部公務員の組織的とも言える大規模な不祥事です。そして、今申し上げた一例を並べるだけでも、末端の公務員の中に不届きな人間がいたという案件ではありません。内閣人事局制度に基づく一元管理下のもとに置かれるような幹部の人たちだけでも、これだけの相次ぐ問題を生じさせているのであります。
 まさに、魚は頭から腐るという話の中で、官僚システムが崩壊をしているのではないか。こうした状況を一日も、とめなければならない。官僚の皆さんが、官邸をそんたくするのではなくて、国民の皆さんの思いをそんたくする、それが本来の公務員の皆さんの仕事、役割であり、官邸や与党をそんたくせざるを得ないような今の政治状況を変える。その中で、官僚の皆さんが入省時に思ったであろう、国家国民のために働きたいという本来の思いを実現できるような官僚システムを実現するために、一刻も早く安倍内閣には退陣していただきたいと思っています。
 以上、七項目挙げました。まだまだ、不信任の理由は数え切れないほどあります。
 いずれにしても、この国会は、民主主義と立憲主義の見地から……(発言する者あり)大丈夫です。さすがに、売り言葉に買い言葉はやりませんので。この国会は、民主主義と立憲主義の見地から、憲政史上最悪の国会になってしまったと言わざるを得ません。
 それでも、災害対応の見地から、不信任の提出にはためらいがあったことを冒頭に申し上げましたが、災害よりもギャンブル解禁、災害よりも党利党略の定数六増を優先する内閣を信任して災害対応させるよりも、そして、うそとごまかしと開き直りを重ねる内閣を信任して災害対応をさせるよりも、よりましな内閣のもとで再出発して災害対応に当たる方が適切であると考えます。
 民主主義の本質を理解しない皆さんには何とかに念仏かもしれませんが、最後に申し上げたいと思います。
 今のような姿勢で政権運営を続けることは、もし政治が与党対野党の戦いというものであるならば、目先の野党との戦いという意味では成功してきたし、これからも一定期間は成功するかもしれません。そして、政治に権力闘争という側面があり、与党が野党との戦いに勝とうとする、そういう思いを持つことは否定しません。
 私も、権力闘争という側面が政治にあることは否定しないし、そうした側面から、与党に勝つために全力を挙げてまいりましたし、更に全力を挙げてまいりたいと考えています。
 しかし、それは一側面でしかありません。
 政治の本質は、与党と野党の戦いではありません。それは、目的ではなく、あくまでも手段であります。権力闘争に勝つという目的のために、社会のモラルや秩序を壊してしまう。本来、民主主義の前提としてなされなければならない、国会でうそをつかない、国会には正しい文書を出す、情報を隠し、ごまかしはしない、こうしたことを壊してしまったのでは、国民生活の、より豊かな暮らし、生活をつくり上げていくという本来の目的に反することになってしまいます。
 これ以上、目先の権力闘争ばかりを重視して、国民生活の将来に禍根を残し、うそやごまかしや開き直りを蔓延させてモラルハザードを生じさせれば、必ずや歴史に断罪されると私は確信をしています。
 第二次世界大戦、日中、日米戦争に至る経緯の中でも、目先の権力闘争には勝ったけれども、結果的に我が国を破滅的な状況に追い込んだ政治リーダーが、残念ながら少なからずいらっしゃいました。このまま安倍政権の横暴を許していけば、残念ながらそういった道へ入り込んでしまい、後戻りができなくなってしまうのではないかということを強く危惧をいたしています。
 安倍総理も、せっかく五年半も総理をやられたんですから、後の歴史に断罪されるようなことがないように、一刻も早く身を引かれることをお勧め申し上げます。
 良識ある議員の皆さんが、次の内閣改造で大臣になれるか、副大臣になれるか、政務官になれるか、次の選挙で公認されるかとか、そういうことを頭から取っ払って、みずからの信念と歴史への謙虚な姿勢、その歴史というのは未来の歴史に対する謙虚な姿勢であり、保守を称するならば、我が国の過去の失敗の歴史も含めた我が国の長い歴史に謙虚に向かい合い、この内閣不信任決議案に賛同されることをお願い申し上げ、提案理由の説明とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
 
(完)