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三たび「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙~森松明希子さんから

 2018年10月31日配信(予定)のメルマガ金原No.3317を転載します。
 
三たび「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙~森松明希子さんから
 
 明日(11月1日)の午後、大阪地方裁判所で、福島第一原発事故被災者(避難者)が国と東京電力を訴えた原発賠償関西訴訟の第20回口頭弁論期日が開かれます。 
 同訴訟もいよいよ終盤に差しかかり、間もなく全ての原告の陳述書が提出され、来年には原告本人尋問が行われる段階となっています。
 
 その原発賠償関西訴訟の原告団代表であり、また、東日本大震災避難者の会 Thanks&Dream(サンドリ)の代表でもある森松明希子さんについては、本ブログの常連登場者(?)として、皆さまにもお馴染みでしょうから、あらためてご紹介するまでもないとは思いますが、森松さんが2人のお子さんを連れて福島県郡山市から大阪に母子非難を決意されたいきさつについては、私のブログに転載させていただいた以下の手記などをお読みいただければと思います。
 
2014年9月12日
原発賠償関西訴訟と森松明希子さん『母子避難、福島から大阪へ』
 
 さて、その森松明希子さんがFacebookに、内閣総理大臣福島県知事宛の公開書簡(2018年10月29日付)をアップされているのに気がつきました。
 
 実は、森松さんが内閣総理大臣福島県知事宛の公開書簡を書かれたのは、これが3回目のことであり、以前の2回の書簡は、サンドリのホームページで読むことができます。
 
2015年5月26日付 第一信
 
2016年11月28日付 第二信
 
 これら3通の手紙は、基本的には同じことを訴えているのですが(それはそうですよね)、前回(2016年11月)の第二信は、国や福島県による2017年3月で災害救助法に基づく借上住宅の無償提供を打ち切るという方針の撤回を求める運動の力になりたいということで(森松さん自身は住宅支援を受けていません)書かれたものであったと思いますし、今回の第三信は、本文にはさらっと書かれているだけですが、10月25日の国連総会で、国連人権理事会が任命したトゥンジャク特別報告者が、東京電力福島第一原子力発電所事故の後、日本政府が避難指示を解除する基準の1つを年間の被ばく量20ミリシーベルト以下としていることにはリスクがあるとして、子どもたちや出産年齢にある女性の帰還を見合わせるよう求めたとの報道に触発されて書かれたものではなかったでしょうか。
 
 森松さんのFacebookへの投稿には、「※本人の希望により、無断で転記・転載、大歓迎です。」と書かれていましたので、(第二信の時と同じように)形式的な書式は私の趣味で整理させていただいた上で、全文転載しました。
 是非、シェア、転載などの方法で多くの方の目に触れるよう、ご協力いただければ幸いです。
 
(引用開始)
内閣総理大臣 安倍 晋三 さま
福島県知事 内堀 雅雄 さま
 
 前略
 
 「復興庁 避難者消したら 復興か」
 「福島県 避難者無視して 復興か」
 
 福島県郡山市から大阪市に2児を連れて母子避難を7年7か月間、敢行しつづけている森松明希子と申します。
 3年前・2年前にも内閣総理大臣および福島県知事にお手紙を差し上げました。
 
 何度でも繰り返します。
 放射線被曝から免れ健康を享受する権利は、人の命や健康に関わる最も大切な基本的人権にほかなりません。
 誰にでも、等しく認められなければいけないと、私は思うのです。
 なぜなら、少しも被ばくをしたくないと思うことは人として当然のことであり、誰もが平等に認められるべきことだと思うからです。
 また、これから先、将来のある子どもたちに、健康被害の可能性のリスクを少しでも低減させたいと思うことは、親として当然の心理であり、子どもの健やかな成長を願わない親は一人としていないと思うのです。
 そこには、一点の曇もなく、放射線被曝の恐怖、健康不安があってはならないと思うのです。
 たまたま県外に親戚・縁者・支援者のつながりがあった人だけが被ばくを免れることができるとか、経済力はじめ運良く様々な条件に恵まれた人たちだけが被ばくから遠ざかることができた、というようなことで本当に良いのでしょうか?
 今、次々となされる施策、法律で定められている年間1ミリシーベルトを超える放射線量が確認されても帰還困難区域を解除する、避難者にとっての命綱である支援住宅の打ち切り(他方で帰還者にだけは手厚い保護)など、これらの非道な施策により、幼い子どもの被ばくを少しでも避け避難を続けていたいと願っても、泣く泣く帰還するしか選択肢がなくなるという世帯もあるということをご承知の上での措置なのでしょうか?
 そして、それが本当に平等でフェアな施策だと言えるのでしょうか?
 何よりも、それは本当に正しいことなのでしょうか?
 
 そもそも、避難するという選択肢を選び、安心して避難を続けるという道筋が立てられる制度が7年以上経過しても何一つ確立されることもなく、避難したくてもできない世帯があることを国や福島県は分かった上でのこれまでのこの7年7か月間のご対応なのでしょうか。
 もしもご存知ないのでしたら、それは、「声なき声」、生活者の視点、ふつうの暮らしをしている人々の思いや声を聞き漏らしていることにほかならず、大変な無礼を承知の上で申し上げますが、為政者としては致命的であると言っても過言で無いと思うのです。
 原発事故子ども被災者支援法という法律はあるのにずっと棚晒しの現状・・・
 法律があっても、実際の被災者は何ら救済されないというこの現実。
 私は、福島にとどまり日々放射線と向き合う暮らしを余儀なくされていらっしゃる方々の選択をとやかく申し上げたことは一度もありません。
 むしろ、子どもを育てる同じ親としてのお立場の方々を思うにつけ、心中、心よりお察し申し上げる次第です。
 一方で、避難という選択をした私たちもまた、紛れも無く福島県民であることにかわりありません。
 遠く離れた土地に幼子と避難をしていたとしても、福島が、3.11前の何の健康被害のリスクも不安もない状態にもどりさえするのなら、すなわち、3.11前には現存しなかった放射線がなくなり3.11前の福島でありさえするのなら、今すぐにでも家族揃って福島での生活をまた再開したいと心から願っているのです。
 
 そう願い続けて7年7か月の歳月が流れました。
 避難をしている福島県民の「声」は届いているのでしょうか。
 それとも「意図的に無視」されているのでしょうか。
 県政を担われる内堀知事におかれましても、どうか、避難という選択をした者もまた県民の一人として捨て置くことなく、人の生命・健康にかかわる最も大切な基本的人権を尊重していただけますよう、全国に散らばる国内避難民にもまた、温容な具体的施策の継続、実施をお願いしたく存じます。
 原子力災害がひとたび起きた時に、これまでのご対応が常套の手法とされてしまうことで計り知れない国民の権利が将来にわたり侵害されることになると私は危惧するのです。
 人の命や健康よりも大切にされなければならないものはあるのでしょうか?
 全世界の国民は、等しく、自らの命を守り健康を享受する権利があるはずです。
 生命や健康を守る行為が原則であり、その原則的行為を選択した人に対して、どうか最低限度の制度を保障してください。
 そして、不幸にも原子力災害を経験してしまった県民(国民)として、次の世代に対して恥ずかしくないアクションを県政、県民として手を取り合って進めて頂きたいと思うのです。
 同様の事が、国政においても言えると思います。
 そのためには、一部の経済的利害関係の発生する人々の声だけでなく、人として当たり前の事を申し上げているだけにすぎない一母親、一生活者、一県民、一国民の真摯な声にどうか耳を傾けてくださいますよう、心からお願い申し上げます。
 
 避難者の存在そのものが社会的事実であり歴史的証拠なのです。
 「意図的な無視」により数にも数えようともしない、数に上げてしまったものは線引き・支援の打ち切りによって、全力で存在そのものを消そうとすることは、為政者としてあるまじき恥ずべき行為だと思うのです。
 私や私の子どもたちも含め、「避難している人々」は間違いなく存在しているのです。
3.11から今現在に至るまで、間断なく避難という選択をし続けています。
 汚染があるから帰らないという選択を尊厳をもって敢行しているのです。
 
 最後にこれだけはお伝えさせてください。
 トップが事実から目を背け、隠蔽体質を貫かれますと、国民・住民はさらなる苦痛と困難を強いられます。
 福島原発事故による国土の汚染は国のトップが世界に向けてアンダーコントロールと隠蔽しました。
 福島県からの避難者は北海道から沖縄まで全47都道府県全てに存在するというのに、県のトップは物産売り込みには熱心で全国飛び回ったとしても、全国に散らばる避難者には会おうともせず無視しつづけています。
 私たち避難者の正確な数や実態、苦難の状況を把握しようともしないし、声も聞かない、
受け入れ先の自治体に「避難者をよろしく」とお願いもしてくれない。
 学校のいじめは学校長が無視、隠蔽したら苦しむのは子どもたちです。
 隠蔽されて再発防止策が講じられないと、被害の子も加害の子も、そして今は加害者にも被害者にもなっていないけれど、新たな犠牲者が出ることは必至です。
 そして再発防止は事実(何が起きていたかという被害の事実)と向き合わずしてはありえないと思うのです。
 いじめも原子力惨禍もそれは同じことです。
 なかったことにする、見ないことにする、臭いものに蓋が、どれだけ多くの子供たちの未来を奪っていることか・・・
 そのことに全ての人が気づくべきだと私は思うのです。
 避難児が恐喝いじめ事件に遭っていたという痛ましい事件がありましたが、全国に散らばる避難者の子どもたちは、国・県からの保護が皆無に等しく、同様の危険にさらされ続けているという現状があります。
 避難するという選択を尊重されないばかりか、さらなる危険にさらされながらの避難の継続を強いられることは、あってはならないことです。
 
 子どもたちの未来と健康を最優先に考えてください。
 子どもたちはこの国の未来であり、福島県にとっても大切な宝物です。
 避難を続ける人々の選択を尊重し、特に保護すべき避難の子どもたちをどうか全力で守ってください。
 内閣総理大臣福島県知事が全力でその姿勢を示してください。
 
 長文かつ乱文、大変失礼いたしました。
 福島の復興を切に願う一県民として、また、東日本大震災の真の復興を心から願う一国民として、筆を取らせていだだきました。
 最後までお読み下さいましてありがとうございます。
 
  2018年10月29日
 
    森松明希子   
      福島→大阪・2児を連れて母子避難中、国内避難民、
      東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表
(引用終わり)
 
(参考サイト1 森松さんやサンドリの書籍のご紹介)
■森松明希子著『母子避難、心の軌跡』(かもがわ出版
■ブックレット『red kimono~福島原子力発電所事故からの避難者たちによるスピーチ、手紙、そして避難手記』
■新冊子『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』
※この冊子の内容をご紹介した私のブログ(『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』(東日本大震災避難者の会Thanks&Dream(サンドリ))を是非お読みください/2017年3月5日)もご参照ください。
 
(参考サイト2 トゥンジャク特別報告者による声明についての報道)
NHK NEWS WEB 2018年10月26日 13時03分
国連の特別報告者 福島への子どもの帰還見合わせを求める
(抜粋引用開始)
 国連の人権理事会が任命したトゥンジャク特別報告者は、25日の国連総会の委員会で、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、日本政府が避難指示を解除する基準の1つを年間の被ばく量20ミリシーベルト以下にしていることについて「去年、人権理事会が勧告した1ミリシーベルト以下という基準を考慮していない」と批判しました。
 これに対し、日本政府の担当者は、この基準は専門家で作るICRP=国際放射線防護委員会が2007年に出した勧告をもとにしており、避難指示の解除にあたっては国内の専門家と協議して適切に行っているとして、「こうした報告が風評被害などの否定的な影響をもたらすことを懸念する」と反論しました。
 この反論に、トゥンジャク特別報告者は、同じ専門家の勧告で、平常時は年間の被ばく量を1ミリシーベルト以下に設定していると指摘し、これを下回らないかぎりリスクがあるとして、子どもたちや出産年齢にある女性の帰還は見合わせるべきだと主張し、日本側との立場の違いが浮き彫りになりました。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/森松明希子さん関連)
2013年9月1日
8/31シンポ「区域外避難者は今 放射能汚染に安全の境はありますか」(大阪弁護士会)に参加して
2013年12月21日
森松明希子さんが語る原発避難者の思い(12/19大阪市立大学にて)
2014年2月8日
母子避難者の思いを通して考える「いのち」(「母と女性教職員の会」に参加して)
2014年9月12日
原発賠償関西訴訟と森松明希子さん『母子避難、福島から大阪へ』
2014年9月16日
9/18原発賠償関西訴訟第1回口頭弁論に注目を!~原告団代表・森松明希子さん語る
2014年11月29日
東日本大震災避難者の会「Thanks & Dream」(略称「サンドリ」)の活動に期待します
2015年4月11日
原発賠償関西訴訟(第1回、第2回)を模擬法廷・報告会の動画で振り返る(付・森松明希子原告団代表が陳述した意見)
2015年10月30日
「避難の権利」を求める全国避難者の会が設立されました
2015年12月1日
11/23世界核被害者フォーラム「広島宣言」&「世界核被害者の権利憲章要綱草案」(付・森松明希子さんの会場発言「避難の権利と平和的生存権」)
2015年12月14日
避難者の声を届けたい~森松明希子さんのお話@12/13東京都文京区(放射線被ばくを学習する会)
2016年1月11日
「避難者あるある五七五」東日本大震災避難者の会Thanks&Dream(サンドリ))の挑戦~五七五だから語れる避難者の思い
2016年9月17日
UPLAN【原発事故避難者インタビュー】に注目しよう~まずは松本徳子さんと森松明希子さん
2016年11月30日
「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙~森松明希子さんから
2017年3月5日
『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』(東日本大震災避難者の会Thanks&Dream(サンドリ))を是非お読みください
2017年9月19日
「ともに生きる未来を!さようなら原発さようなら戦争全国集会」(2017年9月18日@代々木公園)の動画を視聴する
2017年9月20日
平和のうちに生きる権利を求めて~森松明希子さんの「ともに生きる未来を!さようなら原発さようなら戦争全国集会」(2017年9月18日@代々木公園)での訴え
2018年3月9日
院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」を視聴し、3/16国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチに声援を送る
2018年3月21日
国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチ紹介~付・4か国からのUPR福島勧告と日本政府による返答
2018年5月29日
森松明希子さんらによる「国連人権理事会発言者による報告会~東電福島原発事故と私たちの人権~」(2018年5月27日@スペースたんぽぽ)を視聴する
2018年7月5日
院内勉強会「国連人権理事会に福島原発事故被災者が参加~国連国内避難民に関する指導原則を政策に生かす~」(2018年7月4日)を視聴する
2018年7月12日
森松明希子さん「原発事故による被ばくからの自由・避難の権利とは」(2018年8月26日@和歌山ビッグ愛)へのお誘い
2018年7月30日
参議院東日本大震災復興特別委員会での森松明希子さん(東日本大震災避難者の会Thanks&Dream代表)の意見陳述と質疑(2018年7月11日)
2018年8月26日
森松明希子さん 和歌山で語る!