和歌山弁護士会が和歌山県と「災害発生時における法律相談業務等に関する協定書」を締結~弁護士会の災害ADRに県も協力を約束
2018年12月27日配信(予定)のメルマガ金原No.3374を転載します。
全国各地で、地方自治体と地元弁護士会との間で、大規模災害の発生に備え、被災者のための法律相談などを迅速に実施するための協定(災害協定)を締結する動きが進んでいることは、去る12月17日に全国市長会と日本弁護士連合会が「災害時における連携協力に関する協定」を締結したことをお伝えしたブログの中でもご紹介したとおりです。
メディアによる報道のいくつかをご紹介しておきます。
NHK NEWS WEB 和歌山NEWS WEB 12月26日 17時34分
県と弁護士会「災害ADR」協定
(引用開始)
南海トラフの巨大地震などの際に住民トラブルを迅速に解決するため、和歌山県と和歌山弁護士会は裁判を行わずに問題の解決を図る「災害ADR」と呼ばれる取り組みを協力して実施することになり、26日、協定を結びました。
26日は県庁で、仁坂知事と和歌山弁護士会の山下俊治会長が協定書を取り交わしました。「ADR」は、民事上のトラブルを裁判を行わずに弁護士などが間に入って話し合いで解決を目指す手続きで大規模な災害では、土地の境界が分からなくなるなどのトラブルが頻発すると予想されることから、復興・復旧を迅速に進めるうえでも「災害ADR」の必要性が指摘されています。
協定では、大規模な災害が起きた際に▼県が主催する法律相談会に弁護士が無料で参加することや▼弁護士会が災害ADRを行う際は県が場所を提供することなどが定められています。
これについて仁坂知事は、「法律の専門家が被災者の問題の解決を進めてくれるのは心強い」と話したほか、和歌山弁護士会の山下俊治会長は、「県と協定を結べたことは大変意義深い。災害時に多くの人に利用してほしい」と話していました。
(引用終わり)
産経NEWS 2018.12.27 07:24
大規模災害の民事トラブル解決へ 和歌山弁護士会と県が協定
(抜粋引用開始)
災害ADRは、当事者の申し立てを受け、弁護士が仲裁人となり相手方の言い分も聞いて和解による解決を目指す。裁判に比べ、時間や費用が少なく済む利点がある。
今回の協定では、災害時に県が無料法律相談を開催する場合に弁護士会は弁護士を派遣。弁護士会が災害ADRを実施する場合は県有施設を提供するほか、必要に応じて市町村などと連携し、開催場所を確保する。避難所などで災害ADR開催も可能になるという。
大規模災害の被災地では、不動産の賃貸借や土地の境界といったトラブルが多発する一方、双方が被災者となるケースも多く、迅速な紛争解決が早期の生活再建につながるという。
(略)
(引用終わり)
共同通信 2018年12月26日 / 16:10 /
災害時ADRで協定締結、和歌山
(抜粋引用開始)
(略)
和歌山県では、ADRについてのパンフレットを避難所で配布するなどして周知を図る考えだ。
(引用終わり)
WBS和歌山放送ニュース 2018年12月26日 20時18分
(抜粋引用開始)
和歌山県はこうした例を踏まえて協定を結んだもので、担当者は「裁判所が被災したり、交通網が寸断されたりする可能性もある。ADRは各地の避難所で実施できる」と利点を強調しています。
(引用終わり)
テレビ和歌山ニュース 2018-12-26(水) 19:05
災害ADRの協定
(抜粋引用開始)
大規模災害が発生した際に多発することが予想される、境界紛争をはじめとする近隣トラブルの解決に役立てるための、法律相談や裁判によらない紛争解決手続き「ADR」に関する協定が、県と和歌山弁護士会との間で結ばれ、今日、その締結式が行われました。
締結式は今日、県庁知事室で行われ、仁坂知事と和歌山弁護士会の山下俊治会長が、それぞれ協定書に署名しました。
(略)
(引用終わり)
全12条の短い協定ではありますが、その意義は非常に大きいと思われます。
第一に、発災から間を置かず、適切なタイミングで被災者のための切れ目のない法律相談体制を構築する上で、事前に自治体と弁護士会との間で協定を締結し、相互に顔の見える連携関係が出来ていることによる効果には大きなものがあるはずです。
第二に、まず県との間で災害協定が締結できたことにより、今後、和歌山弁護士会と県下の市町村との間の災害協定締結に向けて大きな弾みがつくことが期待されます。
そして第三に、上記に引用した記事が揃って強調するとおり、大規模災害発生時に、和歌山弁護士会が被災地で実施することが想定される災害ADRに対し、県が開催場所の確保や広報に協力すること、また、災害ADRの開催にあたり、地元市町村との連絡調整が必要な場合には、県がこれに協力することが明示されており、このような、将来の災害に備えて弁護士会災害ADRへの協力を予め明確に認めた県レベルの災害協定は、おそらく全国初だろうということです。
和歌山弁護士会でこの件を担当したのは災害対策委員会(九鬼周平委員長、柳川正剛副委員長)ですが、平成27年度に発足したというまだ「若い」委員会であり、前身の災害対策マニュアル作成プロジェクトチーム時代を含めても、まだ6年余りの活動期間しか有していません。従って、まだまだ、先行して災害問題に取り組んできた他の弁護士会の経験に学びながら、手探りで方向を模索するという段階かもしれませんが、自ら被災者としての体験を有する若い正副委員長のリーダーシップの下、着実な実績を積み重ね、今回の県との災害協定締結に至ったことを、非常に喜ばしく思っています。
などと書くと、まるで「甥の活躍に頬をゆるめる伯父さん」といった風情ですね。それだけ年をとったということでしょうが。