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中川五郎さんの『ピーター・ノーマンを知っているかい?』を聴いて考える~自分もピーターになれるだろうか?

 2018年10月10日配信(予定)のメルマガ金原No.3296を転載します。
 
中川五郎さんの『ピーター・ノーマンを知っているかい?』を聴いて考える~自分もピーターになれるだろうか?
 
 今日は、昨日お届けした「第2回「言っとくけど、俺の自由はヤツラにゃやらねえ!ロック・フェスティバル」(イットク フェス 2018!!)を視聴する」からのスピンオフです。
 第2回イットクフェスに出演された101組のミュージシャンのうち、私が生の演奏に接したことがあるのは中川五郎さんだけでした。
 1970年に高校に入学した私は、中学生・高校生という多感な時代に、どっぷりと関西フォークに浸った世代であり、何を大切と考え、自分をどう律すべきかという価値観についても、中川五郎さんの今に至る変わらぬ姿勢にとても共鳴します。
 
 その中川さんが、10月7日(日)に国会正門前で歌ったのが『ピーター・ノーマンを知っているかい?』です。
 
中川五郎氏 ライブ 第2回『イットク・フェス(言っとくけど、俺の自由はヤツラにゃやらねえ!ロック・フェスティバル)』[4/4]2018.10.7 ‬@国会正門前(25分54秒)
 
 迫力満点の素晴らしい演奏ですが、ただ残念ながら、曲の冒頭部分が収録されていません。そこで、全曲については、今年の7月16日に学芸大学駅「チェロキー・タバーン」で収録された26分を超える演奏がありますので、是非これを聴いてください。その上で、イットクフェスでの演奏をあらためて聴いてもらえると、中川五郎さんがあえて国会前で歌う曲として、この長大な『ピーター・ノーマンを知っているかい?』を選んだ思いが、身にしみて理解できるだろうと思います。
 なお、7月16日の演奏は、多田葉子さん(サクソフォーン)と熊坂路得子さん(アコーディオン)とのセッションとなっており、より演奏が盛り上がっています。
 
ピーター・ノーマンを知ってるかい(26分54秒)
 
 1968年10月のメキシコ・オリンピック、陸上男子200mの表彰台上において、金メダルと銅メダルを獲った2人の米国の黒人選手が、手を高く突き上げて行ったブラックパワー・サリュートについては、少なくとも私たちより上の世代の人にとっては、同時代の印象的な出来事(私は中学2年生でした)として、その映像と共に記憶しておられるのではないでしょうか。
 しかし、中川さんのバラッドの主人公は、この2人(トミー・スミスとジョン・カーロス)ではありません。拳は突き上げなかったものの、2人と同じ「人権を求めるオリンピック・プロジェクト」のバッヂを胸に付け、2人への連帯を表明したオーストラリアの白人アスリート、メキシコの表彰台上の行為によって、ある意味、トミーとジョンの2人よりもはるかに過酷な後半生を送らざるを得なかったピーター・ノーマンが主人公なのです。
 
 以下に、この長大なバラッドの歌詞を、冒頭から表彰台での3人の振る舞いを語るまで、そして、終幕の部分に限定して書き起こしてみました(7月16日版の演奏に基づいています)。
 書き起こしを省略した部分では、主にピーターの帰国後の悲劇が語られる(歌われる)のですが、この部分は、是非演奏(7月16日版でも10月7日版でも)にじっくりと耳を傾けてください。
 
(書き起こし開始)
『ピーター・ノーマンを知っているかい?』 作詞・作曲:中川五郎
 
ピーター・ノーマンを知ってるかい?
オーストラリアの白人アスリート
 
1968年10月 メキシコシティ・オリンピック
男子200メートル競争で銀メダルをとった
 
彼の話を聴いておくれ
 
金メダルは世界新記録 トミー・スミス
銅メダルは ジョン・カーロス
 
共にアメリカの黒人アスリート
当時彼らの国アメリカでは 人々の声が沸き起こっていた
人種差別撤廃 ベトナム戦争反対
人種差別撤廃 ベトナム戦争反対
 
決勝レースが終わったすぐあとで
トミーとジョンがピーターに尋ねた
 
「君は人権を信じているかい?」
「信じている」と答えたピーターに二人は次の質問
「君は神を信じているかい?」
「強く信じている」と答えたピーターに
二人は表彰式であることをやると伝えた
それは 黒人差別に抗議して
握りしめた拳を 天高く突き上げる ブラックパワー・サリュート
アメリカの国歌が流れ 国旗が掲げられる時にやるんだ」
 
「僕も君たちと一緒に立つ」とピーターは言った
彼の目に恐れはなく ただ愛に満ちていた
 
ピーターは二人が付けていた胸のバッヂに目をやった
それは 人権を求めるオリンピック・プロジェクト のバッヂ
愛と平等を求める大きなシンボル
 
「君たちの信じていることを僕も信じているよ」
そう言ってピーターは トミーとジョンに尋ねた
「そのバッヂ 僕の分もあるかい?
それを付ければ 僕も人権運動を支持していると 証明できる」
 
それはオーストラリアの白人にとっては とても危険なストーリー
 
余分なバッヂは手許にはなく ピーターは他のアメリカ選手から
バッヂを借りて胸に付けた
 
ピーターに言われてトミーとジョンは 1つしかない手袋を分け合った
そして アメリカの黒人の貧困を訴えるため
靴は履かずに 手に持って 表彰台に向かった
黒人のプライドを示す 黒いスカーフを 
トミー・スミスは 巻いていた
リンチで殺された黒人たちに祈りを捧げるロザリオを  
ジョン・カーロスは 身に付けてた
 
そして アメリカの国歌が流れ 星条旗が掲げられる時に
表彰台の上で トミーとジョンの二人は
握りしめた拳を 天高く突き上げた
拳をかかげなかったものの ピーターは
まっすぐ前を 見すえていた
その胸には 人権を求めるオリンピック・プロジェクト のバッヂ
銀メダルより重い 愛と平等のバッヂ
 
アメリカのオリンピック・チームの代表は こう言った
「ブラックパワー・サリュートをしたトミーとジョンの二人は 
生涯にわたって 大きな償いをすることになるだろう」
そのとおり 二人はアメリカのスポーツ界から 永久追放になり
メディアの攻撃や 殺人の脅迫にさらされた
 
自分の国 オーストラリアに帰った
銀メダリストのピーターはどうなった?
 
(7分36秒~18分04秒まで 書き起こし省略)
 
ピーター・ノーマンを知ってるかい?
1968年 メキシコシティ・オリンピックの銀メダリスト
アメリカの 2人の黒人アスリートが
表彰台で ブラックパワー・サリュート をした時
彼も胸に 人権を求めるバッヂを付けて 一緒に表彰台に立っていた
 
「彼は私たちの同士だった」と トミーとジョンが言う
胸にバッヂを付けて 表彰台に立ったピーター・ノーマン
自分の国から ひどい仕打ちを受けても
たった一人で 立ち向かった
信念を曲げることなく 自由と平等のために
たった一人で 闘い続けたアスリート
彼は今も オーストラリアの200メートル競走の チャンピオン!
 
あれから50年の歳月が流れた
今の世界は 自由で平等なのか
あなたの周りで 差別が行われてはいないか
あなたの周りで 人権が脅かされてはいないか
一つの国や民族が 排斥されてはいないか
醜い 醜い ヘイトスピーチが 聞こえてはこないか
 
たった一人 あなたは 立ち向かう
自由と平等 人権のために
でも あなたの周りを 見回してごらん
あなたは 決して 一人ではない
 
あなたの側には ピーター・ノーマン
あなたのピーター・ノーマンがいる
あなたの側には ピーター・ノーマン
あなたのピーター・ノーマンがいる
あなたの側には ピーター・ノーマン
あなたのピーター・ノーマンがいる
あなたの側には ピーター・ノーマン
あなたのピーター・ノーマンがいる
あなたの側には ピーター・ノーマン
たくさんのピーター・ノーマンがいる 
あなたの側には ピーター・ノーマン
あなたのピーター・ノーマンがいる
 
ピーター・ノーマンを知ってるかい?
ピーター・ノーマンを知ってるかい?
ピーター・ノーマンを知ってるかい?
ピーター・ノーマンを知ってるかい?
(書き起こし終わり)
 
 なお、歌詞の書き起こしでは「知ってるかい?」としながら、タイトルを『ピーター・ノーマンを知っているかい?』と表記しているのは、中川五郎さん自身が、ご自分のFacebookで『ピーター・ノーマンを知っているかい?』と書かれているのに従ったものです。
 
 全曲を聴くのに30分近く要しますが、このブログを通じて、1人でも多くの方が『ピーター・ノーマンを知っているかい?』のことを知り、全曲に耳を傾けてくださることを念じて取り上げました。
 中川さんは、「あなたの側には ピーター・ノーマン あなたのピーター・ノーマンがいる」と繰り返し歌います。そして、その意味を考え抜いていけば、それは「あなた自身がピーター・ノーマンなのだ」ということでもあるはずなのです。
 はたして、私はピーター・ノーマンになれるだろうか?
  
 最後に、週刊金曜日の2018年6月15日号に小室等さんが書かれた、このバラッドを紹介するための文章にリンクしておきます。
 
小室 等 『ピーター・ノーマン2』
(抜粋引用開始)
「ピーター・ノーマンを知っているかい?」の二三番最終章はこう締めくくられている。
〈あれから50年の歳月が流れた 今の世界は自由で平等なのか? あなたのまわりで差別が行われたり 人権が奪われたりしていないか? ひとつの国や民族を排斥したり 酷いヘイト・スピーチが聞こえてこないか? たったひとりで立ち向かうあなた 自由と平等、人権のために でもあなたのまわりを見回してごらん あなたは決してひとりではない あなたのそばにはピーター・ノーマン あなたのピーター・ノーマンがいる〉
これが、この歌で五郎ちゃんが言いたかったことだ。等身大の五郎ちゃんが、等身大のあなたに向かって歌い、社会にプロテストする。ガチガチの真面目人間からはほど遠く、酒飲みで、スケベで、どこにでもいそうな、偉大な中川五郎中川五郎は、日本で今一番のバラッドシンガーだ。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/中川五郎さん関連)
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