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「憲法に緊急事態条項って!?」市民集会(和歌山弁護士会)開催のお知らせ(2022年10月28日/和歌山城ホール4階大会議室)

 2022827日配信(予定)の「メルマガ金原No.3524」を転載します。

憲法に緊急事態条項って!?」市民集会(和歌山弁護士会)開催のお知らせ(20221028日/和歌山城ホール4階大会議室)

 2か月後に開催される和歌山弁護士会の行事「憲法に緊急事態条項を新設する憲法改正について考える」市民集会をご案内します。
 講師には、この分野の第一人者である永井幸寿弁護士(兵庫県弁護士会)をお招きし、日弁連が呼びかける「憲法改正問題に取り組む全国アクションプログラム」の一環として開催されるものであり、弁護士会内では憲法委員会が所管しています。

 もちろん、この内容であれば、憲法委員会が所管して当然なのですが、全国的には、憲法委員会のない単位会もあるでしょうし、もしかしたら、災害関連委員会が所管して開催するところがあるかもしれません。
 実際、後に掲載するチラシに記載されているとおり、講師としてお招きする永井先生は、日本弁護士連合会災害復興支援委員会の元委員長(現在でも委員・部会長)という経歴から分かるとおり、いわゆる「憲法族」ではなく、「災害族」なのです。

 おそらく、いわゆる「改憲派」が、大規模災害を「だし」にして緊急事態条項の必要性を声高に主張するという傾向にありましたので、そのことが、日弁連の「災害族」の中からこの問題についての論客を生みだす素地となったのではないかと思います。

 今年の5月2日、日弁連が「憲法改正による緊急事態条項の創設及び衆議院議員の任期延長に反対する会長声明」を発出した際、永井幸寿弁護士と小口幸人弁護士(沖縄弁護士会)が説明員を務める記者会見がPTから提案されたと聞いていますが(残念ながら実現しなかったようですが)、お2人とも「災害族」ですからね。
 上記会長声明及びそのベースとなった2つの日弁連意見書にリンクしておきますので、お読みいただければ幸いです(2017年2月の意見書はPDFで31頁もあるので通読するのは大変ですが)。これらが、この問題についての日弁連の基本的見解です。

2017年2月17日
日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書 
2017年12月22日
大規模災害に備えるために公職選挙法の改正を求める意見書 
2022年5月2日
憲法改正による緊急事態条項の創設及び衆議院議員の任期延長に反対する会長声明 

 それでは、以下にチラシの文字データを転記します。

(引用開始)
憲法改正問題に取り組む全国アクションプログラム
憲法に緊急事態条項って!?
民集会 憲法に緊急事態条項を新設する憲法改正について考える

憲法に緊急事態条項を新設することで、民主主義や国民の人権保障にどのような影響があるのでしょう?
なければ何か不都合があるのでしょうか?

2022年10月28日(金)午後6時~8時(開場30分前)
和歌山城ホール4階大会議室
●参加費無料 ●席数180 ●オンライン配信は行いません

講師/永井幸寿 弁護士(兵庫県弁護士会
【プロフィール】
■永井幸寿(ながいこうじゅ) 1955年7月生れ
■経歴□1979年(昭和54年)早稲田大学法学部卒業□1999年(平成11年)阪神・淡路まちづくり支援機構事務局長□2007年(平成19年)日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長■現在□関西学院大学災害復興制度研究所研究員□アンサー法律事務所所長■著書□「憲法に緊急事態条項は必要か」岩波書店□「よくわかる緊急事態条項Q&A」明石書店 ほか多数

主催/和歌山弁護士会
   〒640-8144 和歌山市四番丁5番地
   Tel073-422-4580(代)
共催/日本弁護士連合会
(引用終わり)

 チラシに記載された開催趣旨はやや簡略過ぎるので、以下に、和歌山弁護士会の会員に会長名で配布された案内文書から一部引用します。

(引用開始)
 衆議院憲法審査会で、新型コロナウイルス感染症の拡散、大規模地震津波等の大規模災害及びロシアのウクライナ侵攻のような国家有事に備えて、憲法に緊急事態条項を新設すべきであるとの意見が語られています。そして、内閣総理大臣や政府に法律と同等の効力を持つ政令制定権限や国会の決議によらない財政支出権限を憲法に新設することや衆議院議員の緊急時における任期延長規定を設ける内容の改憲案も浮上してきています。
 しかし、憲法にこのような緊急事態条項を設けることによって、国民の人権に対する過度の制約が課されることはないか、国民の代表である国会が本来行うべきことを緊急時とはいえ、行政府に委ねることは民主主義にとって問題はないか、そもそも憲法改正をしなければ感染症、大規模災害、有事への備えと対応はできないものであるか等について、知識を得て、議論を深めることが必要です。
(引用終わり)

 過去、私のブログで緊急事態条項を取り上げた投稿は相当な数にのぼりますが、そのうちのいくつかをピックアップして巻末にリンクしておきます。しかし、振り返ってみると、2016年に集中してこの問題を取り上げていたのですね。

 最後に、講師である永井幸寿先生が、2017年(平成29年)3月23日の衆議院憲法審査会において、緊急事態条項について参考人として意見陳述をされていますので、会議録と動画にリンクしておきます。

2017年3月23日 衆議院憲法審査会 会議録 
(抜粋引用開始)
○永井参考人 私は、阪神・淡路大震災で事務所が全壊して以来、二十二年間、被災者支援にかかわってきた者です。その立場でお話をいたします。
 第一に、災害を理由に緊急事態条項を憲法に設けるべきかということです。
 私は、災害を理由にした緊急事態条項を憲法に創設することには反対です。
 緊急事態条項とは、国家緊急権を憲法に創設する条項です。国家緊急権とは、戦争、内乱、大規模災害など、平時の統治機構では対処できない非常事態に、国家の存立を維持するために人権保障と権力分立を停止する制度です。
 日本国憲法は国家緊急権を置いていませんが、その趣旨は、昭和二十一年七月十五日、帝国憲法改正案委員会の議事録の中での政府の答弁で明らかにされております。国家緊急権の濫用の危険からあえて憲法には国家緊急権は設けないが、緊急事態には平常時から法律などで準備するというものです。
 では、災害関連の法規は整備されているのでしょうか。これは大変よく整備されております。
 例えば、内閣は、災害緊急事態には、国会のコントロールのもとで、四つの項目に限り罰則つきの政令制定権が認められております。また、内閣総理大臣は、関係指定行政機関の長、地方公共団体の長などに対する指示権が認められ、防衛大臣に対する自衛隊の部隊派遣要請ができ、警察庁長官を直接指揮監督して一時的に警察を統制するなど、権力が集中するシステムとなっております。
 また、人権の制限に関して見ると、都道府県知事に、医療関係者に対する従事命令、財産権の管理、使用、物資の保管命令、収用の権限、職員の立入検査などが認められ、これらを罰則つきで強制しています。さらに、市町村長に対しても、瓦れきの撤去などにつき強制権が十分認められております。
 では、被災者にとって一番重要な国のルールというのは何でしょう。これは、憲法ではなく、それよりも下位のルールである法律、通達、条例などです。
 例えば、仮設住宅に断熱材が入るのか、あるいは復興住宅に入居するには連帯保証人が必要か、これらは被災者にとって大変重要な問題ではありますが、法の運用や条例の問題であって、憲法の問題ではありません。
 災害対策の原則は何でしょう。これは、医療の専門家あるいは建築の専門家など、災害の専門家が口をそろえて言うのは、準備していないことはできないということです。
 国家緊急権は、災害が発生した後、泥縄式に権力を集中する制度です。しかし、災害後にどのような権力を強力に集中しても対処することはできません。東日本大震災で国や自治体の不手際というものが言われましたが、その多くが事前に準備していなかったことが原因です。例えば、原発事故で、原発から四・五キロの双葉病院などでは、寝たきりの高齢者が避難の前後の混乱で五十人亡くなりました。
 これは、なぜこういうことが起きたのでしょう。法律の制度では、国は防災基本計画、都道府県、市町村はこれに基づいて地域防災計画を策定する義務があり、そして、指定行政機関、自治体の長は防災教育の実施に努め、防災訓練の実施義務が認められています。
 しかし、国、自治体、事業者において、事実上、災害で原発事故は起こらないということになっていたんです。つまり、事前に、県境を越えた避難者の避難経路、あるいは渋滞のときのサブの経路、あるいは事前のドライバーや車両の確保、そして、避難した後の長期の生活の場の確保の計画、あるいはその訓練、これについての自治体の連携や住民参加がなかったことが原因です。
 法律の適正な運用による事前の準備がなかったことが原因であり、緊急事態条項を創設しても対処することはできません。
(略)
 第二に、緊急事態における国会議員の任期について申し上げます。
 衆議院議員の任期は四年、または衆議院解散のときは期間満了前、これは憲法四十五条に書かれております。参議院議員の任期は六年、これは憲法四十六条に書かれています。そこで、大規模災害が選挙のときに発生した場合のために、憲法を改正して議員の任期を延長すべきかが議論されています。特に、衆議院の解散や任期満了が問題となります。
 結論から申し上げますと、私は、憲法を改正して議員の任期を延長することに反対です。
 まず、憲法は大規模災害時の制度を二つ設けています。一つは、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会です。衆議院が解散されたときで、国に緊急の必要があるとき、内閣は参議院の緊急集会を求めることができます。緊急集会でとられた措置は、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合は効力を失います。
 二つ目は、憲法十三条六号の法律による政令への罰則委任です。永田町での直下型地震が発生した場合のように、参議院の緊急集会も請求できない場合は、内閣は法律に基づいて政令で対処することになり、政令に実効性を持たせるためには罰則が必要となります。他方で、内閣の権力の濫用の危険があるので、特に法律の委任がないと政令に罰則が設けられないとする制度です。
 これを受けて、災害対策基本法の厳格な要件のもとで、緊急時に内閣は罰則つきの政令、緊急政令が制定できます。
 では、衆議院解散中に大規模災害が発生したときはどう考えるべきでしょう。
 先ほどのように、内閣は参議院の緊急集会を求めて対処できます。また、災害緊急事態においては、国会閉会中や衆議院解散中で臨時国会や緊急集会の措置を待ついとまがない場合でも、災害対策基本法による緊急政令で対処できます。
 では、衆議院の任期満了時に大規模災害が発生したときはどうすべきでしょう。
 参議院の緊急集会の規定は、文言上は、衆議院解散のときと定めています。何らかのニーズがあった場合、憲法最高法規でありますので、まず法律で対処することを考え、それができない場合は憲法の解釈で対処することを考え、それができないときに初めて憲法改正を検討すべきです。
(略)
(引用終わり)

2017年3月23日 衆議院憲法審査会 インターネット審議中継 

(弁護士・金原徹雄のブログから/緊急事態条項関連)
2016年1月26日
水島朝穂教授による自民党改憲案「緊急事態条項」批判論文(2013年)がネットで公開されました 
2016年2月3日
自民党改憲案・緊急事態条項はナチス授権法の再来か?~海渡雄一弁護士の論考を読む 
2016年2月6日
立憲デモクラシーの会・公開シンポジウム「緊急事態条項は必要か」を視聴する 
2016年4月11日
立憲デモクラシー講座第8回(4/8)「大震災と憲法―議員任期延長は必要か?(高見勝利氏)」のご紹介(付・『新憲法の解説』と緊急事態条項) 
2016年5月29日
金森徳次郎国務大臣答弁と『新憲法の解説』を読む~災害を理由とした緊急事態条項は不要! 
2016年10月6日
自民党の憲法改正草案批判~「緊急事態条項」を中心に(参院選の結果を踏まえた憲法学習会用レジュメ)
2016年11月20日
第12回「那賀9条まつり」とそこでお話しした「戦争法緊急事態条項とは」 
2017年2月25日
日本弁護士連合会「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む 
2018年11月18日
自民党の緊急事態条項・条文イメージ(たたき台素案)を読む~付・永井幸寿弁護士が訴える緊急事態条項の危険性