wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

沖縄県東村高江での機動隊による取材妨害に対する地元2紙の見解を読む

 今晩(2016年8月24日)配信した「メルマガ金原No.2548」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
沖縄県東村高江での機動隊による取材妨害に対する地元2紙の見解を読む

 去る2016年8月20日(土)、沖縄県東村高江での米軍ヘリパッド建設に抗議する市民を取材していた地元2紙(沖縄タイムス琉球新報)の記者が、市民と共に機動隊車両の間に閉じ込められ、一定時間、現場の取材ができないという「事件」が発生しました。 高江では、連日様々な事件が生じていますが、権力が、むき出しの暴力を報道機関にまで及ぼしてきたという事態は、1つの階梯を上がってしまった徴表として、記録にとどめる必要があるだろうと思い、やや遅ればせながらではありますが、沖縄地元2紙の報道・声明・社説などを引用したいと思います。
 本来、メディアのまとまった記事や社説を引用する場合、全文を転載することは遠慮すべきなのでしょうが、本件については、事案の性質上、沖縄タイムス琉球新報の両社から、著作権に基づく削除要請がなされることはないだろうと判断し、「事件」を報じた記事と社説、並びに抗議声明の全文を紹介させていただくことにしました。
 もちろん、両社から削除要請があれば、直ちに応じるつもりです。
 
 まずは、「事件」を報じた両社の記事を引用します。
 
琉球新報 2016年8月21日 05:04
機動隊が記者排除し閉じ込め 東村高江 弁護士「報道の自由侵害」

(引用開始)
 【ヘリパッド取材班】東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐり、東村高江で抗議活動をする人たちを県道上で取材していた本紙記者が20日午前、機動隊に強制排除され、約15分間、隊員による人垣と車両の間に閉じ込められた。この間、工事車両の資材搬入などの現場に近づくことができず、取材機会が奪われた。沖縄タイムスの記者も同様に排除され、一時閉じ込められた。弁護士らは報道の自由の侵害と問題視している。
 朝から抗議行動をしていた市民ら約50人は、東村高江のN1地区ゲート前から南下し、工事車両の搬入を止めようと県道70号の高江橋の上に座り込んだ。午前10時25分、南側から約30人の機動隊員が近づき、座り込む人たちの腕や体をつかんで強制的に排除した。
 排除される際、本紙記者は機動隊員に腕章を示した上で「琉球新報だ」と訴えたが、解放されず、その後、閉じ込められた。現場にいた小口幸人弁護士は「記者排除は大問題だ。国家権力が、強制力を持って市民を排除する場から記者を排除して、報道させないのは、報道の自由の根幹部分の侵害だ。絶対に許してはいけない行為だ」とした。
 座り込みを排除した後、砂利を積んだ工事車両10台が警察車両に守られながら、ゲート内へ入っていった。
強く抗議する
 普久原均琉球新報編集局長の話 本紙記者は琉球新報の腕章を身に着け、住民の抗議行動を記録するための正当な取材をしていた。現場には県民に伝えるべきことがあった。警察の妨害によって、その手段が奪われたことは大問題だ。警察官が記者を強制的に排除し、行動を制限した行為は報道の自由を侵害するもので、強く抗議する。
(引用終わり)
 
 琉球新報は、同紙記者が強制排除される模様を撮影した動画も公開しています。
 
機動隊が記者排除し閉じ込め 東村高江(1分09秒)
 

沖縄タイムス+プラス 2016年8月21日 14:28
沖縄タイムス記者も拘束 高江で取材中、機動隊聞き入れず

(引用開始)
 20日、沖縄県東村の高江橋で機動隊が市民らを排除する様子を取材していた本紙記者ら報道関係者も拘束され、バスとバスの間に押し込められた。「記者である」ことを訴えたが最終的に聞き入れられず、取材活動を制限された。
 本紙記者は午前10時26分すぎ、排除の様子を取材していたところ、機動隊4人に囲まれた。背中を強く押されながらバスとバスの間に連れて行かれ、すでに拘束されていた市民ら15人と一緒に押し込められた。
 県警に「取材中である」ことを訴えると、一度は解放された。だが午前10時41分すぎ、別の機動隊に再び拘束され、バスとバスの間で身動きが取れず、取材活動を制限された。他社の記者も同じく拘束された。
 小口幸人弁護士は、記者の拘束について「主権者が知るべきことを報道する権利を侵害する行為で許されない」と話した。交通を妨げるなど、排除される理由がなかった中での拘束に「法律に基づいた行動だとは思えない」と述べた。
 沖縄平和運動センターの山城博治議長は「マスコミを萎縮させることにつながりかねない行為で、あり得ない」と語気を強めた。
 県警警備2課は、バスとバスの間に市民や記者を拘束したことについて「危険防止や安全確保のため。取材を規制する目的ではない」と答えた。
(引用終わり)
 
 なお、沖縄タイムスも、正式な抗議声明を発表しています。
 
沖縄タイムス+プラス 2016年8月23日 20:31
記者排除は「報道の自由を侵害」 沖縄タイムス社が抗議声明

(引用開始)
 
沖縄県東村高江周辺のヘリパッド建設に反対する市民らを取材中の沖縄タイムス琉球新報の記者が20日、機動隊に強制排除されたことを受け、沖縄タイムス社は23日、石川達也編集局長名で「報道の自由を侵害するものであり、断じて許すことはできない」とする声明を発表した。声明は次の通り。
 沖縄タイムスの社員証を見せ、記者であることを訴えたにもかかわらず、2度にわたって拘束状態に置かれ、計30分程度取材活動が制限された事に強く抗議する。本紙記者は市民らの抗議活動を通常通りに取材し、県民の知る権利に応えようとしていたもので、こうした警察権力による妨害は、憲法で保障された報道の自由を侵害するものであり、断じて許すことはできない。
(引用終わり)
 
 最後に、両紙の社説をご紹介します。
 
琉球新報 2016年8月22日 06:02
<社説>高江で記者排除 報道の自由侵害を許さない

(引用開始)
 思想・信条の自由に基づいた市民の抗議行動を国家権力が容赦なく組み敷く。今、そんな現場は国内で沖縄の名護市辺野古と東村高江をおいて、ほかにない。
 この国の民主主義の成熟度が鋭く問われる現場を歴史に刻むことは報道機関の責務だが、機動隊を投入した強権的な警備は、取材中の記者の排除、拘束に行き着いた。
 民主主義の根幹を支える報道の自由を侵害する行為であり、強く抗議する。
 米軍北部訓練場の新ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設に抗議する市民を取材していた県内2紙の記者が、市民と共に機動隊車両の間に閉じ込められた。
 機動隊は20日午前、資材を搬入する工事車両を止めようと、県道70号の高江橋の上に座り込んだ市民約50人の排除を始めた。
 排除の模様を撮影していた本紙記者は機動隊員に2度も両腕をつかまれ、背中を押されて約40メートルも移動させられた。2度目は車両の間に押し込められた。約15分間の不当な拘束により、記者は市民排除の様子を取材できなかった。
 県警は「安全確保のため。記者とは明確に分からなかった」と釈明しているが、琉球新報の腕章をして記者と名乗り続け、あらがう記者が力ずくで排除された事実は動かない。明確な意図に基づく取材妨害があったことは間違いない。
 新基地建設現場の辺野古でも、市民と、機動隊や海保とのせめぎ合いが続く。大浦湾の海域で2015年1月に起きた「馬乗り」問題は、報道によって過剰な警備の真相が照らし出された例だ。
 海上保安官が船上で撮影中の女性映画監督に馬乗りになった。本紙が連続写真を掲載して検証したことで、「馬乗り」を否定していた海上保安庁は「体全体を使って(女性が)転落しないようにした」と説明を一転させた。報じられなければ、海保は「知らぬ存ぜぬ」を貫いていただろう。
 国連は4月に日本の表現の自由に関する暫定調査結果を出し、安倍政権が新基地建設に抵抗する市民に対して「過度な権力を行使している」と警鐘を鳴らした。国際基準に照らせば、過剰な警備は明らかに人権を侵害しているのである。
 行き過ぎた権力行使に歯止めをかけるには、現場に身を置いた取材が不可欠だ。記者の拘束は、民主主義と人権を危機に陥れる。二重、三重の意味で許し難い行為だ。
(引用終わり)
 
沖縄タイムス+プラス 2016年8月22日 07:00
社説[取材妨害・住民排除]工事止め協議の場作れ

(引用開始)
 
この工事は一体全体、誰のための、何を目的にした工事なのか。
 違法性の疑いのある検問が現場の県道で実施され、事前協議もなしに勝手に立木が伐採された。機動隊による力ずくの警備によって住民は強制排除され、長時間の道路封鎖によって地元住民の日常生活にも支障が生じた。
 20日には、記者も抗議行動中の市民とともに一時的に拘束状態に置かれ、取材活動を妨げられた。
 米軍北部訓練場でのヘリパッド建設工事が進む東村高江。ヘリパッド建設に反対する住民ら約30人はこの日朝、工事車両の搬入を止めようと県道70号にかかる高江橋の上に座り込んだ。
 機動隊は、座り込む市民らを抱え上げ、強制的に場所を移動させた。その上で、抗議する市民を機動隊の車両と車両の間に押し込め、隊員が人垣を作って身動きの取れない状態にした。市民らはおよそ30分にわたって道路脇に閉じ込められた。
 度を越した拘束であり、市民の権利をないがしろにする警備と言うほかない。
 沖縄タイムスの記者は、県警の腕章をつけた隊員に社員証を提示し、取材中なので出してもらいたい、と申し入れた。いったん拘束を解かれたものの、しばらくして別の機動隊員が近寄ってきて別の場所に押し込められたと言う。
 琉球新報の記者も腕章を示して取材記者だということをアピールしたが、正当な取材活動を妨害され、工事車両の資材搬入の現場に近づくことができなかった。
■    ■
 この状況は1950年代の島ぐるみ闘争を思い出させる。米軍の強制的な土地接収と、軍用地料の一括払いや新規土地接収に反対して行政・議会・地主・住民が立ち上がった、あの島ぐるみの闘いである。
 北部訓練場やキャンプ・シュワブは、本土に駐留していた海兵隊を沖縄に移駐させるため、あのとき建設されたものだ。本土の負担軽減が進んだ半面、沖縄は「基地の島」として過大な基地負担を背負わされることになった。
 日米特別行動委員会(SACO)は基地の整理・統合・縮小計画に合意した。だが、ほとんどが県内移設で、北部訓練場の過半約3987ヘクタールの返還は、SACOの返還合意面積を大きく見せるための措置だった。
 米軍は不要な部分を返還する見返りに、6カ所のヘリパッドの移設と、海への出入りを確保するための土地と水域の追加提供を勝ち取った。
■    ■
 半世紀以上も前に建設された沖縄最大の基地の不要部分を返還し、日本の予算によって新たな機能を備えた訓練基地としてリニューアルし、恒久使用する。それが米軍の狙いだ。
 一方、ヘリパッドが高江の集落を取り囲むように移設され、オスプレイの訓練に使用されることは、高江の住民にとっては生活破壊を伴う大きな負担増となる。
 政府が過半返還を強調するのは高江の暮らしや豊かな自然環境への破壊的影響を無視した一方的な主張である。
(引用終わり)