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飯島滋明さんの講演「自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~」レジュメ紹介~第15回 守ろう9条紀の川市民の会 憲法フェスタ」にて

 2018年11月12日配信(予定)のメルマガ金原No.3329を転載します。
 
飯島滋明さんの講演「自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~」レジュメ紹介~第15回 守ろう9条紀の川市民の会 憲法フェスタ」にて 
 
 昨日(11月11日)、和歌山市河北コミュニティセンターを会場として、紀の川北岸に居住する和歌山市民によって結成された「守ろう9条 紀の川市 民の会」による、回を重ねて15回目の憲法フェスタが開催されました。
 2005年1月に結成総会を開いた同会は、毎年欠かすことなく、総会(概ね春)と憲法フェスタ(概ね秋)を開催してきました。憲法フェスタについては、創立当初、年に2回開催した年があったため、今回が第15回となっています。
  私も、結成時から運営委員に名前を連ね、当初は名前だけであったことを反省(?)し、やがって実質的な運営に関わるようになって現在に至っています。
 地域9条の会としては、休止状態に陥ることなく、継続して活動してきたこと自体が重要な成果だと思いますが、同会の著しい特色として、このような地方の小さな9条の会としては、大胆にも、多くの憲法研究者の皆さんを記念講演の講師としてお招きしてきました。
 2012年の第9回憲法フェスタの吉田栄司先生(関西大学教授)から、今年の飯島滋明先生(名古屋学院大学教授)まで、全部で9人の憲法研究者の皆さんにご講演いただいてきました。その皆さんというのは、以下の方々です。
 
吉田栄司関西大学教授(2012年憲法フェスタ)
森英樹名古屋大学名誉教授(2014年総会)
清水雅彦日本体育大学教授(2014年憲法フェスタ)
高作正博関西大学教授(2015年憲法フェスタ)
石埼 学龍谷大学教授(2016年総会)
植松健一立命館大学教授(2017年総会)
本 秀紀名古屋大学大学院教授(2017年憲法フェスタ)
三宅裕一郎三重短期大学教授(2018年総会) ※現・日本福祉大学教授
飯島滋明名古屋学院大学教授(2018年憲法フェスタ)
 
 昨日の憲法フェスタにおける飯島先生のご講演の演題「自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~」は、主催者からの要望を飯島先生がそのまま受け入れてくださったものです。
 飯島先生からは、テーマに沿った72枚のパワーポイントのスライドが事前に送られ、これを印刷したものが当日の参加者にレジュメとして配布されました。
 私の拙い要約で飯島先生のお話の内容をご紹介するよりは、このレジュメをまるごとお読みいただく方が適当であると思い、飯島先生に私のブログへの全文転載をお願いしたところ、ご快諾いただくことができました。
 飯島先生には、90分という限られた時間の中で、精一杯熱く語っていただけました。ただ、十分な質疑応答の時間を用意できなかったのは、主催者として申し訳なかったなと思います。

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 なお、第15回憲法フェスタを事前に告知した私のブログと、昨日のフェスタ終了後、Facebookに6回に分けて投稿した写真レポートを私の第2ブログ(あしたの朝 目がさめたら 弁護士・金原徹雄のブログ2)にまとめたものをご紹介しておきます。
 
2018年8月23日
15回目の憲法フェスタ(守ろう9条 紀の川 市民の会)はCrowfieldの演奏と飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)の講演ほか(2018年11月11日)
 
2018年11月12日
第15回 憲法フェスタ 写真レポート(守ろう9条 紀の川 市民の会)
 
 最後に、長年「守ろう9条 紀の川市 民の会」運営委員として、同会の発展に尽力してこられた網本和代さんが今年の9月末に逝去されたことは、私たちにとって非常に大きな痛手でした。
 特に、憲法フェスタにおける地域住民の皆さんが手作りの作品を持ち寄って交流する「展示の部屋」の実質的なプロデューサーとしての網本さんの功績は多大であり、果たして今年の憲法フェスタで「展示の部屋」を続けられるのか?と私などは大変心配しましたが、多くの会員の皆さんのご尽力により、立派な作品が多数寄せられ、「展示の部屋」が賑わっていたことをご報告したいと思います。
 そして、午後の部の冒頭、原通範代表から、「今年の憲法フェスタを網本和代さんに捧げたい」という発言が主催者挨拶の中で行われたことに、多くの役員、会員が満腔の賛意をいだいたものと確信します。
Facebookから【第15回 憲法フェスタ 写真レポートその1/展示の部屋】
 
 なお、本ブログに掲載した飯島滋明先生の写真2枚は南本勲さんの撮影によるものをご提供いただきました。また、会場内全景の写真は金原撮影によるものです。
 

(飯島滋明先生レジュメから引用開始)
 
スライド1
自民党改憲案にどう向かい合うか~私たちの具体的な対抗策は~
 2018年11月11日
飯島 茂明(名古屋学院大学 憲法学・平和学)
 
スライド2
【1】はじめに~自民党憲法改正」の本質~
憲法改正誓いの儀式
・「国民主権基本的人権の尊重、平和主義、この3つをなくさなければ、本当の自主憲法にならない」(元法務大臣長勢甚遠氏の発言)
・「日本で一番大切なのは皇室」(城内実氏発言)
・「国防軍を創設する」(稲田朋美氏)
・安倍首相、下村博文氏、新藤義孝氏も参加
※金原注 2012年5月10日、創生「日本」という議員連盟(当時の会長は安倍晋三氏ですが、まだ自民党総裁に返り咲いていません)の第3回東京研修会における出席議員の発言です。もともと、主催団体が公開した3分割の全編動画があり、その3本目に収録
されていたものですが、そのうち「これは凄い(ヒドイ)」という聴き所(?)を抜粋した動画を編集してYouTubeにアップした人があり、一気に知られるようになりました。
以下に、公式動画と非公式動画を並べてご紹介します。
創生「日本」第3回東京研修会③(53分~)
9分~ 稲田朋美
17分~ 長勢甚遠
19分~ 城内実
国民の権利没収改憲ムービー 自民党議員連盟 創生「日本」 憲法改正集会 【 自民の本音 】(2分32秒)
 なお、この会合の13日前(2012年4月27日)に、当時野党であった自由民主党が「日本国憲法改正草案」を発表したということが各議員の発言の背景となっています。
 
スライド3
・「婚姻・家族における両性平等の規定は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである」(2004年6月10日自民党憲法調査会憲法改正プロジェクトチームの「論点整理(案)」)。
どう思います?
※金原注 憲法改正プロジェクトチーム「論点整理」(平成16年6月15日)
 
スライド4
国民投票の問題点
憲法改正には国民投票が必要(憲法96条)
・こんな憲法改正案は国民投票で否決すればとの考えもあるかもしれない。
⇒しかしそう簡単ではない。
国民投票」は権力者の地位や政策を強化する手段として悪用される危険性(プレビシット
※金原注 「プレビシット」=国民投票のこと。また特に、通常の国民投票に対して、為政者による統治の正統性や領土の帰属などを問う場合に行われるものをいう。(デジタル大辞泉
 
スライド5
・フランスではナポレオン1世、3世、ドイツではヒトラー国民投票を悪用して自己の地位や政策を強化。
・「独裁者ほど国民投票を好む」
ヒトラー国民投票悪用への反省として、現在、ドイツでは一切「国民投票」は行われていない。
 
スライド6
フランスでも「国民投票」に警戒的
・二人のナポレオン、ヒトラーフランコ、1978年のチリでのアウグスト・ピノチェト、2002年のサダム・フセインなどによる国民投票
・Bernard Chantebout,Droit constitutionnel,26edition,Dalloz,2009,p.208.
 
スライド7 
しかも・・・・・
「投票」は必ずしも国民意志を正確に反映せず。
例 2017年10月の衆議院選挙
 自民党は284議席
 公明党は29議席
 自公で3分の2議席以上
 国民はそんなに自公政権を支持?
 「民意」を正確に反映しない「小選挙区制」のため、自民党は多くの議席を獲得。
 「投票制度」自体で主権者意志はいくらでもゆがめられる。
 
スライド8
改憲手続法(憲法改正国民投票法)の問題点の一例
改憲手続法」も国民意志を正確に反映する「しくみ」になっていない。
①「金で買われた憲法改正
②「デマで欺かれた憲法改正」の危険性
①に関して
国民投票運動CM」は投票14日前まで可能(法105条)。
圧倒的な経済力を持つ団体などがテレビCMを買い占め、憲法改悪に関する意見を一方的に宣伝し、国民を洗脳する状況が生じる可能性。
※金原注 日本国憲法の改正手続に関する法律(平成十九年法律第五十一号)
 
スライド9
②に関して
国会が憲法改正を発議してから60~180日に国民投票(法2条)
期間が短いため、一時的な国民感情で投票が行われる危険性。
自民党公明党のデマの影響を受けたままの状況での「国民投票」の危険性
2018年2月の名護市長選挙、6月の新潟知事選挙、9月の沖縄知事選挙での「デマ」

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スライド10
【2】安倍自公政権の政治の本質「戦争できる国づくり」
「戦争できる国」になることで、例えば
自衛隊が海外で戦争⇒自衛隊員の死傷者⇒自衛隊への志願者の減少⇒徴兵制、とならないと言えるか。
野中 広務氏(元自民党幹事長)
加藤 紘一氏(元自民党幹事長)
小池 清彦氏(元防衛官僚)が主張。 
 
スライド11
①徴兵制
・現代のハイテク化した戦争では「徴兵制」は不要と安倍政権は主張。
しかし、ハイテク化しているので、子どもや女性でも可能。
「飯島さんでも3日あれば軍人として利用できる」との元自衛官の発言(2016年4月)。
80歳を超えた女性でも、車の運転ができれば「使い捨て」の兵士にすることが可能。
②徴用制
技術者や医療関係者はすでに戦場に派遣。
船員も予備自衛官に。
 
スライド12
「徴用」の可能性がないと言えるか。
「戦闘による死傷者が出て志願者が減った場合、やむをえず〔徴兵制が〕導入されるかもしれません。それよりも医師や看護師、運送業や建築業に携わる民間人を強制的に動員させる“徴用”の方が実現が高いと言えます」
週刊女性』2013年1月15日号での私(飯島滋明教授)の発言。
 
スライド13
看護師
朝鮮戦争時、看護婦が九州だけでも千名、全国で数千名が米軍キャンプの野戦病院で米軍看護師の指揮下、または韓国の戦場に。
湾岸戦争(1990年~91年)の際、アメリカの要請で日本は50人の中東医療派遣団を派遣。
・2012年1月29日、長崎空港での実働訓練に医療関係者だけでなく、看護学生も参加。
 
スライド14
・周辺事態法(1999年)や有事三法(2003年)制定の際、自民党は看護師を強制的に戦場に行かせる法律を制定させようとした。
前田哲男・飯島滋明『国会審議から防衛論を読み解く』〔三省堂、2003年〕295-297ページ)
「緊急事態条項」があれば、首相の「政令」でこうした措置が可能。
 
スライド15
「女性」も戦場に
週刊女性』2017年5月30日号
今まで女性自衛官は戦闘部隊に配備されなかった。
砲撃で服がなくなる⇒裸にされる
戦闘相手に身体拘束されたら大変な目に。
しかし、2017年4月18日、稲田防衛大臣普通科中隊や戦車中隊の実践部隊に女性自衛官を配備することを決定。
「安倍自公政権の『女性活躍』の実態は、女性も戦場に送ることといえます」(『週刊女性』2017年5月30日号での私のコメント)。
※金原注 飯島教授のコメントが掲載された週刊女性の記事。
「<憲法9条問題>徴兵制、女性自衛官の実戦、高齢者の任務、安倍総理の止まらぬ暴走」
週刊女性2017年5月30日号)
 
スライド16
【3】憲法改正のうごき
・安倍首相は憲法改正に積極的。
自民党として次の国会で提出できるよう取りまとめを加速する」秋の臨時国会
(2018年8月12日山口にて)
改憲の項目
・緊急事態条項
・合区解消
・高等教育の無償化(のちに充実化に)
自衛隊憲法に明記
 
スライド17
改憲」にむけた体制づくり
加藤勝信氏を総務会長
下村博文氏を憲法改正推進本部長
衆議院憲法審査会の筆頭幹事は中谷元氏から新藤義孝氏に。
 
スライド18
小選挙区支部ごとの「憲法改正推進本部」設置の動き
・2018年10月26日、下村博文自民党憲法改正推進本部長は289ある衆議院小選挙区支部に、「憲法改正推進本部」を設置する方向性に言及。
改憲実現に向けて国民運動を展開し、世論の機運を高めるため。

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スライド19
【4】自衛隊明記の憲法改正の問題
・「事理対は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です」(2017年5月3日安倍首相発言)
 
スライド20
(1)自衛隊が世界中で戦うことを憲法的に認めること。
安倍首相は「自衛隊憲法に明記しても現状を認めるだけ」と発言。
「安保法制」では、世界中の武力行使自衛隊の任務とされた。
今の自衛隊憲法で認めることは、「安保法制」を憲法的に認めることに。
自衛隊が世界中で戦うのを認めることに。
 
スライド21
2018年3月自民党たたき台素案
・9条の2
①前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官監督者とする自衛隊を保持する。
自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
※金原注 自民党憲法改正推進本部「憲法改正に関する議論の状況について」(2018年3月26日)
 
スライド22
こうした憲法改正が実現すれば
・「国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置」であれば、「安保法制」以上の武力行使、無制限の集団的自衛権すら可能とされる危険性。
・「後法優位の原則」により、戦争や武力行使などを禁止する9条1項、戦力の不保持・交戦権を否認した9条2項は無力化。
 
スライド23
(2)戦場に行かされる自衛隊
2016年7月10日南スーダン ジュバでの戦闘の状況
※金原注 報道を2つ紹介します。
AFP 2016年7月10日 8:21 発信地:ジュバ/南スーダン
南スーダンの首都ジュバで戦闘、兵士150人以上死亡
東京新聞 2017年12月18日 朝刊
<検証 南スーダンPKO> (1)襲撃された宿営地 突然、戦闘の中に
 
スライド24
安倍首相、稲田防衛大臣は「戦闘ではなく武力衝突」だからと自衛隊派遣を続けていた裏で、自衛隊員は遺書を書いていた
 
スライド25
自衛官はどう思う?
 
スライド26
24~26 動画の紹介
 
スライド27
(3)自衛隊のリスク
①負傷した場合のリスクに対応できる?
戦場では手足を失う可能性
アメリカの衛生兵はモルヒネを投与し、簡単な外科手術
自衛隊の衛生兵は痛み止めすら打つことができない。(元自衛官
医師法薬事法の改正?それとも医師・看護師も戦場へ?
 
スライド28
②「身体拘束」のリスク
自衛隊員、これは紛争当事国の軍隊の構成員、戦闘員ではありませんので、これはジュネーブ条約上の捕虜となることはありません」(2015年7月1日衆平和安全特別委員会での岸田外務大臣答弁)
この答弁に自衛官は納得する?
※金原注 上記岸田外相の答弁を詳しく取り上げた私のブログをご参照ください。
2015年8月25日
半田滋さんの論説『「捕虜」になれない自衛隊』を読む
 
スライド29
ジュネーブ条約上の「捕虜」の扱いを受けないのであれば、自衛官は「テロの一員」と同じ扱いを受け、即裁判にかけられたり、拷問を受けたり、虐殺される可能性。
飯島滋明、清末愛砂ほか編『安保法制を語る!自衛隊員・NGOからの発言』(現代人文社、2016年)
 
スライド30
自衛官が戦闘行為の際に身体拘束をされればジュネーブ条約での「捕虜」にならない可能性があることは安倍首相自身も認識
『読売新聞』2013年4月17日付
「実力組織が侵略を阻止するために戦う時に、軍隊として認知されていなければジュネーブ条約上捕虜として取り扱われることはない」
「捕虜」として扱われないことを認識しながら、世界中での武力行使を任務とする安保法制を成立させた安倍首相、自衛官の生命を何だと思っているのか。
 
スライド31
(4)徴兵制・民間人徴用の可能性?
自民党の政治家や防衛官僚が危惧するように
海外の戦争で死傷者⇒自衛隊への志願者の減少⇒徴兵制
という事態がないといえるか。
「かつて私は隊員募集の幹部自衛官から『昔の日本軍みたいに赤紙一枚で徴兵ができればよいのにな、いずれ近い将来、隊員不足を補うために徴兵する時代が来る』と聞いたことがあります」
清末愛砂・飯島滋明他編『ピンポイントでわかる 自衛隊明文改憲の論点』(現代人文社、2017年)28頁での末延隆成元自衛官の発言
 
スライド32
自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です」(2017年5月3日安倍首相発言)
憲法違反との疑義が出される自衛隊
②政府の命令で世界中での武力行使憲法上の任務にされる自衛隊
どちらを自衛官は望むか
 
スライド33
元陸上自衛官末延隆成氏の発言
清末愛砂・飯島滋明他編『ピンポイントでわかる 自衛隊明文改憲の論点』(現代人文社、2017年)27頁
憲法改正について肯定的な発言をする自衛官は上級幹部自衛官に多いです。最前線に行かず、防衛関連企業に天下りしたり政界進出する幹部自衛官と、実際に戦場に行かされ死傷する一般自衛官の考え方は異なります。
 
スライド34
イラクに派兵された自衛隊の某隊長
現地が危険になったので、撤退したいと隊長に打診
   ↓
隊長は許可せず。「現場に来て確認してほしい」と打診
   ↓
隊長は「部族長との会議」などの名目で現場には来なかった。
隊員はその隊長を「牟田口さん」と呼んでいた。その隊長とは?
※牟田口とは、補給を全く無視した無謀な作戦で歴史的敗北を喫した「インパール作戦」(1944年)を立案・命令した牟田口廉也。退却路は日本兵の死体だれけで「靖国街道」と呼ばれた。
 
スライド35
【5】憲法の平和主義、国連憲章の「武力不行使の原則」を放棄して良いか
・「1931年9月、日本軍は中国の満州地方を宣戦布告なしに侵略(invades)する」
(スイス・ジュネーブにある「国連人権理事会」の資料室の展示)
 
スライド36
オーストラリアのダーウィンにある軍事博物館での写真
 
スライド37
こうした非人道的な侵略戦争自衛権の名目で
※金原注 戦前の新聞報道の映像が紹介されています。
 
スライド38
しかもオーストラリア国立戦争記念館で
連合国は巨大な悪(immense evil)を打ちのめした。
「巨大な悪」とはドイツ、イタリア、そして日本
オーストラリア本土を攻撃したのは日本だけ。
オーストラリアにとって「第2次世界大戦」とは主に日本との戦い。
「巨大な悪」と言われる行為を日本軍は実行。
 
スライド39
旧フォード博物館(シンガポール
・強姦
・日本軍「慰安婦
・略奪者のさらし首
・赤ちゃんを意味なく銃剣で突き刺す(bayonet)
 
スライド40
・2016年2月17日、日本軍「性奴隷」(いわゆる日本軍慰安婦)の被害を訴え、安倍首相などの謝罪を求める元犠牲者のジャン・ラフ・オハーン氏の証言を放映するオーストラリアのテレビ THE WORLD
榎澤幸広・奥田喜道・飯島滋明編『これでいいのか 日本の民主主義 失言・名言から読み解く憲法』(現代人分社、2016年)132頁) 
 
スライド41~42
オーストラリアのテレビ THE WORLD の映像紹介。
 
スライド43
2017年8月15日NHKスペシャル「戦慄の記憶 インパール
 
スライド44
日本の侵略戦争により、近隣諸国の民衆2000万人から3000万人が犠牲
日本軍「慰安婦」のように、殺されなくても被害を受けた人も
日本の戦死者約310万人
第2次世界大戦では、5000万人から8000万人の犠牲者
 
スライド45
・「武力では平和を作れない」というのは、第1次世界大戦、第2次世界大戦という悲惨な戦争を通じて人類が経験してきた事実。
・だから国連憲章2条4項では「武力不行使の原則」。
・2016年12月19日、国際社会では「平和への権利宣言」が国連総会で採択。
平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会編『いまこそ知りたい 平和への権利 48のQ&A』(合同出版、2014年)  
※金原注 「平和への権利宣言」の英日対訳を私のブログでご紹介しています。
2017年2月22日
国連「平和への権利宣言」(2016年12月19日総会にて採択)を読む
 
スライド46
・こうした非人道的な侵略戦争を起こした権力者や軍の上層部は「公教育」や「イエ」制度、「靖国神社」を利用して「愛国心」を植えつけ、「愛する国のために死ね」と国民には死を強要しながら、自分たちはいざとなれば真っ先に逃げた!
 
スライド47
(例1)満州
1945年8月9日、満州ソ連が侵攻。
「軍人や役人はすぐに逃げ、祖母たちは取り残され・・・」
飯島滋明ほか編『これでいいのか 日本の民主主義 失言・名言から読み解く憲法』(現代人分社、2016年)103頁での鷹巣直美さんの発言。
残された女性や子ども、老人はソ連軍などに蹂躙。
 
スライド48
(例2)沖縄
・犠牲者20万人
・市民9万4千人
沖縄県民の4人に1人が犠牲
 
スライド49
いわゆる「松代大本営
沖縄戦の際、沖縄県民は徹底抗戦して死ぬことを命じた権力者は、東京から長野県の松代に逃げる準備。
 
スライド50
こうした悲惨かつ無責任な戦争を二度と権力者や軍上層部にさせないため、憲法では徹底した平和主義
「日本国民は、・・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」(憲法前文)
こうした憲法を変え、「戦争できる国作り」を認めても良いか。
 
スライド51
そうはいっても中国・北朝鮮は脅威?
①軍事的には冷戦下でのソ連の方が脅威だったが、それでも「海外での武力行使が必要」という議論は出なかった。
②中国や北朝鮮と本当に戦争するつもり?
大都市に人口が集中する日本が戦争可能性か。
日本に80発の核攻撃の可能性。
中国や北朝鮮が脅威なら、原発再稼働は支離滅裂。
サイバー攻撃で日本は壊滅的破壊。
戦争など考える方がよほど平和ボケ。
 
スライド52
・もちろん、普通の人間は戦争を望まない。しかし・・・国民を戦争に参加させることは、常に簡単だ。・・・国民には、脅威にさらされていると言い、平和主義者には愛国心が欠けており、国を危険にさらすと批判すればいい。この方法はどんな国でも効果がある」
ソ連や中国の脅威をあげ、戦争遂行体制を作り上げるのは自民党の常とう手段!
 
スライド53
北朝鮮の脅威?
池上彰緊急スペシャル 迫る北朝鮮の脅威 どう守る日本!?知られざる自衛隊の現実』(2017年8月4日放映)
「完全シュミレーションからできることは限られていることがわかります。まずは撃たせないようにすることが大事。そのために必要なのが外交努力であり、これがいま最も求められている」(池上さんのコメント)。
 
スライド54
・「〔特攻〕隊員の多くは、戦争をしてはならない。平和な日本であるように、ということを言っていました」(特攻基地知覧で「特攻の母」と言われた鳥濱トメさんの発言)。
・二十有余ノ今日ニ至ル迄厚キ御愛情ヲ受ケ、何一ツ孝行モ出来ズ御心配バカリカケ申シ訳御ザイマセン。厚ク御礼申シ上ゲマス。
(北海道出身特攻隊員1945年4月3日出撃戦死23歳)
 
スライド55
過去の話ではない「自衛隊員の遺言」
●様(●には妻の名前)
・楽しい人生ありがとう。
・犬達の事をよろしく御願いします。
・体を養生して幸せに長生きしてください。
・色々とありがとう。感謝しています。 隆
飯島滋明、清末愛砂、榎澤幸広ほか『安保法制を語る!自衛隊員・NGOからの発言』(現代人文社、2016年)29頁
 
スライド56
こうした特攻隊員たちの思いを無にし、再び海外で戦争のできる日本にしても良いのか。安倍氏の言う「積極的平和主義」の名目で、再び海外で戦争のできる国にしても良いのか。
・子どもや孫の世代のために、私たちは真剣に政治にとりくむことが必要。
 
スライド57
【6】憲法改正阻止にむけて
(1)自衛隊憲法明記だけではなく、改憲4項目の危険性の周知の必要性。
①緊急事態条項
「戦争遂行」「反政府的言動の弾圧」の手段
自民党の政治家たちは9条の改憲とあわせて「緊急事態条項」の必要性を主張。
 
スライド58
憲法29条では「所有権」が保障。戦争の際に軍が円滑に行動するためには、土地や建物、物資などを取り上げる必要。
・戦場での負傷者への対応のために医師や看護師、薬剤師、基地などの建設のために建築や土木業者なども戦場に送る必要。
・いちいち法律を制定していたのでは迅速な対応は不可能。
・戦争遂行のためには首相などに無制限の権限を認める緊急事態条項が必要。
 
スライド59
②教育の無償化(充実化)
教育の無償化・充実化は法律制定で十分。
「国のために死ぬことは尊い」といった思想注入の手段として、政治家たちが教育を利用するための憲法改正
 
スライド60
③合区解消
日経新聞』2018年2月20日付社説
「合区解消案は利己的すぎる」
・「まるで自民党自民党による自民党のための憲法改正である。同党憲法改正推進本部がまとめた選挙制度に関する改憲案はあまりに自民党に有利な制度設計であり、到底受け入れがたい」
 
スライド61
産経新聞』2018年2月21日付社説
「合区解消の改憲案 無理に無理を重ねるのか」
・「自民党は、合区では地方の声が国政に反映されにくいとし、現行の47都道府県を単位とする参院選挙区にこだわった。合区対象県には自民党の強固な支持基盤があるという現実を前に、党利を図っているとみられても仕方ない」。
自民党に有利な選挙区をつくるための憲法改正を850億円=私たちの税金を使って実施するか
 
スライド62
(2)国民投票そのものの危険性
プレビシット」:主権者である国民の意志を聞くためではなく、権力者の地位や政策を国民意志の名目で強化するために悪用される国民投票
ヒトラーやナポレオン1世、3世は国民投票を悪用して自己の地位や権力を強化。
 
スライド63
1933年7月14日、ヒトラーナチスが成立させた法律
①「政党新設禁止法」
②「遺伝病子孫予防法」
③「国民の敵・国歌の敵の財産没収法」
④「国民投票法」など。
「国民の大多数の賛成が見込まれる案件をめぐって政府が国民投票を実施できるようになった」(石田勇治『ヒトラーナチス・ドイツ』(講談社現代新書、2015年)164頁)。
 
スライド64
ヒトラー独裁を生み出した制度的要因に「国民投票」。
国際連盟脱退(1933年11月)
ヒトラーを総統に(1934年8月)
オーストリア併合(1938年4月)
 
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国民投票で負ければ、
2016年6月、イギリスの国民投票でEU穎脱という結果。
⇒キャメロン首相は辞職。
2016年12月、イタリアで憲法改正国民投票が否決。
⇒レンツィ首相は辞職。
2015年5月17日の「大阪都構想」の住民投票で反対票が多数。
橋下徹氏は辞職。
 
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国民投票が行われるのは、権力者に都合の良い結果が出る可能性が高い時と警戒する必要性。
自衛隊を明記する憲法改正も、安倍自公政権北朝鮮の脅威などを吹聴し、一部の御用メディアも「憲法改正」の必要性をさんざん報道したあとの可能性。
 
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(3)改憲手続法(憲法改正国民投票法)の問題点
改憲賛成派が大々的に宣伝できる一方、改憲反対派の見解が封じられる危険性
①「国民投票広報協議会」(法11条など)の構成は会派ごと(法12条3項)。
②「国民投票運動CM」は投票14日前まで可能(法105条)。
③「意見表明CM」は直前まで行われる可能性。
圧倒的な経済力を持つ団体などがテレビCMを買い占め、憲法改悪に関する意見を一方的に宣伝し、国民を洗脳する状況が生じる可能性。
※金原注 日本国憲法の改正手続に関する法律(平成十九年法律第五十一号)
 
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④公務員や教師が地位を利用して国民投票運動を行うことが禁止(103条)。
⑤「組織的多数人買収及び利害誘導罪」で禁止されるのがどのような行為か不明確。
国民投票の際の公平原則(105条)。
2016年2月10日の政府統一見解などで安倍自公政権は、「政治的に公平でない」テレビ局に対し、放送法174条に基づく「業務停止命令」、電波法76条1項を根拠とする電波停止の可能性を子細。
 
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※不十分な周知期間
国会が憲法改正を発議してから60~180日に国民投票(法2条)
SNSでのデマ、国民投票の際のデマへの対応
2018年6月の新潟知事選挙では、
①選挙後、池田氏の男女問題が週刊誌で報道
②「拉致問題は創作」との論文を書いた
とのデマが右翼陣営から発信。
 
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・2019年夏には参議院選挙。
・自公が3分の2の議席を喪えば、憲法改正は遠のく。
・2019年に改憲国民投票の可能性。
国民投票」「改憲手続法」の危険性(プレビシット、財力によるテレビCMの支配、国民投票の際のデマ拡散など)を広く市民に定着させる必要性。
 
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そこで以下の①②を同時に
国民投票に持ち込ませない状況づくり⇒多くの学習会、改憲反対のデモや集会
憲法改正の危険性を十分に市民に認識・定着させ、国民投票がなされても「否決」に追い込む状況づくり
 
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市民への働きかけ
憲法改正に反対する市民
憲法改正に賛成する市民
憲法改正の是非について意見がない市民
③の市民に「自分に関係がない」と思わせない説明の必要性。「分かりやすい説明」
(引用終わり)
 

(付記・8人の憲法研究者の講演録を読む)
 過去「守ろう9条 紀の川 市民の会」の総会もしくは憲法フェスタで講演された憲法研究者は8人に及びます。
 各講演については、同会及び「九条の会・わかやま」の事務局を兼ねる南本勲(みなもと・いさお)さんが、会紙「九条の会・わかやま」に講演要旨を通常3回に分けて掲載する例となっています。
 私のブログと併せ、過去何度かご紹介していますが、9人目の憲法研究者・飯島滋明教授をお招きした講演会のレジュメをご紹介したのを機に、もう一度、過去の8人の憲法研究者の皆さんの講演要旨をまとめてご紹介しておきます。
 
【8人の憲法研究者の講演録を読む~「守ろう9条 紀の川 市民の会」で語られたこと(吉田栄司氏、森英樹氏、清水雅彦氏、高作正博氏、石埼学氏、植松健一氏、本秀紀氏、三宅裕一郎氏)】
 
2018年3月24日(土) 第14回 総会
三宅裕一郎氏(三重短期大学教授 ※現・日本福祉大学教授)
憲法9条が果たしてきた役割~「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」346号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」347号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」348号
金原ブログ「三宅裕一郎氏(三重短期大学教授)「憲法9条が果たしてきた役割-「自衛隊」の明記によって何が変わるのか?-」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第14回総会)」
 
2017年11月3日(金・祝) 第14回 憲法フェスタ
本 秀紀氏(名古屋大学大学院教授)
安倍政権の9条破壊を許さない~海外で戦争する『自衛隊』は認められない~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」336号
講演録② 会紙「九条の会・わかやま」337号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」338号
金原ブログ「2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向」
 
2017年4月1日(土) 第13回 総会
植松健一氏(立命館大学教授)
安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」321号
講演録②  会紙「九条の会・わかやま」322号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」323号
金原ブログ「植松健一氏(立命館大学教授)「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第13回総会)」
 
2016年4月2日(土) 第12回 総会
石埼 学氏(龍谷大学法科大学院教授)
戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう~今、私たちにできること~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」296号
講演録②  会紙「九条の会・わかやま」297号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」298号
金原ブログ①「石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から」
金原ブログ②「石埼学龍谷大学法科大学院教授の【設問】に答える~「安保法制」講師養成講座2」
 
2015年11月3日(火・祝) 第12回 憲法フェスタ
高作正博氏(関西大学教授)
「戦争法制」で日本はどんな国になるのか~私たちはどう対抗すべきか~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」285号
講演録②  会紙「九条の会・わかやま」286号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」287号
講演録④ 会紙「九条の会・わかやま」288号
金原ブログ「「第12回 憲法フェスタ」(11/3 守ろう9条 紀の川 市民の会)レポートと11月中の和歌山での取組予定のお知らせ」
 
2014年11月8日(土) 第11回 憲法フェスタ
清水雅彦氏(日本体育大学教授)
ちょっと待った!集団的自衛権~日本を戦争する国にさせない~
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」260号
講演録②  会紙「九条の会・わかやま」261号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」262号
金原ブログ「『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」」
 
2014年3月30日(日) 第10回 総会
森英樹氏(名古屋大学名誉教授)
「国家安全保障基本法」は戦争体制を作りあげるもの
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」243号
講演録②  会紙「九条の会・わかやま」244号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」245号
金原ブログ「森英樹氏講演会を開催しました(守ろう9条 紀の川 市民の会・第10回総会)」
 
2012年11月3日(土・祝) 第9回 憲法フェスタ
吉田栄司氏(関西大学教授)
改憲派憲法を変えて日本をどんな国にしようとしているのか
講演録① 会紙「九条の会・わかやま」205号
講演録②  会紙「九条の会・わかやま」206号
講演録③ 会紙「九条の会・わかやま」207号