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身近に迫る「言論表現の自由」の危機~南丹市・香山リカ氏講演中止事件から考える

 2018年11月26日配信(予定)のメルマガ金原No.3343を転載します。
 
身近に迫る「言論表現の自由」の危機~南丹市香山リカ氏講演中止事件から考える
 
 11月24日に京都府南丹市園部町で開催された子育て応援講演会で、当初講師を務めることになっていた精神科医香山リカさんが、5件の抗議電話と来庁による抗議1件に脅えた市当職の判断で、別の講師に差し替えられるという事件が発生しました。
 その間の経緯については、地元の京都新聞の報道をお読みいただければと思います。
 
京都新聞 2018年11月22日 20時10分
香山リカさん講演中止 「日の丸の服着ていく」市に妨害電話
 
京都新聞 2018年11月24日 18時20分
妨害予告で香山リカさん講演中止 市が経緯説明「幼い子も参加」
 
 この事件についての論評としては、月刊『創』編集長の篠田博之さんが書かれた文章が要領良く関連資料なども紹介されていて、参考になりました。
 
YAHOO!ニュース 11/24(土) 21:55
再び起きた香山リカさん講演会中止事件は言論をめぐる状況の危うさを示している
篠田博之 | 月刊『創』編集長
 
 京都新聞の伝えるところによると、「『日の丸の服を着て行ってもいいのか』といった匿名の電話のほか、『香山さんをよく思わない人が行くかもしれない。大音量を発する車が来たり、イベント会場で暴力を振るわれ、けが人が出たら大変だろう』と中止を迫る内容もあり」、「子育て応援フェスタでは香山さんの講演のほかに、子どもの来場が見込まれるものづくり体験や出産や子育ての相談コーナーなどを実施する予定のため、同課は『本来は警備体制をしいてでもやるべきだが、会場の混乱を避けるためにやむを得ず、講師の差し替えを決めた』」と南丹市子育て支援課はコメントしたそうです。
 しかし、篠田さんが紹介されているサイトが指摘するところによれば、南丹市役所に押しかけて抗議がなされたのは11月14日とおぼしく(イベントの10日前ですね)、それから講師の差し替えが出来る位なら、抗議の内容を公表し、それでも市としては中止するつもりはないという声明を出せば、不安を感じる市民は参加を取りやめるだろうし、市の立場を支持する者は参加するだろうし、いずれにせよ、事なかれ主義でこそこそと講師を差し替えるなどというみっともないことをせずに済んだはずです。
 開催地の南丹市園部町といえば、故野中広務さんの地元でしたよね。草葉の陰でさぞ嘆いておられることでしょう。
 
 何よりも、この南丹市の事件は、日本中の全ての人々の人権に関わる問題、中核的人権である「言論表現の自由」が圧迫され、押しつぶされようとしているという危機的状況の典型例として重視すべきです。
 
 先にご紹介した記事の中で、篠田博之さんは以下のように警鐘を鳴らしておられます。
 
(引用開始)
 実は同様の講演会やイベントの中止事件は、報道されていないものも含めてこれまで相当起きている。かつての在特会などネトウヨは、「反日」とレッテルを貼ったものは次々と攻撃してきたし、一時、慰安婦問題などの集会が次々と中止になった。
 さらに言えば、この10年ほど、社会の側がそういう事例に対して脆弱になり、少し抗議の電話がかかってくるとすぐに中止にしてしまう傾向が加速している。かつて大学は言論の砦と言われた時代もあったが、大学も最近は、政治的な問題の集会で抗議が入ると、使用許可取り消しといった措置に出ることが多くなった。
 近年は、安倍「一強」政権に忖度して、憲法をめぐる集会が次々と会場使用許可取り消しになったりしている。特に行政の場合は、忖度の度合いがますますひどくなっており、安倍政権を批判するような護憲の色合いがある集会は会場が使えなくなってきている。
 それと同じ流れのわかりやすい例が、さいたま市で「九条俳句」が公民館だよりという会報から掲載中止され、裁判になった事件だ。これは現在、最高裁で争われているが、経緯については下記をご覧いただきたい。
 
 3月1日、東京高裁にて始まった「九条俳句」訴訟が提起する大事な問題
 
 この記事にあるように、今年1月、私がコーディネイタ―になって日本ペンクラブ主催の「『忖度』が奪う表現の自由」というシンポジウムが開催されたが、パネリストは香山リカさん、上野千鶴子さん、そして「九条俳句」の弁護人だった。そこでは、言論や表現の自由が「忖度」社会でいかに危うくなっているか議論がなされたのだが、今回の香山さんの講演会中止事件はまさにその流れにあるものと言ってよい。
 言論表現の自由の侵害というのは、目に見えるようなあからさまな暴力によってではなく、電話5本で講演会が中止になるといった事例が増えていくことでじわじわと拡大していくものだ。
 今回の中止事件についても、行政を含めた主催者側はこれがそういう深刻な事態に関わっていることを果たしてきちんと認識し、それでもやむにやまれずに中止にしたものだったかどうかが問題だ。
 憲法に書かれているように、我々が「不断の努力」を続けないと、言論表現の自由など、もろくも崩れていくことは決して杞憂ではない。
(引用終わり)
 
 私自身、今まさに、来年1月に開催する「安倍政権を批判するような護憲の色合いがある集会」の実行委員会メンバーとして準備に大わらわの状態であるだけに、南丹市のケースもとても「ひとごと」とは思えません。
 気を引き締めて「不断の努力」(日本国憲法12条)を続けたいと思います。
 
(参考動画)
静岡県立大学ジャーナリズム公開講座第3期第11回(2016年2月25日)
山田健太氏(専修大学教授)「言論の自由を脅かすもの」(1時間01分)