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沖縄県知事が「執行停止に関する意見書」(2018年10月24日)を国土交通大臣に提出

 2018年10月25日配信(予定)のメルマガ金原No.3311を転載します。
 
沖縄県知事が「執行停止に関する意見書」(2018年10月24日)を国土交通大臣に提出
 
 8月31日に沖縄県辺野古沖公有水面埋立承認の取消(撤回)を行ったのに対し、沖縄防衛局が10月17日、国土交通大臣に対し、行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止の申立てを行った件については、去る10月20日のブログ(辺野古沖公有水面埋立承認取消(撤回)処分に対する沖縄防衛局による審査請求と執行停止申立てを考えるための資料のご紹介)で、基本的な資料をご紹介しましたが、今日はその続編をお送りします。
 
 主には、昨日(10月24日)付で沖縄県知事国土交通大臣に送付し、本日同県ホームページ上で公開された「執行停止に関する意見書」のご紹介です。
 以下に、本文のみ引用しますが、主張の詳細は3本の別紙で論じられており、意見書本文は主張の骨子のみ記載されています。
 
 また、この沖縄県による意見(反論)を読む前提として、知っておいた方が有益と思われる琉球新報(電子版)の報道記事を3点、ご紹介しておきます。
 
琉球新報 2018年10月18日 12:09
国交省沖縄県に意見書提出を要求 米軍普天間飛行場辺野古移設に伴う新基地建設
(抜粋引用開始)
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、沖縄防衛局が県の埋め立て承認撤回の取り消しと執行停止を国土交通相に申し立てた件で、国交省の担当者らが18日午前、県庁を訪れ、執行停止に対する意見書を25日までに提出するよう県に求めた。防衛局から提出された申し立てに関する資料一式を提出した。
 国交省水政課の川田健太郎法務調査官は取材に「執行停止に関して県の意見を聴取するということで国交相から依頼した」と述べた。資料を受け取った永山正海岸防災課長は「今後、辺野古新基地建設問題対策課などと調整し、対応を検討する」と話した。
(引用終わり)
 
琉球新報 2018年10月23日 14:39
沖縄県の埋め立て承認撤回への国の対抗措置 内容判明 「公と私」使い分け 損害回避の緊急性強調
(抜粋引用開始)
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、沖縄県公有水面埋立法(公水法)に基づき埋め立て承認を撤回したことへの対抗措置として、沖縄防衛局が行政不服審査法(行審法)に基づいて国交相に提出した審査請求書と執行停止申立書の全容が判明した。防衛局は“私人”と同様の立場を強調し、行審法の適用除外にならないと主張。一方、文書の中で「事業が頓挫すれば日米同盟に悪影響を及ぼす」「我が国の安全保障と沖縄の負担軽減に向けた取り組みを著しく阻害する」などと訴え、国の立場を主張する“矛盾”も目立つ。文書を検証した。
 石井啓一国土交通相に提出された埋め立て承認撤回に対する執行停止申立書で、沖縄防衛局は、行政不服審査法25条4項の「重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき」に該当すると主張し、執行停止を求めている。
 該当する根拠として防衛局は、工事中断により警備費や維持管理費などで1日当たり2000万円の不要な支出を迫られる上、普天間飛行場の返還が遅れることで周辺住民への危険性除去など生活環境の改善という「金銭に換算し難い損失を伴う」ことなどを列挙した。また「米国からの信頼を危うくし、わが国の安全保障体制にも影響する」とも強調している。
 一方、3年前に翁長雄志前知事が承認を取り消した際、政府が執行停止を申し立てたのはその翌日で、今回の対応と大きな違いがある。玉城デニー知事は「県が8月31日に行った承認取り消しから既に1カ月半以上が経過しており、緊急の必要があるとは到底認められない」と反論する。
(略)
<行審法使用の根拠>私人の立場で請求
 県による埋め立て承認撤回について、沖縄防衛局は一般私人と同様に権利利益が奪われたとして、行政不服審査法に基づいて国土交通相に撤回取り消しを求めることができると審査請求の理由を説明している。国民の権利救済を目的とする行審法は「固有の資格」の立場として国の機関への処分に対する審査請求は適用しないと規定しているが、防衛局は「国民」と同じ立場で行審法の適用を受ける以上、その他の立場には該当しないという主張だ。
 請求理由で防衛局は行審法は申し立てに行政機関が請求人になることを排除せず定めているとして、審査請求する正当性を述べている。
 しかし「固有の資格」に関する条項は明らかに行政機関に対する適用除外の規定だ。今回が「排除せず」に該当するのであれば、「固有の資格」に当たらないという積極的な打ち消しが求められるが、法律や行政法の専門家らは「約2ページにわたって『固有の資格』に関する解釈を示しているが、なぜ今回の請求が『固有の資格』に該当しないことになるのか、説明になっていない」と問題点を挙げる。
 審査請求や執行停止申し立ての可否を判断する国交相が「固有の資格」の規定をどのように解釈するのか注目される。
(略)
<行審法改正>国適用除外、明文化
 国民の権利利益を守ることを目的とする行政不服審査法は2014年の改正で、国の機関に対する処分のうち「固有の資格」で処分の相手方となったものは適用除外にすることが明文化され、同条項は16年4月に施行された。
 「固有の資格」は国民が受ける可能性がない処分のことで、国民が審査請求することはない。そのため対象外となる。
 今回の沖縄防衛局による辺野古埋め立て事業は国による新基地建設計画に伴い進められている。知事が埋め立てを認めることも、承認を取り消すことも国民が受ける可能性のない処分だ。
 そのため防衛局が15年に行審法を利用して知事の埋め立て承認取り消しに執行停止を申し立て、国交相が認めたことには専門家から大きな批判を受けた。16年の改正法施行を受け、国交相がどのように判断するか焦点となる。
(引用終わり)
 
琉球新報 2018年10月24日 12:30
沖縄県国交相に意見書送付 辺野古埋め立て承認撤回の執行停止は「認められない」
(引用開始)
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、県の埋め立て承認撤回に対して沖縄防衛局が行政不服審査制度で取り消し請求と撤回効力の停止を申し立てている件で、県は24日午前、執行停止は認められないとする意見書を国土交通相宛で送付した。
 手続きの一環として国交省から25日までの提出を求められていた。行政不服審査法に基づく審査請求は国民の権利救済が目的で国が利用できないことや撤回処分の正当性、執行停止を認める緊急性がないことなどを訴える。
(引用終わり)
 
 沖縄県知事による「執行停止に関する意見書」の別紙1~3を通読しようとすると、本文だけで全部で254頁にもなり、プリントアウトするのもためらわれます。
 おそらく、短期間のうちに弁護団が練り上げた反論であろうと思いますので、何とか心して読みたいと思い、とりあえず別紙1「申立適格を欠いた不適法な執行停止申立てであることについて」25頁だけは読み通しました。
 全文引用はしませんが、別紙1については目次を引用しておきますので、是非リンク先の沖縄県ホームページで全文をお読みいただければと思います。
 
(引用開始)
                             執行停止に関する意見書
 
                               平成30年10月24日
 
 平成30年10月17日付けをもって沖縄防衛局局長中嶋浩一郎のした行政不服審査法25 条3項及び4項の規定によるとしてなされた執行停止の申立てについて、意見を述べる。
 
 審査庁 国土交通大臣 石 井 啓 一 殿
 
                     処分庁 沖縄県知事   玉 城 康 裕
                     処分庁代理人 弁護士  加 藤   裕
                            同 弁護士   仲 西 孝 浩
                            同 弁護士   松 永 和 宏
                            同 弁護士   宮 國 英 男
 
※注:当事者目録の転記は省略します。
 
第1 意見の趣旨
    本件執行停止申立てを却下する。
   との決定を求める。
 
第2 意見の理由
1 執行停止申立ての適格を欠き不適法であること
 本意見書別紙1「申立適格を欠いた不適法な執行停止申立てであること」において述べるとおり、行政不服審査制度は、私人の個別的な権利利益の簡易迅速な救済を制度趣旨とするものであって、この制度趣旨より、本来国には審査請求・執行停止申立の適格が認められないものと言うべきであり、例外的に、一般私人と同様の立場で個別の権利義務が侵
害された場合、すなわち「固有の資格」に基づかない場合にのみ、行政不服審査法(以下「行審法」という。)による審査請求及び執行停止申立て(以下「審査請求等」という。)の適格が認められるものである(行審法7条2項)。
 審査請求等をした沖縄防衛局長(以下「申立人」という。)は国の機関であり、国の機関のみが制度の対象となる公有水面埋立承認出願をしたものであって、「一般私人と同様の立場」ではなく「固有の資格」において承認処分ないし承認取消処分の名宛人となっているものであるから、行政不服審査法(以下「行審法」という。)による審査請求等の適格は認められないものであり、審査請求等は不適法である。
 従って、行審法25条3項及び4項の要件を検討するまでもなく、本執行停止申立ては不適法却下されなければならない。
2 行審法25条3項及び4項の要件も認められないこと
 1で述べたとおり、本件執行停止申立ては申立適格を欠いた不適法なものであり、審査庁国土交通大臣は実体判断をなしえず、行審法25条3項及び4項所定の執行停止の要件充足について判断をする権限を有しないものであるが、念のため、行審法25条3項及び4項所定の執行停止の要件を充足していないことについて意見を述べる。
(1) 「重大な損害を避けるために緊急の必要性があると認めるとき」に該当しないことなど本意見書別紙2「「重大な損害を避けるために緊急の必要性があると認めるとき」等の執行停止の要件が認められないこと」において述べるとおり、本件執行停止申立ては、執行停止によって救済が認められない一般公益を理由としていること、処分の一時的な停止によって救済される性質の損害ではないこと、それらの損害の疎明もなされていないこと、さらには工事の一時的遅延そのものが「重大な損害」とはいえないことのいずれの点においても、行審法25条4項所定の「重大な損害を避けるために緊急の必要」性の要件を充足していない。
 また、執行停止によって公有水面埋立てが強行されるならば、公益上の不利益は、再生不可能な不可逆的側面を有するという点において甚大であるのに対し、これを取り消す不利益は、上記の範囲にとどまるものであって、両者を比較すれば、本件承認を取り消すことなく放置することは、公共の福祉の要請に照らして著しく不当であり、執行停止をすることは「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」(行審法 25 条4項ただし書)に該当する。
(2) 「本案について理由がないとみえるとき」に該当すること本意見書別紙3「本件承認取消処分が適法であること」において述べるとおり、平成30年8月31日付け沖縄県達土第126号及び沖縄県達農第646号をもってした公有水面埋立ての承認の取消し(以下「本
件承認取消処分」という。)は適法になされたものであるから、本件承認取消処分を取り消す裁決を求める本件審査請求には理由がないものであり、「本案について理由がないとみえるとき」(行審法25条4項ただし書)に該当する。
(3) 「必要があると認めるとき」に該当しないこと
 執行停止によって避けられるべき「重大な損害」は認められないのであるから、そうであれば、凡そ「必要があると認めるとき」にあたると言うこともできないのであり、行審法25条3項による執行停止の要件充足も認められないものである。
3 結論
 以上述べたとおり、国の機関である申立人が固有の資格において承認処分ないし承認取消処分の名宛人となっているものであるから、執行停止の申立適格は認められず、本執行停止申立ては不適法として却下を免れ得ない。
 なお、行審法25条3項及び4項所定の要件も認められない。
                                                                          以上
 
別紙1 申立適格を欠いた不適法な執行停止申立てであることについて(目次1頁、本文25頁)
第1 「固有の資格」で受けた処分について審査請求等をなしえないこと
行政不服審査法は私人の救済を目的とする手続であること
地方自治保障の点からも国の審査請求等の適格は問題があること
3 国の審査請求等には客観性・公正性からの問題があること
4 小括
第2 「固有の資格」の意義と判断基準についての一般的な理解について
1 行政手続法と同様の理解がされていること
2 「固有の資格」の判断基準
3 本件について
第3 公水法は「承認」処分の名宛人を国に限定していることについて
1 国以外の者は「承認」処分の対象とならないこと
2 「承認」と「免許」は制度が異なり単なる用語変換ではないこと
3 小括
第4 本件埋立事業は国の機関のみが担い手となる性格のものであること
1 条約に基づく国家間の基地提供のための事業であること
2 本件埋立事業についての閣議決定
3 日米合同委合意・閣議決定防衛大臣告示等は私人がなしえないこと
4 小括
第5 結論.
 
別紙2 「重大な損害を避けるために緊急の必要性があると認めるとき」等の執行停止の要件が認められないこと(目次1頁、本文36頁)
 
別紙3 本件承認取消処分が適法であること(目次4頁、本文193頁)
(引用終わり)