2020年7月11日配信(予定)のメルマガ金原No.3472を転載します。
長野たかしさん・あやこさんの新作CD『残り時間』を是非聴いて欲しい
「『関西フォーク』というムーブメントがあった」と聞いてぴんと来る人、知識として知っているだけではなく、「自分もそのムーブメントに参加していた」という自覚がある世代の中では、1954年(昭和29年)生まれの私などは、比較的若い方(?)でしょうか。
「関西フォークの時代」をいつからいつと定義するかは困難な問題ですが、私の個人史に引きつけて言うと、1967年末の『帰ってきたヨッパライ』(ザ・フォーククルセダーズ)の発売・大ヒット(私は中学1年生)に始まり、岐阜県の坂下町(現中津川市)、椛の湖のほとりで開かれた第3回全日本フォークジャンボリー(高校2年生だった私も友人とテント持参で参加していた)が、一部参加者による舞台占拠をもって幕を閉じた1971年夏まで、という気がします。
そして、その頃歌い始めたアーティストで、今なお現役という方々も多い中で、私が、ここ数年の間に、和歌山のライブハウスで生の演奏に複数回接することができ、とても感銘を受けた方々のお名前を挙げるとすると、中川五郎さん、よしだよしこさん、そして、長野たかしさん(元五つの赤い風船のベーシスト)と奥様の森川あやこさんでしょうか。
このうち、長野たかしさん・あやこさんについては、ほぼ毎年、和歌山でのライブにおじゃましているように思います。実際、そのライブ会場で手売りされていた以下の4枚のCDを都度購入させてもらっていますので。
『Face to Face 面と向かって!』 6曲収録
「花をください」「君こそは友」「心のネット」「生きる」「コップ半分の酒」「Hard Times Come Again No More」
『希求』 11曲収録
「めぐり逢い」「灰色の街」「私が歌う理由(わけ)」「コップ半分の酒」「希求」「Last night I had strangest dream」「追放の歌」「勇気を出して」「モノローグ」「つまんない歌」「夢の夜会」
『同じ丘に立って』 10曲収録
「同じ丘に立って」「私が私と言えるよう」「このままじゃ死ねないね」「心許なきこの国で」「光あるうちに」「街はレンガ色に」「何もせん隊ダジャレンジャー」「いいんだよ それで」「守ろうこの平和」「同じ丘に立って(instrumental)」
『れぞれの木は空へ 2018.11.10 長野たかし50周年記念ライブ with あやこ』 14曲収録
「残りの人生で」「モノローグ」「同じ丘に立って」「灰色の街」「Fight To The Last」「私が私と言えるよう」「コップ半分の酒」「光あるうちに」「それぞれの木は空へ」「心許なきこの国で」「希求」「めぐり逢い」「いいんだよ それで」「君こそは友」
ところが、今日ご紹介しようと思っている出たばかりのお二人のCD『残り時間』(10曲収録)は、ライブ会場での手売りではなく、「先行予約」した上で郵送していただいたものです。
その間の経緯を理解していただくには、長野さんご自身が「CD先行予約」をFacebookで呼びかけた文章の一部を引用するのが良いでしょう。
https://www.facebook.com/groups/522771518349954/permalink/557523078208131/
(引用開始)
いよいよ、生活苦が現実のものとなりました。
予約をしていたライブハウスから続々と中止、延期、そして開催中止・延期を促すメールや電話が届いています。
そんな中、政府の休業補償とは名ばかりで、ほとんどのツアーミュージシャンは、減収証明ができる書類などはなく、網の目から落とされます。
私どももその中の一人です。
その上、緊急事態宣言が発せられると、私どものライブをしてくれる頑張っているライブハウスも、今後ライブ開催ができるか微妙ですので、ライブをして得る私の現金収入も断たれてしまいます。
そこで、私どもが生き抜く方法としては、現在できている新曲をCDにしたり、これから作っていく曲を録音CDにして皆さんに買って頂くしか術がありません。
しかし、現在、CD製作する資金もなく、前回させて頂いいた様に先行予約という個人的なクラウドファンディングを行いCD製作資金と生活費を確保するしかありません。
(略)
販売予定価格は3000円
どうか先行予約をお願いいたします。
どうぞ宜しくお願いいたします。
目標は「所得補償給付」と同じ額の30万円です。
30万円が集まったところで、CDの原版をプレスにまわせるよう、残りの曲を作ろうと思います。30万円との競争と、自分にプレッシャーをかけておきます。…基本なまけもんなんで。
(引用終わり)
ここまで率直な文章を書ける人はあまりいないかもしれません。
この文章が書かれたのが4月7日、奇しくも一都二府四県に緊急事態宣言が発令されたその日であり、まだ、全国民に所得制限なしで10万円ずつ支給する方針に転換する前のことでした。
CDのジャケットに長野さんが書かれた文章も少し引用してみましょう。
(引用開始)
2020年1月16日、70歳の誕生日を迎え、今年は頑張って古希記念70ヶ所ライブツアーに取り組んでみようと、日本各地のライブハウス、ライブ居酒屋、喫茶店の情報を集め、ツアー計画を立て動き始めました。ところが、2月初め頃からクルーズ船でのコロナウイルスによる感染患者のことが報道され出し、ライブ中止、延期の連絡が次々と入ってきたのです。ライブのできないツアーミュージシャンにとっては死活問題。考えた末「私のできることは、曲を作り歌うこと」。CDを作り売れば口に糊することもできるのではないかという結論に至りました。
(引用終わり)
全国のライブハウス(居酒屋、喫茶店)を回って演奏されているミュージシャンの皆さんにとって、「歌う場」に対する行政からの休業要請、そして正式要請の前から吹き荒れていた「自粛」の嵐は、まさに、表現活動と生計の双方を直撃する「死活問題」だったわけです。
徐々にライブは復活の兆しを見せ始めているとはいえ、いまだ危機の渦中であり、今後の演奏活動とそれを支える収入の確保は、全てのミュージシャンにとって切実な問題であり続けているのだろうと思います。
そのような中、届いた長野たかしさん・あやこさんによる待望の新作CD『残り時間』です。タイトルを見て、私は前作の冒頭に収録された『残りの人生で』を思い出しました。その歌詞をご紹介したいのは山々なのですが、最初の1行を書き写すと、それで歌詞の全部を転記したことになってしまい、著作権法上の「引用」として許容されるかどうか、いささかためらいがありますので控えておきます。
いずれにせよ、私は、長野さんの5学年下ですが、「残り時間」で何が出来るか、いやでも意識せざるを得ない年代となっていますので、私にもぴったりと身につくタイトルです。
収録されているのは以下の10曲です。
『残り時間』
1.Hard Times Come Again No More 詞・曲:Stephen Foster 訳詞:長野たかし
2.More to Come 詞・曲:長野たかし
3 私に嘘はつかないで 詞・曲:長野たかし
4 午前0時の鐘が 詞・曲:長野たかし
5 だいじょうぶ 詞・曲:長野たかし
6 Chain 詞・曲:長野たかし
7 平和の道(平和行進のうた) 詞・曲:長野たかし
8 道の駅 詞・曲:長野たかし
9 自分の心に正直に 詞・曲:長野たかし
10 風が吹く 詞・曲:長野たかし
この1曲、1曲の感想を書いていてはきりがありませんし、第一、実際の曲を聴いていない人にその良さを伝えることはもともと至難なことなので、あきらめました。
その代わりとして、長野たかしさん・あやこさんのファン代表(?)として、このアルバムのレコーディングにも参加されている、大阪の熊取町議会議員であり、琵琶奏者でもある江川けいこさんのFacebookに書かれた感想の一部を引用させていただきます。ちなみに、江川さんは、和歌山での長野たかしさん・あやこさんのライブにも、長野さんのベースで演奏するオープニングアクトの出演者として何度も出演されており、昨年のライブで演奏された『感謝』(作詞:北山修、作曲:加藤和彦)はとても素晴らしかったですよ(何組も出演していたので、間違っていたらごめんなさい)。
https://www.facebook.com/keiko.egawa.9/posts/3053282954757750
(引用開始)
【残り時間】~えがどんの勝手な感想~
長野たかしさんの「希求」を5年前に初めて聞いた時、私が探し続けていたのはこんな歌だと心奪われ、それからは二人の追っかけを可能な限りしています。
あれから4枚のCD(アルバム)が生まれました。
新曲の制作に没頭する長さんの気迫と、「こんな音どう?」と気に入ったコードをひいて聞かせてくれた時は、それが楽しそうでたまりませんでした。
今回、新しいCDをつくると聞いた時、二つのお願いをしました。
一つは琵琶の音色を入れてほしいとお願いしました。長さんは琵琶の特徴をすぐ理解され、調弦を変えて挑戦するこができました。プロってすごいなと思いました。「道の駅」は、ご高齢のご夫婦が人生の道の駅で一息つきながら、これまで目指してきたことや、将来について戸惑いを感じながらも二人で生きていこうという、長さん自身の人生を歌ったものだと思いました。そんな曲に琵琶の音を入れて下さったこと、とっても感謝しています。
二つ目は、「平和行進」に向けた曲を作ってほしいとお願いしました。毎年広島・長崎まで核兵器の廃絶と平和を求めてみんなで歩きます。音楽を通して元気に歩けて、歌詞は覚えなくても誰でも気軽に歌えるような曲にしてほしいとお願いしました。そこで生まれたのが「平和への道」です。今年は特に新型コロナ感染症で行進時に歌えなかったのですが先導カーから「平和の道」が流れると「元気が出た」との感想をいただきました。行進用はガヤ(会話)抜きで伴奏たっぷりの分を頂きました。
私は「五つの赤い風船」時代を知りませんが、どの曲もいとおしいです。あやこさんが長さんの歌詞に込められた思いをまっすぐ受け止め、尊重しながら歌い、二人のハーモニーが絶妙です。ぜひ聞いてほしいです。
(略)
今回のCDには多くのミュージシャンが加わり、とっても豊富な曲想で楽しめます。いろんな意味で私の支えになった曲ばかりです。勝手な感想をるる述べましたが、ぜひ手に取って聞いてくださいませ。
(引用終わり)
1曲1曲の紹介はあきらめると書きましたが、音源をご紹介できる曲はこの限りにあらずということで、長野たかしさんの公式YouTubeチャンネルで聴ける『残り時間』収録の2曲は是非聴いてください。
まずは、『午前0時の鐘が』です。
この曲については、アルバムのジャケットに長野さんご自身が書かれた紹介文をお読みいただくべきでしょう。
(引用開始)
特に劇団(※金原注 人形劇団MOMO)の作品を通じて、長年やってきた環境問題については、コロナ禍とは切り離せない問題だと知りました。ウイルスは単独では生存することができず、何らかの生物を宿主としていなければならず、その宿主が絶滅の危機に陥ると、別の生物に宿り生き延びていくということを知りました。つまり、人類が自然破壊を行い、絶滅危惧種を作っていく限り、COVID-19のようなウイルスが、次から次と、人類に襲い掛かって来るということです。
このことは必ず訴えようと「午前0時の鐘が」を書きました。
環境危機時計という、地球環境問題の悪化に伴う人類存続危機の程度をどのように感じているか、時計の針にたとえて表示したものがあります。
2019年の調査では「9時46分…極めて不安」となっております。
https://www.af-info.or.jp/ed_clock/
MVも作り、YouTubeに載せておりますので、ぜひ一度ご覧ください。
(引用終わり)
『午前0時の鐘が』
https://www.youtube.com/watch?v=ZI5AjFjX4Os
もう1曲、全曲ヴァージョンがアップされているのが『私に嘘はつかないで』です。
この曲は、長野たかしさん・あやこさんがやっておられる人形劇団MOMOの「主演女優」(自称なので、本当かどうかは知りません)である「ザベス」ちゃんのデビュー曲ということのようです。
曲は、字幕付きの演奏を聴いていただければ分かりますが、ダブル・ミーニングの技法で作られています。
3番まである歌詞の1番だけ引用します(この程度なら著作権法が許容する「引用」でいけるでしょう)。
(引用開始)
ちゃんと目を見て話してよ
いつも話をはぐらかす
責任とるとは言うけれど
口から出任せ嘘ばかり
笑いあってた金髪だーれ?
いくら貢げば気が済むの
ガラクタばかりを押しつけられて
なにがそんなに嬉しいの
私に嘘はつかないで
勝手にルールは変えないで
私に嘘はつかないで
勝手にルールは変えないで
(引用終わり)
表向き(?)の意味は、不実な交際相手の男性をなじる健気な女性の嘆きですが、裏の意味はもちろん(普通の大人には)分かりますよね?これが分からない人は、よほど世間離れしている・・・と私などは思いますが、実はそういう人が案外多いのかも。
アルバム収録ヴァージョンは、さらにYouTube版に手を加え、素敵なアレンジになっていますよ(この曲に限らず、『残り時間』の多彩な編曲はとても優れていると思います)。
『私に嘘はつかないで』
https://www.youtube.com/watch?v=HK2c4nQZ-CU
今回の収録曲10曲の中で長野たかしさん公式チャンネルにアップされている曲が実はもう1曲ありました。それがフォスターの『Hard Times Come Again No More』です。
長野さんが、東日本大震災に衝撃を受け、自らの訳詞で歌い始めたこの曲ですが、2011年6月、宮城県の牡鹿半島の小さな避難所を支援物資を持って回った際、「ある漁村に来たとき、どうしてもこの歌を、今、ここで歌わなければならないという衝動にかられ、歌った」映像です。
訳詞も掲載されたご自身による解説とともにご視聴ください。
『Hard Times Come Again No More』
https://www.youtube.com/watch?v=M_xsX-ixM-c
今回のアルバム『残り時間』の冒頭に、再び『Hard Times Come Again No More』をニューアレンジで収録(もちろん、あやこさんと2人で歌っています)したのは、もちろんコロナ禍に見舞われた(ご自身も含めた)人類のために「波間に漂う小船のように/辛いことが続いても/きっといつかは祈りは届く/Oh!Hard Times,com again,no more」(訳詞の4番より)と歌わずにはいられなかったのだと思います。
なお、このニューアルバム『残り時間』の入手方法ですが、長野たかしさんのFacebook(7月8日付)では以下のように説明されています。
https://www.facebook.com/bass.chou3/posts/4023590074382224
(引用開始)
7月7日発売!のお約束果たせました。
ご予約頂いていた方へのCDを、全て投函、送付いたしました。
既に届いた方からの、嬉しい感想がぞくぞく届いております。
ありがとうございます!
◆ご希望の方は、メッセンジャーにて、ご住所、お名前をお知らせ下さい。
到着後送金・送料込みの3000円でおわけしております。(振込用紙を添付します。)
宜しくお願い致します。
(引用終わり)
これによれば、長野たかしさんのFacebook
https://www.facebook.com/bass.chou3?epa=SEARCH_BOX
にメッセンジャーで
CD『残り時間』 〇枚購入します。
住所&氏名
と書いて送信すれば良く、料金(送料込みで3000円)は、CD到着後に同封された振込用紙で送金する(その送金手数料は購入者負担)ということのようです。
書かれてはいませんが、注文する際には、自己紹介とFacebookの友達申請も併せて行うのが良いように思います。
それでは、Facebookをしない人はどうすれば良いのか?ということが問題となりますが、
〇これを機にFacebookのアカウントを取得する
〇Facebookをやっている家族・友人などに頼んで注文してもらう
〇長野さんのライブ情報などをもとに(閲覧するだけならFacebookのアカウントがなくても大丈夫)ライブに出かけていって長野さんから直接購入する(お二人のサインも貰える)
のどれかですかね。
実は、先行予約していたCDを送っていただいたので、長野さんの住所も携帯番号もメールアドレスも分かるのですが、勝手にこのブログで公開する訳にもいきませんしね。この程度の情報提供でご了解ください。
以上で、少し長くなり過ぎたような気がするCD紹介を終えます(私の文章は概して長くなり過ぎる傾向があります)。
CDも素晴らしいですが、是非また和歌山のライブ会場でお二人の演奏を接することのできる日が近いことを心から願っています。
(付録)
今回のアルバム収録曲以外にも、長野たかしさんのYouTubeチャンネルには素晴らしい曲が何曲もアップされていますが、その中から、「日本国憲法賛歌」というサブタイトルを持つ曲をご紹介しましょう。
『それぞれの木は空へ・日本国憲法讃歌』
https://www.youtube.com/watch?v=DyfzdLRw-m8
(余談)
このブログの巻末に『残り時間』のジャケット(表)の画像を掲載していますが(厳密に言うと著作権侵害のような気もしますが、まあ長野さんの了解は得られるだろうということで)、逆向きになっていて読みにくいとは思いますが、「ヒヤリングアート株式会社」という補聴器の会社による広告が掲載されています。長野さんが最近補聴器を使われているということは、昨年のライブの「ネタ」にもなっていましたが、その補聴器の会社がこのCDの制作に「賛助広告」を出してくれたということでしょう。とても感心しましたので、以下に広告全文を引用します。
(引用開始)
♪ヒヤリングアートは長野たかしさんのミュージックライフをサポートしていきます♪
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ヒヤリングアート株式会社
(引用終わり)
(弁護士・金原徹雄のブログから/長野たかしさん&森川あやこさん関連)
2014年5月6日
音楽で憲法を感じる、考えるⅡ(長野たかし氏・森川あやこ氏 奉納ライブ 鞍馬寺)
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/37958676.html
2015年4月5日
5月3日の過ごし方~鞍馬寺・奉納ライブ(長野たかし・森川あやこ他)はどうですか?
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/43500271.html
2016年12月27日
長野たかしさんの「乗り越える」ための新しい“We Shall Overcome”~付・CD『希求』ダイジェスト試聴のお勧め
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/49170091.html