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東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む

2020年3月4日配信(予定)のメルマガ金原No.3449を転載します。

東京高等検察庁検事長定年延長問題について(6)~静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を読む

 2月25日に新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長は安倍晋三内閣総理大臣)がようやく「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定して発表したのもつかの間、翌26日に大規模イベントの中止「要請」、さらに27日には小学校・中学校・高校・特別支援学校の休校「要請」という、明らかに「基本方針」と矛盾し、かつ法的根拠の不明な「政治決断」を安倍首相があいついで発表し、日本中が大混乱に陥っています。
 おかげで、「桜を見る会」前夜祭スキャンダルや東京高検検事長定年延長問題への関心が薄れつつあるのではないか(それも首相の狙いの一部では)ということが懸念される今日この頃ですが、そういう私自身、自分が役員を務める全国組織の地方事務所にまで小学校休校の余波が及んだ上に、頻繁な接見を要する国選弁護事件を引き受けたりして、「東京高等検察庁検事長定年延長問題について」シリーズ(?)の続編にとりかかる余裕がなくなってしまい、この間ブログで更新したのは、3月8日(日)の「フクシマを忘れない!原発ゼロへ和歌山アクション2020」と3月14日(土)の「守ろう9条紀の川市民の会」第16回総会と君島東彦立命館大学教授による記念講演の中止をお知らせする告知記事だけという有様でした。

 しかしながら、「東京高等検察庁検事長定年延長問題について(5)」を書いて以降も、是非取り上げておきたい材料がいくつかあり、何とか書いておこうと思っているうちに、3月2日付で静岡県弁護士会「黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明」を発出していることに気が付き、一読したところ、とても感銘を受けましたので、まずはこの会長声明をご紹介しようと決意しました。

 実は、東京高検検事長定年延長問題は、国民の司法への信頼を根底から揺るがす大事件であるにもかかわらず、その一翼を担うはずの日本弁護士連合会からの意見表明がないことに不満を抱く会員(もちろん私もその1人)が多い中、全国の弁護士会からの意見表明が待たれていました。
 静岡県弁護士会が会長声明を発出した最初の弁護士会かどうかまでは未確認ですが、法曹として言及すべき重要論点についてしっかり論述されており、しかも、一般市民が読んでも理解しやすい平明かつ論理的な文章であることに感心しました。
 私も、所管委員会の担当者として、過去何度か会長声明の草稿を起案したことがありますが、過不足なく論点を取り上げ、説得力豊かな声明文を書くというのは容易なことではありません。説明不足では用をなしませんし、言い過ぎては常議員会(弁護士会の意思決定機関)の承認が得られません。そして、そんなことにあれこれ目配りし過ぎると、間違ったことは書いていないけれど、どこに焦点があるのかよく分からないぼやけた声明になったりします。

 そこで、静岡県弁護士会の会長声明です。私が一読してまず感じたのは、その「勢い」というか「熱意」がひしひしと伝わってきたことです。
 もちろん、「今回,黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことは,検察庁法に違反する疑いが強い。」と表現し、違法と断定することを慎重に避けるなどの配慮はあるものの、静岡県弁護士会の執行部、常議員、起案者が一致して、法曹としての矜持にかけ、100%の自信を持って作り上げた会長声明であるという強い印象を受けました。

 それから、静岡ということで思い出すのは、去る2月19日に開催された検察長官会同の場で、勇気をもって定年延長問題について発言した神村昌通氏が、静岡地方検察庁の検事正であったというこです。静岡県弁護士会がこの会長声明を準備している際、神村検事正に対する援護射撃をしたいという意図があったかどうかは分かりませんが、同じ法曹としての連帯感が存在したことは間違いないでしょう。

 ただ、唯一懸念されるのは、これからこの問題についての会長声明を起案する立場になった静岡以外の弁護士会の担当者が、静岡県弁護士会のこの会長声明を読んでしまうと、「とてもこれ以上のものは書けない」とひるんでしまうのではないか、ということです。

 それでは、静岡県弁護士会の会長声明を是非お読みください。そして、1人でも多くの方に広めてください。

(引用開始)
    黒川弘務東京高検検事長の定年延長に強い懸念を表明する会長声明

1 本年1月31日,政府は,2月7日で定年退官する予定だった東京高等検察庁(以下「東京高検」という。)検事長の黒川弘務氏について,国家公務員法第81条の3を適用し,半年後の8月7日まで定年を延長させることを閣議決定した。また,その後の国会答弁によれば,政府は,この閣議決定に先立ち,これまで一貫して「検察官には国家公務員法による定年延長は適用されない」としてきた解釈を,あえて変更したとされている。
 しかし,このように唐突な法解釈の変更と,それを前提として黒川弘務氏の定年延長を認めた閣議決定は,法治主義の原則や刑事司法制度に対する信頼維持の見地から,極めて問題が大きい。

2 そもそも,検察官の定年が国家公務員法の規定によって延長できると解釈する余地があるのかについて,重大な疑問がある。
 国家公務員法第81条の3第1項は,定年に達した職員が「前条第1項の規定により退職すべきこととなる場合」において,職務の特殊性や特別の事情により公務に著しい支障があるときは,1年以内なら引き続いて勤務させることができる旨を規定する。また,ここでの「前条第1項」にあたる同法第81条の2第1項には,定年に達した職員は「法律に別段の定めのある場合を除き」定年に達した日以後に到来する定年退職日に退職する旨が規定されている。そして,国家公務員法には定年制度そのものが存在しなかったところ,これらの定年制度や勤務延長(定年延長)制度は,1981年(昭和56年)の法律改正によって初めて導入されたものであった。
 もっとも,かかる国家公務員法の改正以前から,検察庁法第22条は「検事総長は,年齢が65年に達した時に,その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」と定めていた。つまり,検察官については,他の国家公務員には定年すらなかった当時から,検察庁法に基づく独自の定年退官の制度として同法第22条が適用されていたのである。
 このような経過を踏まえれば,検察官の場合には,国家公務員法第81条の2第1項で「法律に別段の定めのある場合を除き」とされている「別段の定め」が,検察庁法第22条であることは当然である。そして,この「別段の定め」である検察庁法第22条により「検事総長は,年齢が65年に達した時に,その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」と明確に定められた検察官について,国家公務員法第81条の2及びこれを前提とした同法第81条の3が適用されないのは明白である。
 また,実質的にも,刑事訴訟法上の強大な権限を与えられている検察官について,検察庁法は,その任用資格を厳しく制限する(第18条及び第19条)とともに,他の公務員にはない欠格事由(第20条)を定め,さらに,一定の年齢に達したときは当然に退官するという定年退官制度(第22条)を設けており,これらの諸規定は,いずれも「検察官の職務と責任の特殊性に基づいて」国家公務員法の「特例を定めたもの」だと明記されている(第32条の2)。そうすると,検察庁法第22条は,検察官の職務と責任の特殊性を考慮して,そのような職に従事できる者の資格を法律に明定したものと理解され,検事総長以外の検察官が63歳を超えて勤務することを禁じる趣旨と解するべきである。そして,検察官の定年退官は,国家公務員法の規定ではなく,専ら検察庁法の規定により行わなければならないと解釈するべきである。

 したがって,今回,黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことは,検察庁法に違反する疑いが強い。

3 そして,このように解釈すべきことは,国家公務員の人事制度について詳細に記載した『逐条国家公務員法<全訂版>』(学陽書房・2015年)などからも裏付けられる。
 同書によれば,国家公務員の定年制度の目的は,①職員の新陳代謝を計画的に行うことにより組織の活力を維持し,もって公務能率の維持増進を図ること,②所定の年齢まで職員の勤務の継続を保障して,安んじて職員を公務に専念させ,職員の士気の高揚を図り,組織の活力を維持すること,とされている。
 しかし,「法律に別段の定めがある場合」には,この国家公務員法の定年制度の対象とならない。この点について同書は,「一般職の国家公務員については,原則的には本法に定める定年制度が適用されるが,従来から他の法律により定年制度が定められているものについては,その経緯等に鑑み,それぞれの法律による定年制度を適用しようとするものである。このようなものとしては,検察庁法第22条による検事総長(65歳)及び検察官(63歳)の定年・・・(省略)・・・がある。」とされているのである。
 また,1981年(昭和56年)に定年制度の導入に関する国家公務員法改正案が国会で審議された際,人事院は「検察官と大学教員は既に定年が定められ,国家公務員法の定年制は適用されないことになっている」と明確に答弁していた。さらには,当時の国会審議の関連資料として,旧総理府人事局が1980年(昭和55年)10月に作成していた「国家公務員法の一部を改正する法律案(定年制度)想定問答集」と題する文書では「検察官,大学の教員については,年齢についてのみ特例を認めたのか。それとも全く今回の定年制度からはずしたのか」という問いに,「定年,特例定年,勤務の延長及び再任用の適用は除外されることとなる」との回答が明記されていた。
 このように,国家公務員法に定年制が導入された際の国会審議では,検察官については,国家公務員法第81条の3による勤務延長(定年延長)を含めて同法による定年制度全般の適用が除外される旨が明確に確認され,それを前提として改正国家公務員法が成立していたのである。

4 ところが,本年2月13日の衆議院本会議で,安倍首相は,今回の閣議決定に当たって安倍内閣として従来の法解釈を変更したことを明らかにした。すなわち,安倍首相は,当時は検察庁法によって検察官について国家公務員法が適用除外されていたことを認める一方,検察官も一般職の国家公務員であるため検察官の定年延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈変更したと述べたのである。
 しかしながら,本声明第2項で述べたとおり,このような解釈の変更には無理があり,検察官に国家公務員法による定年延長を適用できるとの解釈そのものが検察庁法に違反する疑いがきわめて強い。
 さらに,検察官に国家公務員法による定年延長の適用がないことは,定年に関する国家公務員法改正案が国会で成立した際に明確に確認され,その後何十年にもわたって維持されてきた解釈であるのに,それを,法律の改正によらず,しかも,一検察官の退職日の延長のためだけという理由によって急遽変更するべき必要性は何ら見出し難い。そして,このような政府による恣意的な法解釈の変更を許容してしまえば,国会で決めた法律がどのように運用されるかは全て政府次第となり,法の安定性が揺らぎ,「法治主義」の根幹を揺るがしかねない。
 すなわち,今回の解釈変更を前提にする閣議決定は,政府が国会の立法権を実質的に侵害するに等しく,三権分立原則や法律による行政の原則にも違反する疑いが強いものである。

5 他方で,今回の定年延長は次期検事総長人事をにらんだものとの臆測もあるところ,政府は2月18日の閣議で,定年を延長した黒川弘務氏について,検察トップの検事総長に任命することは可能だとする答弁書を決定した。
 法律上は,検事総長を任命するのは内閣である。もっとも,これまでは,前任の検事総長が後任を決めるのが慣例とされ,政治的判断を排除することが,検察の職権行使の独立性の象徴ともされてきた。しかるに,今回の東京高検検事長の定年延長という違法の疑いの強い閣議決定によって,内閣が黒川弘務氏を次の検事総長に指名することになるとすれば,内閣が,その政治的判断によって,実質的にも検察のトップを指名できることになり,これまで検察が至上命題としてきた「検察の独立性」が,「検事総長人事」という中核から事実上崩壊することになる。
 検察庁は「検察の理念」として「厳正公平,不偏不党を旨として,公正誠実に職務を行う」ことを掲げている。首相主催の「桜を見る会」や,会の前夜に開いた夕食会について,市民団体や大学教授らが,公職選挙法違反や政治資金規正法違反などの容疑で安倍首相に対する告発状を東京地検に提出している中,検察庁の厳正公平,不偏不党に疑念が持たれれば,国民の信頼はとても得られない。
 加えて,そもそも国家公務員の定年延長にしても「特殊な場合についてのみ認められる定年制度上の特例的措置であることから,定年制度の趣旨を損なうことがないよう慎重かつ厳格に適用されなければならないもの」(前掲「逐条国家公務員法<全訂版>」)とされ,恣意的な運用が厳に戒められている。しかるに,政府は,黒川弘務氏の定年を延長しなければならない理由や必要性について,国民が納得するに足りる説明をしているとは到底認められない状況であり,このように恣意的な政府による法解釈・適用の結果として,黒川弘務氏が将来的に検事総長に就任するような事態となれば,刑事司法制度に対する国民の信頼はきわめて大きく損なわれることが深刻に危惧される。

6 当会は,同じ法曹として,今回の黒川弘務東京高検検事長に関する定年延長の閣議決定は,検察庁法及び国家公務員法の解釈からも,法治主義,検察の独立性及び刑事司法への国民の信頼などの観点からも,極めて重大な問題があるものと言わざるを得ず,ここに強い懸念を表明する。

2020年(令和2年)3月2日
静岡県弁護士会
会長 鈴木 重治
(引用終わり)


(関連法令)
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
 (定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
〇2 前項の定年は、年齢六十年とする。ただし、次の各号に掲げる職員の定年は、当該各号に定める年齢とする。
一 病院、療養所、診療所等で人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師 年齢六十五年
二 庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則で定めるもの 年齢六十三年
三 前二号に掲げる職員のほか、その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより定年を年齢六十年とすることが著しく不適当と認められる官職を占める職員で人事院規則で定めるもの 六十年を超え、六十五年を超えない範囲内で人事院規則で定める年齢
○3 前二項の規定は、臨時的職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び常時勤務を要しない官職を占める職員には適用しない。

 (定年による退職の特例)
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。

○2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。

 (定年退職者等の再任用)
第八十一条の四 任命権者は、第八十一条の二第一項の規定により退職した者若しくは前条の規定により勤務した後退職した者若しくは定年退職日以前に退職した者のうち勤続期間等を考慮してこれらに準ずるものとして人事院規則で定める者(以下「定年退職者等」という。)又は自衛隊法の規定により退職した者であつて定年退職者等に準ずるものとして人事院規則で定める者(次条において「自衛隊法による定年退職者等」という。)を、従前の勤務実績等に基づく選考により、一年を超えない範囲内で任期を定め、常時勤務を要する官職に採用することができる。ただし、その者がその者を採用しようとする官職に係る定年に達していないときは、この限りでない。
○2 前項の任期又はこの項の規定により更新された任期は、人事院規則の定めるところにより、一年を超えない範囲内で更新することができる。
○3 前二項の規定による任期については、その末日は、その者が年齢六十五年に達する日以後における最初の三月三十一日以前でなければならない。

第八十一条の五 任命権者は、定年退職者等又は自衛隊法による定年退職者等を、従前の勤務実績等に基づく選考により、一年を超えない範囲内で任期を定め、短時間勤務の官職(当該官職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間が、常時勤務を要する官職でその職務が当該短時間勤務の官職と同種のものを占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるものをいう。第三項において同じ。)に採用することができる。
○2 前項の規定により採用された職員の任期については、前条第二項及び第三項の規定を準用する。
○3 短時間勤務の官職については、定年退職者等及び自衛隊法による定年退職者等のうち第八十一条の二第一項及び第二項の規定の適用があるものとした場合の当該官職に係る定年に達した者に限り任用することができるものとする。

  附  則
十三条 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない。

検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)
第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。

第三十二条の二 この法律第十五条、第十八条乃至第二十条及び第二十二条乃至第二十五条の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。

人事院規則一一―八(11―8)(職員の定年)(昭和五十九年人事院規則一一―八)
 (定年に達している者の任用)
第五条 職員(法第八十一条の二第三項に規定する職員を除く。)の採用は、再任用(法第八十一条の四第一項又は第八十一条の五第一項の規定により採用することをいう。次項において同じ。)の場合を除き、採用しようとする者が当該採用に係る官職に係る定年に達しているときには、行うことができない。ただし、かつて職員として任用されていた者のうち、引き続き特別職に属する職、地方公務員の職、沖縄振興開発金融公庫に属する職その他これらに準ずる職で人事院が定めるものに就き、引き続きこれらの職に就いている者の、その者が当該採用に係る官職を占めているものとした場合に定年退職(法第八十一条の二第一項の規定により退職することをいう。以下同じ。)をすることとなる日以前における採用については、この限りでない。
2 職員の他の官職への異動(法第八十一条の二第三項に規定する職員となる異動を除く。)は、その者が当該異動後の官職を占めているものとした場合に定年退職をすることとなる日後には、行うことができない。ただし、法第八十一条の三第一項の規定により引き続いて勤務している職員(以下「勤務延長職員」という。)の法令の改廃による組織の変更等に伴う異動であつて勤務延長(法第八十一条の三第一項の規定により職員を引き続いて勤務させることをいう。以下同じ。)に係る官職の業務と同一の業務を行うことをその職務の主たる内容とする他の官職への異動及び再任用をされている職員としての異動については、この限りでない。

 (勤務延長)
第六条 法第八十一条の三に規定する任命権者には、併任に係る官職の任命権者は含まれないものとする。

第七条 勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の一に該当するときに行うことができる。
一 職務が高度の専門的な知識、熟達した技能又は豊富な経験を必要とするものであるため、後任を容易に得ることができないとき。
二 勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき。
三 業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき。

第八条 任命権者は、勤務延長を行う場合及び勤務延長の期限を延長する場合には、あらかじめ職員の同意を得なければならない。

第九条 任命権者は、勤務延長の期限の到来前に当該勤務延長の事由が消滅した場合は、職員の同意を得て、その期限を繰り上げることができる。

第十条 任命権者は、勤務延長を行う場合、勤務延長の期限を延長する場合及び勤務延長の期限を繰り上げる場合において、職員が任命権者を異にする官職に併任されているときは、当該併任に係る官職の任命権者にその旨を通知しなければならない。

 

(弁護士・金原徹雄のブログから~東京高等検察庁検事長定年延長問題)
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