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白浜町議会が放射性物質の受け入れを拒否する「白浜町安心・安全なまちづくり推進条例」を可決(2019年12月18日)

 2019年12月19日配信(予定)のメルマガ金原No.3436を転載します。

白浜町議会が放射性物質の受け入れを拒否する「白浜町安心・安全なまちづくり推進条例」を可決(2019年12月18日)

 昨日(12月18日)、最終日を迎えた白浜町議会(和歌山県)は、放射性物質の受け入れを拒否することなどを内容とする「白浜町安心・安全なまちづくり推進条例」を全会一致で可決しました。
 多くのメディアがこの件を伝えましたが、以下に、地元紙・紀伊民報の報道(WEB版)を引用します。

2019年12月18日 紀伊民報(WEB版 AGARA)
核のごみ「拒否」条例可決 白浜町議会が全会一致

(引用開始)
 白浜町議会(和歌山県)は18日、「核のごみ」を含む放射性物質の受け入れを拒否する町の条例案を全会一致で可決した。同種の条例が県内の市町村で制定されたのは初めて。
 条例案の討論では、溝口耕太郎議員(無)が「住民が将来にわたって安心して暮らせるよう、また観光客が楽しく観光できる町として全国に発信するためにも条例は必要だ」、広畑敏雄議員(共産)は「町長の英断と考える。評価して賛成したい」と、いずれも賛成の立場で意見を述べた。反対討論はなかった。
 議会終了後、井澗誠町長は「町民や観光客の視点から考えて今回の条例制定を考えた。大きな一歩になったと考えている」と語った。
(略)
 「脱原発わかやま」代表の冷水喜久夫さん(68)=白浜町大古=は「条例が可決され、大変良かった」と評価。「核のゴミはいらん日置川の会」筆頭共同代表の前岩崇さん(73)=同町塩野=も「全会一致で可決されたことに、町や議会には感謝したい」とした上で「関西電力(や関連会社)が持つ土地については、再生可能エネルギーなどに使ってもらえるよう、町から要望してもらいたい」と語った。
 条例は「安心・安全なまちづくり推進条例」。その中では、まちづくりに影響を及ぼすと危惧される事項を認めないと規定。事項の一つに、原子力発電所の核燃料、使用済み燃料などを町内に持ち込むことや、それらを貯蔵、処分する施設を町内に建設することを挙げている。(後略)
(引用終わり)

 以上の記事から明らかなように、本条例案は町当局から提案されたものであり、12月議会開会前から、制定が有力視されていました。これについても、紀伊民報の記事を引用したいと思いますが、とりわけ【白浜町での中間貯蔵施設などを巡る主な発言や動き】が、今回の条例の提案・可決に至る経過を分かりやすくまとめてくれていますので、是非お読みください。

2019年12月4日 紀伊民報(WEB版 AGARA)
核のごみ拒否へ 白浜町が条例制定の方針

(引用開始)
 和歌山県白浜町は3日、原子力発電所から出る放射性廃棄物(核のごみ)の受け入れを拒否する条例を制定する方針を明らかにした。町議会12月定例会に条例案を提出する。議会で可決されれば、町内での原子力関連施設の立地は事実上、不可能になる。
 2017年に経済産業省が核のごみの最終処分場の適地を色分けした「科学的特性マップ」を公表後、全国で受け入れを拒否する条例が施行されている。
 町によると、同種の条例は県内の市町村では初めてになる。井澗誠町長は本紙取材に「(放射性物質を)受け入れないための条例を制定することは、将来に禍根を残さないためで、町の発展につながる。大地震による被害も想定されており、紀伊半島にそういう施設(原子力関連施設)は似合わない、というのが大方の意見だろう」などと語った。
 町議会の全員協議会が3日にあり、町が条例案を初めて示した。名称は「安心・安全なまちづくり推進条例」。
(略)
 白浜町では、旧日置川町で昭和50年代以降に原発誘致計画の問題が浮上。推進、反対それぞれの立場での住民活動が活発になり、町を二分する問題に発展した。
 最近では、関西電力が旧日置川町に土地を所有しているとして、一部住民の間から「使用済み核燃料の中間貯蔵施設ができるのではないか」との疑念が表面化。町議会では17年以降、町の姿勢をただす質問が続いたほか、市民団体からの要望提出などが相次いだ。井澗町長は当初、「(国や電力会社から)申し出があれば話は聞く」などと答えていたが、後に「受け入れる考えはない」と表明している。
白浜町での中間貯蔵施設などを巡る主な発言や動き】
17年12月
・町長が「何の情報もないが申し出があれば話を聞く」と町議会で答弁
18年2月
・町長が「(受け入れは)頭の中にない」と町議会で答弁
・市民団体が「受け入れ拒否」の表明を求め町に要望書を提出
(4月には別の市民団体も同様の要望)
18年6月
・町長が「受け入れは考えていない」と町議会で答弁
18年7月以降
・町内で施設受け入れ反対のための団体が設立
18年8月
・受け入れ拒否の議会議決を求め住民有志が町議会へ請願を提出
・市民団体が「受け入れない」表明を求め町に要望書を提出
18年9月
・町長が「申し入れがあっても協議する考えはない」と町議会で表明
18年12月
・町議会が8月に提出された請願を不採択に
・市民団体が「拒否」条例の制定を求め町に要望書を提出
19年9月
・町長が「受け入れないための条例や宣言の制定を検討」と町議会で答弁
・市民団体が条例の制定を求め町に要望書を提出
19年12月
・町が町議会に「拒否」条例を提案へ
(引用終わり)

 上記紀伊民報の報道にもあるとおり、現在は白浜町の一部となっている旧日置川町(ひきがわちょう)では、関西電力による原子力発電所立地計画のために町を二分する大問題に発展した歴史があります。
 しかしながら、私自身、和歌山県民でありながら、その歴史について知ったのは3.11以降という情けない状況であり、もっぱら脱原発わかやまが編集した以下の書籍から学ばせてもらいました。

原発を拒み続けた和歌山の記録』
 汐見文隆 監修
 「脱原発わかやま」編集委員会 編集
  寿郎社 2012年5月11日刊 

原発を拒み続けた和歌山の記録 [単行本]

寿郎社

2012-05-11

 


 ところで、日置川町での原発建設計画が頓挫した後も、関西電力は入手済みの土地を手放さず、現地事務所も閉鎖せずに職員を常駐させ続けていることから、「使用済核燃料の中間貯蔵施設建設を狙っているのでは?」ということが、長く取り沙汰されてきました。
 そして、その「噂」が具体的な「懸念」に転化したのは2017年11月のことでした。同月23日、関西電力の岩根社長は福井県知事に対し、使用済核燃料中間貯蔵施設の県外立地について「2018年には具体的な計画地点を示す」と表明したのです。これは、知事が大飯3・4号再稼働同意にあたり「できるだけ具体化してほしい。関電は再稼働にあたって答えを示す必要がある」と求めたことに応じたものでした。
 これにより、一気に日置川町と合併した白浜町に注目が集まることになり、関西電力の関連会社が新たな土地を買い入れていることなども広く知られる事態となりました。
 これ以降、パンダと温泉の町・白浜に核のゴミはいらない、という運動が盛り上がり、県内、県外の諸団体からの要請や地元住民による反対運動のための団体結成が相次ぎ、このため、当初腰が定まらないと見られていた井澗誠(いたに・まこと)町長も、昨年の9月定例会の冒頭で、「使用済み核燃料の中間貯蔵施設につきましては、(略)受け入れることは考えておりませんし、仮に将来的に事業者等から申し入れがあったとしても、受入の協議を行う考えはありません」と表明するに至りました。
 巻末リンクのとおり、当時まだ「ブログ毎日更新」を続けていた私も、2018年当初からこの問題をフォローし続けていたのですが、上記井澗町長による受け入れ拒否声明で安心(?)してしまい、その後のフォローを怠っていました(体調の問題からブログの更新がストップしたこと、「原発がこわい女たちの会」が休会となって情報が入ってきにくくなったのが大きいのですが)。
 けれどその間にも、地元では、中間貯蔵施設等の核施設の受け入れを拒否する条例の制定を要望し続けていたのですね。

 そのような条例が全国でどの程度制定されているかについては、末田一秀さんが運営するサイト「環境と原子力の話」の中に「核関連施設・廃棄物拒否条例」としてまとめられており、それぞれの条例について、「条例本文」と「背景と解説」を読むことができます。 

 上記サイトには、昨日可決された「白浜町安心・安全なまちづくり推進条例」が早くも掲載されていました。

条例本文
背景と解説
(引用開始)
和歌山県白浜町
白浜町安心・安全なまちづくり推進条例
 合併した旧日置川町はかつて原発建設が狙われた地であり、今も関西電力及び関連会社が3か所に9ha,16ha,37haの土地を所有している。駐在員が2017年に2名から4名に増員されたことから、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の立地場所にされるのではないかと反対運動が広がった。当初は町長も反対を明言せず、議会も2018年12月に受け入れ拒否の議会議決を求めた請願を不採択としていた。しかし、2020年春に改選を迎える町長が2019年9月議会で拒否条例制定を検討すると答弁し、12月議会で全会一致で成立した。
 安心・安全なまちづくりに影響を及ぼすと危惧される事項を認めないとし、対象となる事項は、廃棄物、土砂等の不適切な処分と放射性物質の持ち込み、貯蔵又は処分する施設の建設としている。「認めない」という条文は町の立場の表明で禁止ではないでしょうが、条文解釈が問題になる事態は条例制定によって阻止できたはずです。安心・安全のために関電の持つ土地への対応を町には求めたい。
(引用終わり)

 なお、白浜町のサイトに、昨日(12月18日)議会に提出された議案第88号「白浜町安心・安全なまちづくり推進条例の制定について」がPDFファイルとして掲載されていますので、条文全文と「制定の要旨」を読むことができます。
 以下に、この条例の制定に至った理念を表明した「前文」と、この条例のキモである「第7条」を引用します。

(引用開始)
白浜町安心・安全なまちづくり推進条例
前文
 白浜町は、紀伊山地の山々や吉野熊野国立公園に指定されている円月島、千畳敷、三段壁、志原海岸など変化に富んだ魅力ある海岸線の自然景観に加え、日本三古湯の一つに数えられる白浜温泉をはじめとする椿温泉や日置川温泉などの温泉資源、世界遺産「熊野参詣道大辺路」や紀南熊野ジオパークをはじめとした多くの観光資源に恵まれており、そこに訪れる多くの観光旅行者は、幅広い産業に経済効果をもたらし、多くの雇用を創出するとともに、交流人口の拡大による地域の活性化に大きな役割を果たしている。
 これらの環境は、未来永劫守り続けていかなければならない。そのためには、町民が安心して、安全に暮らし、そして本町を訪れる人々が「訪れてよかった。また行きたい」と思えるまちづくりを続けていく必要がある。
 よって、ここに、町及び町民等がそれぞれの役割を果たし、安心で安全な観光立町としてふさわしい環境を守り続けていくことを決意し、この条例を制定する。
第1条(目的) 略
第2条(基本理念) 略
第3条(町の役割) 略
第4条(町民の役割) 略
第5条(地域活動団体の役割) 略
第6条(推進体制の整備) 略
第7条(環境の整備等)
 町は、全ての町民、観光旅行者等が安心して、安全かつ快適に生活又は滞在することができる環境の整備に努め、安心・安全なまちづくりに影響を及ぼすと危惧される事項を認めないものとする。
2 前項に規定する安心・安全なまちづくりに影響を及ぼすと危惧される事項は、次の各号に掲げるものとする。
(1) 廃棄物、土砂等の不適正な処分等を町内において行うこと。
(2) 放射性物質原子力発電所など原子力関連施設の核燃料並びにこれらから生ずる使用済燃料及び放射性廃棄物をいう。)の町内への持込み、及びこれらを貯蔵又は処分する施設を町内に建設すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、この条例の目的達成を阻害すること。
第8条(財政上の措置) 略
第9条(広報啓発等) 略
第10条(委任) 略
附則
 この条例は、公布の日から施行する。
(引用終わり)

 この条例制定が1つの区切り、大きな成果であることは間違いないでしょう。この運動の主眼は、そもそも核のゴミを受け入れる自治体などどこにもないのだから、そのような物を生み出してはならない、ということに帰結するのですから、自信を持って推進していけるはずです(既に生み出してしまった核のゴミを最終的にどうするのか?という悩ましい問題はありますが)。

(弁護士・金原徹雄のブログから/白浜町・中間貯蔵施設関連)
2018年1月8日
「和歌山に中間貯蔵施設はいらない!~脱原発わかやま原発学習会」(2018年1月20日)のご案内
2018年2月3日
「和歌山に中間貯蔵施設はいらない!」(講師:小山英之美浜の会代表)が和歌山市でも開催されます(2/18あいあいセンター)
2018年2月4日
吉原毅氏を招いて/「原発ゼロ法案」と「核のゴミ」を考える~白浜に核のゴミ(中間貯蔵施設)は来るのか!?~(2/23田辺ビッグ・ユー)のご案内
2018年2月25日
白浜町長に県内8団体が要望書を提出~使用済核燃料の中間貯蔵施設は受け入れないとの意思の表明を求める(2018年2月23日)
2018年2月26日
パンダの町・白浜町は関西電力の中間貯蔵施設を受け入れるのか?~白浜町議会2017年12月定例会会議録を読む
2018年4月17日
白浜町長への要望書「(略)白浜町を核のゴミの捨て場にしないよう使用済核燃料の「中間貯蔵施設」は受け入れないとの意思をあらかじめはっきりと表明してください」を読む
2018年7月31日
「核のゴミはいらん日置川の会」が結成されました~松浦雅代さんからの報告
2018年9月8日
白浜町の井澗(いたに)誠町長が使用済み核燃料中間貯蔵施設を受け入れる意思のないことを議会で表明(2018年9月6日)
2018年10月15日
白浜町議会(2018年9月6日)で使用済み核燃料中間貯蔵施設を受け入れる意思のないことを表明した井澗(いたに)誠町長の発言全文(書き起こし)