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『増補版 熊野・新宮の「大逆事件」前後-大石誠之助の言論とその周辺』(辻本雄一著/論創社刊)刊行のお知らせ

 2023年12月29日配信(予定)の「メルマガ金原No.3539」を転載します。
 Facebookにも同内容で掲載しています。

『増補版 熊野・新宮の「大逆事件」前後-大石誠之助の言論とその周辺』(辻本雄一著/論創社刊)刊行のお知らせ

 過去、私が「ブログ毎日更新」をしていた頃(2013年1月から2019年1月までの丸6年間)、憲法問題や(特に初期は)原発問題をテーマに取り上げることが圧倒的に多かったのですが、そのどちらとも言えないが、結構、何年にもわたり、何度も取り上げてきたテーマの1つが「『大逆事件』と和歌山~特に大石誠之助について」でした。

 私が過去そのテーマで書いた記事は、一番最後の新宮市名誉市民記念・企画展「大石誠之助とはどんな人?」(2018年10月2日~2019年2月24日@佐藤春夫記念館)のご案内」(2018年9月16日)の巻末に掲載したリストにリンクを貼っていますので、ご参照いただけると幸いです。

 そして、私が継続して上記テーマに関心を持ち続けた最も大きな要因となったのが、ほぼ10年前(2014年2月)に刊行された『熊野・新宮の「大逆事件」前後-大石誠之助の言論とその周辺』という本でした。
 私がこの本を知ったのは、その著者である辻本雄一先生(新宮市佐藤春夫記念館館長)を和歌山市にお招きし、2014年5月に「熊野・新宮の『大逆事件』」と題してご講演いただくこととなった際、企画の中心となっていた松浦攸吉さん(平和と憲法を守りたい市民の声)から、刊行されたばかりの上記書籍を紹介していただいたのがきっかけでした。
 その後も、上記ブログで詳しくご紹介している人と人との繋がりなどもあり、辻本先生からはご厚誼をいただいてきており、2017年には念願の佐藤春夫記念館訪問がかない、辻本先生に詳しく館内をご案内いただいたりしてきました。

 さて、その『熊野・新宮の「大逆事件」前後-大石誠之助の言論とその周辺』の待望の増補版が、来たる2024年1月10日に、初版刊行から10年ぶりに発行されることになりました。
 ところで、皆さんは「増補版」と聞いてどういうことを想像されるでしょうか。
 私は、今、初版と印刷されたばかりの増補版を見比べているのですが(ありがたいことに著者からの「謹呈本」が昨日届きました)、圧倒的にページ数が増えていることは一見しただけで明らかです。
 詳しく調べてみると、
  初版の最終頁  393頁
  増補版の最終頁  687頁
ということで、ほぼ300頁の増加となっています。
 目次で確認してみると、初版の最終章は「第Ⅳ部 第11章 熊野における「大逆事件」余聞-漱石の俳句と大石ドクトル一統、そして中上文学へ」でしたが、増補版では、以下の章が新たに付け加えられていました(版元ドットコムから引用)。

 増補版の定価「5,000円+税」を高いと思われる方もおられるでしょうが、約300頁の新稿を付け加え、おそらく旧稿部分の修正も行い、カバーも新しくして、「3,800円+税」からわずか1,200円(+税)アップにとどめたのは、この種の研究書の常識からすると、版元(論創社)の英断だと思います。
 いわば、「正編」と「続編」の2冊を合本としたような「増補版」です。

 是非1人でも多くの方に手に取っていただきたく、ご案内することと致しました。

(通販サイト)
AMAZON 
楽天ブックス 
紀伊國屋書店ウエブストア 

(増補部分)
第Ⅴ部
 第十二章 大石誠之助における「信仰」の問題
 はじめに
 1 誠之助とキリスト教・兄余平の影響
 2 「大逆事件」・獄中の誠之助・刑死とその後
 
 第十三章 大石誠之助の獄中落書きに寄せて

 第十四章 在米・岩佐作太郎の京都帝大学生宛の「公開状」
 「公開状」(抄)

 第十五章 熊野川を遡る「新思想」

 第十六章 牧師作家沖野岩三郎の『宿命』を読み解く
       ――「大逆事件」との遭遇と熊野・新宮時代
 はじめに―「有りの儘」と「萬年筆と原稿紙の生まれた話」
 1 「懸賞小説に当選して 応募について」の感想から
 2 新聞連載時改稿と作品「宿命」の問題
 3 新宮時代の初期作品から
 4 与謝野晶子来訪の問題
 5 「細部」の「事実」から読む「宿命」
 6 「沖野神話」のひとり歩き
 おわりに

 第十六章付表・牧師作家沖野岩三郎の『宿命』を読み解く(含・関連年譜)

 第十七章 与謝野寛の詩「誠之助の死」成立にみる、晶子の「大逆事件
 1 一九一五(大正四)年三月、晶子「熊野行」の意味
 2 「誠之助の死」成立の背景
 3 与謝野夫妻と沖野岩三郎の文学的出発
  【付・参考資料】

 第十八章 「大逆事件」の受刑者たち
       ――いわゆる「紀州グループ」と言われた人たちをめぐって
 はじめに
 1 「犠牲者」六名の人と為り
 2 六名のその後
 3 成石勘三郎の「獄中手記」と崎久保誓一の「名誉回復」への願い
 4 再審請求と棄却の問題
 おわりに

 第十九章 「大逆事件」と熊野の人びとの「現代」
 はじめに
 1 「大逆事件」とは―石川啄木の慧眼
 2 「大逆事件前夜」の熊野新宮
 3 犠牲者の名誉回復から大石名誉市民の実現まで

 第二十章 大石誠之助の名誉市民実現をめぐって 
 1 「咽のど喉に刺さったトゲ」
 2 反骨の榾火―大石誠之助の名誉市民推挙を支える信念
 3 大石誠之助、名誉市民実現に際して
 4 〔年表〕 大石誠之助・新宮市名誉市民実現までの道のり

 第二十一章 熊野反骨の系譜
 1 十津川からの「眼差し」―文武館と「隠岐コミューン」と新宮でのキリスト教受洗
 2 畑下(山口)熊野の自由民権運動時代
 3 自由民権運動と熊野地方
 4 印東玄得のこと―追悼碑建立の「気骨」の裏側で
 5 印東熊児が古河力作に贈った「豆本聖書」
 6 異境の地での「大逆事件」研究―仲原清のこと
 7 「発禁・熊野誌」六号への濱畑榮造氏の書き込み
 8 「煉瓦の雨」の下敷きになった大石余平の最期
 9 死刑判決を報じる、幻の「熊野日報」の号外
 10 大逆事件」を機に追放された教師たち―八十三年前の「新聞投稿」に触発されて
 11 西浦宇吉の歩み 
 12 沖野岩三郎の「紀南半島夜話」―大石誠之助と津田長四郎への追悼文
 13 崎久保誓一、名誉回復への願い
 14 坂本清馬、「大逆事件」再審請求の執念と棄却
 15 戦争の最中、玉置酉久の讃美歌に誘われて
 16 佐藤春夫の父豊太郎の「懸泉堂割譲」への反発
 17 佐藤春夫、「老父の賜物」、中国趣味と「強権」への抗いと
 18 在野の東欧文学研究・エスペランチスト栗栖継・『真実へのひとり旅』
 19 伊達李俊の悲劇
 20 管野須賀子の「針文字」展示
 21 没後20年の中上健次
 22 抵抗の画家・石垣栄太郎は熊野人
 23 反戦平和の信念を貫いた女性・北林トモ
 24 「人権を取り戻す」―果敢に闘った木村亨
 25 堺利彦の故郷、みやこ町・豊津を訪れて

 第二十二章 書評など
 1 新たな「大逆事件問題」を提起―田中伸尚著『大逆事件―死と生の群像』を読んで
 2 I am only a free thinker 黒川創著『きれいな風貌―西村伊作伝』を読む
 3 峰尾節堂のこと―田中伸尚著『囚われた若き僧峯尾節堂 未決の大逆事件と現代』を読む



増補版表紙カバー