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沖縄防衛局による審査請求に対する「弁明書」を沖縄県が提出(2018年11月19日付)~国土交通大臣の執行停止の「論理」が明らかに

 2018年11月21日配信(予定)のメルマガ金原No.3338を転載します。
 
沖縄防衛局による審査請求に対する「弁明書」を沖縄県が提出(2018年11月19日付)~国土交通大臣の執行停止の「論理」が明らかに
 
  8月31日に沖縄県知事職務代理者富川盛武副知事から権限の委任を受けた謝花喜一郎副知事が行った辺野古沿岸公有水面埋立についての承認を取り消す(講学上の撤回)決定に対し、10月17日、沖縄防衛局は、行政不服審査法に基づく審査請求及び執行停止を国土交通大臣に申し立てました。
 そして、10月30日、石井啓一国土交通大臣は、同法25条に基づく執行停止を決定しました。
 この、国が私人になりすまして演じた「自作自演」について、多くの行政法研究者をはじめとする識者からの厳しい批判がなされていることは、私のブログでも出来るだけフォローしてきたところです(巻末のリンク一覧をご覧ください)。
 
 国土交通大臣の上記決定に対し、沖縄県は、地方自治法第250条の13第1項の規定に基づき、国地方係争処理委員会に審査を申し出る方針を明らかにしており、その前提としての事前通知(同法同条7項に基づく)である「執行停止決定の取消し要求及び審査の申出の事前通知について」を、既に11月9日付で国土交通大臣に送っていますので、これも参考のために末尾に掲載しておきます。
 
 ところで、10月17日に沖縄防衛局が国土交通大臣に申し立てた審査請求の方はどうなったかというと、行政不服審査法28条以下の規定に基づいて手続が進んでいくのですが、ようやく、29条に基づく処分庁(沖縄県知事)からの弁明書が提出されたというところです。国としては、執行停止の決定を出した以上、審査請求の審理を急ぐ理由もないということで、ゆるゆるとやるつもりでしょう(前回がそうでした)。はたして、同法44条以下の「裁決」が出るのかどうかも判然としません。そのこと自体、本件係争に行政不服審査法を適用することの「非」を明らかにするものだということでしょう。
 
 沖縄県ホームページ(知事公室辺野古新基地建設問題対策課)に、11月19日付で発出された弁明書が掲載されていますのでご紹介します。
 ただし、「執行停止に関する意見書」の際と同様、詳細は別紙に譲り、本文は骨子のみを記載するという体裁となっていますので、別紙の分量が膨大なこともあり(特に別紙2)、本ブログでは、本文のみ引用し、別紙は目次引用するにとどめます。
 ただし、別紙1のうち、「第5 執行停止決定に示された「固有の資格」についての国土交通大臣の判断は論理をなしていないこと」については、10月30日付の石井啓一国土交通大臣による執行停止決定の本文が公開されていない現在(多分そうだと思います)、その主要な判断部分が引用されているのは貴重な情報かと思い、引用することにしました。
 
(引用開始)
                                  弁     明     書
 
                                                                                   平成30年11月19日
 
 沖縄防衛局局長中嶋浩一郎のした行政不服審査法2条及び地方自治法255条の2の規定によるとしてなされた平成30年10月17日付け審査請求(沖防第5115号)について、弁明する。
 
  審理員 須 藤  明 彦 殿
 
                         処分庁  沖縄県知事 玉 城 康 裕
                         処分庁代理人 弁護士 加 藤   裕
                                同 弁護士 仲 西 孝 浩
                                同 弁護士 松 永 和 宏
                                同 弁護士 宮 國 英 男
 
(当事者目録 省略)
 
第1 処分の内容及び理由
1 処分の内容
 沖縄防衛局(局長中嶋浩一郎)が受けた普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認(平成25年12月27日付け沖縄県指令土第1321号・同農第1721号)は、これを取り消す。
2 処分の理由
 取消処分の通知書に付記した理由(審査請求人提出の証拠番号4「公有水面埋立承認取消通知書の別紙「取消処分の理由」)のとおりである。
 
第2 審査請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の答弁
  本件審査請求を却下する
 との裁決を求める。
2 本案に対する答弁
  本件審査請求を棄却する
 との裁決を求める。
 
第3 本案前の答弁の理由
 行政不服審査法(以下「行審法」という。)7条2項は国の機関が「固有の資格」において処分の名宛人とされた場合には行審法の適用除外となることを定めているところ、審査請求人である沖縄防衛局は国の機関であり、別紙1「適格を欠いた不適法な審査請求であることについて」において詳述するとおり、「固有の資格」において第1、1の取消処分(以下「本件承認取消処分」という。)の名宛人となったものであるから、審査請求適格を欠く審査請求であり、不適法として却下されなければならない。
 
第4 本案に対する答弁の理由
 別紙2「本件承認取消処分が適法であること」において詳述するとおり、公有水面埋立承認取消通知書に付記したとおりの取消処分の理由が認められるものであり、また、本件承認処分を取り消すことについての公益上の必要性が認められるものであるから、本件承認処分は適法・適正になされたものである。
 
第5 行政不服審査法29条4項所定の書面について
 沖縄防衛局は、「固有の資格」に基づいて本件承認取消処分の名宛人とされたものであって行政手続法の適用は除外されるものである(行政手続法4条1項)。運輸省港湾局管理課長・建設省河川局水政課長通達「行政手続法の施行に伴う公有水面埋立法における処分の審査基準等について」(港管第2159号・建設省河政発第57号平成6年9月30日)は、「法に規定する免許等の処分のうち、行政手続法第5条の適用を受ける次の表の「処分名」の欄に掲げるもの」として、公有水面埋立免許(法2条第1項)を挙げる一方、公有水面埋立承認は挙げていないことから、公有水面埋立承認については行政手続法が適用されないとの理解が示されていたことは明らかである。本件承認取消処分については、行政手続法の適用は除外されているものであるから、本件承認取消処分に係る行政手続法24条1項の調書及び同条3項の報告書は存在しない。
 なお、行政手続法に基づくものではないが、本件承認取消処分は不利益処分であるため、国の機関が「固有の資格」において処分の名宛人となる場合であっても手続的保障をすることが望ましいと判断し、本件承認取消処分について行政手続法所定の手続に準じた聴聞手続を実施している。同聴聞手続について作成された調書は審査請求人提出の証拠番号
22「聴聞調書」であり、同聴聞手続について作成された報告書は処分庁提出の証拠番号 137「聴聞報告書」である。
(引用終わり)
               
別紙1 適格を欠いた不適法な審査請求であることについて
(引用開始)
第1 「固有の資格」で受けた処分について審査請求をなしえないこと
1 行政不服審査法は私人の救済を目的とする手続であること
2 地方自治保障の点からも国の審査請求の適格を認めることには問題があること
3 国の審査請求には客観性・公正性からの問題があること
4 小括
第2 「固有の資格」の意義と判断基準についての一般的な理解について
1 運輸省建設省は公有水面埋立承認について行政手続法が適用されないとの理解を示していたこと
2 行政不服審査法にいう「固有の資格」と行政手続法にいう「固有の資格」は同義であると理解されていること
3 「固有の資格」の判断基準
4 本件について
第3 公水法は「承認」処分の名宛人を国に限定していること
1 国以外の者は「承認」処分の対象とならないこと
2 「承認」と「免許」は制度が異なり単なる用語変換ではないこと
3 小括
第4 本件埋立事業は国の機関のみが担い手となる性格のものであること
1 条約に基づく国家間の基地提供のための事業であること
2 本件埋立事業についての閣議決定
3 日米合同委合意・閣議決定防衛大臣告示等は私人がなしえないこと
4 小括
 
第5 執行停止決定に示された「固有の資格」についての国土交通大臣の判断は論理をなしていないこと
 審査請求人は、本件審査請求とともに執行停止の申立てをし、国土交通大臣は「固有の資格」に基づくものではないとして執行停止決定をしているが、国土交通大臣の示した「固有の資格」に関する判断が論理をなしていないことについて、念のために述べておくこととする。
1 執行停止決定の理由
 国土交通大臣は、執行停止決定に付した理由において、「(1) 審査請求をなし得る者は、「行政庁の処分に不服がある者」(行審法第2条)であるところ、ここにいう「処分」、すなわち、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行審法第1条第2項)とは、国又は地方公共団体の行為によって「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を
確定する」ものであると解されている(最高裁昭和39年10月2 9日判決)。そして、行審法が「国民の権利利益の救済」を目的としていること(行審法第1条第1項)を合わせて考えると、申立人のような国の機関であっても、上記の意味での「処分」を受けたものといえれば、一般私人と同様の立場で「処分」を受けたものとして、当該処分についての
審査請求をなし得るものと解することができる。この点、埋立承認の「撤回」は、埋立てをなし得る法的地位・利益を失わせる点で、埋立承認の「取消し」と同じであるところ、前件取消しの違法性が争われた前件平成28年最高裁判決は、この「取消し」が行審法第2条の「処分」に当たることを前提とした判断を行っている。その上、埋立承認の撤回が「処分」に当たるとすることは、埋立ての「承認」の撤回が、埋立てをなし得る法的地位・利益を失わせる点で、一般の事業者が受ける埋立ての「免許」の撤回と全く変わることはないことを考えると、「国民の権利利益の救済」という行審法第1条の目的とも整合するといえる。したがって、本件撤回は、行審法第2条の「処分」に当たるということができ、申立人は、本件撤回についての審査請求をすることができると考えられる。
(2) この点、処分庁は、申立人が「固有の資格」において本件撤回の相手方となったものであり、行審法の規定は適用されないと主張する(行審法第7条第2項)。しかしながら、前記(1)のとおり、上記の前件平成28年最高裁判決及び行審法の目的などに照らせば、本件撤回は、行審法第2条の「処分」、すなわち、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ものに当たるのであるから、申立人は一般私人と同様の立場で処分を受けたといえるのであって、「一般私人が立ち得ないような立場にある状態」と解されている「固有の資格」においてその相手方となったものではないと認められる。」とした。
要するに、国土交通大臣の判断は、「本件撤回は、行審法第2条の「処分」に当たるということができ、申立人は、本件撤回についての審査請求をすることができると考えられる。」、「本件撤回は、行審法第2条の「処分」、すなわち、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ものに当たるのであるから、申立人は一般私人と同様の立場で処分を受けたといえる」というものであり、「処分」と「一般私人と同様の立場」と同一とするものである。
2 国土交通大臣の上記判断は論理をなしていないこと
 国の機関についても都道府県知事の「承認」を受けなければ公有水面を埋立てることはできないもので「承認」は国の機関に公有水面埋立をなしうる法的地位を設権する処分であり、この承認処分を取り消して公有水面埋立をなしうる法的地位を喪失させる行為が「処分」に該当することは当然である。本件承認取消処分に際して、処分庁は沖縄防衛局に対し、「この決定があったことを知った日の翌日から起算して6箇月以内に、沖縄県を被告として(訴訟において沖縄県を代表する者は、沖縄県知事となります。)、処分の取消しの訴えを提起することができます(この決定があったことを知った日の翌日から起算して6箇月以内であっても、この決定の日の翌日から起算して1年を経過すると処分の取消し
の訴えを提起することができなくなります。)。」として、本件承認取消処分に対する取消訴訟が提起できる旨を教示している。
 当該行為が「処分」に該当するか否かということと、その「処分」について「固有の資格」において処分の名宛人となっているのか否かは、次元の異なる問題である。
 このことは、条文自体から明らかである。行審法7条2項は、「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。」と定めている。論理的に、「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分」という概念は、「これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為」を含む、これよりも広い概念である。
 すなわち、国の機関等に対する「処分」には、国の機関等が「固有の資格」に該当する場合と国の機関等が「固有の資格」に該当しない場合があり、国の機関等に対する「処分」のうち、「固有の資格」において国の機関等が名宛人となる処分は行審法の適用対象外とし、「固有の資格」ではない場合は行審法の適用となることを定めているのであり、「処分」と「固有の資格」とは、次元の異なる問題である。
 本件承認取消処分が「処分」に該当すること自体は争いがない当然のことであり、この「処分」が「固有の資格」において「処分」の名宛人とされたか否かについて、「処分」であるから「固有の資格」であるということは、およそ論理の体をなすものではなく、かかる論法によって「固有の資格」を否定した国土交通大臣の判断は一見明白に不合理なものである。
 
(脚注)沖縄防衛局の主張は、一般的に、国や地方公共団体の機関に対する行為が「処分」と称される場合には、国の機関等が権利利益の主体として相手方になり、その権利利益が制約される処分性を有する場合に限って用いられているものではなく、行政権限の行使主体として相手方となり行政権限の変動をもたらすものを含む意味にも用いられているところ、行審法7条2項にいう「国の機関…に対する処分」とはこの両者をあわせた概念をいうものであり、同項は、この広い概念での「処分」に該当するもののうち、行政権限の変動をもたらす処分は「固有の資格」において当該処分の相手方となるものとして行政不服審査法の適用除外となり、権利利益を変動させるという意味での処分性を有する処分のみが行政不服審査制度の対象となることを注意的に確認したものであるというもののようである。
 しかし、このような解釈が成り立ちえないことは、「固有の資格」に基づくものであることについて争いのない補助金適正化法に基づく地方公共団体に対する補助金交付決定や、水道法に基づく市町村に対する水道事業経営認可を考えれば明らかである。
 補助金適正化法に基づく補助金交付決定は、行審法1条2項にいう処分に該当すると理解されている。
 補助金適正化法25条は、地方公共団体のみを対象として不服の申出についてさだめているが、これは、補助金交付決定は処分性を有するものであるから、私人については行政不服審査法による不服申立てができるが、地方公共団体は「固有の資格」に該当することから行審法の適用除外となるため、行審法8条が規定する特別の不服申立制度として設けられた制度と理解されている。
 すなわち、補助金交付決定は処分性を有するものであるから行政不服審査制度の対象である「処分」に該当するが、地方公共団体は「固有の資格」において処分を受けるものであるから行審法の適用除外にあたるとされているものである。
 また、水道法に基づく市町村に対する水道事業経営認可は、原則として市町村が原則的な担い手とされているが、私人が対象となる場合も存する。
 そして、水道事業経営認可は権利利益の変動を生じさせるものであるから、処分性を有し、私人は不服がある場合には行政不服審査請求をできるものと解されるが、市町村は「固有の資格」において処分の名宛人となったものとして行政不服審査法の適用除外となるとするのが一般的理解である。
 これらの例よりしても、行審法7条2項は、国の機関等に対する処分性を有する行為(行審法1条2項にいう処分)のうち、「固有の資格」において処分の名宛人となる場合を行審法の適用除外とするものであることは明らかである。
 
第6 行政法学者らの声明
第7 結論
(引用終わり)
 
別紙2 本件承認取消処分が適法であること
(目次から引用開始)
第1章 埋立承認処分についての職権での取消処分が可能であること
 第1節 公有水面埋立法42条3項が同法32条の準用を示していないことについて
 第2節 授益的処分の撤回等をできる場合について
第2章 取消処分の理由
 第1節 「災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」(公水法4条1項2号)の要件を充足していないこと及び同要件の充足を担保するための負担(留意事項1)の不履行
  第1 はじめに(第2から第5の概要)
  第2 公水法4条1項2号(災害防止ニ付十分配慮)の趣旨
   1 「災害防止ニ付十分配慮」の意義
   2 「災害防止ニ付十分配慮」要件の充足は願書等で特定された「設計の概要」について判断されること
  第3 公水法2条2項4号が免許の出願段階で「設計の概要」で足りるとした趣旨とこれに対応する仕組み
   1 公水法2条2項4号と34条
   2 公水法13条の2
   3 免許処分後に「災害防止ニ付十分配慮」要件を充足していないと認められるに至った場合と要件不充足を理由とする取消処分の可否
  第4 留意事項1の違反を理由とする取消処分が認められること
   1 実施設計について協議の持つ意味と協議を担保するために承認に付された附款(負担)の不履行を理由とする撤回が認められること
   2 「協議を行うこと」の意義(協議が調うことが必要であること及び実施設計全体を対象とする必要があること)
   3 留意事項1に関する事実の経緯
  第5 埋立区域の地盤の液状化の危険性及び設計の概要に従って護岸を構築した場合の沈下等の危険性が明らかになっていること(「災害防止ニ付十分配慮」)の要件を充足していないと認められること)
   1 「災害防止ニ付十分配慮」要件は設計の概要について判断されること
   2 C護岸の地盤が埋立承認処分の前提である設計概要説明書の記載及び審査段階における沖縄防衛局の沖縄県に対する説明とはまったく異なるものであったこと
   3 承認後の土質調査の結果により「災害防止ニ付十分配慮」(公水法4条1項2号)を充足していないと認められるに至ったこと(取消事由が認められること)
   4 「災害防止ニ付十分配慮」要件の不充足を理由とする取消処分が比例原則に反するとは認められないこと
  第6 埋立区域の海底に活断層が存在していると指摘されていること(「災害防止につき十分配慮」の要件を充足していないと認められること)
 第2節 「環境ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」(公水法4条1項2号)の要件を充足しないこと
  第1 公水法4条1項2号(環境保全ニ付十分配慮セラレタルモノ)の意義・同要件の事後的不充足による撤回が認められること
   1 同要件の制定経緯
   2 環境影響評価手続とのかかわり
   3 小括
  第2 「環境ニ付十分配慮セラレタルモノ」の要件を充足していないと認められるに至っていること
   1 総論
   2 留意事項2の意義と環境保全要件との関係
   3 留意事項4の意義と環境保全要件との関係
   4 環境保全要件が事後的に消滅していると認められる事由
 第3節 「国土利用上適正且合理的ナルコト」(公水法4条1項1号)の要件を充足していないと認められること
  第1 埋立区域周辺の建築物等が統一基準の高さ制限を超過していることが判明したことより「埋立地の用途に照らして適切な場所」に適合していないと認められること
  第2 辺野古新基地が完成しても統合計画における返還条件が満たされなければ普天間飛行場は返還されないことが明らかになったことにより「埋立地の用途に照らして適切な場所」「埋立の動機となった土地利用に公有水面を廃止するに足る価値」に適合していないと認められること
  第3 承認処分後の土質調査によって埋立対象区域の海底地盤が想定外の特殊な地形・地質であることが判明したことにより「埋立地の用途に照らして適切な場所」に適合していないと認められること
  第4 本件承認処分後の土質調査の結果等より埋立区域の海底に活断層が存在しているとの指摘がなされていることから「埋立地の用途に照らして適切な場所」に適合していないと認められること
第3章 授益的処分取消(撤回)制限法理による制限はないこと
  第1 公有水面埋立承認には授益的処分取消(撤回)制限法理は妥当しないこと
   1 要件の事後的不充足による撤回と、要件の原始的不充足の事後的判明による将来的な取消は同質であること
   2 要件を充足しない処分に基づく事業を将来にわたって継続させるために取消(撤回)を制限する法理は存しないこと
   3 国が取消(撤回)制限法理を主張することは許されないこと
  第2 仮に同法理の適用があるとしても本件では取消処分が認められること
   1 辺野古新基地建設について特別な公益は認められないこと
   2 辺野古新基地建設の公益性についての評価障害事実
   3 本件承認処分を取り消すことは公益上の要請であること
   4 沖縄防衛局には正当な信頼ないし信頼保護法理の主張適格は認められないこと
   5 小括
第4章 本件承認取消処分に手続的違法があるとの主張に理由がないこと
   1 沖縄防衛局の主張の要旨
   2 行手法が適用されないこと
   3 「相当な期間」をおいていること
   4 聴聞主宰者が続行期日を指定しなかったことが、違法・不当ではないこと
   5 結語
第5章 本件承認取消処分が著しい行政権の濫用として違法であるとの主張に理由がないこと
結論
(引用終わり)
 
 最後に、国地方係争処理委員会に審査を申し出る前提として、沖縄県が11月9日付で国土交通大臣に送付した「執行停止決定の取消し要求及び審査の申出の事前通知について」をご紹介しておきます。
 
(引用開始)
   土海第814号
   平成30年11月9日
 
国土交通大臣 石井 啓一 殿
 
   沖縄県知事 玉城 康裕
 
         執行停止決定の取消し要求及び審査の申出の事前通知について
 
 平成30年8月31日付けで本県が行った普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の取消し(沖縄県達土第125号及び沖縄県達農第646号)について同年10月16日付けで沖縄防衛局長が行った執行停止の申立て(沖防第5116号)に対し、貴職は同月30日付けで執行停止決定(以下「本件執行停止決定」といいます)をしました。
 しかし、公有水面の埋立承認については、処分の名宛人が国の機関に限定されているものであり、沖縄防衛局長は一般私人の立ち得ない立場、すなわち、「固有の資格」において前記取消処分の名宛人となったものですから、行政不服審査法平成26年法律第68号)第7条第2項により同法の適用は除外され、沖縄防衛局長には行政不服審査法に基づく執行停止申立ての適格は認められず、貴職は、このような申立適格を欠いた不適法な執行停止申立てにより執行停止決定をする権限はありません。それにも関わらずなされた本件執行停止決定の違法性は明らかです。
 この点、貴職は、本件執行停止決定に付された理由において、「平成28年最高裁判決及び行審法の目的などに照らせば、本件撤回は、行審法第2条の「処分」、すなわち、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ものに当たるのであるから、申立人は一般私人と同様の立場で処分を受けたといえるのであって、「一般私人が立ち得ないような立場にある状態」と解されている「固有の資格」においてその相手方となったものではないと認められる。」としていますが、行政不服審査法第2条にいう「処分」に該当するから同法第7条第2項にいう「固有の資格」に該当しないとすることは論理をなすものではありません。
 すなわち、行政不服審査法は、第1条第2項において「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)」と「処分」の定義をしていますから、同法に「処分」という語が用いられている場合には同義であり、同法第2条の「処分」と同法第7条第2項の「処分」は同義です。同法第7条第2項は、「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。」と定め、国の機関等に対する処分のうち、国の機関等が「固有の資格」において処分の名宛人となっている場合には行政不服審査法の適用が除外されるものとしています。国の機関等に対する「処分」には、「固有の資格」において処分の名宛人となる場合とそれ以外の立場(一般私人と同様の立場)において処分の名宛人となる場合があることは明らかであり、「処分」に該当するから「固有の資格」に該当しないという論理は成り立ち得ないものです。そもそも、「処分」に該当すれば「固有の資格」に該当しないのであれば、「処分」に該当するか否かのみを判断すればよいのであり、同法第7条第2項はまったく意味のない規定ということになります。貴職が執行停止決定に付した理由は一見明白に不合理なものであり、本件執行停止決定の違法性は明らかです。
 また、公有水面埋立ての承認処分について「固有の資格」を否定することは、運輸省建設省が示していた行政手続法についての理解との整合性も認められません。行政不服審査法第7条第2項の「固有の資格」と行政手続法(平成5年法律第88号)第4条第1項の「固有の資格」は同義と理解されていますが、運輸省港湾局管理課長・建設省河川局水政課長通達「行政手続法の施行に伴う公有水面埋立法における処分の審査基準等について」(港管第2159号・建設省河政発第57号平成6年9月30日)は、「法に規定する免許等の処分のうち、行政手続法第5条の適用を受ける次の表の「処分名」の欄に掲げるもの」として、公有水面埋立免許(法第2条第1項)を挙げる一方、公有水面埋立承認は挙げていないことから、公有水面埋立承認については行政手続法が適用されないとの理解に立っていたことは明らかです。
 以上のとおり、本件執行停止決定に付された理由が行政不服審査法の解釈として成り立ち得ないことは明らかであり、また、国土交通省の前身である運輸省建設省の発した行政手続法の適用を受ける公有水面埋立法における処分についての理解との整合性を欠いていることは明らかですから、貴職において再考され、直ちに本件執行停止決定を取り消すことを求めます。
 貴職が本件執行停止決定を取り消さない場合には、地方自治法(昭和22年法律第67号)第250条の13第1項の規定に基づき、国地方係争処理委員会に審査を申し出ることになりますので、このことについて、同条第7項の規定に基づき、あらかじめ通知します。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/辺野古沿岸埋立承認撤回関連)
2018年7月27日
翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋立承認の撤回に向けた意向を表明しました(2018年7月27日)
2018年9月1日
玉城デニー氏による沖縄県知事選挙への出馬表明(2018年8月29日)を視聴する(冒頭発言部分文字起こし)
2018年10月20日
辺野古沖公有水面埋立承認取消(撤回)処分に対する沖縄防衛局による審査請求と執行停止申立てを考えるための資料のご紹介
2018年10月25日
沖縄県知事が「執行停止に関する意見書」(2018年10月24日)を国土交通大臣に提出
2018年10月27日
行政法研究者有志による声明「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の濫用を憂う」(2018年10月26日)を読む
2018年11月1日
辺野古沿岸公有水面埋立承認取消(撤回)の執行停止を決定した石井啓一国土交通大臣~考えるための資料のご紹介