2018年10月27日配信(予定)のメルマガ金原No.3313を転載します。
※公有水面埋立承認取消通知書
※8月31日記者会見における謝花副知事コメント
この埋立承認取消(撤回)の方針は、8月8日に急逝した翁長雄志前知事が、7月27日に公表した方針を引き継いだものでした。
※7月27日記者会見における翁長知事コメント
ここまでの経緯については、私のブログでも、以下のとおり継続して取り上げてきました。
2018年7月27日
翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋立承認の撤回に向けた意向を表明しました(2018年7月27日)
2018年9月1日
※8月31日に行われた富川、謝花両副知事による記者会見の動画などをご紹介しています。
2018年10月20日
辺野古沖公有水面埋立承認取消(撤回)処分に対する沖縄防衛局による審査請求と執行停止申立てを考えるための資料のご紹介
2018年10月25日
表題に「再度の」と表記されているのは、辺野古埋立承認問題で政府(の機関である沖縄防衛局)が行政不服審査制度を利用(濫用)するのが2度目ということですが、「濫用を憂う」行政法研究者有志による声明を発表するのも2度目のことです。
前回は、翁長雄志沖縄県知事が、2015年10月13日、仲井眞弘多前知事が行った辺野古沿岸部への公有水面埋立承認を取り消したのに対し(仲井眞知事による承認が瑕疵あるものであったことを理由とする取消でした)、沖縄防衛局が、翌10月14日、行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対して審査請求するとともに、執行停止の申立てをしたのでした。
そして「再度の」「憂う」声明の公表です。全文引用します。是非多くの方への周知にご協力ください。
(引用開始)
声明
辺野古埋立承認問題における日本政府による
再度の行政不服審査制度の濫用を憂う
2018年10月26日
行政法研究者有志一同
沖縄県は、2018年8月31日、仲井眞弘多元知事が行った辺野古沿岸部への米軍新基地建設のための公有水面埋立承認を撤回した(以下「撤回処分」という)。これに対し、10 月17日、防衛省沖縄防衛局は、行政不服審査法に基づき、国土交通大臣に対し、撤回処分についての審査請求と執行停止申立てを行った。これを受けて、近日中に、国土交通大臣は撤回処分の執行停止決定を行うものと予想されている。
国(防衛省沖縄防衛局と国土交通大臣)は、2015年10月にも、同様の審査請求・執行停止申立てと決定を行い、その際、私たちは、これに強く抗議する声明を発表した。そして、福岡高等裁判所那覇支部での審理で裁判長より疑念の指摘もあった、この審査請求と執行停止申立ては、2016年3月の同裁判所での和解に基づいて取り下げられたところである。
今回の審査請求と執行停止申立ては、米軍新基地建設を目的とした埋立承認が撤回されたことを不服として、防衛省沖縄防衛局が行ったものである点、きわめて特異な行政上の不服申立てである。なぜなら、行政不服審査法は、「国民の権利利益の救済」を目的としているところ(行審1条1項)、「国民」、すなわち一般私人とは異なる立場に立つことになる「固有の資格」において、行政主体あるいは行政機関が行政処分の相手方となる処分については明示的に適用除外としている(行審7条2項)にもかかわらず、防衛省沖縄防衛局が審査請求と執行停止申立てを行っているからである。
そもそも公有水面埋立法における国に対する公有水面の埋立承認制度は、一般私人に対する埋立免許制度とは異なり、国の法令遵守を信頼あるいは期待して、国に特別な法的地位を認めるものであり、換言すれば、国の「固有の資格」を前提とする制度である。国が、公有水面埋立法によって与えられた特別な法的地位(「固有の資格」)にありながら、一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申立てを行うことは許されるはずもなく、違法行為に他ならないものである。
また、撤回処分の適法・違法および当・不当の審査を国という行政主体内部において優先的にかつ早期に完結させようという意図から、日本政府が防衛省沖縄防衛局に同じく国の行政機関である国土交通大臣に対して審査請求と執行停止申立てを行わせたことは、法定受託事務にかかる審査請求について審査庁にとくに期待される第三者性・中立性・公平性を損わしめるものである。
実際、故翁長雄志知事が行った埋立承認取消処分に対して、審査庁としての国土交通大臣は、執行停止決定は迅速に行い埋立工事を再開させたものの、審査請求における適法性審査には慎重な審議を要するとして、前述の和解で取り下げられるまで長期にわたって違法性判断を回避した。それにもかかわらず、地方自治法上の関与者としての国土交通大臣は、ただちに埋立承認取消処分を違法であると断じて、代執行訴訟を提起するといった行動をとったのである。このような矛盾する対応は、審査庁としての国土交通大臣には第三者性・中立性・公平性が期待し得ないことの証左である。
法治国家の理念を実現するために日々教育・研究に勤しんでいる私たち行政法研究者にとって、このような事態が生じていることは憂慮の念に堪えないものである。国土交通大臣においては、今回の防衛省沖縄防衛局による執行停止の申立てを直ちに却下するとともに、併せて審査請求も却下することを求める。
呼びかけ人(50 音順)
岡田 正則(早稲田大学教授)
紙野 健二(名古屋大学名誉教授)
榊原 秀訓(南山大学教授)
白藤 博行(専修大学教授)
徳田 博人(琉球大学教授)
人見 剛(早稲田大学教授)
本多 滝夫(龍谷大学教授)
山下 竜一(北海道大学教授)
亘理 格(中央大学教授)
賛同者(50音順)
赤間 聡(高知大学講師)、浅川千尋(天理大学教授)、阿部泰隆(神戸大学名誉教授)、荒木 修(関西大学教授)、李 斗領(立正大学教授)、石黒匡人(小樽商科大学教授)、石崎誠也(新潟大学名誉教授)、石塚武志(龍谷大学准教授)、和泉田保一(山形大学准教授)、礒野弥生(東京経済大学名誉教授)、磯村篤範(島根大学教授)、市橋克哉(名古屋大学教授)、稲葉一将(名古屋大学教授)、井上禎男(琉球大学教授)、今川奈緒(茨城大学准教授)、岩﨑恭彦(三重大学准教授)、碓井光明(東京大学名誉教授)、大久保規子(大阪大学教授)、大沢 光(青山学院大学教授)、大田直史(龍谷大学教授)、大貫裕之(中央大学教授)、岡崎勝彦(島根大学名誉教授)、長内祐樹(金沢大学准教授)、折登美紀(福岡大学教授)、梶 哲教(大阪学院大学准教授)、角松生史(神戸大学教授)、門脇美恵(名古屋経済大学教授)、北見宏介(名城大学准教授)、桑原勇進(上智大学教授)、神山智美(富山大学准教授)、川合敏樹(國學院大學教授)、小島延夫(早稲田大学教授)、後藤 智(富山国際大学教授)、小林博志(西南学院大学教授)、児玉 弘(佐賀大学准教授)、駒林良則(立命館大学教授)、蔡 秀卿(立命館大学教授)、斎藤 浩(立命館大学客員教授)、三野 靖(香川大学教授)、芝池義一(元京都大学教授)、島田 茂(甲南大学教授)、島村 健(神戸大学教授)、下村 誠(京都府立大学准教授)、下山憲治(名古屋大学教授)、庄村勇人(名城大学教授)、杉原丈史(愛知学院大学教授)、鈴木眞澄(龍谷大学名誉教授)、首藤重幸(早稲田大学教授)、竹内俊子(広島修道大学名誉教授)、武田真一郎(成蹊大学教授)、田村和之(広島大学名誉教授)、寺田友子(桃山学院大学名誉教授)、豊島明子(南山大学教授)、仲地 博(沖縄大学教授)、西田幸介(法政大学教授)、萩原聡央(名古屋経済大学教授)、畠山武道(北海道大学名誉教授)、浜川 清(法政大学名誉教授)、原島良成(熊本大学准教授)、晴山一穂(専修大学名誉教授)、平川英子(金沢大学准教授)、平田和一(専修大学教授)、深澤龍一郎(名古屋大学教授)、福家俊朗(名古屋大学名誉教授)、府川繭子(青山学院大学准教授)、藤枝律子(三重短期大学教授)、洞澤秀雄(南山大学教授)、前田定孝(三重大学准教授)、三浦大介(神奈川大学教授)、見上崇洋(立命館大学教授)、村上 博(広島修道大学教授)、安本典夫(大阪学院大学教授)、山田健吾(広島修道大学教授)、山本順一(桃山学院大学教授)、由喜門眞治(関西大学教授)、
呼びかけ人10人 賛同者数100人(うち公表77人、非公表23人)
10月26日午後5時現在
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(引用終わり)