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辺野古沿岸公有水面埋立承認取消(撤回)の執行停止を決定した石井啓一国土交通大臣~考えるための資料のご紹介

 2018年11月1日配信(予定)のメルマガ金原No.3318を転載します。
 
辺野古沿岸公有水面埋立承認取消(撤回)の執行停止を決定した石井啓一国土交通大臣~考えるための資料のご紹介
 
  8月31日に沖縄県知事職務代理者富川盛武副知事から権限の委任を受けた謝花喜一郎副知事が行った辺野古沿岸公有水面埋立についての承認を取り消す(講学上の撤回)旨の決定に対し、10月17日、沖縄防衛局は、行政不服審査法に基づく審査請求及び執行停止を国土交通大臣に申し立てました。
 そして、一昨日(10月30日)、石井啓一国土交通大臣は、同法25条に基づく執行停止を決定しました。
 予想されたこととはいえ、多くの行政法研究者が違法と断じる中、白昼演じられた国による「自作自演」を絶対に忘れぬためにも、必要な資料を収集し、記録しておくことにしました。
 本日(11月1日)現在、国土交通大臣による執行停止の決定自体を読めていないのが残念ですが、見つけ次第、本ブログでご紹介するつもりです。
 今日ご紹介する資料は以下のとおりです。
 
資料1 10/30 石井啓一国土交通大臣 会見要旨
資料2 10/30 岩屋毅防衛大臣 記者会見
資料3 10/30 玉城デニー沖縄県知事 記者会見でのコメント
資料4 10/30 琉球朝日放送 報道制作局 Qプラス による報道(動画付)
資料5 10/30 朝日新聞デジタル による報道
資料6 10/31 日本記者クラブでの玉城デニー沖縄県知事記者会見動画
資料7 石井国交相が執行停止の根拠にあげた最高裁判例
 
 資料1~3は、執行停止申立ての判断者(資料1)、申立人(資料2)、被申立人(資料3)による、10月30日の各会見での発言、コメントです。
 ところで、石井国交相が、記者から、国の機関が行政不服審査法7条2項にいう「その固有の資格において当該処分の相手方となるもの」については明確に適用除外と定められていることについてどう解釈したのか?と質されたの対し、「行政不服審査法でいうところの処分を受けたのが国の機関であっても、処分を受けたものといえれば、一般私人と同様の立場で処分を受けたものとして、その処分について審査請求をなし得る。前回、取消しの要請を判断された平成28年の最高裁判決では、この取消しというのは行政不服審査法にいうところの処分に該当すると、そういう判断がなされているわけですね。」と答えているところは「ご飯論法」のバリエーションでしょうが、まことに勇将の下に弱卒なしであり、公明党も立派な人物を閣僚に推薦したと、さぞ誇らしいでしょう。
 なお、報道は探せばいくらでもありますが、要領良くまとまっている琉球朝日放送(動画が分かりやすいです/資料4)と朝日新聞デジタル(資料5)の記事をご紹介しました。
 資料6は、昨日(10月31日)、日本記者クラブで行われた玉城デニー沖縄県知事による会見動画です。現時点までの経過を踏まえ、沖縄県の新しいリーダーが、今後どう困難な状況に立ち向かおうとしているのかについて、まとまった意見が聴ける貴重な動画です。もっとも、それは主として後半の質疑応答部分でのことで、前半の講演部分では、玉城知事自身の生い立ちがかなり詳しく語られ、これも非常に興味深いものです。
 資料7は、石井国交相が引用した最高裁判例ですが、この判例のどこをどう読めば、国の機関である沖縄防衛局が、沖縄県知事による公有水面埋立承認取消(撤回)について、私人と同様の立場で、国土交通大臣に対して行政不服審査法に基づく審査請求や執行停止の申立てができる根拠となるのか、見当がつきませんでした。いずれ、しかるべき行政法研究者が解説してくださるのではないかと期待しているのですが。
 
 それでは、資料1~7をご紹介します。ご活用いただければ幸いです。
 
【資料1 10/30 石井啓一国土交通大臣 会見要旨】
国土交通省ホームページ 大臣会見
石井啓一大臣会見要旨 2018年10月30日(火)9:44~9:54
参議院本館 議員食堂
(抜粋引用開始)
本日の閣議案件で、特に私の方から御報告するものはございません。
このほか、私の方から2点御報告がございます。
(略)
2点目は「沖縄県による辺野古沖の公有水面埋立承認の撤回の執行停止について」であります。
沖縄県による辺野古沖の公有水面埋立承認の撤回につきましては、去る10月17日に、沖縄防衛局より審査請求及び執行停止の申立てがございました。
このうち、執行停止の申立てにつきまして、沖縄防衛局及び沖縄県の双方から提出された書面の内容を審査した結果、承認撤回の効力を停止することといたしましたので、御報告いたします。
なお、執行停止の効力につきましては、決定書が沖縄防衛局に到達した時点から発生いたしますが、明日10月31日には到達すると見込んでおります。
今回の決定では、事業者である沖縄防衛局が、埋立工事を行うことができないという状態が継続することにより、埋立地の利用価値も含めた、工事を停止せざるを得ないことにより生じる経済的損失ばかりでなく、普天間飛行場周辺に居住する住民等が被る航空機による事故等の危険性の除去や騒音等の被害の防止を早期に実現することが困難となるほか、日米間の信頼関係や同盟関係等にも悪影響を及ぼしかねないという外交・防衛上の不利益が生ずることから、「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき」に該当すると判断いたしました。
詳細は後ほど事務方から説明させます。
私からは以上であります。
質疑応答
(略)
(問)辺野古の埋立てについてなんですけれども、今回は、承認の取消しを求める県に代わる代執行という手続きをとっているのですけれども、今後の裁決等を含めた承認取消しの申立てについての対応について方針を教えてください。
(答)審査請求について審査中でありますので、それ以外のことにつきましては、コメントは控えさせていただきます。
(問)辺野古についてお尋ねしたいのですけれども、行政不服審査については、国の機関同士であり身内同士ではないかという批判も出ていますけれども、これについて大臣のお考えをお願いします。
(答)行政不服審査法で、審査請求をすることができる者につきましては、行政不服審査法第2条は、「行政庁の処分に不服がある者」と規定されております。
ここにいう処分とは、「直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する」ものをいいます。
沖縄防衛局のような国の機関であっても、この意味での処分を受けたものといえれば、一般私人と同様の立場で処分を受けたものとして、その処分について、審査請求をなし得ると解釈することができます。
この点、前回の承認取消しの違法性が判断された平成28年の最高裁判決では、取消しがこの意味での処分であることを前提とした判断を行っております。
今回の承認処分の撤回も、埋立てをなし得る法的地位を失わせるという点で取消しと変わらず、沖縄防衛局も、行政不服審査法第2条の処分を受けたものといえる以上、固有の資格において撤回の相手となったものではなく、審査請求ができると判断したところであります。
(問)行政不服審査法で、固有の資格において、行政主体あるいは行政機関が行政処分の相手となる処分については、明示的に適用除外にしているという指摘もあるかと思いますが、そこら辺の解釈は今回どのように行ったのか教えていただければと思います。
(答)今、答弁したと思うのですけれども、行政不服審査法でいうところの処分を受けたのが国の機関であっても、処分を受けたものといえれば、一般私人と同様の立場で処分を受けたものとして、その処分について審査請求をなし得る。
前回、取消しの要請を判断された平成28年の最高裁判決では、この取消しというのは行政不服審査法にいうところの処分に該当すると、そういう判断がなされているわけですね。
今回の承認処分の撤回も、ほとんど取消しと変わらないと、それは埋立のなし得る法的地位を失わせるという意味では、取消しも処分もほとんど変わらないという意味では、この撤回も最高裁判決に基づけば処分とみなせるということで、沖縄防衛局が国の固有の資格において撤回の相手方になったものではないといえるわけであります。
(引用終わり)
 
【資料2 10/30 岩屋毅防衛大臣 記者会見】
防衛省自衛隊ホームページ 防衛大臣記者会見 
平成30年10月30日(09:44~09:48) 官邸エントランス
(抜粋引用開始)
質疑応答
(略)
Q:普天間基地の移設を巡って、行政不服審査法に基づいて、国土交通大臣に執行停止を求めておりましたが、その後どのようになったのか。また、それを受けてどのように対応されるかについてお聞かせください。
A:今朝、国土交通省から沖縄防衛局に対して、執行停止決定が出たという第一報を受けております。その内容の詳細については、まだ確認しておりませんので、お答えは差し控えたいと思います。
Q:今後の埋立工事については、どのような方針で臨まれますでしょうか。
A:現地の気象状況を踏まえ、工事の再開に向けた準備が整い次第、速やかに再開させていただきたいと思います。
(略)
Q:執行停止に関して、先ほどの閣議で何かお話はありましたでしょうか。
A:それはございませんでした。
Q:執行停止に関して、今回の受け止めを伺えますか。
A:私どもは、日本を守るための抑止力を維持しながら、しかし一方で、沖縄の負担軽減をしっかり図っていきたいという一貫した方針で進めてまいりました。危険な普天間基地については、一日も早い全面返還を成し遂げたいと、そのために工事もできるだけ速やかに再開をさせていただきたいと思っております。
Q:玉城デニー沖縄県知事が上京予定ですが、この件に関して直接お話をする予定などありますか。
A:知事の予定について承知しておりませんし、これから検討します。
(引用終わり)
 
【資料3 10/30 玉城デニー沖縄県知事 記者会見でのコメント】
沖縄県ホームページ
「平成30年10月30日、玉城知事は、国土交通大臣が行った執行停止決定についての会見を行いました。」
知事コメント(国土交通大臣による執行停止決定について)
(引用開始)
 普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の取消しに対し、沖縄防衛局長が国土交通大臣に行った執行停止申立てに関し、本日、国土交通大臣が執行停止決定を行ったとの報告を受けました。
 沖縄県は、10月25日に国土交通大臣に提出した執行停止申立てに関する意見書においても、
・国の機関である沖縄防衛局には、私人の権利利益の救済制度である行政不服審査法による審査請求等の適格が認められないため不適法であること
・今回の執行停止申立ては、「重大な損害を避けるために緊急の必要」性の要件を充足していないこと
沖縄県が今回行った埋立承認取消しは適法になされたこと
等を詳細に主張し、今回の執行停止申立ての違法性を国土交通大臣に訴えたところです。
 また、去る10月26日には、110名もの行政法学者により、今回の国の対抗措置について、「国民のための権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するもの」と指摘され、執行停止申立てとともに審査請求も却下するよう求める声明が発表されたところです。
 しかし、国土交通大臣は、3年前の承認取消しと同様、沖縄防衛局長が一私人の立場にあるということを認め、県の意見書提出から5日後という極めて短い審査期間で、執行停止決定を行いました。
 今回の決定は、結局のところ、結論ありきで中身のないものであります。
 私は、去る10月17日の会見において、仮に本件において国土交通大臣により執行停止決定がなされれば、内閣の内部における、自作自演の極めて不当な決定といわざるを得ないと申し上げましたが、まさにそのような状況となり、審査庁として公平性・中立性を欠く判断がなされたことに、強い憤りを禁じ得ません。
 県としては、今回の執行停止決定に対し、当該決定に係る文書を精査の上、国地方係争処理委員会への審査申出を軸に、速やかに対応してまいります。
 承認取消しの効力の執行停止決定がなされたとしても、承認に付した留意事項に基づき、沖縄防衛局は、沖縄県との間で実施設計及び環境保全対策等に関する事前協議を行う必要
があります。
 事前協議が調うことなく工事に着工することや、ましてや土砂を投入することは、断じて認められません。
 私は、辺野古に新基地はつくらせないという公約の実現に向けて、全身全霊で取り組んでまいります。
 私はぶれることなく、多くの県民の負託を受けた知事として、しっかりとその思いに応えたいと思いますので、県民・国民の皆様の御支援、御協力をよろしくお願い申し上げます。
                平成30年10月30日
                沖縄県知事 玉城 デニー
(引用終わり) 
 
【資料4 10/30 琉球朝日放送 報道制作局 Qプラス による報道(動画付)】
2018年10月30日 18時30分
県の承認撤回 国が効力停止へ
(抜粋引用開始)
 県は今後、第三者機関である国地方係争処理委員会に審査を申し出る方針ですが、申し出た場合でも埋め立て工事の再開は可能です。
 工事が止まっている間静けさを取り戻している名護市キャンプシュワブのゲート前では「とにかく格好だけ付けようと思っているんじゃないでしょうかね」「いっぱい、色々問題抱えているわけでしょう、地盤が弱いとかね。なんでもやるんだぞと、格好だけつけようということだと思う」の声が聞こえました。
 国の機関の申し立てを国の機関が認めた今回の事態は、予想されていたことだと冷静に受け止めました。一方で、今後の工事はゲート前からの資材搬入だけでなく、海からの土砂の搬入も加わるため、今までの抗議運動で対抗することは難しいと警戒していました。
(引用終わり)
 
【資料5 10/30 朝日新聞デジタル による報道】
朝日新聞デジタル 2018年10月30日11時19分
辺野古埋め立て承認撤回、国が効力停止 移設工事再開へ
(抜粋引用開始)
 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、石井啓一国土交通相は30日の閣議後会見で、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回の効力停止を決めたと発表した。防衛省は決定を受けて、8月以降止まっている工事を再開し、土砂投入に踏み切る方針だ。
(略)
 西村康稔官房副長官は同日の閣議後会見で「負担軽減を目に見える形で実現するという方針を丁寧に説明し、地元の理解を得られるよう粘り強く取り組んでいく」と述べた。
 防衛省は17日に、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回に対抗措置を講じた。2015年に沖縄県が承認を取り消した際と同じ手段だった。政府は当初、撤回の効力を一時的に失わせる執行停止を裁判所に申し立てる案も検討した。しかし、8月末の撤回から1カ月半がたち、政府内でも要件の「緊急性」が疑問視されたことから、3年前と同じく、行政不服審査法に基づき、「身内」の国交相への申し立てを選んだ。
 一方、沖縄県では辺野古への移設計画に対する賛否を問う県民投票が来春までに行われる予定だ。ただ、県民投票には法的拘束力はないため、政府は「辺野古への移設が唯一の現実的な解決策であるとの考え方に変わりはない」(岩屋氏)として、県民投票の結果にかかわらず計画を進める考えを示している。
(引用終わり)
 
【資料6 10/31 日本記者クラブでの玉城デニー沖縄県知事記者会見動画】
 10月30日の琉球新報電子版が伝えるところによると、「玉城デニー知事は日本記者クラブでの講演のため30日朝に上京し、執行停止の決定に対して遺憾の意を表明する知事コメントなどの対応を都内で検討する。(略)基地担当の謝花喜一郎副知事も国会で国政野党合同ヒアリングに出席するため上京しており、担当部署は情報収集や報告に追われた。」(沖縄県、係争処理委に申し立てへ 国の執行停止受け/2018年10月30日11:34)
とのことでした。
 そして、予定通り、10月31日の午後1時から、千代田区内幸町の日本プレスセンタービル10階ホールにおいて、玉城デニー知事の会見が行われ、その動画が公開されましたのでご紹介します。
玉城デニー沖縄県知事 会見 2018.10.31(1時間02分)
 
【資料7 石井国交相が執行停止の根拠にあげた最高裁判例
平成28年(行ヒ)第394号
地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
平成28年12月20日 最高裁判所第二小法廷 判決
判例集等巻・号・頁  民集 第70巻9号2281頁
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/辺野古沿岸埋立承認撤回関連)
2018年7月27日
翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋立承認の撤回に向けた意向を表明しました(2018年7月27日)
2018年9月1日
玉城デニー氏による沖縄県知事選挙への出馬表明(2018年8月29日)を視聴する(冒頭発言部分文字起こし)
2018年10月20日
辺野古沖公有水面埋立承認取消(撤回)処分に対する沖縄防衛局による審査請求と執行停止申立てを考えるための資料のご紹介
2018年10月25日
沖縄県知事が「執行停止に関する意見書」(2018年10月24日)を国土交通大臣に提出
2018年10月27日
行政法研究者有志による声明「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の濫用を憂う」(2018年10月26日)を読む