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緊急座談会「自衛隊と憲法」(みやぎ弁護士9条の会@2018年6月23日)~「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ・番外編

 2018年10月24日配信(予定)のメルマガ金原No.3310を転載します。
 
緊急座談会「自衛隊憲法」(みやぎ弁護士9条の会@2018年6月23日)~「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ・番外編
 
 巻末リストをご覧いただければ分かると思いますが、自衛隊を活かす会(21世紀の憲法と防衛を考える会/代表:柳澤協二氏)が、2014年6月7日に最初のシンポジウム「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」(発足記者会見を兼ねて)を開催して以来、私もこのブログで頑張ってフォローし続けてきました。
 3人の呼びかけ人(柳澤協二さん、伊勢﨑賢治さん、加藤朗さん)や事務局長(松竹伸幸さん)の見解に何から何まで賛同ということではもちろんありませんし、理解が行き届かない点も少なくありませんが、それでも公開された動画や書き起こしの記録には、1人でも多くの人が目を通す価値があると信じています。自分では考えたこともない、けれども聴いてみれば大事な論点についての新鮮な視点が提供してもらえるというのがその大きな理由でしょうか。
 
 その自衛隊を活かす会の柳澤協二代表、松竹伸幸事務局長、柳澤理事長の下で国際地政学研究所の理事(事務局長)を務めておられる元航空自衛隊幹部候補生学校長・元空将補の林吉永(はやし・よしなが)さんの3人を招いた緊急座談会「自衛隊憲法」が、沖縄慰霊の日(2018年)6月23日、宮城県仙台市宮城野区文化センターで開かれました。
 主催は「みやぎ弁護士9条の会」であり、詳しいことは知りませんが、憲法9条の明文改憲に反対する宮城県内の弁護士有志が作った任意団体ではないかと思います(私が以前事務局長をしていた「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」と似たようなものでしょう)。
 ただ、和歌山だけではなく、全国の弁護士9条の会の活動と比べても瞠目すべきことに、この緊急座談会の前の今年3月に柳澤協二さんを招いた講演会、さらに5月には田岡俊次さん(軍事ジャーナリスト)の講演会を開いた上で、この6月23日のに緊急座談会「自衛隊憲法」を開催したということでした。この一連の企画によって「自衛隊憲法」をまるごと学び直す機会を、自分たちだけではなく、一般市民に提供しようという同会の企画力と実行力に、心から敬意を表したいと思います。
 
 この日の模様は、2本の動画と全編書き起こしによって自衛隊を活かす会ホームページ上で公開されています。
 何しろ、午後2時から5時までという長丁場の企画であり、書き起こしを通読するだけでも結構な時間がかかりますが、それだけの時間をかけてでも、是非読んでいただきたいと思います(動画も視聴できれば良いのですが、私もまだそこまでは手が回っていません)。
 
 以下には、動画(2本)と書き起こしにリンクした上で、第1部における林吉永さんによる非常に示唆に富むプレゼンの一部と第2部のまとめにおける柳澤協二さんの発言を引用しておきます。
 柳澤さんのような元防衛官僚が「稀」であるように、吉永さんのような元幹部自衛官も「稀」なのかもしれません。けれども、その発言の奥には、声こそ出さないけれども、柳澤さんや林さんに声援を送る現役・退役の防衛官僚や自衛官が少なからずいることを信じたいと思います。
 
 なお、自衛隊を活かす会ホームページに掲載された「座談会のテーマ」を、第1部と第2部に振り分けて掲載しておきましたが、これはどうやら当初予定されていたテーマであったようで、実際には、時間の都合等でほとんど触れられなかった論点もあることをお断りしておきます。
 
緊急座談会「自衛隊憲法」第1部(1時間33分)
1 はじめに
2 現在の憲法9条改憲論について
 ① 現在の憲法9条改憲論についてどう考えるか
 ② 改憲の必要性?
自衛隊という存在
 ① 自衛隊ってどんな組織?
 ② 自衛隊と世論・自衛隊員の思い
 
緊急座談会「自衛隊憲法」第2部(1時間19分)
 ① 憲法9条自衛隊を取り巻く状況
  ア)自衛隊の果たす役割
  イ)自衛隊の装備
5 東アジア情勢と自衛隊
 ① 中国
 ② 北朝鮮
 ③ テロ対策
憲法9条を活かす道
 
【書き起こし】
緊急座談会「自衛隊憲法
2018.6.23(土)14:00〜17:00 宮城野区文化センター(シアターホール)
主催/みやぎ弁護士9条の会
憲法9条に「自衛隊」を書き込むことが議論されているのに、その当事者の話を聞かず判断できるのでしょうか!?~
 
[第1部での林吉永さんのプレゼンから]
(引用開始)
 私は、自衛隊の存在について、これぞと言える公の言葉として、1950年1月23日、第7回国会本会議の施政方針演説で、吉田茂首相が発した言葉を重視しております。
 それは、「戦争放棄に徹することは、決して自衛権の放棄を意味するものではありません。わが国の安定的な安全保障は、国民が自ら平和と秩序を尊び、重んじ、価値観を共有する他の諸国とともに国際正義にくみする精神、態度を内外に明瞭にするところに根ざしております。そして、国民が世界平和のための貢献を惜しまない姿勢を内外に示すことによって必ずや報われる平和主義の基本理念であります。」「もし日本に軍備が無ければ、自衛権があっても自衛権を行使する有効な手段が無い事態を招く危惧が生じます。そこで、脅威が及ばないように、我が国が専守防衛に徹し自衛権行使に必要な自衛手段を保有することは国内外の認めるところであります」と、自衛隊に最低限度の防衛力を装備し、日本国の防衛義務を付与する根拠が示されたことです。
 自衛官にとって、吉田首相の言葉は極めて重要だと思います。総理大臣は自衛隊の最高指揮官ですから、上司(指揮官)の命令に服従しなければならない自衛官は、上司の意図、上司の命令を具体的にどのように自分の持ち場で実行するか問われます。従って、部下は上司の意図を汲み取ろうと努めます。その意味において、吉田首相は、極めて明快に、憲法に斯く斯く然々、自分たちの平和国家を作るという意志を示しました。最高指揮官から、「自衛官である諸君は、このように働きなさい」、と明確に示されたわけでございます。
 このように指揮官が意図を示しますと、自衛官は、指揮官の意図、任務を果たす精神——ミッションと言いますが——を共有して、指揮官に対する信頼を高揚させて、任務を遂行することができます。
(略)
 さて、今日のお話しの核心は、元自衛官の立場から、憲法9条をどう評価してきたかということです。まず、最初に申し上げなければならないことは、「憲法9条は、自衛隊を行動させる、特に、近年のように、海外において行動させるという点で、現憲法9条があるから、それが基になって慎重に、いいのか悪いのかという議論が行われた」ということです。政治家の頭の良し悪しは別にして、議論することが大事だし、その議論が国民の耳に、目に触れることは重要なことです。これから「自衛隊に何をさせようとしているのか」、政府——内閣——は、その内容についてどのように方向づけて、決心をするのかを可視化しているということでは、憲法9条の役割は極めて大きいと考えます。
(略)
 さらに、2014年7月には、閣議決定によって、「集団的自衛権行使の容認」という日本の防衛・安全保障政策の大転換が行われました。この集団的自衛権を行使するということは、他の国と一緒に戦うということです。 アメリカは、孤立主義を捨てて、NATOに加盟し、集団的自衛権行使を容認する時に、国民を交え意見を公聴すること2年間をかけて議論を尽くしました。バンデンバーグ上院議員が主宰した委員会の決議と言うことで、「バンデンバーグ決議」と言います。最終的には、国民の67パーセントが賛成して、他国のために戦争してアメリカ人の血を流すことを決心したという第二次大戦後のアメリカにおける実に重大な軍事上の「孤立主義」からの政策転換でした。2年間かけて、国民的覚悟を促しています。それが今日のアメリカの軍事力運用の基本的な理念になってきたわけです。
 しかも「バンデンバーグ決議」は、アメリカが「集団安全保障」上、同盟国に求める要件となりました。即ち、同盟国とのギブアンドテイクは、片務的ではないということで、1951年9月、日米安保条約締結時は、その片務的内容に対してアメリカ国民のブーイングが高まり,トルーマン大統領が国民への説明に苦慮しています。
 ところが日本では、集団的自衛権行使を容認する、即ち、「他国の安全保障に日本人が血を流して貢献する」重大事を閣議決定されてしまいました。私は異常事態だと思っています。このことも憲法9条自衛隊という文脈での議論は低調でした。それは、自衛隊の存在が憲法9条に違反していないからです。
 本件については、議論を尽くさず決定に至りました。当然、内閣は「自衛隊集団的自衛権を行使すること」について憲法9条違反だなどと、誰一人疑っていません。ところが、決定の主役であった安倍首相は、自民党の党大会において「自衛隊憲法9条違反を解消するために『加憲』が必要だ」と、天に向かって唾を吐きました。安倍首相は、「現憲法9条自衛隊の存在を憲法違反としているから憲法を改正するまで持っていきたい」と明言したわけです。支離滅裂も、ここまでに至ると精神分裂も伴ったかと疑いたくなります。党内で「おかしい」と発言する党員がゼロであったことについては論外でした。
 注目すべきところは、武器を使用する時の正当性が集団的自衛権行使の容認で法的に拡大していったことです。その次の年、2015年4月に決定されました関連法制では、「合理的判断に基づいて自衛隊の武器使用が許される」と、7カ所にわたって記述されている法律が制定されました。ところが、軍事という文脈、軍人の立場における「合理性」は、「殺戮と破壊を是とする」性格があって、一般に言われる「合理性」は、軍事上のそれと真逆で、「人の営みにおいて理に適った道理」を言います。
 従いまして、安倍首相の言うように、「憲法9条自衛隊の存在を違反としているから憲法を改正しなければならない」のであれば、集団的自衛権行使もそのための法改正も、明らかに憲法違反であって、安倍首相の下で行われてきた全ての防衛・安全保障行政を問い直さなければなりません。既に「憲法9条の理念」は、まず、日本の個別的自衛権を妥当とし、「国民が世界平和のための貢献を惜しまない姿勢を内外に示すこと」によって国連の平和維持活動に参加するのであって、吉田首相の国会における施政方針演説のとおり、今日まで続いていると認識できます
(略)
 さて、この加憲のメリット、自衛隊を明記するメリットはどこにあるかと考えてみました。メリットは、良し悪しは抜きにして、安倍首相の代に憲法を変えたという歴史が残りますが、それだけのことです。加憲は、さらに「自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣である」と書き込む案があるとされています。防衛大学校の卒業式では、安倍首相は訓示において「君たちの最高指揮官は私だ」ということを7回言われたそうです。これは、「自衛隊の最高指揮官」へのこだわりとも言えます。憲法9条への書き込みは、総理大臣が自衛隊を自由に動かせるようにダメ押しすることになります。国家において政府与党が絶対多数を占めている限り、与党案件は可決されていきます。この現象は、民主主義の落とし穴である「指導者原理」と同じです。「指導者原理」は、ヒトラーが民主的に選挙に勝って、首相に就任して打ち出した「多数決で決する」民主主義に則(のっと)った「独裁原理」です。指導者が独自に、こうと決定したことも、事後、国の議会で承認されれば、それは民主主義の手続きを経たことになります。国家の防衛・安全保障に関わる緊急事態に際して、「自衛隊の行動に関わる決定」が閣議によって首相が決定しても、「国会の事後承認を得ればいい」ということになるわけです。このように慮(おもんぱか)ると、「憲法9条への『自衛隊』、『総理大臣が最高指揮官』の加憲」は、悩ましい危惧を思い起こさせます。
 改めて憲法9条の価値を考えてみます。私は、「憲法9条」は、日本が防衛・安全保障という文脈において武器を使用する場合、即ち、今日のように海外において国際貢献を担う任務を付与された自衛官が武器の使用を迫られた場合に、その正当性を担保するもの、その正当性を計るリトマス試験紙であるという考えを持っております。先に申し上げましたように、過去、柳澤は、防衛庁(当時)勤務時、あるいは内閣官房副長官補時代、「自衛隊の海外派遣」に関わる政策決定に関与してきました。「憲法9条」を前提に合法性、正当性を確認しつつ自衛隊の海外派遣を可能にしてきました。「憲法9条」は、「正当性」のチェックを果たしてきたと言い換えることができます。従って、現在の憲法9条が無くなる、あるいは変更される内容如何では、チェックが効かなくなることになるわけでもあります。
 私たちは、「憲法9条」について、自衛隊が行う武力行使のチェック機能を果たしてきたという価値観を持たなければいけません。ですから、国会で、中身はともかくとして、時間をかけて議論をすることは極めて重要であり、議論できるのは、現在の「憲法9条があるからだ」と言うこともできます。
(略)
 憲法9条の位置付けについてさらに付言いたします。「刀の紙縒(こより)」を御存知でしょうか。これは、薩摩武士が「武士のたしなみとして」使っていたと言われています。喧嘩っ早いと言われた薩摩武士は、感情に任せて直ぐに刀が抜けないように、紙縒を作って、刀の柄に結びつけていました。徒(いたずら)に刀を抜いて、殺傷しない——喧嘩をしない——ということです。浅野内匠頭はこれでお家を潰す失敗をしております。ですから、当時の薩摩武士にとってこの「刀の紙縒の緒を切る」ということは、命がけの一大事、大変なことでした。私は、「憲法9条」を、その位置付けとして考えたいと、このように思っております。
 柳澤が今まで内閣官房副長官補としてやってきた危機管理の正面で、自衛隊を動かす仕事というのは知恵を働かして、憲法9条に遵じて、あるいは下位の法律を作ることによって、70年間、戦死者を出さない自衛隊の運用を、別けても海外派遣を行ってきたわけですから、この政策については、「柳澤も刀の紙縒であった」と考えが及ぶわけです。
(略)
 さらに、国民が自衛隊を容認している割合が90パーセント、リスペクトしている割合が80パーセントという数値は、むしろ危険な意味を持っている一面があります。「国民の多くが泣いている時に、自衛隊がヒーローになる」わけで、国民は救助の手を差し伸べられて感謝し、その献身的な姿勢にリスペクトが寄せられているわけです。自衛隊の活躍が評価されることは、国民が困難に遭って自衛隊に助けを求めている時であって、国、国民という文脈では望ましい状態ではありません。従って、通常時においては、「自衛隊の30パーセントが自衛隊シンパであり、30パーセントはニュートラルであって、30パーセントは、表に出てくることがなく、役立っているかどうか分からない自衛隊に金を使うのは無駄使いではないかと思い、残る10パーセントが自衛隊は無い方がいいとする」このようなバランスが国の中にあって、国際社会を見回しても日本が一番安定して平和であるというのが理想的であると常々考えております。
(略)
 結局、自衛隊は、本質的に国際スタンダードと乖離しながらも、並の普通のどこの国も持っている軍隊になりつつあります。私は、そうではなくて、「軍事力の役割を、戦争を抑止する最大最強の機能となるように軍の性格を変えていく」ことに関心を寄せたいのです。日本の防衛・安全保障政策が世界を変えていくという考えに基づけば、日本独自の発想で、自衛隊の維持、あるいは、憲法9条を維持していくこと―-戦後70年の日本の生き様への回帰——について理解が寄せられるのではないかと思っております。
 最後に、憲法の99条では、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と謳われています。本日お話させて頂いたことには、この義務に命がけで臨んでいる自衛官に、精神的支柱をどう与えるかということについて、シビリアン・コントロールが足を引っ張っているのではないかと、自衛隊OBとして心を痛めている気持ちを籠(こ)めていますこと、ご斟酌(しんしゃく)頂ければ幸いです。以上をもちまして、私のプレゼンテーションを終わります。
(引用終わり)
 
[第2部での柳澤協二さんのまとめの発言]
(引用開始)
 憲法を活かすというのはね、9条を活かすというのは、つまり、憲法9条を変えずにいた方が、日本は、より安全になるんだ——より平和が保たれるんだ——というその道筋を示さなければいけないということなんですね。
 そこで、今回の北朝鮮の例を見てもね、国と国が対立をするから、戦争になるかもしれない——ただ、力が必要になる——抑止力に頼らなければいけない——ということになる。そして、戦争が現に起きていなければ、ああ、平和が良かったなということになるのか。
 しかし、抑止力を持つためには、ずぅ~っとその軍拡をし続けなければいけない。何か相手が勘違いした場合に、戦争になるかもしれないというリスクの上にずぅっといるわけですね。それは、国民がそういう平和を望むのであればね、それは、軍拡やればいいんです。軍拡しかない、答がね。
 しかし、そうじゃなくて、国同士の戦争のもとになるような対立をなくしていくということができれば、軍隊なんかなくたって、極論すればね、対立がなければ、戦争にならないでしょうっていう意味で、本当に戦争の心配をしなくていい状態ができるでしょう。それが、憲法9条が目指した平和であり、それは、国民1人1人として、どういう平和を自分は欲しいんだということを考えていく。それがその憲法と国を守ることと、国の安全というものを両立させる1つの哲学です。それは、国民が、やはり責任を持って選択しなければいけない。
 では、軍事的に力を持って解決しなければ、どうするか。それは、どこかで妥協しなければいけないですね。だけど、それは無駄に命を落とすよりも、ここで、少しぐらいの損をしたっていいじゃないかというそういう割り切りが必要になってくるわけです。そのことが通じる雰囲気を——社会を——作っていかなければいけないということ。
 だから、これは結構大変なことなのですね。だから、私は、一つの提案としてね、自衛隊に対してはどうか。要は、力によって争い事を解決しない。しかし、何にもしないで、ぼうっとしていたらね、出来心が起きて一発殴られちゃうかもしれないということを考えると、専守防衛自衛隊は、やはり、私は維持して、そして、災害派遣やなんかでも頑張ってもらう。それは、それで国民にとってもいいことなんじゃないか。
 しかし、その自衛隊を使って、中国を牽制するとかね、北朝鮮の敵基地を攻撃できるようにするとか。そういうことをやっちゃうと、かえって、相手を刺激して、余計危険になるんだよという所を認識していく。そうすると、その専守防衛という抑制の効いた、さっきの林さんの言葉で言えば、その刀の紙縒、それにつながる抑制の原点として憲法9条なのです。だから、力が強くなって平和になる。力が強いから、平和になると考える人にとっては、憲法9条は最悪でしかないんですね。
 そうじゃなくて、根っこにある対立関係を話し合いで解決しましょう。そのためには、多少のことは我慢しましょうという人にとって、初めて憲法9条が国を守るための力として使われるということになるんだろうと思います。
 時間がきちゃったけど、もう一言だけ、言わせていただくと、余計なことかもしれないけど、私は、最近抵抗を感じるのは、あの官邸の前でね、「憲法守れ!安倍やめろ!」と言っているお年寄りの人たちが結構頑張っておられるんですが、あれは本当にメッセージになるんだろうかということを考えるんですね、我々の目的は憲法9条を守ることが目的なんでしょうか。そうじゃない。それは手段なんですね。何のための手段なのか。それは余計な戦争を絶対してはいけない。あの戦争によってあらゆる物事を解決しようとしてはいけないということを実現することのための手段として、憲法9条がある。
 だから、守るべきは、すごく理屈で言えばね、憲法9条そのものではなくて、憲法9条によってこうありたいと我々が考えていた国の姿を守ることが目的なんですよということ。そこまで上げてくれば、あるいは、引いて考えて議論をしていこうとすれば、その「憲法を守れ!安倍やめろ!」というメッセージよりもはるかにね、その違う意見の人との話し合いのベースができていくのではないかというふうに私は思っているんですね。
 そんな所を、是非あの護憲派の人たちにも、それはすごく危機感をお持ちなのはよく分ります。しかし、危機感があるが故にね、一歩引いて、もっと根本的な所から取り組みをし直すということが是非必要なんじゃないかというふうに私は感じております。今日はありがとうございました。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「自衛隊を活かす会」シンポジウム関連)
2014年7月4日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」
2014年7月30日
補遺「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~伊勢﨑賢治氏
2014年8月25日
補遺その2「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(1)「自衛隊の可能性・国際貢献の現場から」~会場からの発言と質疑応答
2014年9月22日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(2)「対テロ戦争における日本の役割と自衛隊
2014年11月4日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(3)「防衛のプロが語る15事例のリアリティ」 ※追加映
像あり
2015年1月13日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(4)「新たな米中関係と日本の安全保障」~今回はまず予告編
2015年1月14日
小原凡司氏が語る中国海軍・空軍の現在~「自衛隊を活かす会」シンポ④補遺その1
2015年1月15日
植木千可子氏が語る東アジアにおける日米中関係~「自衛隊を活かす会」シンポ④補遺その2
2015年3月8日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(4)「新たな米中関係と日本の安全保障」~いよいよ本編(その1)
2015年3月11日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(4)「新たな米中関係と日本の安全保障」~これが最終(動画付)
2015年4月3日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ(5)「現代によみがえる「専守防衛」はあるか」(動画付)
2015年6月21日
自衛隊を活かす会」三題~6/20関西企画、6/19柳澤協二氏講演(神戸)、5/18提言発表記念シンポ
2015年9月8日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「新安保法制にはまだまだ議論すべき点が残っている」
2016年1月1日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「南シナ海―警戒監視のための自衛隊派遣をどう見るか」①動画編(付・札幌企画(1/30)のご案内)
2016年2月14日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「南シナ海―警戒監視のための自衛隊派遣をどう見るか」②テキスト編(付・札幌シンポ(1/30)の動画紹介)
2016年3月3日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「南スーダン─。駆けつけ警護で自衛隊はどう変わるのか」(1/30@札幌)
2016年5月23日
自衛隊を活かす会」協力シンポから学ぶ「憲法9条のもとで自衛隊の在り方を考える」(2/28仙台)
2016年5月24日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「「戦場における自衛官の法的地位」を考える」(2016/4/22)
2016年9月16日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「北朝鮮は脅威なのか、どう対応すべきか」(2016/5/20)
2016年12月30日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「自衛隊尖閣を守れるか」(2016/12/24)①動画編
2017年11月19日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」(2017/9/30)
2018年4月8日
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「北朝鮮の核・ミサイル問題にどう臨むか」(2017/12/25)
2018年4月24日
自衛隊を活かす会」連続講座・抑止力はこれでいいのか①「抑止力の理論と現実─ゲーム理論とデータ分析で読み解く」(栗崎周平早稲田大学准教授)から学ぶ