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「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第8回・日比嘉高氏(名古屋大学准教授)&石川健司氏(東京大学教授)「学問・芸術の〈中立性〉とポスト真実の時代」のご紹介

 2018年9月24日配信(予定)のメルマガ金原No.3280を転載します。
 
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第8回・日比嘉高氏(名古屋大学准教授)&石川健司氏(東京大学教授)「学問・芸術の〈中立性〉とポスト真実の時代」のご紹介
 
 夏も過ぎ去り、めっきり秋の気配が濃くなったこの時期(今日は彼岸の中日です)、立憲デモクラシーの会が主催する立憲デモクラシー講座も、新しいシーズンがスタートしてもおかしくないと思うのですが、今年は、9月21日(金)に第Ⅲ期第8回が開かれました。このイレギュラーな開催は、おそらく、7月に開かれた第Ⅲ期第7回・特別企画「ポスト真実時代における学問の自由-講演と討論」が、あまりに多くの問題を詰め込み過ぎ、消化不良に終わったため、その延長戦として企画されたものであったようです。
 そもそも、会場の都合でだと思いますが、2時間しか使えないという制約もあり、今回は、「学問・芸術の〈中立性〉とポスト真実の時代」と微妙にテーマを絞るとともに、前回の登壇者(赤江達也氏、日比嘉高氏、石川健治氏、山口二郎氏)の内から、日比嘉高氏(名古屋大学准教授)と石川健司氏(東京大学教授)の2人にきっちりと時間をとって議論してもらうことにしたのは大成功で、前回に比べてはるかに分かりやすい講座になったと思います。
 
 事前予告によると、日比嘉高准教授が講演者、石川健治教授が討論者と表示されていましたし、石川教授も、交通整理が自分の役割と意識されていたようですが、私としては、前半の日比准教授が「ポスト真実の時代」について、石川教授が「学問・芸術の〈中立性〉」について分担して講演してくださったものと考えて視聴しました。
 
 後半の石川教授は、「学問・芸術の〈中立性〉」ということを考えるための論点整理として、いくつかの非常に重要な視点を紹介されましたので、是非ご覧になって自ら考える参考としていただきたいのですが、ここでは、私がとても興味を惹かれたエピソードをご紹介します。
 
 それは、「学問の自由」に関わる代表的な意見として、故・芦部信喜先生の『憲法』(現在は第六版/高橋和之補訂/岩波書店)の一節が引用された部分です。
 そこで、芦部先生は、カギ括弧付きで、以下の文章を引用されているのですが、その出典が明らかにされていないのだそうです。
「学問研究を使命とする人や施設による研究は、真理探究のためのものであるとの推定がはたらく」
 もともと芦部先生は教科書を書かれなかった方ですが、1984年に東大を定年退官された後、学習院大学教授に就任しつつ、放送大学でも「国家と法Ⅰ」という講座を担当され、同大学のシステムとしてどうしても印刷教材(テキスト)を書かざるを得なくなったものの、そんなものを書いている時間などなかったため、自分の講義録が東大出版会からプリントして売られていたので、それをベースにして印刷教材の草稿を書いてくれるよう、自分の弟子に依頼したのだそうです。
 今、岩波書店から刊行されている芦部先生の『憲法』も、もとはといえば『国家と法Ⅰ』がベースになっているという、そこそこ有名な(?)挿話でした。
 それはさておき、上記の『国家と法Ⅰ』や東大講義録には、上記の括弧書きの引用は存在せず、岩波書店から『憲法』を刊行されるに際し、芦部先生が付け加えられたらしいのですが、その出典を調べたところ、佐々木惣一氏が戦後に発表した『日本国憲法論』(有斐閣)だったのだそうです(一部微妙に改変しての「引用」だったそうですが)。
 芦部教授が、「学問の自由」を論じた箇所で、戦前、瀧川事件に抗議して京大を去った佐々木惣一氏の見解をあえて「引用」したことが、石川教授によって紹介され、私は非常に興味深く聴いたという次第です。
 
 それでは、いつものように、UPLAN(三輪祐児)さんによる動画をご紹介します。
 
20180921 UPLAN 日比嘉高石川健治「学問・芸術の〈中立性〉とポスト真実の時代」(1時間59分)
冒頭~ 小原隆治氏(早稲田大学教授)
4分~ 日比嘉高氏(名古屋大学准教授)
1時間04分~ 石川健治氏(東京大学教授)
1時間38分~ 日比嘉高
1時間42分~ 石川健治
1時間50分~ 質疑応答
 
(参考動画)
 今回の「学問・芸術の〈中立性〉とポスト真実の時代」は、前回の「ポスト真実時代における学問の自由−講演と討論」の延長戦ですから、前回の動画もご紹介しておかねばと思います。
20180720 UPLAN 赤江達也,日比嘉高,石川健治,山口二郎ポスト真実時代における学問の自由−講演と討論」(1時間52分)
 
(参考書籍)
ポスト真実」の時代 「信じたいウソ」が「事実」に勝る世界をどう生き抜くか(祥伝社
改憲」の論点(集英社新書
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/立憲デモクラシー講座)
2015年11月15日
佐々木惣一が発見した「国民の存在権」(憲法13条)と自民党改憲案~石川健治東大教授の講義で学ぶ(11/13立憲デモクラシー講座 第1回)
2015年12月12日
山口二郎法政大学教授による「戦後70年目の日本政治」一応の総括~12/11立憲デモクラシー講座 第3回)
2016年1月8日
中野晃一上智大学教授による「グローバルな寡頭支配vs.立憲デモクラシー」~1/8立憲デモクラシー講座第4回)
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杉田敦法政大学教授による「憲法9条の削除・改訂は必要か」~1/29立憲デモクラシー講座 第5回)
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(弁護士・金原徹雄のブログから/YouTube版・立憲デモクラシー講座)
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